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音楽学部

演奏家になるだけじゃない

音楽学部は、音楽を「演奏する」「つくる」「研究する」「支える」ための専門的な力を身につける学部です。大学によって「音楽学部」のほか「芸術学部音楽学科」「教育学部音楽専攻」などの形もあります。中心になるのは毎週の個人レッスンと日々の練習で、1日に数時間楽器や声と向き合う生活が4年間続きます。一方で、楽理(音楽の理論や歴史の研究)、音楽環境創造(録音・音響・音楽とメディア)、音楽療法、音楽ビジネスなど、演奏以外の専攻もあり、ピアノが弾けなくても入れる専攻を置く大学もあります。たとえば、東京藝術大学の音楽学部には、作曲・声楽・器楽・指揮・邦楽・楽理・音楽環境創造の7つの科があります(2026年度、河合塾Kei-Net)。

よくある勘違い

ピアノや歌がうまい人が、プロの演奏家になるために行く学部

実は

演奏だけでなく、作曲、音楽の歴史や理論の研究、録音や音響、音楽ビジネス、音楽療法、音楽教育など、音楽にかかわる幅広い仕事につながる学びがあります。卒業後に演奏だけで生活する人はむしろ少数で、教える仕事や一般企業、大学院への進学など進路はさまざまです。

どんな学科・専攻がある?

音楽学部ではどんな授業がある?

押すと、その授業の中身が見られます。

実習・実験・研究

練習の積み上げ4年の最後卒業演奏・作品・論文4年間の集大成学期末実技試験先生たちの前で演奏。進級に直結毎週レッスン専攻実技の個人レッスン毎日個人練習練習室で1日3〜5時間ほど練習する学生も人前で演奏する機会も多い定期演奏会・オペラ公演数か月練習し、ホールで本番室内楽(2〜8人)指揮者なしで話し合ってつくる練習に終わりがないので、手や喉の故障を防ぐことも大切毎日の練習が、試験と本番につながる
研究系の専攻は卒業論文、作曲専攻は卒業作品を発表します

音楽学部の学びの中心は、毎日の個人練習と毎週のレッスンです。練習室を予約して1日3〜5時間ほど楽器や声と向き合う学生も珍しくなく、「授業がない時間はずっと練習」という生活になります。学期末には「実技試験」があり、先生たちの前で決められた曲を演奏して評価されます。学内の演奏会、オーケストラやオペラの公演、コンクールへの挑戦など、人前で演奏する機会も多くあります。研究系の専攻では、楽譜や資料を読み込んで卒業論文を書き、作曲専攻では卒業作品を発表します。練習に終わりがないので、体調管理や手や喉の故障を防ぐことも大切です。

実技試験学期の終わりや学年末に、専攻の先生たちの前で課題曲や自由曲を演奏します。成績や進級に直結するので、何か月も前から準備します。
定期演奏会・オペラ公演学内のオーケストラ、吹奏楽、合唱、オペラなどが、ホールでお客さんを入れて公演します。数か月かけて練習し、本番の舞台の空気を経験します。
室内楽・アンサンブル2〜8人ほどの小さなグループを組んで、1年かけて曲を仕上げます。指揮者がいないので、メンバー同士で話し合って音楽をつくります。
教育実習・音楽療法実習教員免許をとる人は、中学校や高校で2〜4週間ほど授業をします。音楽療法を学ぶ人は、病院や福祉施設で実際のセッションに参加します。
卒業演奏・卒業作品・卒業論文4年生の最後に、演奏専攻は卒業演奏、作曲専攻は卒業作品、楽理や音楽学の専攻は卒業論文を発表します。4年間の集大成で、成績のよい人は選抜の卒業演奏会に出ることもあります。

大学生活の流れ

1年専攻実技のレッスンが始まり、ソルフェージュ、和声、音楽史などの基礎科目を学びます。一般教養や語学の授業もあり、練習時間の確保に苦労する時期です。
2年レッスンの課題が難しくなり、オーケストラや合唱、室内楽などのアンサンブルの授業が本格化します。教員免許や学芸員などの資格をとる人は、関連する科目を取りはじめます。
3年学内の演奏会やコンクールに挑戦する人が増えます。将来の進路を考えはじめ、大学院進学、留学、教員、一般企業への就職など、方向を決めていく時期です。教育実習に行く人もいます。
4年卒業演奏、卒業作品、卒業論文に向けて集中して取り組みます。就職する人は就職活動、大学院や留学をめざす人は入試やオーディションの準備を並行して進めます。
大学院修士課程では、より高度な演奏や研究に取り組み、リサイタル(ソロの演奏会)を開いたり、論文を書いたりします。演奏家や大学の先生をめざす人の多くが進学します。

取れる資格・免許

中学校・高等学校教諭一種免許状(音楽)教職課程の科目を取り、教育実習に行くことで取得できます。公立学校の先生になるには、さらに都道府県などの教員採用試験に合格する必要があります。
学会認定音楽療法士日本音楽療法学会が認める民間資格です。学会の認定校を卒業して筆記試験を受け、その後の面接試験に合格すると認定されます。国家資格ではありません。
学芸員博物館や美術館で資料の収集や展示を行うための国家資格です。大学で決められた科目を取ると取得でき、楽器博物館や音楽資料館などで働く道もあります。
ピアノ指導者向けの検定・グレードピアノの先生として教える人のための民間の検定やグレードがあります。音楽教室の講師として採用されるときに役立つことがあります。

音楽学部の卒業後の進路

音楽学部東京藝術大学の例2024年度卒業者225人進学 96人就職 116人「就職」には非常勤の講師や演奏の仕事も入る教える仕事音楽教室の講師、中学・高校の音楽の先生演奏の仕事オーケストラ団員は募集が少なく、競争がとても厳しい音楽の会社楽器メーカー、レコード会社、ホールの公演の企画など一般企業銀行・商社・ITなど、音楽と関係ない業界も大学院・留学演奏家や大学の先生をめざす人の多くが進む修士課程ではリサイタルを開いたり論文を書いたり演奏で毎月決まった給料をもらえる仕事は少ない教える・支える・一般企業へと広がる
東京藝術大学音楽学部の2024年度卒業者(河合塾Kei-Net)。「就職」には一般の会社員と働き方が違う場合も含まれます

音楽学部の卒業生の進路は、大学院進学や留学、学校や音楽教室で教える仕事、フリーランスの演奏活動、一般企業への就職など、大きく分かれます。オーケストラの団員のように、演奏で毎月決まった給料をもらえる仕事はとても少なく、空きが出たときのオーディションで選ばれる必要があります。たとえば、東京藝術大学の音楽学部では、2024年度の卒業者225人のうち、進学が96人、就職が116人でした(河合塾Kei-Net)。この「就職」には、非常勤の講師や演奏の仕事も含まれることがあり、一般の会社員とは働き方が違う場合があります。

大学院進学・海外留学演奏家や大学の先生をめざす人の多くが選ぶ道です。トップレベルの音楽大学では、卒業生の4割前後が進学する年もあります。
音楽教室・個人レッスンの講師ピアノ教室や楽器店の音楽教室などで、子どもや大人に教える仕事です。非常勤で複数の教室をかけもちする人も多くいます。
中学・高校の音楽の先生 ›教員免許をとって、教員採用試験に合格する道です。吹奏楽部や合唱部の顧問になることも多い仕事です。
オーケストラ・合唱団・演奏家プロのオーケストラ団員や、フリーランスの演奏家として活動します。団員の募集は少なく、競争はとても厳しい道です。
楽器メーカー・楽器店・音響機器メーカー ›楽器をつくる会社や売る会社で、営業、商品企画、調律、レッスン事業などにかかわります。演奏の知識がそのまま役立つ仕事です。レコード会社・音楽出版・放送局 ›アーティストの音楽を企画・制作・宣伝する仕事や、テレビやラジオの音楽番組をつくる仕事です。音楽の知識に加えて、企画力やビジネスの感覚が求められます。
コンサートホール・イベント運営ホールの公演を企画したり、チケットを販売したり、舞台の運営を担当したりする仕事です。アートマネジメントの学びが生かせます。
一般企業(音楽と関係ない業界)銀行、商社、ITなど、音楽と直接関係のない会社に就職する人もいます。人前で演奏する経験や、長い時間コツコツ練習する力が評価されることがあります。

もっと知りたい人へ

似た名前の学部とのちがい

音楽を学べる場所は「音楽学部」だけではありません。教育学部の音楽専攻は、学校の先生を育てることが目的で、演奏に加えて教育学の授業が多くなります。芸術学部の音楽学科は、美術や映像などほかの芸術と一緒に学べるのが特徴です。また、専門学校の音楽科は、ポップスやバンド、音響スタッフなど現場の仕事にすぐつながる技術を短い期間で学ぶところが多いです。音楽学部は、クラシックを中心に、演奏と理論と歴史をまとめて4年かけて深く学ぶ場所だと考えるとわかりやすいです。

教育学部の音楽専攻との比べ方

教育学部では、ピアノ、声楽、指揮、作曲などを広く少しずつ学び、「どの楽器もある程度できて、教えられる人」をめざします。音楽学部では、自分の専攻の楽器を深くきわめるのが中心です。学校の先生になりたい人は、両方を比べてみるとよいです。

専門学校とのちがい

専門学校は2年制が多く、録音エンジニアやギター、作曲など実践的な技術を集中的に学びます。大学では学士の学位がとれ、教員免許や学芸員などの資格もとれるのがちがいです。

向いている人

音楽が好きなのはもちろん、毎日何時間も同じ曲を練習し続けることを苦にしない人に向いています。上達は少しずつで、何週間も同じところでつまずくこともあるので、粘り強さが大切です。先生の厳しい指摘を受け止めて、自分の演奏を変えていける素直さも必要です。一方で、楽理や音楽ビジネス、音響の専攻なら、演奏の腕よりも、調べることや企画すること、機械をあつかうことが好きな人が力を発揮できます。

演奏系に向いている人

小さいころから楽器を続けていて、さらに上をめざしたい人です。人前で演奏する緊張を楽しめる人や、本番に強い人も向いています。

研究・制作系に向いている人

「なぜこの曲は感動するのか」を言葉で説明したくなる人、音楽制作ソフトやマイクをいじるのが好きな人、ライブの裏側に興味がある人に向いています。

高校生のうちに(文理・受験科目)

音楽学部の入試は、専攻実技(演奏の試験)が最も大切で、それに加えて、ソルフェージュ(聴音・視唱)、楽典(音楽の理論の筆記試験)、副科ピアノなどが課されます。学科の試験は、英語と国語だけの大学が多く、国公立大学では共通テストも必要です。演奏系の専攻では、高校の授業とは別に、音楽大学の先生などについて個人レッスンを受けるのが一般的です。楽理や音響の専攻では、小論文や面接、英語の比重が高い大学もあります。文理はどちらでもかまいませんが、音響を学びたい人は物理を、楽理を学びたい人は世界史や英語を得意にしておくと役立ちます。

いつから準備するか

演奏系では、志望大学の先生のレッスンを早めに受けて、入試の課題曲に向けて準備します。音楽大学が開く夏期講習会に参加すると、入試のレベルや雰囲気がわかります。

学費のことも知っておく

私立の音楽大学は、ほかの学部より学費が高めです。たとえば、武蔵野音楽大学の演奏(器楽・声楽)の初年度納入金は約222万円です(2026年度入学者、河合塾Kei-Net)。楽器の購入やレッスン代も別にかかることがあります。

よくあるギャップ

入学してまず驚くのが、まわりの学生のレベルの高さです。地元ではいちばん上手だった人ばかりが集まるので、自信をなくす人もいます。また、音楽学部といっても、和声や音楽史など、座って勉強する授業も多く、「ずっと楽器を弾いていられる」わけではありません。さらに、卒業後に演奏だけで生活できる人は少なく、教える仕事やほかの仕事と組み合わせて音楽を続ける人が多いという現実もあります。

練習時間の確保が大変

授業、一般教養、アルバイトのあいだに練習時間を入れるのは大変です。練習室の予約がとりにくい時期もあり、時間の使い方がうまい人ほど伸びます。

就職活動とのバランス

4年生は卒業演奏の準備と就職活動の時期が重なります。一般企業をめざすなら、3年生のうちから情報を集めておくと安心です。

音楽で生活するしくみ

音楽の仕事でお金をもらう方法は、演奏料、レッスン代、作曲料や著作権の使用料、CDや配信の売り上げなど、いくつもあります。たとえば、自分が作った曲がテレビCMで流れたり、カラオケで歌われたりすると、著作権の使用料が入るしくみがあります。フリーランスの演奏家は、結婚式での演奏、オーケストラのエキストラ(足りないパートの助っ人)、音楽教室の講師などを組み合わせて生活していることが多いです。そのため、演奏の腕に加えて、人とのつながりやお金の管理、宣伝の力も大切になります。

オーケストラの団員になるには

プロのオーケストラは、楽員に空きが出たときにオーディションで新しい人を採用します。1つの席に多くの人が応募し、試用期間を経て正式な団員になるのが一般的です。

SNSや配信という新しい道

最近は、動画サイトやSNSで演奏を発信して、ファンを集めて活動する人も増えています。演奏だけでなく、撮影や編集、発信の工夫も求められます。

よくある質問

ピアノが弾けないと音楽学部には入れませんか。

多くの大学では、どの専攻でも入試に副科ピアノや簡単なピアノの試験があります。ただし、楽理や音楽ビジネス、音響系の専攻では、ピアノの試験がない大学もあります。志望する大学の入試要項で確認しましょう。

何歳から楽器を始めていれば間に合いますか。

ピアノやヴァイオリンは、小さいころから続けている人が多いのが実際です。一方で、管楽器や打楽器、声楽は、中学や高校の部活から始めて音楽大学に進む人もいます。今のレベルを先生に見てもらい、相談するのがいちばん確実です。

吹奏楽部の経験は役に立ちますか。

管楽器や打楽器の専攻では、吹奏楽部で続けてきた経験がそのまま土台になります。ただし、入試ではソロの演奏が中心なので、部活とは別に個人レッスンを受けて、ソロの曲を仕上げておくことが大切です。

ポップスやバンドの音楽も学べますか。

音楽学部はクラシックが中心ですが、最近はポップス、ジャズ、電子音楽、ゲーム音楽などのコースを置く大学も増えています。大学によって大きくちがうので、カリキュラムをよく調べましょう。

音楽学部を出ると就職できないのですか。

一般企業に就職する人もたくさんいます。演奏の本番で緊張に打ち勝つ経験や、目標に向けて計画的に練習する習慣は、どの仕事でも生かせます。ただし、演奏の仕事だけで生活するのは難しいので、早めに進路を考えておくことが大切です。

1日にどのくらい練習しますか。

専攻や人によってちがいますが、演奏系の学生は1日3〜5時間ほど練習する人が珍しくありません。試験や本番の前はさらに長くなります。量だけでなく、何を直すかを考えながら練習する質も大切です。

音楽療法士になるにはどうすればいいですか。

日本には音楽療法士の国家資格はなく、日本音楽療法学会の認定資格などの民間資格があります。学会の認定校を卒業して試験に合格するのが代表的なルートです。音楽学部だけでなく、教育や福祉系の学部に認定コースがある場合もあります。

国公立と私立の音楽大学のちがいは何ですか。

国公立は学費が安く、共通テストなど学科試験の比重も高めです。私立は学費が高めですが、専攻やコースの種類が多く、少人数のレッスンや設備が充実しているところもあります。

録音エンジニアになりたい場合は音楽学部がいいですか。

音楽学部の音響系の専攻のほか、工学部の音響系の学科や専門学校でも学べます。音楽学部では音楽の理解を深めながら録音を学べるのが強みです。理系の知識も必要なので、物理や数学も大切にしましょう。

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