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虫歯を削るだけじゃない、「食べる・話す・笑う」を一生守る口の専門医

歯科医師

歯科医師は、歯や歯ぐき、あご、舌など、口の中とその周りの病気を診断し、治療し、予防する国家資格の仕事です。たとえば、虫歯を削って詰め物をする、歯周病の歯ぐきをきれいにする、親知らずを抜く、入れ歯やインプラントで失った歯を補う、歯並びを矯正する、といった治療をすべて自分の手で行います。歯学部(6年制)を卒業して歯科医師国家試験に合格し、1年以上の臨床研修を受けると一人前として働けます。歯科医師の半分以上は自分の歯科医院を経営する「開業医」で、医療者であると同時に経営者でもあるのが大きな特徴です。

平均年収の目安約1,136万円勤務する歯科医師の平均の目安研修中は低めで、勤務医で500万〜1,000万円前後、開業して軌道に乗れば1,000万円を大きく超える人もいる一方、赤字に苦しむ医院もあります
なるまでの難しさ★★★★★歯学部への入学は国公立なら医学部の次くらいに難しく、私立は学費が6年で2,000万円を超える大学もあります。さらに歯科医師国家試験の合格率は全体で約6割(2026年実施の第119回は61.9%)と、医療系の国家試験の中では低めで、卒業できずに留年する学生も少なくありません。
決めどき理系が中心

高校1〜2年で理系を選ぶとき(数学・理科2科目が必要な大学が多い)

どんな職種がある?

押すと、その職種の仕事内容・必要な力・キャリアが見られます。

歯科医師の年収と昇進の流れ

大学1〜6年、18〜24歳

講義と模型実習で知識と手の技術を身につけ、共用試験に合格すると患者さんの治療に参加します。国家試験に合格することが次の段階に進む条件です。

臨床研修歯科医200〜450万円
1年目、24〜25歳

指導医のもとで基本的な治療を一つずつ経験します。研修施設によって給料の差が大きく、大学病院は低め、研修を行う歯科医院では高めの例があります。1年以上の研修を修了すると次に進めます。

勤務医(若手)400〜700万円
2〜5年目、25〜30歳

虫歯、根の治療、抜歯、入れ歯などをひと通り一人で行います。患者さんから指名されるようになり、歩合給が増えていくのがこの時期です。

勤務医(中堅)・分院長600〜1,200万円
5〜10年目、30〜35歳

難しい治療や自費診療も任され、医療法人では分院長として医院全体の運営を担当することもあります。専門医・認定医を取ったり、開業資金を準備したりして次の道を選びます。

開業医(院長)500〜2,000万円
30代半ば〜、開業1〜5年

治療に加えて、スタッフの採用、お金の管理、集患などの経営を担います。開業直後は借入金の返済があり収入が安定しないこともあります。患者さんが定着すると収入が伸びます。

医療法人理事長・地域の中心1,000〜3,000万円
40代〜60代

医院を医療法人にして分院を増やしたり、地域の歯科医師会で学校歯科医や健診の仕組みを支えたりします。後継者を育てて医院を引き継ぐことも大切な仕事になります。

年収は目安です。会社や地域、本人の働き方で大きく変わります。

働き方で何が違う?

勤務医(歯科医院・医療法人)年収400万〜1,000万円程度が多い(求人などからの目安)

他の人が経営する歯科医院に雇われて働きます。経営のことを気にせず治療に集中でき、休みや勤務時間も比較的はっきりしています。たとえば、週4日勤務にして残りの日は勉強会や子育てにあてる働き方もできます。給料は固定給と歩合給を組み合わせた形が多く、腕が上がるほど収入が増えます。いずれ開業するための修業期間として働く人も多いです。

良いところ借金や経営の心配がなく、治療に集中できます。いろいろな医院で経験を積めます。

大変なところ収入の上限は開業医より低めです。医院の方針に合わせる必要があり、自分の理想の治療ができないこともあります。

開業医(院長)数百万〜数千万円と幅が非常に大きい

自分で歯科医院を開き、治療と経営の両方を担います。場所選び、内装、機械の購入、スタッフの採用までを自分で決めます。開業には数千万円かかり、多くの人が銀行から借り入れをします。患者さんが集まれば勤務医時代の何倍もの収入になる一方、競合の多い地域では患者さんが集まらず苦しむこともあります。自分の理想の医療を形にできる自由が最大の魅力です。

良いところ治療方針も働き方も自分で決められます。成功すれば高い収入が得られます。

大変なところ借入金の返済、スタッフの管理、集患など経営の責任をすべて負います。病気で休むと医院が止まります。

大学病院・総合病院の歯科勤務医の平均よりやや低めのことが多い

大学病院や総合病院の歯科口腔外科で働きます。町の医院から紹介される難しい患者さんや、全身の病気を持つ患者さんを診ることが多く、医師や看護師とチームで治療します。大学病院では研究や学生の教育も仕事に含まれます。給料は町の医院より低めのことが多く、アルバイト診療で補う人もいます。最先端の医療や専門分野を深めたい人に向いた働き方です。

良いところ難しい症例や手術を経験でき、専門医の資格を取りやすい環境です。

大変なところ給料は低めで、研究や教育も加わり忙しくなりがちです。ポストが限られています。

行政・自衛隊・企業公務員の給料表に沿う(年齢とともに上がる)

厚生労働省や保健所の歯科医師、自衛隊の歯科医官、歯科材料メーカーの社員などとして働きます。患者さんを直接治療する時間は少なくなりますが、地域や国全体の口の健康を守る仕組みづくりに関われます。公務員なら給料は給料表に沿って安定して上がります。

良いところ安定した給料と休みがあり、社会全体に影響する仕事ができます。

大変なところ臨床の腕を磨く機会は少なくなります。転勤や異動があります。

代表的な会社・職場

一般歯科医院医療法人国立大学病院私立大学病院病院歯科国の行政地方の行政防衛省歯科関連企業
町の歯科診療所(個人開業)一般歯科医院

院長一人と歯科衛生士・歯科助手数人で運営する医院です。全国に約6.5万ある歯科診療所の多くがこの形です。

医院ごとに異なる
医療法人の歯科医院グループ医療法人

複数の歯科医院を経営し、若手の勤務医を多く採用しています。分院長を任されるキャリアがあります。

医院ごとに異なる
東京科学大学病院(歯科)国立大学病院

旧東京医科歯科大学の流れをくむ大学病院で、歯科の専門外来や研修を行っています。

国立大学の給与規程による
大阪大学歯学部附属病院国立大学病院

歯学部の附属病院として、難しい症例の治療、研修歯科医の教育、研究を行っています。

国立大学の給与規程による
日本歯科大学附属病院私立大学病院

私立の歯科大学の附属病院で、専門外来や研修歯科医の受け入れを行っています。

大学の規程による
総合病院の歯科口腔外科病院歯科

がん治療中の患者さんの口のケアや、親知らずの難しい抜歯、口の手術を担当します。

病院の規程による
厚生労働省 医政局歯科保健課国の行政

歯科医療の制度、歯科医師の国家試験や研修のルールづくりを担当します。歯科医系技官が働いています。

国家公務員の給料表による
保健所・市町村保健センター地方の行政

乳幼児健診での歯科検診や、地域の虫歯予防の計画づくりを担当します。

地方公務員の給料表による
自衛隊(歯科幹部)防衛省

自衛隊員の歯の健康を守る歯科医官として、基地や病院で診療します。

自衛官の給料表による
歯科材料・機器メーカー歯科関連企業

詰め物の材料、治療用のいす、インプラントなどを作る会社です。歯科医師が学術担当や開発で働くことがあります。

会社ごとに異なる

どうやって稼いでいる?

例:虫歯の治療で5,000円分の治療をしたら 1,500円 3,500円 窓口で払う 3割負担の場合 保険の側が払う 毎月まとめて請求 歯科医院 収入の柱は保険診療の診療報酬 保険診療 虫歯・根の治療 抜歯・保険の入れ歯 値段は国が 「点数」で決める 自費診療 インプラント・矯正 セラミックなど 値段は医院が 自由に決める どの医院も同じ値段 1本数十万円の例も 定期健診・クリーニング 3〜6か月ごとに長く通ってもらえる 保険診療で患者さんを集めながら 自費診療をどれだけ増やすかが経営のかぎ
学校の歯科検診を担当する学校歯科医や、訪問歯科の収入もあります

歯科医院の収入の大部分は、患者さんの治療に対して支払われる「診療報酬」です。日本では、ほとんどの治療に健康保険が使え、患者さんは窓口で治療費の1〜3割だけを払い、残りは健康保険組合などから医院に支払われます。たとえば、虫歯の治療で合計5,000円分の治療をしたら、中学生(3割負担の場合)は窓口で1,500円を払い、残りの3,500円は後から保険の側が医院に払う、という仕組みです。治療ごとの値段は国が「点数」で決めているので、どの医院でも同じ治療なら同じ値段です。一方、インプラントや矯正、白いセラミックのかぶせ物などは保険がきかない「自費診療」で、医院が値段を自由に決められます。開業医にとっては、保険診療で患者さんの数を確保しながら、自費診療をどのくらい増やすかが経営の大きなポイントになります。

1
保険診療の診療報酬

虫歯の治療、根の治療、抜歯、保険の入れ歯などの治療費です。患者さんの窓口負担と、毎月まとめて請求する保険からの支払い(レセプト請求)の2つから入ります。歯科医院の収入の柱です。

2
自費診療

インプラント、矯正、セラミックのかぶせ物、ホワイトニングなど、保険がきかない治療です。たとえば、インプラントは1本数十万円かかることが多く、医院ごとに値段がちがいます。売上は大きいですが、説明に時間がかかり、トラブルを防ぐ丁寧な対応が必要です。

3
定期健診・予防(メンテナンス)

3〜6か月ごとのクリーニングや健診です。たとえば、虫歯がなくても学校の長期休みに歯医者で歯石を取ってもらうのがこれにあたります。歯科衛生士が中心に担当し、患者さんが長く通い続けてくれるので、医院の安定した収入になります。

4
訪問歯科

介護施設や自宅への訪問診療です。移動に時間がかかる分、保険で訪問のための加算が決められています。高齢化で需要が伸びている分野です。

5
学校歯科医・健診などの委託

学校の歯科検診を担当する「学校歯科医」や、市町村の乳幼児健診、企業の歯科健診などを引き受けて、自治体や学校から報酬を受け取ります。金額は大きくありませんが、地域とのつながりにもなります。

入ってからどうなっていく?

歯学部の6年間 1年 2年 3年 4年 5年 6年 基礎 人体のしくみ 専門科目 模型で実習 臨床実習 実際の患者さん 共用試験 国家試験 合格率61.9% 臨床研修(1年以上) 法律で決まった研修。指導医のもとで 勤務医(2〜5年目) ひと通りの治療を一人でこなす 分院長・専門医(5〜10年目) 開業の準備を始める人も 開業する 数千万円かけて 院長・経営者に 勤務医を続ける 専門の腕を 極める 大学に残る 研究と教育 教授を目指す 歯科医師の半分以上は開業医 医療者であり、経営者にもなる
国家試験の合格率61.9%は第119回(2026年実施)の全体の数字で、新卒者は80.2%です
大学1〜6年歯学部で学ぶ1〜2年で一般教養と人体の基礎(解剖、生理、生化学)を学び、3〜4年で歯科の専門科目と模型を使った実習をします。4年生ごろに共用試験(CBTとOSCE)に合格すると、5〜6年で附属病院で実際の患者さんを診る臨床実習に進みます。6年の終わりに国家試験を受けます。
1年目(24〜25歳ごろ)臨床研修歯科医国家試験合格後、大学病院や指定された歯科医院で1年以上の臨床研修を受けることが法律で義務づけられています。指導医のもとで、基本的な治療を一つずつ自分でできるようにします。
2〜5年目勤務医として腕を磨く歯科医院に勤めるか、大学の医局や大学院に残ります。勤務医は、虫歯・根の治療・入れ歯・抜歯などをひと通り一人でこなせるようになることが目標です。休みの日に有料のセミナーに通って、インプラントや矯正などの技術を学ぶ人も多いです。
5〜10年目(30代前半)分院長・専門医・開業準備複数の医院を持つ医療法人では、分院長として1つの医院を任されることがあります。専門医や認定医の資格を取る人、開業する場所を探して銀行から資金を借りる準備を始める人もいます。
30代半ば〜40代開業して院長になる歯科医院の開業には、内装、治療用のいす(ユニット)、レントゲン機器などで数千万円かかるのが一般的です。院長は治療をしながら、スタッフの採用や教育、お金の管理、集患などの経営もすべて担います。勤務医のまま専門性を極める人や、大学で教授を目指す人もいます。
50代以降医院を育てる・引き継ぐ医院を医療法人にして分院を増やす人、地域の歯科医師会の役員として学校歯科医や健診の仕組みを支える人もいます。後継者の子どもや若い歯科医師に医院を引き継ぐ「事業承継」を考える時期でもあります。

虫歯の患者さんが治るまで

1 受付・問診 歯科医師 どこが痛いか、持病や薬も 2 診察とレントゲン 歯科医師 虫歯の深さを確かめる 3 治療計画の説明 歯科医師 方法・回数・費用、保険か自費か 4 麻酔と処置 歯科医師 削る。神経まで進めば根の治療 5 型取りと技工 歯科技工士 詰め物を作る。1〜2週間ほど 6 装着と調整 歯科医師 かみ合わせを細かく合わせる 7 定期健診へ 歯科衛生士 3〜6か月ごとに再発を防ぐ 治したあとも、健診で再発を防ぐ
右の札は、その段階を主に担当する人です
1
受付・問診

患者さんがどこが痛いのか、いつからかを聞きます。持病や飲んでいる薬もここで確認します。

2
診察とレントゲン

口の中を見て、レントゲンで虫歯の深さを確かめます。たとえば、神経まで届いているかどうかで治療の方法が変わります。

3
治療計画の説明

写真やレントゲンを見せながら、治療の方法、回数、費用を説明します。保険と自費の選択肢があればここで相談します。

4
麻酔と処置

必要なら麻酔をして、虫歯を削り取ります。神経まで進んでいれば根管治療を数回に分けて行います。

5
型取りと技工

詰め物やかぶせ物が必要なら歯の型を取り、歯科技工士に作ってもらいます。完成まで1〜2週間ほどかかります。

6
装着と調整

できあがった詰め物を歯につけ、かみ合わせが高すぎないか細かく調整します。

7
定期健診へ

治療が終わったら、3〜6か月ごとの健診とクリーニングで再発を防ぎます。歯科衛生士が中心になって見守ります。

歯科医師国家試験

合格率61.9%(第119回、2026年実施。新卒者は80.2%)
勉強時間の目安歯学部6年間の学習が前提で、6年生の1年間は国家試験対策に集中するのが一般的です
受験資格大学の歯学部(6年制)を卒業した人、または卒業見込みの人(共用試験に合格していることが前提)
合格率は全体で約6割と、医師(約9割)や薬剤師(約7割)と比べても低めです。とくに一度落ちて受け直す人の合格率が低く、浪人するほど合格が難しくなる傾向があります。分野ごとに合格の基準点があるため、得意分野で稼いで苦手分野をカバーすることができません。そのうえ大学の卒業試験も厳しいので、6年生の1年間はほぼ勉強漬けになるのが普通です。
試験科目(押すと中身が見られます)
合格までの流れ
  1. 共用試験(4年生ごろ)CBTとOSCEに合格し、臨床実習に進みます。
  2. 臨床実習(5〜6年生)附属病院で実際の患者さんの治療に参加します。
  3. 卒業試験(6年生の秋〜冬)大学の卒業試験に合格して、国家試験の受験資格を確実にします。
  4. 国家試験(1月末〜2月初め)2日間で360問を解きます。
  5. 合格発表(3月)合格すると歯科医籍に登録され、歯科医師免許が与えられます。
  6. 臨床研修(4月から1年以上)研修を修了すると、自分で医院を開設できます。

歯科医師のある1日

8:30

医院に着き、歯科衛生士や歯科助手と朝礼をします。今日の予約表を見て、難しい治療の段取りを確認します。

9:00

診療開始です。たとえば、虫歯の治療、入れ歯の調整、子どもの定期健診などが15〜30分刻みで続きます。

10:30

抜歯や根の治療など、時間のかかる処置をまとめて行います。麻酔が効くのを待つ間に、別の患者さんのレントゲンを確認します。

13:00

昼休みです。昼食をとりながら、歯科技工所から届いたかぶせ物の出来を確かめたり、業者と材料の相談をしたりします。

14:30

午後の診療を再開します。学校帰りの子どもや仕事帰りの大人が増える時間帯に向けて、予約が詰まっていきます。

16:00

新しい患者さんに、レントゲンや口の中の写真を見せながら治療計画を説明します。自費の治療の場合は、費用や期間の説明にも時間をかけます。

18:30

最後の患者さんの治療です。仕事帰りの人のために、19時や20時まで診療する医院もあります。

19:30

カルテの記入とスタッフとの打ち合わせをします。院長なら、月末にはレセプト(保険請求)の確認や売上のチェックもします。

20:30

帰宅します。勉強会の日は、オンラインで新しい治療法の講習を受けることもあります。

もっと知りたい人へ

そもそも歯科医師とは

歯科医師は、歯科医師法という法律で、歯科医業(歯の治療など)を行うことが認められた国家資格です。歯科医師でない人が歯を削ったり抜いたりすることは法律で禁止されています。医師と歯科医師は別の資格で、医師は全身の病気を、歯科医師は口とその周りの病気を担当します。ただし口の健康は全身とつながっていて、たとえば歯周病は糖尿病を悪化させること、口の中の細菌が肺に入ると肺炎の原因になることが知られています。全国には歯科診療所が約6.5万か所(2025年12月末で65,475か所)あり、まちのいたるところで見かけるのはこのためです。

医師とのちがい

医師は医学部、歯科医師は歯学部と、入り口から別々です。医師が口の病気を診ることもありますが、歯を削る・入れ歯を作るといった専門的な治療は歯科医師の仕事です。たとえば、口の中にがんができたときは、医師と歯科医師(口腔外科医)が協力して治療します。

歯科医療のチーム

歯科医院は歯科医師だけでは回りません。歯石取りや予防処置をする歯科衛生士、詰め物や入れ歯を作る歯科技工士、受付や器具の準備をする歯科助手がチームになって働きます。たとえば、歯医者で歯のクリーニングをしてくれる人の多くは歯科医師ではなく歯科衛生士です。

歯科医師の数と年齢

2022年末の統計では、歯科医師は105,267人で、その約86%が歯科診療所で働いています。医療施設で働く歯科医師の平均年齢は53.0歳、女性の割合は約26%です。病院で働く歯科医師の平均年齢は39.3歳と若く、若手は大学病院などで経験を積んでから診療所に移る流れが見えます。

なるためのルート

歯科医師になる道は、基本的に一つだけです。全国に29ある歯学部(国立11、公立1、私立17)のどれかに入学して6年間学び、卒業見込みの状態で国家試験を受けます。合格したら、1年以上の臨床研修を受けてはじめて、自分で医院を開くことができます。医学部と同じく、学費の差が大きく、国立は6年で約350万円ですが、私立は大学によって2,000万円〜3,000万円以上かかります。奨学金や地域で働く条件付きの修学資金を利用する人もいます。

  1. 高校で理系を選ぶ多くの歯学部で数学と理科2科目(化学・生物または化学・物理)が必要です。英語も配点が高い大学が多いです。
  2. 歯学部に合格する国公立は共通テストと二次試験、私立は大学独自の試験で選ばれます。面接で歯科医師を目指す理由を聞かれる大学がほとんどです。
  3. 6年間で知識と技術を学ぶ模型や人工の歯を使った実習で、削る・詰める・型を取るといった手の技術を何百時間も練習します。
  4. 共用試験に合格する4年生ごろにコンピューター試験(CBT)と実技試験(OSCE)を受けます。合格すると「スチューデント・デンティスト」として、指導のもとで患者さんの治療に参加できます。
  5. 歯科医師国家試験に合格する6年生の1月末〜2月初めに2日間の試験を受け、3月に合格発表があります。
  6. 臨床研修を1年以上受ける大学病院や研修施設で、指導医とともに実際の診療を行います。終わると、自分で医院を開設できる条件がそろいます。
国立と私立の選び方

国立の歯学部は学費が安い一方、入試は共通テストで高い得点が必要です。私立は学費が高いですが、大学によっては入試の倍率が落ち着いているところもあります。私立の中には国家試験の合格率が大きく下がる大学もあるので、大学ごとの合格率と留年の状況を必ず調べましょう。

再受験や社会人入学

一度ほかの学部を卒業したり社会に出たりしてから歯学部に入り直す人も一定数います。学士編入の制度を設けている大学もあります。たとえば、薬学部や理工学部を出てから歯科医師を目指す人もいます。

試験・選考の詳細

歯科医師国家試験は、厚生労働省が年1回、1月末〜2月初めの2日間で行います。問題は360問で、必修問題80問、一般問題180問、臨床実地問題100問に分かれています。臨床実地問題は、患者さんの写真やレントゲンを見て診断や治療を答える問題で、1問3点と配点が大きいです。2026年に行われた第119回では、受験者2,837人のうち1,757人が合格し、合格率は61.9%でした。新卒者に限ると80.2%で、浪人して受け直す人の合格率が低いのが特徴です。

合格の基準

合格するには、総論・各論の分野ごとに決められた点数を超え、さらに必修問題で8割程度の点数を取る必要があります。第119回の場合、必修問題は77点満点中62点以上が必要でした。どれか一つでも足りないと不合格になるので、苦手分野を作らないことが大切です。

大学の中での関門

歯学部では、国家試験より前に、学年ごとの進級試験、共用試験、卒業試験があります。大学によっては卒業試験が厳しく、国家試験を受けさせてもらえない学生が出ることもあります。たとえば、6年生の秋の卒業試験に落ちると、もう1年6年生をやり直すことになります。

年収のリアル

勤務する歯科医師の平均年収の目安は、2024年の国の統計で約1,136万円です。ただしこの数字は調査の対象人数が少なく、年によって大きく動くので、幅を持って見る必要があります。勤務医の求人では、経験の浅い人で年収400万〜600万円、経験を積んだ人で700万〜1,000万円程度の例がよく見られます。開業医は、医院の売上から家賃、スタッフの給料、材料代、機械のローンなどを引いた残りが収入になるため、数千万円の人から、勤務医より少ない人まで大きな差があります。

歩合制という給料の仕組み

歯科医院の勤務医には、固定給に加えて、自分が担当した治療の売上の一定割合をもらう「歩合制」が多くあります。たとえば、ある月に自分の治療の売上が300万円で歩合が10%なら、30万円が上乗せされる、という形です。腕が上がって患者さんが増えるほど給料が増えます。

開業にかかるお金

開業には、内装工事、治療用のいす(ユニット)、レントゲン、CT、消毒の機械などで数千万円が必要になり、多くの人が銀行から借り入れます。毎月の返済もあるので、患者さんが少ないと院長の手取りが勤務医より少なくなることもあります。逆に、人気の医院になれば勤務医時代の何倍もの収入になる可能性があります。

やりがい

歯科医師のやりがいは、治療の結果がすぐ目に見えることです。痛くて眠れなかった人の痛みをその日のうちに止めたり、前歯が欠けて人前で笑えなかった人がきれいな歯で笑えるようになったりします。入れ歯を作り直したお年寄りが「何年かぶりにおせんべいが食べられた」と喜んでくれることもあります。子どものころから定期健診に通う患者さんを、大人になるまで見守れるのも町の歯医者さんならではです。開業すれば、自分の考える理想の医院を作れる自由もあります。

手でつくる仕事の楽しさ

歯科治療は、ミリ単位の細かい手作業の連続です。うまく削れた、ぴったり合うかぶせ物が入った、という手応えは、ものづくりに近い楽しさがあります。プラモデルや手芸のように手を動かすのが好きな人には向いている面があります。

全身の健康を守る

口の健康は、食べる・話すだけでなく、全身の病気や認知機能とも関係があるとわかってきています。たとえば、訪問歯科で口の中をきれいにすると、高齢者の肺炎を減らせることが知られています。人の一生の健康を支える仕事だと実感できる場面が増えています。

大変なこと・きついこと

歯科医師は1日中前かがみで細かい作業を続けるので、腰や首、目に負担がかかります。患者さんは痛みや不安を抱えて来るので、治療中に気分が悪くなったり、思うように口を開けてくれなかったりすることもあります。また、全国の歯科医院の数が多く、地域によっては医院どうしで患者さんを取り合う状態になっています。開業医は治療だけでなく、スタッフの採用や退職、お金の管理、口コミ対策まで抱え込むので、経営のストレスも大きいです。自費診療では、高い費用を払った患者さんの期待に応えられないとトラブルになることもあります。

歯科医院の多さと競争

歯科診療所は全国に約6.5万か所あり、最近は少しずつ減っています。たとえば駅前に何軒も歯医者が並ぶ地域では、夜遅くまで開ける、子ども向けのキッズスペースを作るなど、各医院が工夫して患者さんを集めています。

学費と国家試験のプレッシャー

私立歯学部の学費は高く、留年すると1年分の学費がさらにかかります。国家試験の合格率も医療系の中では低めなので、学生時代から勉強のプレッシャーは大きいです。

向いている人

細かい作業を集中して続けられる人、手先が器用な人に向いています。ただし、最初から器用である必要はなく、6年間の実習で練習すれば上達します。むしろ大切なのは、怖がっている患者さんにやさしく説明できるコミュニケーション力です。また、開業を考えるなら、お金の計算やスタッフをまとめるリーダーシップも必要になります。新しい治療法や材料がどんどん出てくるので、卒業後も勉強を続けられる人に向いています。

こんな経験がある人は強い

たとえば、部活で後輩に教える役をしていた人、プラモデルや裁縫など細かい作業が好きな人、文化祭で模擬店のお金の管理をした人は、歯科医師の仕事のどこかに通じる力を持っています。

向いていないかもしれない人

血を見るのがどうしても苦手な人や、長時間同じ姿勢でいるのがつらい人は、仕事の実際をよく調べてから決めましょう。歯科医院の見学や、職業体験で実際の診療室の雰囲気を知るのがおすすめです。

高校生のうちにできること

まずは、理系の科目、特に化学と生物をしっかり固めることが大切です。歯学部の入試では英語の配点も大きいので、英語も手を抜けません。歯科医院や歯学部のオープンキャンパスに参加して、模型を使った実習体験をしてみるのもおすすめです。自分の通っている歯医者さんに、なぜ歯科医師になったのかを聞いてみるのもよい方法です。気になる大学の国家試験合格率や学費を、大学のホームページで比べておきましょう。

オープンキャンパスで見るポイント

多くの歯学部では、高校生向けに歯を削る体験や型取りの体験を行っています。そのときに、在学生に留年の多さや勉強の量、6年間の学費を具体的に聞いてみると、パンフレットにない本当の姿がわかります。

手を動かす習慣

細かい作業に慣れておくと、大学の実習で役に立ちます。たとえば、絵を描く、楽器を弾く、料理で包丁を使うなど、指先を使う趣味は無駄になりません。

代表的な会社・職場

歯科医師の職場で最も多いのは町の歯科診療所で、そこには院長一人の小さな医院から、複数の分院を持つ医療法人グループまであります。次に多いのが大学病院の歯科や、総合病院の歯科口腔外科です。そのほか、国や自治体の保健行政、自衛隊の歯科医官、歯科材料メーカーなどで働く人もいます。大学病院は難しい症例や研究に関われる一方、給料は町の医院より低めのことが多いです。

大学病院と歯科医院のちがい

大学病院には、町の医院で治せない難しい患者さんが紹介されてきます。たとえば、全身の病気があって町の医院では抜歯が心配な人や、口腔がんの人です。一方、町の医院では、地域の人の日常的な口の悩みを長く診るのが中心です。

医療法人グループ

複数の医院を持つ医療法人では、若手の勤務医が多く、先輩から学ぶ環境が整っていることがあります。一方、売上目標が決められていることもあるので、働く前に条件をよく確認しましょう。

歯科医師の専門分野

歯科医師の中にも、得意分野や専門分野があります。代表的なのは、口腔外科、矯正歯科、小児歯科、歯周病、補綴(入れ歯やかぶせ物)、歯内療法(根の治療)、歯科麻酔、歯科放射線などです。それぞれに学会があり、一定の経験と試験で認定医や専門医の資格が取れます。町の医院の看板に「小児歯科」「矯正歯科」と書いてあるのは、その医院が力を入れている分野を示しています。専門を持つと、ほかの医院から患者さんを紹介してもらえるようになります。

補綴とインプラント

補綴とは、失った歯をかぶせ物や入れ歯、ブリッジで補う治療のことです。インプラントは、あごの骨にチタンなどのねじを埋めてその上に人工の歯をつける方法で、自費診療になるのが一般的です。たとえば、事故で前歯を失った人が、自分の歯のように見える歯を取り戻せます。

歯周病の専門家

歯周病は、歯を支える骨や歯ぐきが細菌で壊れていく病気で、大人が歯を失う大きな原因です。歯周病の専門家は、歯ぐきの手術や骨を再生させる治療も行います。

保険診療と自費診療

歯科治療には、健康保険が使える「保険診療」と、使えない「自費診療」があります。保険診療は値段が国で決められていて、患者さんの負担は1〜3割です。たとえば、奥歯の銀歯は保険がききますが、白いセラミックのかぶせ物は自費になることが多いです。自費診療は医院が自由に値段を決められるため、同じ治療でも医院によって値段が大きくちがいます。歯科医師は、それぞれの治療の良い点と悪い点、費用を正直に説明し、患者さんに選んでもらうことが求められます。

なぜ医院経営に関係するのか

保険診療は1回あたりの治療費が低めなので、たくさんの患者さんを診ないと医院の経営が成り立ちにくい面があります。自費診療は1件あたりの売上が大きいため、多くの医院が自費診療の割合を増やそうとしています。

保険で使える材料も広がっている

最近は、保険で使える白い材料の範囲が広がり、条件を満たせば奥歯にも白いかぶせ物(CAD/CAM冠)を使えるようになっています。保険のルールは2年ごとの診療報酬改定で変わるので、歯科医師は最新のルールを学び続けます。

よくある質問

歯学部の勉強はどのくらい大変ですか

とても大変です。暗記する量が多いうえに、模型を使った実習で手の技術も身につけなければなりません。進級試験や共用試験、卒業試験と関門が多く、留年する学生も少なくありません。

不器用でも歯科医師になれますか

なれます。手の技術は6年間の実習と卒業後の研修でくり返し練習して身につけるものです。最初から器用な人は少なく、練習量で上達していきます。

歯科医師は余っていると聞きますが本当ですか

地域によって事情がちがいます。都市部では歯科医院が多く競争が激しい一方、地方や訪問歯科の分野では歯科医師が足りないところもあります。高齢化で訪問歯科のニーズは増えています。

女性の歯科医師は多いですか

2022年末の統計で歯科医師の約26%が女性で、若い世代ほど女性の割合が高くなっています。勤務医として時間を決めて働く、出産後に復帰するなど、働き方を選びやすい面があります。

医学部と歯学部はどちらが難しいですか

一般的には医学部のほうが入試の難易度は高いです。ただし歯科医師国家試験は合格率が約6割で、医師国家試験より合格率が低いので、入学後の大変さは決して軽くありません。

開業しないといけないのですか

開業しなくても働けます。勤務医のまま専門分野を極める人、大学病院で研究や教育を続ける人、行政で働く人もいます。開業するかどうかは、勤務医として経験を積んでから決める人がほとんどです。

私立歯学部の学費はどのくらいですか

大学によって大きくちがい、6年間で2,000万円前後から3,000万円を超えるところまであります。国立は6年間で約350万円です。特待生制度や奨学金がある大学もあるので、よく比べましょう。

歯科医師と歯科衛生士はどうちがいますか

歯科医師は診断と治療(削る・抜くなど)を行い、歯科衛生士は歯石取りやフッ素塗布などの予防処置、歯みがき指導を行います。歯科衛生士は専門学校や大学で3〜4年学んで国家試験に合格してなる、別の資格です。

何歳くらいで開業する人が多いですか

研修や勤務医の経験を経て、30代前半〜40代で開業する人が多いです。開業には数千万円の資金が必要なので、経験と資金の準備ができてからになります。

この分野のことば

年収について:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」の歯科医師(企業規模10人以上)で、きまって支給する給与月約90.9万円×12か月+年間賞与約44.5万円から計算した目安です。調査対象の人数が少なく、年によって数百万円単位で上下します。自分の医院を経営する開業医はこの統計に入っていません。

数字はすべて公開データにもとづく目安です。出典は出典・サイトポリシーにまとめています。

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