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建築学部・建築学科

デザインと工学と法律で、人の居場所をつくる

建築学部・建築学科は、住宅、学校、病院、駅、オフィスビル、まち全体まで、人が過ごす空間をつくるための知識と技術を学ぶところです。日本では建築学科の多くが工学部や理工学部の中に置かれていますが、近畿大学(2011年)、工学院大学(2011年)、神奈川大学(2022年)などのように、独立した「建築学部」を置く大学も増えています。学ぶ分野は、建物の形や使いやすさを考える計画・意匠(デザイン)、地震や風に耐える骨組みを考える構造、熱・光・音・空気を扱う環境・設備、工事の方法を考える施工・生産の大きく4つです。たとえば、みなさんの学校の校舎も、教室の広さ、窓の大きさ、柱の太さ、階段の幅、エアコンの配置まで、すべて建築を学んだ人が決めています。所定の科目を学んで卒業すると、一級建築士試験の受験資格が得られます。

よくある勘違い

おしゃれな建物の絵を描く、美術に近い学科

実は

建築学科では、デザインだけでなく、地震に耐える構造の計算、熱や光や空気の環境、建築基準法などの法律、工事の方法まで学びます。多くの大学で理系の工学部・理工学部に置かれていて、数学と物理を多く使います。

どんな学科・専攻がある?

建築学部・建築学科ではどんな授業がある?

押すと、その授業の中身が見られます。

実習・実験・研究

建築学科の学びの中心は、設計製図(設計演習)の授業です。1年生から4年生まで、ほぼ毎学期に設計課題があり、敷地を見に行き、案を考え、図面と模型を作り、発表して講評を受けるという流れをくり返します。締め切り前は製図室に泊まり込むような忙しさになることもあり、建築学科は忙しい学科として知られています。また、構造や材料の実験、環境の測定、工事現場の見学など、手と体を動かす授業もたくさんあります。4年生では研究室に所属し、論文を書く卒業論文か、自分でテーマを決めて建物を設計する卒業設計のどちらか、または両方に取り組みます。

設計課題1〜3年生を中心に、毎学期2〜3つの課題に取り組みます。たとえば1年生では自分の住みたい小さな家、2年生では集合住宅や幼稚園、3年生では図書館や美術館などの公共建築を設計します。図面、模型、プレゼンテーションをまとめ、講評会で発表します。
模型制作スチレンボードや木材、紙などで建物の模型を作ります。設計の途中で何度も小さな模型を作り、形を確かめながら案を練ります。完成した模型は講評会で使います。
構造・材料実験コンクリートや木材、鉄の試験体に力をかけて、どのくらいで壊れるかを測ります。小さな橋や骨組みの模型を作り、重りをのせて強さを競う課題がある大学もあります。
建築見学・現場見学有名な建築や、工事中の現場を見学します。教科書で学んだことを、実際の建物で確かめる大切な機会です。海外の建築を見に行く研修を行う大学もあります。
卒業設計・卒業論文4年生で、自分でテーマと敷地を決めて建物を設計する卒業設計、または研究をまとめる卒業論文に取り組みます。卒業設計は大学の外の展覧会や講評会に出品されることもあり、建築学生にとって大きな目標です。

大学生活の流れ

1年小さな住宅図面と模型の基本2年集合住宅小さな公共施設3年大きく複雑な建物研究室選び4年卒業設計テーマも自分で毎学期の設計課題で、建物が大きく複雑になる卒業後指定の科目を修めていれば、その年の一級建築士試験から受験できる大学院(修士2年)に進む人も多い4年間、設計と講評をくり返して力をつける
課題の建物の種類や数は大学によって違います
1年数学、物理、英語などの基礎科目に加え、建築の入門、図面の描き方、デッサンや模型の基本を学びます。最初の設計課題として、小さな住宅や身近な空間を設計します。建築の見方を身につける時期です。
2年構造力学、建築材料、建築環境、建築史などの専門科目が本格的に始まります。設計課題も集合住宅や小さな公共施設などに広がり、CADなどのソフトの使い方も学びます。
3年構造、環境・設備、法規、施工など、より専門的な科目を学び、設計課題は大きく複雑な建物になります。インターンシップで設計事務所やゼネコンの仕事を体験する人も多いです。年度の後半には研究室を選びます。
4年研究室に所属し、卒業設計や卒業論文に取り組みます。大学院に進む人は夏ごろに大学院の入試を受け、就職する人は就職活動を行います。卒業して指定の科目を修めていれば、その年の一級建築士試験から受験できます。
大学院修士課程(2年)に進む人が多く、設計や研究をさらに深めます。設計コンペに挑戦したり、学会で研究を発表したりします。組織設計事務所やゼネコンの設計部門には修士課程の修了者が多く、大学院での経験が就職に生かされます。

取れる資格・免許

一級建築士大学の建築学科で国土交通大臣が指定する科目を修めて卒業すると、卒業した年から試験を受けられます。2025年の総合合格率は11.4%(学科16.5%、設計製図35.0%)でした。免許の登録には、学んだ単位数に応じて2〜4年の実務経験が必要です。大きな建物を含め、すべての建物を設計できる資格です。
二級建築士・木造建築士指定の科目を学んで卒業すると受験でき、二級建築士は主に一戸建ての住宅など比較的小さな建物を設計できます。在学中から二級建築士を目指す学生もいます。
一級・二級建築施工管理技士建物の工事を管理するための国家資格です。ゼネコンで施工管理の仕事をする人が取ることが多く、大きな工事現場の責任者になるために必要です。
インテリアプランナー・インテリアコーディネーター家具や内装の計画、インテリアの提案をする力を示す資格です。インテリア系のコースの学生や、ハウスメーカーで働く人が取ることがあります。
宅地建物取引士土地や建物の売買や賃貸の契約に必要な国家資格です。不動産会社やデベロッパー、ハウスメーカーに進む人が取ることが多いです。

建築学部・建築学科の卒業後の進路

建築学科ゼネコン(総合建設会社)特に多い設計部で設計をする人と、工事現場で施工管理をする人がいる設計事務所組織設計事務所は大きなビルや空港、アトリエ事務所は住宅や美術館などハウスメーカー・工務店一戸建てやアパートを設計し、建てるデベロッパー・不動産土地を買い、マンションやビルを企画するサブコン(設備会社)空調・電気・給排水の設計や工事公務員(建築職)建物の審査、公共施設の計画、まちづくりを担当する建設・不動産の業界に進む人が多い設計をめざす人は大学院を経ることが多い

建築学科の卒業生は、建設や不動産の業界に進む人が多いです。具体的には、建物の設計を行う設計事務所、設計と工事の両方を行うゼネコン(総合建設会社)、住宅をつくるハウスメーカー、土地を買って建物を企画するデベロッパー、建物の設備を担当するサブコン(設備会社)などがあります。役所の建築職として、建物の審査やまちづくりを担当する人もいます。特に設計の仕事を目指す人は、大学院(修士課程)に進んでから就職することが多いです。

ゼネコン(総合建設会社) ›建築学科の卒業生が最も多く進む業界の一つです。設計部で設計を担当する人、工事現場で施工管理を担当する人がいます。鹿島建設、大林組、大成建設、清水建設、竹中工務店はスーパーゼネコンと呼ばれます。組織設計事務所・アトリエ事務所 ›建物の設計を専門に行う会社です。日建設計、日本設計などの組織設計事務所は大きなビルや空港を、建築家が開くアトリエ事務所は住宅や美術館などデザイン性の高い建物を手がけます。ハウスメーカー・工務店 ›一戸建ての住宅やアパートを設計し、建てる会社です。お客さんの要望を聞いて家を提案する設計や営業の仕事があります。積水ハウス、大和ハウス工業、住友林業などが大手です。デベロッパー・不動産 ›土地を買い、マンションやオフィスビル、商業施設を企画して、完成後に売ったり貸したりする会社です。建築の知識を生かして、どんな建物を建てるかを計画します。
サブコン(設備会社)・設備設計空調、電気、給排水などの設備の設計や工事を担当する会社です。環境・設備系のコースの卒業生が多く進みます。
公務員(建築職・まちづくり) ›国土交通省や都道府県、市役所の建築職として、建物の審査、公共施設の計画、まちづくりを担当します。鉄道・インフラ・メーカー ›駅や車両基地を設計・管理する鉄道会社、建材や住宅設備を作るメーカーなどに進む人もいます。

もっと知りたい人へ

建築学部と工学部建築学科のちがい

建築を学べる場所には、工学部や理工学部の中の「建築学科」と、独立した「建築学部」があります。どちらで学んでも、指定の科目を修めて卒業すれば一級建築士試験の受験資格が得られ、学ぶ内容の中心も同じです。違いは、建築学部のほうが学部として大きいので、コースやプログラムの数が多く、デザイン、構造、環境、住まい、まちづくりなどから自分の興味に合わせて選びやすい傾向があることです。一方、工学部の中の建築学科は、機械や電気、情報など他の工学系の学科と一緒に学ぶ機会があります。

建築学部を置く大学の例

近畿大学と工学院大学は2011年に、神奈川大学は2022年に建築学部を開設しています。神奈川大学建築学部は入学定員200名で、建築学系と都市生活学系の2つの学系があります。

デザイン系・生活系の学部の建築

美術大学のデザイン学科、家政学部の住居学科、生活科学部などでも建築を学べることがあります。文系の科目で受験できる場合もありますが、一級建築士の受験資格が得られるかどうかは、学科ごとに必ず確認しましょう。

建築の4つの分野

建築学は、大きく4つの分野に分かれます。1つ目は計画・意匠で、建物の形や空間、使いやすさを考えます。2つ目は構造で、地震や風、重さに耐えられる骨組みを計算で決めます。3つ目は環境・設備で、温度、光、音、空気、エネルギーを扱い、快適で省エネルギーな建物をつくります。4つ目は施工・生産で、設計図をもとに安全に、決められた予算と期間で建物を建てる方法を考えます。1つの建物は、この4つの分野の専門家が協力して完成します。

意匠設計だけが設計ではない

建物の形を決める意匠設計のほかに、骨組みを決める構造設計、設備を決める設備設計があり、それぞれ専門の設計者がいます。たとえば、超高層ビルでは、意匠、構造、設備の設計者が何十人もチームを組んで設計します。

どの分野に進むかは途中で決められる

多くの大学では、1〜2年生で4つの分野を一通り学び、3〜4年生で研究室を選ぶときに自分の専門を決めます。入学のときにデザインに興味があった人が、授業を通じて構造や環境の面白さに気づくこともよくあります。

向いている人

建築学科に向いているのは、建物やまちを見るのが好きな人、ものを作るのが好きな人です。頭の中で立体をイメージする力や、考えを絵や模型で表す力があると役立ちますが、これらは授業でくり返し練習すれば身につきます。むしろ大切なのは、何度も案を作り直す粘り強さと、締め切りまでやり切る体力です。また、建物は多くの人と協力してつくるので、人の話を聞き、自分の考えをわかりやすく説明する力も必要です。

こんな経験が生きる

たとえば、レゴブロックやプラモデルで何かを作るのが好きだった人、自分の部屋の模様替えを考えるのが好きな人、旅行先で建物を見て回るのが好きな人は、建築学科の学びを楽しめる素質があります。

絵が下手でも大丈夫

今は図面をCADやBIMなどのソフトで描くのが一般的なので、絵の上手さはそれほど必要ありません。ただし、考えをすばやくスケッチで伝えられると便利なので、少しずつ練習しておくとよいです。

高校生のうちに(文理・受験科目)

建築学科の多くは工学部や理工学部にあるため、入試では数学(数学IIIを含むことが多い)、物理、英語が中心になります。構造力学や建築環境では物理と数学を多く使うので、高校で物理を学んでおくことが大切です。一方で、デザイン系の学科や一部の私立大学では、文系の科目や、デッサンなどの実技で受験できる場合もあります。高校生のうちに、実際の建物を見に行く習慣をつけると、入学後の設計課題で大きな力になります。

建物を見に行く

近くの美術館、図書館、駅、新しい商業施設などで、天井の高さ、光の入り方、人の流れを観察してみましょう。気になった建物を誰が設計したのか調べると、建築家ごとの考え方がわかってきます。

描く・作る練習

自分の部屋や教室の間取りを方眼紙に描いたり、段ボールや紙で簡単な模型を作ったりすると、立体を考える力がつきます。美術の授業のデッサンも、建築のスケッチの練習になります。

よくあるギャップ

入学前は「かっこいい建物をデザインしたい」と思って入る人が多いですが、実際には構造力学や法規、設備など、計算や暗記の多い科目もたくさんあります。また、設計課題の締め切り前は夜遅くまで作業が続き、想像以上に忙しい学科だと感じる人が多いです。卒業後も、すぐに大きな建物のデザインを任されるわけではなく、図面の修正や模型作り、役所への書類作りなどを何年も経験してから、少しずつ責任のある仕事を任されるのが一般的です。

設計課題の厳しい講評

講評会では、先生や外部の建築家から自分の案に対して厳しい意見をもらうことがあります。最初は落ち込むこともありますが、意見を受け止めて次に生かすことで、設計の力が伸びていきます。

一級建築士までの道のり

一級建築士試験の総合合格率は11.4%(2025年)と低く、多くの人が働きながら資格学校に通って勉強します。大学を卒業してすぐに資格が取れるわけではないことも知っておきましょう。

これからの建築

これからの建築には、いくつかの大きなテーマがあります。1つは脱炭素で、建物で使うエネルギーを減らし、太陽光などでエネルギーをつくる建物が増えています。2つ目は木造化で、木を使った中高層の建物が注目されています。3つ目は、古い建物を壊さずに直して使い続けるリノベーションです。4つ目は、BIMやAIなどデジタル技術の活用です。人口が減る日本では、新しく建てることに加えて、今ある建物やまちをどう生かすかが、建築を学ぶ人の大きな役割になっています。

ZEBとZEH

ZEB(ゼブ)はビル、ZEH(ゼッチ)は住宅で、使うエネルギーと太陽光などでつくるエネルギーを合わせて、1年間で差し引きゼロに近づける建物のことです。たとえば、断熱をしっかりして、屋根に太陽光パネルをのせた家などです。

リノベーション

古い建物を、今の暮らしや使い方に合わせて大きく作り直すことです。たとえば、使われなくなった学校の校舎を、カフェやオフィスに生まれ変わらせる例があります。

よくある質問

建築学部と建築学科はどう違いますか?

建築学科は工学部などの中にある学科、建築学部は建築だけで独立した学部です。どちらでも指定の科目を修めれば一級建築士試験の受験資格が得られ、学ぶ内容の中心は同じです。

文系でも建築学科に入れますか?

多くの建築学科は理系の学部にあるため、数学や物理が必要です。ただし、デザイン系や生活系の学科、一部の私立大学では文系の科目で受験できる場合もあります。入学後に構造力学などで数学を使うことは覚えておきましょう。

絵が苦手でも大丈夫ですか?

大丈夫です。図面はCADなどのソフトで描くのが一般的で、模型や説明の力も評価されます。スケッチは授業でくり返し練習すれば上達します。

建築学科は本当に忙しいのですか?

設計課題の締め切り前は、夜遅くまで製図室で作業することがあり、忙しい学科として知られています。計画的に作業を進めることで、負担を減らすことができます。

卒業したらすぐに建築士になれますか?

指定の科目を修めて卒業すれば、卒業した年から一級建築士試験を受けられます。ただし、合格したあと免許を登録するには、学んだ単位数に応じて2〜4年の実務経験が必要です。

大学院には行ったほうがよいですか?

設計の仕事を目指す人は、大学院に進んでから就職することが多いです。施工管理や不動産などの仕事では、学部卒で就職する人もたくさんいます。

女子学生は多いですか?

建築学科は、工学系の学科の中では女子学生の割合が高い傾向があります。住宅設計やインテリア、まちづくりなどの分野を中心に、多くの女性が活躍しています。

土木工学科とはどう違いますか?

建築学科は家やビルなどの建物を、土木工学科は道路、橋、トンネル、ダム、上下水道など、まち全体を支える施設を学びます。どちらも建設業界に就職する人が多いです。

模型の材料費などはかかりますか?

模型の材料、製図用の道具、パソコンとソフトなどにお金がかかります。大学によって違うので、オープンキャンパスで在学生に聞いてみるとよいです。

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