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田植えの実習!

農学部

畑だけじゃない、食と命と環境の学問

農学部は、「食料」「生命」「環境」をキーワードに、作物や家畜、微生物、森林、川や海、農村などを研究する学部です。バイオテクノロジーや食品の研究、環境問題、農業機械や水の管理、食料の流通や農村の経済まで扱い、理系の中でも特に分野が幅広いのが特徴です。実験室での研究に加えて、大学の農場・演習林・牧場・臨海施設などでの実習があります。卒業後は食品・飲料・化学などのメーカー、農林水産関係の公務員、団体などに進む人が多く、大学によっては獣医学科(6年制)もあります。たとえば、毎日食べるお米や野菜の品種、ヨーグルトや納豆を作る微生物、花粉の少ないスギ、養殖の魚なども農学の研究から生まれています。

よくある勘違い

農家になる人や、農業を継ぐ人が行く学部

実は

農学部では、食べ物、生き物、環境に関わることを、化学・生物学・工学・経済学などさまざまな方法で研究します。卒業後は食品や化学のメーカー、公務員など幅広く、農業につく人は一部です。

どんな学科・専攻がある?

農学部ではどんな授業がある?

押すと、その授業の中身が見られます。

実習・実験・研究

農学部の実習は、2つの場所で野外の実習農場(1〜2年)種まき・田植え・収穫演習林泊まりがけで調査牧場牛や豚の世話、搾乳臨海・練習船海の生き物を採集実験室の実習微生物の培養2〜3年の学生実験酵素の反応農芸化学系は特に多い成分の分析学科ごとの学生実験遺伝子の実験毎回レポートを提出4年:研究室で卒業研究植物や微生物を毎日世話する研究では、土日や長い休みにも大学に来ることがある屋外の調査は天候に左右される畑・森・海と、実験室の両方で学ぶ

農学部の大きな特徴は、実験室での実験と、農場・演習林・牧場・臨海施設などでの野外実習の両方があることです。1〜2年生では大学の農場で、田植えから収穫まで作物を育てたり、家畜の世話をしたりする実習を行う大学が多くあります。2〜3年生では学科ごとの学生実験で、微生物の培養、成分の分析、遺伝子の実験などを行い、レポートを書きます。4年生で研究室に入ると、研究によっては植物や動物、微生物を毎日世話する必要があり、土日や長期休みにも大学に来ることがあります。屋外の調査は天候に左右され、夏の暑さや泥にまみれる作業もありますが、生き物と向き合う研究ならではのやりがいがあります。

農場実習1〜2年生で、大学の附属農場で作物や野菜、果樹の栽培を体験します。種まき、田植え、収穫などを季節に合わせて行い、生き物を育てる難しさを知ります。
演習林実習森林科学の学生などが、大学の演習林に泊まりがけで行き、樹木の調査、間伐、測量などを行います。山の中での作業なので体力が必要です。
牧場・畜産実習大学の牧場で牛や豚、鶏などの世話、搾乳、健康管理などを体験します。動物の命を扱う責任を学びます。
臨海・乗船実習水産系の学生は、臨海実験所や練習船で、海の生き物の採集や環境の調査を行います。数日間船に乗る実習を行う大学もあります。
学生実験(化学・生物)2〜3年生で、微生物の培養、酵素の反応、成分の分析、遺伝子の実験などを行い、毎回レポートを提出します。農芸化学系では特に実験が多いです。
研究室配属と卒業研究4年生で研究室に入り、1年間テーマに取り組みます。植物の栽培試験、微生物の実験、野外調査、農村での聞き取り調査など、研究の方法は分野によってさまざまです。

大学生活の流れ

1年生物、化学、数学、統計などの基礎と、教養科目を学びます。農場実習で作物を育てる体験をする大学も多いです。
2年学科やコースの専門の講義と、学生実験が本格化します。入学後にコースを選ぶ大学では、この時期に専門を決めます。
3年より専門的な講義と実験・実習が中心です。研究室を選び、大学院進学か就職かを考えます。公務員試験の勉強を始める人もいます。
4年研究室で卒業研究に取り組みます。生き物を扱う研究では、季節に合わせて実験の計画を立てる必要があります。就職活動や大学院入試と並行します。
大学院修士課程で研究を深め、食品・化学メーカーの研究職などをめざす人が多いです。例えば千葉大学園芸学部では、令和7年度卒業生の46.8%が大学院などに進学しました。
5〜6年(獣医学科)獣医学科は6年制で、5〜6年生では動物病院での臨床実習や卒業研究を行い、獣医師国家試験に向けて勉強します。

取れる資格・免許

獣医師(国家資格)獣医学科(6年制)を卒業すると、獣医師国家試験の受験資格が得られます。第77回(令和7年度)の合格率は全体68.4%、新卒は83.9%でした。
教員免許(理科・農業)中学・高校の理科、高校の農業の教員免許を取れる大学があります。農業高校の先生になる道もあります。
食品衛生管理者・食品衛生監視員(任用資格)指定の課程を修めて卒業すると得られる資格で、食品工場の衛生管理や、保健所などで食品の安全を監視する仕事に必要です。対応している学科は大学によって違います。
樹木医補樹木医補の養成機関として登録された大学で指定の単位を取ると、申請して認定を受けられます。樹木医補として登録後、1年以上の実務経験を積むと樹木医の資格試験を受けられます(通常のルートでは5年以上の実務経験が必要)。
甲種危険物取扱者(受験資格)農芸化学など化学に関する学科を卒業するか、化学の科目を15単位以上取ると受験資格が得られます。
測量士補・学芸員など農業工学系などで測量の科目を修めると測量士補、博物館の科目を取ると学芸員の資格が得られる大学があります。

農学部の卒業後の進路

農学部食べ物の流れに沿って見ると種・肥料・農業機械の会社農業を支える製品の開発や技術営業農業法人・就農大規模な農業の会社、実家を継ぐ人も農業団体(JAなど)育て方の指導や、農産物の出荷食品・飲料メーカー特に多い商品開発・品質管理・生産管理商社・流通・小売産地を回る仕入れや、食材の輸入種・肥料育てる集める加工する売る流れの外から支える進路研究・開発職修士修了者が中心。乳酸菌や代替肉など公務員(農林水産の技術職)農業試験場での研究、農家への技術指導環境コンサルタント工事の前に、すむ鳥や植物を調べる獣医師(獣医学科・6年制)動物病院、牧場の牛の診療、検査など農業そのものを仕事にする人は一部食べ物の流れのあちこちで働く

農学部の卒業生は、食品・飲料・化学・医薬品などのメーカー、農林水産関係の公務員、農業協同組合(JA)などの団体、種苗・肥料・農薬・農業機械の会社、環境コンサルタントなど、幅広い分野に進みます。研究職をめざす人は大学院に進むことが多く、国立大学では半数近くが進学する例もあります。農業そのものを仕事にする人は一部ですが、農業法人への就職や新規就農、実家の農業を継ぐ人もいます。

食品・飲料メーカー ›農学部の卒業生が特に多く進む業界です。商品開発、品質管理、生産管理、研究などを担当します。農芸化学や食品科学の出身者が多いです。たとえば、新しい味のお菓子や飲み物の開発、工場で異物が入らないようにする品質管理、賞味期限を決めるための試験などを担当します。メーカーの研究・開発(食品・化学・医薬品・化粧品) ›修士修了者を中心に、新しい食品素材や発酵技術、バイオ技術を使った製品を研究します。たとえば、おなかの調子を整える乳酸菌飲料、大豆などから作る代替肉、おいしさを保ったまま塩分を減らす技術などを研究します。国家公務員・地方公務員(農林水産系の技術職) ›農林水産省や都道府県の農業・林業・水産・畜産などの技術職です。農業試験場での研究、農家への技術指導(普及指導員)、森林や漁業の管理などを担当します。たとえば、県の農業試験場でその地域に合う新しい品種を作ったり、農家に栽培のアドバイスをしたり、漁業の資源を管理したりします。農業団体(JAなど) ›農業協同組合などで、農家の営農指導、農産物の販売、金融・共済などの仕事をします。たとえば、農家に作物の育て方をアドバイスしたり、地域の農産物をまとめてスーパーや市場に出荷したりします。
種苗・肥料・農薬・農業機械の会社農業を支える製品を作る会社で、研究・開発や、農家・販売店向けの技術営業を担当します。たとえば、ホームセンターで売っている野菜の種や肥料、家庭菜園用の農薬なども、こうした会社が開発しています。
商社・流通・小売 ›食品や農産物を扱う商社、スーパーなどの小売業で、仕入れや商品開発、品質管理などを担当します。たとえば、スーパーのバイヤーとして産地を回って野菜や果物を仕入れたり、海外から食材を輸入したりします。環境コンサルタント・調査会社 ›森林や河川、生き物の調査を行い、開発事業が環境に与える影響を評価するなどの仕事です。たとえば、新しい道路や風力発電所を作る前に、そこにすむ鳥や植物を調べて、影響を減らす方法を提案します。
獣医師(獣医学科)動物病院の小動物臨床のほか、牛や豚などの産業動物の診療、公務員として家畜の伝染病の防止や食肉検査、製薬会社の研究などに進みます。たとえば、町の動物病院で犬や猫を診察するほか、牧場を回って牛の健康を診たり、空港や港で海外から動物の病気が入らないよう検査したりする獣医師もいます。
農業法人・就農大規模に農業を行う農業法人への就職や、新規就農、実家の農業を継ぐ人もいます。スマート農業など新しい技術を生かす人も増えています。たとえば、ビニールハウスで一年中トマトを育てて全国のスーパーに出荷する会社や、直売所やカフェも経営する農業法人があります。

もっと知りたい人へ

農学部の学科の広さ

農学部は、理系の学部の中でも特に扱う分野が広い学部です。同じ農学部でも、農芸化学系は化学と生物の実験室での研究が中心、森林や水産は野外の調査が中心、農業工学は工学に近く、農業経済学は文系に近い内容です。大学によって学科の分け方や名前(生物資源科学部、生命環境学部、園芸学部など)もさまざまなので、研究室の一覧を見て、自分が何を研究したいかで選びましょう。

名前に「農」がつかない学部も

生物資源学部、生物生産学部、応用生物科学部、園芸学部、水産学部、海洋学部なども、農学系の学部です。

入学後にコースを選ぶ大学も

農学部全体で入学し、2年生などでコースを選ぶ大学があります。いろいろな分野を学んでから決められるのがメリットです。

食料・環境問題と農学

世界の人口増加、気候変動、農業の担い手不足、食品ロスなど、食料と環境をめぐる課題は大きくなっています。農学は、これらの課題に科学で答える学問です。暑さに強い品種の開発、ドローンやAIを使ったスマート農業、微生物を使った環境の浄化、持続可能な漁業など、研究テーマは社会の課題と直結しています。

スマート農業

ロボット、ドローン、センサー、AIなどを使って、農作業の省力化や高品質な生産をめざす取り組みです。工学や情報の知識も必要になっています。

バイオテクノロジー

微生物や酵素、遺伝子の技術を使って、食品や薬、燃料、素材を作る研究も農学の大切な分野です。

獣医学科について

獣医師になるには、獣医学科(6年制)を卒業して国家試験に合格する必要があります。獣医学科は国公立・私立あわせて全国で17大学に置かれており、入試の難易度は高めです。獣医師の仕事は動物病院だけでなく、牛や豚などの家畜の診療、公務員として感染症の防止や食肉の検査、製薬会社での研究など幅広いです。

動物が好きなだけでは大変

獣医学科では、解剖や病理の実習など、命と向き合う厳しい授業もあります。動物を大切にする気持ちと、科学として学ぶ姿勢の両方が求められます。

動物看護師という道も

動物病院で獣医師を支える愛玩動物看護師は、2023年から国家資格になりました。獣医学科とは別の大学・専門学校で学びます。

向いている人

生き物や自然が好きな人、食べ物や環境の問題に関心がある人、屋外での作業や長い時間の実験も楽しめる人に向いています。生き物は思いどおりに育たないことも多いので、根気強く観察を続けられる人は特に向いています。分野によっては化学や統計を多く使うので、生物だけ好きでも苦労することがあります。

体を動かすのが好きな人

農場や森林、海での実習や調査は、体力を使う作業が多いです。自然の中で体を動かすのが好きな人には魅力的です。

社会とのつながりを感じたい人

農学の研究は、食卓や地域、環境に直接つながることが多いです。研究の成果が社会に役立つことを実感したい人に向いています。

高校生のうちに(文理・受験科目)

理系コースからの受験が多く、理科は化学と生物を使うことが多いです。数学IIIを必要としない大学もあれば必要な大学もあり、農業工学系などでは物理が求められる場合もあります。農業経済系の学科では文系の科目で受験できる場合もあるので、学科ごとに確認しましょう。

化学はとても大切

農芸化学や食品科学、土壌学など、農学部では化学を使う授業が多くあります。生物が好きな人も、化学をしっかり学んでおくと入学後に楽になります。

身近な自然や食に目を向ける

家庭菜園や生き物の飼育、地域の農業体験、食品の成分表示を見る習慣など、身近なところから興味を広げておくと、学科選びのヒントになります。

よくあるギャップ

「畑で野菜を育てる学部」と思って入学すると、化学や生物の実験、統計の授業の多さに驚く人が多いです。逆に、化学の研究がしたくて入学した人が、農場実習の体力仕事に驚くこともあります。また、研究室によっては、生き物の世話のために土日や長期休みにも大学に通う必要があります。一方で、自分で育てた作物を収穫したり、研究が食品の開発につながったりする喜びは、農学部ならではです。

就職先は農業以外が多い

農学部というと農業につくイメージがありますが、実際には食品・化学メーカーや公務員などに進む人が多いです。

虫や土が苦手でも大丈夫?

学科によっては虫や土にふれる機会は多くありませんが、1年生の農場実習などは全員が参加することもあります。オープンキャンパスで実際の様子を確かめましょう。

よくある質問

農家の子どもじゃなくても農学部に入れますか?

もちろん入れます。農学部の学生のほとんどは農家の出身ではありません。食品やバイオ、環境に興味がある人が多く入学しています。

農学部の就職先はどこが多いですか?

食品・飲料・化学などのメーカー、農林水産関係の公務員、JAなどの農業団体、種苗や農薬の会社、環境コンサルタントなどが多いです。研究職をめざす人は大学院に進むことが多いです。

農学部と理学部の生物学科は何が違いますか?

理学部の生物学科は生命のしくみそのものを解明することが中心です。農学部は、食料や農業、環境など、人の暮らしに役立つことを意識した研究が多いです。ただし重なる部分も多いので、研究室のテーマで比べましょう。

獣医師になるには農学部に行けばいいですか?

獣医学科(6年制)に入学する必要があります。獣医学科は農学部の中にある大学もあれば、獣医学部として独立している大学もあります。農学部のほかの学科からは獣医師になれません。

食品メーカーで商品開発をしたいです。どの学科がいいですか?

農芸化学(応用生命化学)や食品科学の学科が近いです。食品メーカーの研究・開発職では、大学院の修士課程を修了した人の採用が多い傾向があります。

農学部は文系でも入れますか?

農業経済学などの学科では、文系の科目で受験できる入試を用意している大学があります。ただし入学後は理系の科目も学ぶことがあるので、カリキュラムを確認しましょう。

動物の実験はありますか?

畜産や獣医学、一部の生命科学の研究では、動物を使う実験があります。動物実験は法律や大学の規則に従い、動物の苦痛を減らす配慮のもとで行われます。

公務員になる人は多いですか?

国や都道府県の農林水産関係の技術職になる人は、ほかの理系学部と比べて多いと言われています。農業試験場での研究や、農家への技術指導など、専門を生かせる仕事です。

スマート農業ってどんなもの?

ロボット、ドローン、センサー、AIなどを使って、農作業を楽にしたり、品質を上げたりする取り組みです。農業の人手不足を解決する方法として注目されており、農学部でも学べる大学が増えています。

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