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なぜそうなった?

文学部

本を読むだけじゃない「人間の研究所」

文学部は、ことば・歴史・思想・こころ・社会など、人間が生み出してきたものを研究する学部です。大学によって「人文学部」「人文社会学部」「人間科学部」などの名前のこともあり、置かれている専攻は大学ごとにかなり違います。研究の材料は本や古文書だけでなく、遺跡、アンケート、インタビュー、心理実験のデータなどさまざまで、心理学や社会学では統計も使います。たとえば「部活をしている高校生は勉強時間が短いのか」を、300人分のアンケートを集めて数字で確かめる、といった研究です。卒業生の多くは一般企業に就職し、営業・企画・広報・人事など幅広い職種で働いています。

よくある勘違い

小説を読んで感想を書くだけの学部

実は

文学だけでなく、哲学・歴史・考古学・心理学・社会学・言語学など「人間とは何か」を資料とデータで研究する学部です。感想ではなく、根拠を集めて論理的に説明する力をきたえます。

どんな学科・専攻がある?

文学部ではどんな授業がある?

押すと、その授業の中身が見られます。

実習・実験・研究

文学部の中心は、少人数の演習(ゼミ)と卒業論文です。ゼミでは、担当になった学生が資料を読みこんで発表し、ほかの学生や先生から質問や反論を受けます。考古学の発掘、社会学の調査、心理学の実験など、分野によっては体を動かす実習もあります。卒業論文は多くの大学で必修で、1年以上かけて2万字から4万字程度(大学・専攻によって大きく異なります)の論文を書きます。テーマ探し、資料集め、執筆、何度もの書き直しと、自分で計画を立てて進める力が問われ、ここが文学部でいちばん大変で、いちばん成長できるところです。

専門演習(ゼミ)2〜3年生から所属し、10人前後で文献や史料を読み、発表と議論をくり返します。発表のためにレジュメ(配布資料)を作り、質問に答えられるよう準備することで、調べる力と説明する力がつきます。
卒業論文3年生の後半にテーマを決め、4年生の1年間をかけて書くのが一般的です。中間発表会や指導教員との面談を重ね、12月から1月ごろに提出し、口頭試問(面接)を受ける大学もあります。
発掘調査実習(考古学)夏休みなどに遺跡で数週間の調査を行います。掘るだけでなく、測量、図面作成、遺物の整理と報告書づくりまで体験します。
心理学実験実習2年生ごろに毎週実験を行い、そのたびに目的・方法・結果・考察をまとめたレポートを書きます。分量が多く、計画的に進めないと締め切りに追われます。
社会調査実習1年間かけて、グループで調査を企画し、アンケートやインタビューを実施して報告書を作ります。地域や自治体と協力して行うこともあります。
博物館実習・図書館実習学芸員や司書の資格をめざす人は、博物館や図書館での実習(学内での準備と、館での数日〜2週間程度の実習)を行います。展示の準備や資料の整理などを体験します。

大学生活の流れ

学年卒論就活1年入門哲学・史学・文学興味を探す2年専攻専攻が決まる講義と演習3年ゼミテーマをしぼるインターン4年卒業論文執筆が中心教育実習などもテーマ執筆準備就職活動12〜1月ごろ提出4年は、前半に就職活動、後半に論文の仕上げ研究と就活の両立がカギ
卒業論文の分量は2万〜4万字ほど(大学・専攻によって大きく違います)
1年哲学・史学・文学・心理学などの入門講義と、外国語、レポートの書き方などの基礎を学びます。いろいろな分野にふれて、自分が何に興味をもてるかを探す時期です。
2年多くの大学で専攻(コース)が決まり、専門の講義と演習が始まります。人気の専攻は、1年生の成績で選考されることもあるので、1年生の成績も大事です。
3年ゼミに所属し、自分の研究テーマをしぼっていきます。夏のインターンシップなど就職活動の準備も始まり、研究と就活を両立させる工夫が必要になります。
4年卒業論文の執筆が中心です。前半は就職活動、後半は論文の仕上げという人が多いです。教育実習や博物館実習をここで行う人もいます。
大学院修士課程(2年)、博士課程(3年)で研究を深めます。研究者や学芸員、公認心理師をめざす人が進むことが多いです。国の調査では人文科学系の学部卒業生の大学院等進学率は約4.5%(令和4年度学校基本調査)で、多くはありません。

取れる資格・免許

中学校・高等学校教諭一種免許状教職課程の科目と教育実習を修めて卒業すると取れます。専攻に応じて国語・社会・地理歴史・公民・英語などの教科です。公立学校の先生になるには、取得後に教員採用試験に合格する必要があります。
学芸員大学で博物館に関する科目(博物館法施行規則で定める9科目19単位)を修めて卒業すると資格が得られます。ただし博物館の学芸員の採用はとても少なく、大学院修了者が採用されることも多いです。
司書大学で図書館に関する科目を修めて卒業すると資格が得られます。公立図書館の司書は自治体の採用試験を受けますが、正規職員の募集は少なめです。
認定心理士日本心理学会が認定する資格で、大学で心理学の基礎科目を所定の単位修得すると申請できます。国家資格ではありませんが、心理学を体系的に学んだ証明になります。
公認心理師(国家資格)大学で指定の25科目を学んだあと、大学院で指定科目を修めるか、認定施設で2年以上働いてから国家試験を受けます。第8回試験(令和7年)の合格率は66.9%でした。
社会調査士社会調査協会が認定する資格で、大学で社会調査の方法と実習の科目を修めると申請できます。マーケティングや調査会社、公務員の仕事でも調査の基礎がある証明になります。
登録日本語教員(国家資格)2024年度から始まった日本語教師の国家資格です。日本語教員試験と実践研修を経て登録します。令和6年度の日本語教員試験の合格率は62.6%でした。日本語教員養成の課程を置く文学部もあります。

文学部の卒業後の進路

文学部一般企業大半メーカー・金融・IT・マスコミ・小売など営業・企画・広報・人事・事務など公務員・学校の先生一定数県庁・市役所などの行政職国語・社会・英語の先生大学院少数研究者・学芸員・公認心理師をめざす人文科学系の進学率は約4.5%大半は企業へ。業界にかたよらず幅広い伝える力・資料を読みこむ力が生きる
大学院進学率は人文科学系の学部卒業生(令和4年度学校基本調査)

文学部の卒業生の大半は一般企業に就職します。特定の業界にかたよらず、メーカー、金融、情報通信、マスコミ、小売・サービスなど幅広く進むのが特徴です。職種では営業、企画、広報、人事、事務などが多く、文章で考えを伝える力や資料を読みこむ力が評価されます。たとえば、お客さんの要望をよく聞いて提案書にまとめる、会社の魅力を伝えるホームページの文章を書く、といった仕事です。公務員や教員になる人も一定数いて、研究者や学芸員、公認心理師をめざして大学院に進む人もいます。

出版・新聞・広告・放送 ›文学部出身者が多い業界のひとつです。編集者、記者、ディレクター、コピーライターなど、ことばと企画で勝負する仕事です。たとえば、マンガ雑誌で作家と一緒に連載の展開を考える編集者や、駅のポスターのキャッチコピーを考えるコピーライターです。人気が高く採用人数は少ないので、倍率は高めです。IT・情報通信 ›文系出身でもエンジニアや企画職として入社する人が増えています。プログラミングは入社後の研修で学べる会社が多く、ゲームやウェブサービスの企画に、物語や人間の理解を生かす人もいます。銀行・保険などの金融 ›採用人数が多く、文学部からも多くの人が就職します。営業や窓口、事務、企画などの仕事で、相手の話をよく聞き、正確に説明する力が求められます。たとえば、家を買いたい家族に住宅ローンのしくみを説明したり、お店を広げたい会社にお金を貸す相談にのったりします。メーカー(営業・企画・人事) ›食品、化粧品、自動車、電機などのメーカーで、営業や商品企画、広報、人事などを担当します。消費者の気持ちを考えるマーケティングでは、心理学や社会学の知識が役立ちます。小売・サービス・旅行 ›百貨店、スーパー、ホテル、旅行会社、鉄道などで、販売や店舗運営、企画の仕事をします。歴史や地理、外国文化の知識を観光の企画に生かす人もいます。公務員 ›国家公務員や県庁・市役所の行政職として働きます。公務員試験は学部を問わないので、文学部からの合格者も多いです。文化財や博物館の専門職として採用される人もいます。
学校の先生国語・社会・英語などの中学校・高校の先生になる人がいます。教員免許をとり、教員採用試験に合格して働きます。私立学校は学校ごとに採用を行います。
商社・コンサルティング ›語学力や情報を整理して伝える力を生かして、商社やコンサルティング会社に就職する人もいます。人数は経済・商学部より少なめですが、学部での制限はありません。
研究者・学芸員・心理職大学院に進んで研究を続け、大学教員、博物館の学芸員、病院や学校で働く公認心理師になる道です。採用の数が少ない分野も多いので、長い目で準備が必要です。

もっと知りたい人へ

文学部ではどんな力がつく?

文学部で身につくのは、大量の文章や資料を読み、そこから問題を見つけ、根拠をそろえて説明する力です。これは「読解力」「論理的思考力」「文章力」と言いかえることができ、どの職場でも必要とされます。また、答えが1つではない問題について、いろいろな立場から考える練習をたくさんします。社会に出ると、正解のない問題に向き合う場面が多いので、この経験が生きてきます。

「役に立たない」は本当?

文学部は「すぐに役立つ資格がない」と言われることがあります。しかし、企画書や報告書を書く力、相手の言いたいことを正確に読みとる力は、多くの仕事の土台です。実際に卒業生は幅広い業界で働いています。

データを扱う分野もある

心理学、社会学、言語学などでは統計やプログラミングを使うことがあります。最近は、古い文献をデジタル化してコンピュータで分析する「デジタル・ヒューマニティーズ」という研究も広がっています。たとえば、ある作家の全作品をコンピュータに読ませて、よく使う言葉のくせから、作者不明の作品がその人のものかを推定する研究です。

専攻の選び方

文学部は専攻によって学ぶ内容がまったく違うので、学部名ではなく専攻で大学を選ぶことが大切です。たとえば心理学を学べる大学でも、実験中心の大学と臨床(カウンセリング)中心の大学があります。考古学や美学美術史のように、置いている大学が限られる専攻もあります。入学後に専攻を選ぶ大学と、入試の段階で専攻が決まっている大学があるのも大きな違いです。

入学後に選ぶ大学

1年生で幅広く学んでから2年生で専攻を決める大学では、入学後に興味が変わっても対応しやすいです。ただし人気の専攻には定員があり、成績で決まることがあります。

入試で決まる大学

入試の段階で専攻ごとに募集する大学では、1年生から専門の授業を受けられます。そのかわり、あとから専攻を変えるのは難しい場合があります。

向いている人

「なぜだろう」と疑問をもつのが好きな人、ひとつのことをじっくり調べるのが苦にならない人、文章で自分の考えを伝えたい人に向いています。本が大好きである必要はありませんが、授業の準備で多くの文章を読むことにはなります。人の気持ちや行動、社会のできごとに興味がある人には、心理学や社会学も合っています。

こんな高校生はとくに合う

歴史の資料集を読むのが好き、友だちの悩みを聞くのが得意、ニュースの裏側が気になる、好きな作品について長く語れる、という人は文学部の学びを楽しめる可能性が高いです。

ちょっと注意が必要な人

決められた答えをすばやく出すのが好きな人は、答えの決まらない議論にもどかしさを感じるかもしれません。また、自分でテーマを決めて進める場面が多いので、受け身でいると何も身につかないまま終わることもあります。

高校生のうちに(文理・受験科目)

ふつうは文系コースから受験します。入試の中心は国語(現代文・古文・漢文)、英語、地理歴史です。日本文学や日本史を考えているなら、古文・漢文は入学後もそのまま使うので特に大事です。国立大学では共通テストで数学や理科も必要になります。心理学は大学によって文学部・教育学部・人間科学部など置かれている学部が違い、理系の入試がある大学もあるので、志望校の募集要項を確認しましょう。

今からできること

興味のある分野の新書を読んでみるのがおすすめです。新書は大学の先生が一般向けに書いた本が多く、学問の入口として最適です。博物館や美術館、史跡に行ってみるのもよい経験になります。

数学は捨てないほうがよい

心理学や社会学では統計を使います。高校の数学(特にデータの分析や確率)を理解しておくと、大学の統計の授業がずっと楽になります。

よくあるギャップ

入学してから「思っていたのと違う」と感じやすいのが、文学部の「読む量」と「書く量」です。好きな作品を楽しく読むのではなく、研究書や論文を何本も読んで、先行研究をふまえて自分の考えを書くことが求められます。心理学専攻では「カウンセリングを学ぶつもりだったのに、統計と実験ばかり」と驚く人も多いです。一方で、高校までの国語や歴史とはまったく違う、自分で問いを立てて答えを探すおもしろさに目覚める人もたくさんいます。

就職のイメージのギャップ

「文学部は就職に弱い」というイメージをもつ人もいますが、実際には幅広い業界に就職しています。ただし、専門知識がそのまま仕事になる場面は少ないので、学んだことをどう説明するかを自分で考える必要があります。

自由さのギャップ

時間割を自分で組める自由がある反面、自分から動かないと何も始まりません。サークルやアルバイト、留学などをどう組み合わせるかも、自分しだいです。

卒業論文のテーマの例

卒業論文のテーマは、身近な疑問から生まれることが多いです。たとえば日本文学なら「ある作家の作品にくり返し出てくる場所の意味」、日本史なら「地元の村に残る古文書から見た江戸時代の暮らし」、心理学なら「スマートフォンの通知が集中力に与える影響」、社会学なら「地方の若者が地元に残る理由」といったテーマが考えられます。大事なのは、テーマが大きすぎず、自分で資料やデータを集められることです。

テーマのしぼり方

最初は「日本の若者文化」のような大きなテーマから始め、先生との面談で「2000年代の〇〇という雑誌に見る若者ことば」のように、調べられる大きさまでしぼっていきます。

卒論が就活で役立つことも

面接で「学生時代に力を入れたこと」として卒論やゼミの研究を話す人もいます。自分で問いを立てて調べた経験は、仕事の進め方そのものだからです。

よくある質問

文学部は本が好きじゃないと入れませんか?

入れます。ただし授業ではたくさんの文章を読むので、読むことが苦痛すぎると大変です。心理学や社会学、考古学のように、本以外のデータや遺物を扱う専攻もあります。

文学部は就職に不利ですか?

不利とは言えません。卒業生の多くは一般企業に就職していて、業界も幅広いです。ただ、学んだ内容が直接仕事に結びつきにくいので、自分の強みを言葉にする準備が大切です。

心理学を学べばカウンセラーになれますか?

学部だけではなれません。国家資格の公認心理師になるには、大学で指定科目を学んだあと、ふつうは大学院に進んで指定科目を学び、国家試験に合格する必要があります。

理系でも文学部に入れますか?

入れる大学はあります。心理学など、理系の科目で受験できる入試を用意している大学もあります。国立大学では共通テストで数学や理科も使います。

文学部でも数学を使いますか?

心理学や社会学、言語学の一部では統計を使います。哲学では論理学で記号を使うこともあります。文学や歴史の専攻では、数学を使う場面はあまり多くありません。

学芸員になるのは難しいですか?

資格を取ること自体は、大学で科目を履修すれば可能です。ただし博物館の学芸員の採用は少なく、大学院修了者が採用されることも多いため、学芸員として働くのは狭き門です。

卒業論文はどのくらい大変ですか?

1年以上かけて、大学や専攻によっては数万字の論文を書くので大変です。テーマ探しから資料集め、執筆、書き直しまで自分で進めます。そのぶん、やりとげたときの達成感と成長は大きいです。

人文学部や人間科学部とは何が違いますか?

名前が違っても学ぶ内容が近いことがあります。人文学部は文学部とほぼ同じ内容の大学が多く、人間科学部は心理学や社会学、教育学などを組み合わせていることが多いです。学部名ではなく、専攻とカリキュラムで比べましょう。

留学はしやすいですか?

外国文学や外国史の専攻では、研究対象の国へ留学する人が多いです。大学の交換留学制度を使えば、留学先の単位を卒業単位に認めてもらえることもあります。

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