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削りすぎないように

歯学部

歯を削る技術と、口から全身を守る医学

歯学部は、歯や歯ぐき、あごの骨、舌、だ液腺など、口とその周りの病気を診断し、治療し、予防するための学問を学ぶ学部です。中心になる歯学科は6年制で、卒業すると歯科医師国家試験の受験資格が得られます。全国に歯学部は29あり(国立11、公立1、私立17)、私立の割合が高いのが特徴です。授業は、人体のしくみを学ぶ基礎医学、模型やマネキンを使って歯を削ったりかぶせ物を作ったりする基礎実習、附属病院で実際の患者さんの治療に参加する臨床実習の3段階で進みます。たとえば、歯医者さんで銀歯を入れてもらったことがある人は多いと思いますが、その銀歯の形を決め、型を取り、ぴったり合わせる一連の技術を、学生は何百時間もかけて身につけます。

よくある勘違い

虫歯の治療のしかただけを習う学部

実は

歯学部では、医学部と同じように解剖学・生理学・病理学・薬理学などの基礎医学を学び、そのうえで口とあごの病気、かむ・飲み込む・話す働き、全身の病気との関係まで学びます。手の技術を何年もかけて練習するのも大きな特徴です。

どんな学科・専攻がある?

歯学部ではどんな授業がある?

押すと、その授業の中身が見られます。

実習・実験・研究

歯学部は、6年間のうち長い時間を手を動かす実習にあてる学部です。前半は基礎医学の実験や解剖実習、後半は模型を使った基礎実習が中心で、歯を削る、型を取る、入れ歯を作るといった作業を何度もくり返します。4年生ごろに共用試験(CBTとOSCE)に合格すると、5年生から附属病院で臨床実習に進み、指導する歯科医師のもとで実際の患者さんの治療に参加します。実習には提出期限のある作品や課題が多く、合格の基準を満たすまで作り直しになることもあるため、放課後や休日まで作業する学生も少なくありません。さらに学年ごとの進級試験があり、留年する学生も一定数いるので、6年間を通して勉強と実習を両立させる体力と計画性が必要です。

人体解剖実習主に2年生ごろに、数か月かけてご遺体を解剖させていただき、骨、筋肉、血管、神経の位置を自分の目で確かめます。命の重さと向き合う実習で、終わったあとに慰霊祭を行う大学が多いです。
基礎実習(模型実習)3〜4年生を中心に、マネキンの頭に人工の歯を入れた模型を使い、虫歯を削る、詰める、根の治療をする、かぶせ物を作るなどの練習をします。ひとつの課題に何時間もかかり、教員のチェックに合格するまでくり返します。
共用試験(CBT・OSCE)4年生ごろに受ける、臨床実習に進むための全国共通の試験です。CBTはコンピュータで知識を問い、OSCEは模擬患者さんを相手に、問診や基本的な処置を正しくできるかを試験官が確かめます。合格すると、臨床実習に参加できる学生として認められます。
臨床実習(診療参加型)5〜6年生にかけて、附属病院で指導歯科医のもと、実際の患者さんの診察や治療に参加します。虫歯の治療や歯石取り、入れ歯の調整などを、決められた範囲で学生自身が行います。
研究実習・卒業研究大学によっては、基礎系や臨床系の研究室に入り、実験や調査を行う期間があります。たとえば、歯周病菌が全身に与える影響を調べる研究や、新しい歯科材料の強さを測る研究などです。

大学生活の流れ

歯学科の6年間と、2つの関門1年教養と歯学の入門物理や生物を補う授業も2年基礎医学と人体解剖実習覚える量が一気に増える3年臨床系の講義と模型実習実習室にこもる日が増える4年基礎実習の総仕上げ臨床系の講義も仕上げ関門:共用試験(CBT・OSCE)合格しないと5年の臨床実習に進めない5年附属病院で臨床実習診療科を回り、患者さんの治療に参加6年臨床実習の仕上げと卒業試験1年のほとんどを国家試験対策に関門:歯科医師国家試験1月末から2月初めに受ける合格後、4月から1年以上の臨床研修学年ごとに進級試験があり、留年する学生も一定数いる2つの関門をこえて歯科医師になる
模型実習や共用試験の時期は大学によって少し違います
1年英語、物理、化学、生物、心理学などの教養科目と、歯学の入門を学びます。高校の理科を大学レベルに引き上げる時期で、物理や生物を受験で選ばなかった人は補習的な授業で追いつく必要があります。早い大学では、歯科医院や病院の見学もあります。
2年解剖学、生理学、生化学、組織学などの基礎医学が本格的に始まります。人体解剖実習もこの時期に行う大学が多く、覚える量が一気に増えます。進級試験で苦労する学生が出始める学年です。
3年病理学、微生物学、薬理学、歯科理工学などに加え、保存、補綴、口腔外科などの臨床系の講義と模型実習が始まります。手の技術を磨く時間が増え、実習室にこもる日が多くなります。
4年臨床系の講義と基礎実習の総仕上げをし、共用試験(CBTとOSCE)に合格することが大きな目標です。合格できないと5年生の臨床実習に進めないので、多くの学生にとって最初の大きな関門です。
5年附属病院での臨床実習が本格的に始まります。診療科をローテーションしながら、実際の患者さんの治療に参加します。患者さんとの会話、カルテの書き方、チームでの動き方を現場で学びます。
6年臨床実習の仕上げをしながら、秋から冬にかけて卒業試験、1月末から2月初めに歯科医師国家試験を受けます。1年間のほとんどを国家試験対策にあてるのが一般的です。合格すると、4月から1年以上の臨床研修に進みます。
大学院歯科医師になった後、4年制の博士課程に進む人がいます。大学病院で診療を続けながら、基礎研究や臨床研究を行い、博士(歯学)の学位を取ります。大学の教員や専門医を目指す人、研究の経験を開業後の診療に生かしたい人が進みます。

取れる資格・免許

歯科医師免許歯学科(6年制)を卒業して歯科医師国家試験に合格すると取得できます。2026年に行われた第119回では、受験者2,837人のうち1,757人が合格し、合格率は61.9%(新卒者は80.2%)でした。免許を取ったあと、1年以上の臨床研修を修了すると、自分で歯科医院を開くことができます。
歯科衛生士免許口腔保健系の学科や専門学校などで学び、歯科衛生士国家試験に合格すると取得できます。歯科医院、病院、保健所、介護施設などで、予防処置や歯科保健指導を行います。
歯科技工士免許口腔保健系の学科や歯科技工士の養成校で学び、歯科技工士国家試験に合格すると取得できます。歯科技工所や歯科医院で、入れ歯やかぶせ物を作ります。
専門医・認定医(卒業後)歯科医師になった後、口腔外科、矯正歯科、歯周病、小児歯科などの学会が定める研修と試験を経て取得します。専門分野の力を示す資格で、ほかの医院から患者さんを紹介してもらうときの目安にもなります。

歯学部の卒業後の進路

歯学部 歯学科歯科医師国家試験6年生の1月末〜2月初め臨床研修1年以上、病院などで歯科医院の勤務医院長のもとで幅広い治療の経験を積むいちばん多い経験と資金をためて開業医(院長)30〜40代で開業する人が多い治療と経営の両方を担う大学病院の口腔外科口腔がんや、あごの骨折の手術。大学院で専門医へ行政・自衛隊保健所、厚生労働省、自衛隊の歯科医官歯科材料のメーカー新しい材料を歯科医師に説明する仕事など少数の道口腔保健系の学科(4年制)歯科衛生士・歯科技工士として歯科医院、病院、保健所、介護施設などへ全国の歯科診療所は65,475か所(2025年12月末)勤務医で経験を積み、開業する人が多い
歯科医師は国家試験に合格したあと、1年以上の臨床研修を受けます

歯学科の卒業生のほとんどは、国家試験に合格して歯科医師になり、1年以上の臨床研修を受けたあと、歯科医院や病院で働きます。勤務医として経験を積み、30代から40代で自分の医院を開業する人が多いのが歯科の特徴です。そのほか、大学に残って研究や教育を続ける人、行政や自衛隊で働く人、歯科材料メーカーに進む人もいます。口腔保健系の学科の卒業生は、歯科衛生士や歯科技工士として歯科医院、病院、行政、企業で働きます。

歯科医院の勤務医 ›臨床研修を終えた歯科医師が最も多く進む道です。院長のもとで治療を担当しながら、虫歯、歯周病、入れ歯、抜歯など幅広い治療の経験を積みます。開業医(院長) ›勤務医として経験と資金をためてから、自分の歯科医院を開きます。全国の歯科診療所は約6.5万か所(2025年12月末で65,475か所)あり、歯科医師の多くが診療所で働いています。治療と経営の両方を担います。大学病院・総合病院の歯科口腔外科 ›難しい症例の治療や、口腔がん、あごの骨折の手術などを担当します。大学病院では研究や学生の教育も仕事に含まれ、大学院に進んで専門医を目指す人が多いです。行政・公務員(保健所、厚生労働省、自衛隊など) ›地域の歯科健診の計画や、歯科医療の制度づくりに関わります。自衛隊の歯科医官として、隊員の歯の健康を守る道もあります。人数は多くありません。歯科材料・医療機器メーカー ›インプラント、歯科用の材料、治療用のいすや機械を作る会社で、開発や学術の担当として働きます。たとえば、新しい材料を歯科医師に説明する仕事です。人数は少なめです。
歯科衛生士・歯科技工士(口腔保健系学科)口腔保健系の学科の卒業生が進む道です。歯科医院や病院のほか、保健所、介護施設、企業の研究部門などで働きます。

もっと知りたい人へ

歯学部と医学部のちがい

歯学部と医学部は、どちらも6年制で、解剖学や生理学などの基礎医学を同じように学びます。いちばんの違いは、医学部が全身の病気を対象にするのに対し、歯学部は口とその周りに集中し、その分だけ手の技術の練習に長い時間を使うことです。医学部の卒業生は臨床研修のあとに内科や外科などの専門を選びますが、歯学部の卒業生は最初から自分の手で治療の全体を行うことが多いです。また、医師は病院で働く人が多いのに対し、歯科医師は診療所で働く人が多く、開業する人の割合が高いのも違いです。

入試の難しさ

一般的には医学部のほうが入試の難易度は高い傾向にあります。ただし、歯科医師国家試験の合格率は約6割で、医師国家試験(約9割)より低いので、入学後の勉強の大変さは決して軽くありません。

口と全身のつながり

歯周病が糖尿病を悪化させること、口の中の細菌が肺に入ると肺炎の原因になることなど、口の健康は全身とつながっています。そのため、歯学部でも内科や全身の病気を学ぶ授業があり、医師と協力する場面も増えています。

国家試験と大学選び

歯学部を選ぶときに必ず確かめたいのが、大学ごとの国家試験合格率と、6年間で卒業できる学生の割合です。歯科医師国家試験の合格率は、2026年の第119回で全体61.9%、新卒者80.2%でした。国立大学の平均は全体73.9%、私立大学は全体58.7%で、大学による差が大きくなっています。合格率が高く見えても、成績の悪い学生を卒業させないことで数字が上がっている場合もあるので、入学者のうち6年で国家試験に合格した人の割合(ストレート合格率)も見ると、より実態に近くなります。

学費の差

国立大学の学費は6年間で約350万円ですが、私立大学は大学によって2,000万円前後から3,000万円を超えるところまであります。留年すると1年分の学費がさらにかかるので、学費だけでなく進級のしやすさも含めて考えることが大切です。

既卒者の合格率

一度国家試験に落ちて翌年以降に受け直す人の合格率は、第119回で27.8%と低くなっています。新卒のときに合格することが非常に重要で、6年生の1年間を国家試験対策に集中する理由になっています。

向いている人

歯学部に向いているのは、細かい作業を集中して続けられる人です。ただし、入学の時点で器用である必要はなく、何百時間もの実習で上達していきます。むしろ大切なのは、うまくできないときにくり返し練習できる粘り強さです。また、歯科医師は患者さんと直接向き合う仕事なので、痛みや不安を抱えた人にやさしく説明できるコミュニケーション力も必要です。将来開業を考えるなら、お金の管理やスタッフをまとめる力も求められます。

こんな経験が生きる

たとえば、プラモデル作り、裁縫、絵を描く、楽器を弾くなど、指先を使う趣味がある人は、実習で手を動かす感覚に慣れやすいです。部活で後輩に教える役をしていた人は、患者さんへの説明で力を発揮できます。

向いていないかもしれない人

血を見るのがどうしても苦手な人や、長い時間同じ姿勢で細かい作業をするのがつらい人は、オープンキャンパスの実習体験などで実際の雰囲気を確かめてから決めるのがおすすめです。

高校生のうちに(文理・受験科目)

歯学部は理系の学部で、入試では数学、理科(化学と生物、または化学と物理が多い)、英語が中心です。国立大学では共通テストで5教科7科目程度が必要になり、二次試験で数学・理科・英語が課されるのが一般的です。私立大学は、英語、数学、理科1科目の3教科と面接で選ぶところが多いです。入学後は生物の知識が多く必要になるので、受験で物理を選んだ人も生物の基礎を学んでおくと楽になります。

面接対策

多くの歯学部では面接があり、なぜ医師ではなく歯科医師なのか、どんな歯科医師になりたいのかを聞かれます。自分が通った歯医者での経験や、訪問歯科のニュースなど、具体的なきっかけを考えておきましょう。

オープンキャンパス

多くの歯学部で、模型の歯を削る体験や型取りの体験ができます。在学生に、留年の多さ、実習の忙しさ、6年間にかかる学費を具体的に聞いてみると、パンフレットにない本当の姿がわかります。

よくあるギャップ

入学前に多いイメージは「歯の治療を学ぶ」ことですが、最初の2年ほどは基礎医学の講義と暗記が中心で、歯を削る実習はなかなか始まりません。また、手の技術の練習が予想以上に長く、放課後まで実習室に残る日が続きます。歯科医師になれば高収入というイメージもありますが、勤務医の給料は職場によって差が大きく、開業しても患者さんが集まらなければ経営は苦しくなります。歯科医院の数が多い地域では競争も激しいので、卒業後の働き方まで考えておくことが大切です。

暗記の多さ

解剖学では骨や筋肉、神経の名前を数百個単位で覚えます。さらに国家試験の範囲は基礎から臨床まで広く、6年間を通じて覚える量は非常に多いです。

歯科医師の需要

都市部では歯科医院が多く競争がある一方、高齢化によって訪問歯科や、病気を持つ高齢者の治療のニーズは増えています。地域や分野によって、歯科医師が足りない場所もあります。

これからの歯科医療

日本では、子どもの虫歯は昔に比べて大きく減りました。その一方で、高齢者が自分の歯を多く残すようになり、歯周病の治療や、飲み込む力を保つためのケア、訪問歯科診療の重要性が増しています。また、デジタル技術の導入も進んでいて、口の中をスキャナーで読み取り、コンピュータで設計したかぶせ物を機械で削り出す治療が広がっています。これからの歯科医師には、虫歯を削って詰める技術だけでなく、全身の健康を見ながら口の働きを守る力が求められます。

8020運動

80歳になっても自分の歯を20本以上保とうという運動です。この運動が始まった1989年ごろに比べ、20本以上の歯を持つ高齢者の割合は大きく増えました。歯が残るほど、歯周病の管理や、残った歯を守る治療が大切になります。

デジタル歯科

たとえば、ねんどのような材料で型を取るかわりに、小さなカメラで口の中を撮影して立体データにする口腔内スキャナーが広がっています。データをもとに3Dプリンターや削り出しの機械でかぶせ物を作るので、歯科技工の仕事のしかたも変わってきています。

よくある質問

歯学部の勉強はどのくらい大変ですか?

とても大変です。基礎医学の暗記に加えて、模型を使った実習で手の技術も身につける必要があります。進級試験、共用試験、卒業試験、国家試験と関門が多く、留年する学生も一定数います。

不器用でも大丈夫ですか?

大丈夫です。手の技術は6年間の実習と、卒業後の臨床研修でくり返し練習して身につけるものです。最初から器用な人は少なく、練習の量で上達していきます。

歯学部は何年で卒業しますか?

歯学科は6年制です。卒業後に国家試験に合格し、さらに1年以上の臨床研修を受けます。口腔保健系の学科は4年制です。

国立と私立ではどのくらい学費がちがいますか?

国立は6年間で約350万円です。私立は大学によって2,000万円前後から3,000万円を超えるところまであります。特待生制度や奨学金、地域で働くことを条件にした修学資金がある大学もあります。

歯学部を出たら必ず開業するのですか?

開業しなくても働けます。勤務医のまま専門分野を深める人、大学病院で研究や教育を続ける人、行政で働く人もいます。開業するかどうかは、勤務医として経験を積んでから決める人がほとんどです。

歯科医師は余っているって本当ですか?

地域によって事情がちがいます。都市部では歯科医院が多く競争がありますが、訪問歯科や地方では歯科医師が足りないところもあります。高齢化によって、新しい分野のニーズは増えています。

文系でも歯学部に入れますか?

ほとんどの歯学部の入試では数学と理科が必要なので、高校では理系を選ぶのが基本です。入学後も生物や化学の知識を多く使います。

女子学生は多いですか?

多いです。2022年末の統計で歯科医師の約26%が女性で、若い世代ほど女性の割合が高くなっています。勤務時間を決めて働きやすいこともあり、出産後に復帰する人も多いです。

歯科衛生士になりたい場合も歯学部に行くのですか?

歯科衛生士は、専門学校や短大でも目指せます。一部の大学には4年制の口腔保健系の学科があり、そこでは研究や行政、教育の道にも進みやすくなります。

途中で医学部に移ることはできますか?

歯学部から医学部へそのまま移る制度は基本的にありません。医学部を目指す場合は、あらためて医学部の入試を受ける必要があります。入学前によく考えて選びましょう。

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