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ペットのお医者さんは4割だけ。牛乳や食肉の安全も守る、人と動物の健康の番人

獣医師

獣医師は、動物の病気を診断して治療し、予防する国家資格の仕事です。犬や猫を診る動物病院のイメージが強いですが、実際には牛や豚、鶏を診る産業動物の獣医師、食肉や牛乳の安全を検査する公務員、鳥インフルエンザなどの伝染病を防ぐ仕事、薬や食品の会社での研究など、活躍の場はとても広いです。2024年の届出では、犬猫などの小動物診療に関わる獣医師は全体の約42%で、残りは産業動物診療、公務員、企業、大学などで働いています。大学の獣医学部(6年制)を卒業して獣医師国家試験に合格すると、獣医師になれます。

平均年収の目安約885万円雇われて働く獣医師の平均の目安新人の動物病院勤務で300万〜400万円台から始まることが多く、経験や職場で大きく変わります
なるまでの難しさ★★★★★獣医学部は全国17大学にしかなく、入学定員が少ないため、国公立は医学部・歯学部に近い難しさになります。国家試験の合格率は全体で約7割(2026年実施の第77回は68.4%)で、新卒者は約8割が合格しますが、一度落ちると合格率が大きく下がります。
決めどき理系が中心

高校1〜2年で理系を選ぶとき(獣医学部は理系の受験科目が必要)

どんな職種がある?

押すと、その職種の仕事内容・必要な力・キャリアが見られます。

獣医師の年収と昇進の流れ

獣医学生万円
大学1〜6年、18〜24歳

基礎から臨床まで獣医学を学び、共用試験に合格して臨床実習に進みます。国家試験に合格することが次に進む条件です。

新人獣医師・研修医300〜450万円
1〜3年目、24〜27歳

動物病院、農業共済組合、自治体などで、先輩の指導を受けながら基本的な診療を身につけます。一人で診察と簡単な手術ができるようになると次の段階です。

勤務獣医師(中堅)450〜650万円
4〜7年目、28〜31歳

難しい手術や夜間救急、後輩の指導も任されます。学会の認定医を取るなど、得意分野を持つと評価が上がります。

副院長・主任550〜800万円
8〜12年目、32〜36歳

病院の診療全体をまとめ、院長を支えます。公務員なら係長として現場の責任者になります。ここから開業や専門病院への転職を選ぶ人が多いです。

院長(開業)・課長600〜1,500万円
35歳〜

開業医は経営者として病院を運営し、勤務獣医師やスタッフを雇います。公務員は課長や所長として組織を率います。開業医の収入は患者さんの数で大きく変わります。

グループ経営・業界の中心1,000〜2,000万円
45歳〜

複数の病院を経営したり、地域の獣医師会で役員を務めたりします。後輩の育成や病院の承継も大切な仕事です。

年収は目安です。会社や地域、本人の働き方で大きく変わります。

働き方で何が違う?

勤務獣医師(動物病院)300万〜700万円程度が多い(求人などからの目安)

他の人が経営する動物病院に雇われて働きます。経営の心配をせずに診療に集中でき、さまざまな症例を経験できます。たとえば、夜間救急病院で働けば、短期間でたくさんの緊急症例を経験できます。給料は若いうちは低めですが、経験とともに上がります。開業前の修業として働く人も多いです。

良いところ診療に集中でき、先輩から学べます。病院を変えることでいろいろな経験ができます。

大変なところ若いうちの給料は医師や歯科医師より低めです。休日診療や夜間当番がある病院もあります。

開業獣医師(院長)数百万〜数千万円と幅が大きい

自分で動物病院を開き、診療と経営の両方を担います。場所選び、検査機器の購入、スタッフの採用など、すべて自分で決めます。開業には数千万円かかることが多く、借り入れが必要になります。飼い主さんから信頼される病院になれば、勤務時代を大きく上回る収入を得られる一方、近くに動物病院が多いと経営は大変です。

良いところ自分の理想の医療ができ、成功すれば高い収入が得られます。

大変なところ借入金の返済、スタッフ管理、集患などの経営の責任を負います。急患対応で休みが取りにくいこともあります。

産業動物獣医師(農業共済組合など)団体の給料表に沿う(地方公務員に近いことが多い)

牛や豚などの家畜を診ます。多くは農業共済組合や農協の職員として働き、担当地域の農家を回ります。人手不足の地域が多く、修学資金などで学生を支援する制度もあります。夜中のお産などで呼ばれることもありますが、農家さんと長く付き合いながら地域の畜産を支える仕事です。

良いところ人手不足で必要とされ、地域に根ざして働けます。大動物の診療技術が身につきます。

大変なところ夜間や休日の往診、雪道の運転など体力的にきつい場面があります。都市部には職場が少ないです。

公務員獣医師(国・都道府県)公務員の給料表に沿う

家畜保健衛生所、食肉衛生検査所、保健所、動物検疫所などで働きます。伝染病の予防や食の安全など、社会全体を守る仕事です。給料は給料表に沿って安定して上がり、休日も比較的とりやすいです。人手不足のため、初任給の調整や手当を設ける自治体が増えています。

良いところ安定した給料と休み、社会に大きく貢献できる仕事です。

大変なところ伝染病が発生すると長時間の対応が続くことがあります。異動で職場が変わります。

企業・研究機関会社や機関の給与体系による

動物用医薬品、人の製薬会社、ペットフード、ペット保険の会社や、大学・研究所で働きます。研究、開発、学術説明など、診療とはちがう形で獣医学の知識を生かします。

良いところ土日休みが多く、会社によっては高い給料が期待できます。

大変なところ診療の技術を磨く機会は少なくなります。採用の数が限られています。

代表的な会社・職場

一次診療(町の動物病院)複数病院を経営する法人二次診療(高度医療)大学病院(二次診療)産業動物診療地方公務員(農林)地方公務員(公衆衛生)国家公務員自治体・民間の施設民間企業
個人開業の動物病院一次診療(町の動物病院)

院長と数人の獣医師、動物看護師で地域のペットを診ます。獣医師の就職先として最も多い形です。

病院ごとに異なる
動物病院グループ複数病院を経営する法人

複数の動物病院を経営し、若手獣医師の教育制度を整えているところが多いです。

法人ごとに異なる
日本動物高度医療センター二次診療(高度医療)

町の動物病院から紹介された犬猫に、CT・MRI検査や高度な手術を行う専門病院です。

会社の給与体系による
大学附属の動物病院大学病院(二次診療)

獣医学部のある大学が運営し、難しい病気の診療、学生の実習、研修医の教育を行います。

大学の規程による
農業共済組合(NOSAI)産業動物診療

家畜共済を運営し、各地の家畜診療所で牛などの診療を行います。

団体の規程による
都道府県の家畜保健衛生所地方公務員(農林)

家畜の伝染病の予防や検査、発生時の防疫対応を担当します。

地方公務員の給料表による
食肉衛生検査所・保健所地方公務員(公衆衛生)

と畜場での食肉検査、飲食店の衛生監視、食中毒の調査を行います。

地方公務員の給料表による
農林水産省 動物検疫所国家公務員

空港や港で輸入される動物や畜産物を検査し、海外からの伝染病の侵入を防ぎます。

国家公務員の給料表による
動物園・水族館自治体・民間の施設

展示動物の健康管理、治療、繁殖を担当します。採用は少なめです。

運営者の規程による
動物用医薬品・製薬会社民間企業

動物用のワクチンや薬の開発、人の薬の安全性試験などで獣医師が働いています。

会社ごとに異なる
ペットフード・ペット保険会社民間企業

療法食の開発や、獣医師向けの学術情報の提供、保険金の審査などに獣医師が関わります。

会社ごとに異なる

どうやって稼いでいる?

動物には国の健康保険がない治療費は病院ごとに決まる 働く場所(獣医師の割合)お金を払う人 動物病院 約42% 犬・猫などのペット 飼い主さん全額を払うペット保険も 牛・豚の診療 約11% 農業共済組合など 家畜共済農家が入る国の保険 公務員 2割以上 食肉検査・伝染病予防 税金国や自治体の予算から 企業 薬・フード・保険の会社 会社の売上商品を売った収入から ペットの診療は約42%で、半分以上はそれ以外どこで働くかで、お金の流れがちがう
割合は2024年の届出のものです

獣医師の働き方によって、お金の流れは大きくちがいます。ペットの動物病院には、人間のような国の健康保険がありません。たとえば、犬が骨折して手術すると、治療費は動物病院が自由に決めた値段で、飼い主さんが全額を払います。そのため、ペット保険に入っている飼い主さんも増えています。家畜の診療では、農家が加入する国の農業保険(家畜共済)から治療費の多くが支払われる仕組みがあります。公務員の獣医師は税金から給料が払われ、企業の獣医師は会社の売上から給料が払われます。

1
ペットの診療費(自由診療)

診察料、検査料、手術料、入院料などを飼い主さんが払います。人間の病院のような国の決まった値段はなく、病院ごとに値段を決めています。たとえば同じワクチンでも、病院によって数千円の差があることがあります。

2
ペット保険

飼い主さんが保険会社に毎月保険料を払い、治療費の5割や7割などを保険会社が負担する仕組みです。病院の窓口で保険分を差し引いて払える場合もあります。

3
予防・物販

ワクチン、フィラリアやノミ・ダニの予防薬、療法食(病気の動物用のフード)の販売です。毎年決まった時期に来院してもらえるので、動物病院の安定した収入になります。

4
家畜共済(農業保険)

農家が加入する国の保険制度で、牛などが病気になったときの治療費を補います。産業動物の獣医師の多くは、この制度を運営する農業共済組合で働いています。

5
公務員の給料(税金)

家畜保健衛生所や食肉衛生検査所、保健所の獣医師の給料は、国や自治体の予算から払われます。食べ物の安全や伝染病の予防は、社会全体の利益になるからです。

6
企業の売上

動物用医薬品、ペットフード、ペット保険などの会社は、商品やサービスを売った収入から獣医師の給料を払います。

入ってからどうなっていく?

大学1〜6年獣医学部で学ぶ解剖学、生理学、病理学、微生物学などの基礎を学び、牛や馬の扱い方、手術の基本も実習で身につけます。4年生ごろに共用試験(vetCBT・vetOSCE)を受け、5〜6年で大学の動物病院での臨床実習や研究室での卒業研究に取り組みます。
1〜3年目(24〜27歳)新人獣医師動物病院、農業共済組合、自治体などに就職します。獣医師法では、診療に従事する獣医師は6か月以上の臨床研修を受けるよう努めることとされています。先輩の指導を受けながら、基本的な診察や治療を一人でできるようにします。
4〜7年目(28〜31歳)一人前として担当を持つ動物病院では手術や夜間救急も任され、副院長になる人もいます。公務員は異動で複数の職場を経験します。学会の認定医を目指して、皮膚科や眼科、整形外科など得意分野の勉強を始める人も多いです。
30代独立・専門化・転職動物病院を開業する人、専門病院や大学で高度な医療を学ぶ人、企業や公務員に転職する人など、道が分かれる時期です。開業には建物や検査機器で数千万円かかることがあります。
40代院長・管理職開業医は院長として経営を担い、勤務獣医師や動物看護師を雇って病院を大きくします。公務員は係長や課長として組織をまとめます。
50代以降地域や業界の中心へ地域の獣医師会の役員として、狂犬病の予防注射や災害時のペット対策に関わる人もいます。病院の後継者を育てたり、後輩の指導に力を入れたりする時期です。

元気がない犬が動物病院で治るまで

1
受付と問診

飼い主さんから、いつから元気がないか、食欲や便の様子、ふだんと変わったことを詳しく聞きます。動物は話せないので、ここがとても大切です。

2
身体検査

体重や体温を測り、心臓の音を聞き、おなかを触って痛がる場所がないかを確かめます。

3
検査

血液検査、レントゲン、エコーなどで体の中を調べます。たとえば、異物を飲み込んでいないかをレントゲンで確かめます。

4
診断と治療方針の説明

検査結果から病気をしぼりこみ、治療の選択肢と費用、動物への負担を飼い主さんに説明して、一緒に方針を決めます。

5
治療

薬を出す、点滴をする、手術をするなど、決めた方針で治療します。重い場合は入院して様子を見ます。

6
経過観察と再診

数日後に再び来てもらい、回復しているかを確かめます。治りにくい場合は二次診療病院に紹介します。

7
予防と健康管理

元気になったら、ワクチンや健康診断で病気を防ぐ方法を伝え、長く健康に過ごせるよう見守ります。

獣医師国家試験

4年生ごろ 共用試験vetCBT(知識)・vetOSCE(技能) 5〜6年生 臨床実習・卒業研究大学の動物病院や牧場で 6年生の2月 獣医師国家試験2日間。必須問題は70%以上が必要 3月 合格発表獣医師名簿に登録され免許 就職後 臨床研修6か月以上受けるよう努める 国家試験の合格率(第77回) 全体68.4% 新卒83.9% 既卒32.4% 既卒になると、合格率は約3割に下がる
第77回は2026年に行われました
合格率68.4%(第77回、2026年実施。新卒者は83.9%、既卒者は32.4%)
勉強時間の目安獣医学部6年間の学習が前提で、6年生の1年間は国家試験と卒業研究の両立が必要です
受験資格大学で獣医学の正規の課程(6年制)を修めて卒業した人、または卒業見込みの人など
新卒者の合格率は約8割と高めですが、既卒者は約3割と大きく下がるので、一度で合格することが非常に重要です。範囲は、ペット、家畜、野生動物、食品衛生、法律まで幅広く、6年間の学習の総まとめになります。医師国家試験(約9割)よりは合格率が低く、歯科医師国家試験(約6割)よりは高い位置づけです。
試験科目(押すと中身が見られます)
合格までの流れ
  1. 共用試験(4年生ごろ)vetCBTとvetOSCEに合格し、臨床実習に進みます。
  2. 臨床実習・卒業研究(5〜6年生)大学の動物病院や牧場で実習し、研究室で卒業論文をまとめます。
  3. 国家試験(2月)2日間で必須問題と問題A〜Dを解きます。
  4. 合格発表(3月)合格すると獣医師名簿に登録され、免許が与えられます。
  5. 就職・臨床研修診療に従事する場合は、6か月以上の臨床研修を受けるよう努めます。

獣医師のある1日

8:30

動物病院に出勤し、入院している犬や猫の様子を見て回ります。点滴の量や食欲を確認します。

9:00

午前の診察が始まります。ワクチン、皮膚のかゆみ、下痢など、さまざまな動物が来院します。

11:00

診察の合間に、血液検査やレントゲンの結果を確認し、飼い主さんに説明します。

12:30

昼休みの時間を使って、予定していた避妊手術や腫瘍の手術を行います。動物病院では昼に手術をすることが多いです。

15:00

少し休憩をとり、カルテの整理や検査会社への依頼をします。

16:00

午後の診察です。仕事帰りや学校帰りの飼い主さんが増え、待合室が混み合います。

18:30

入院動物の夕方の治療をして、夜間の担当獣医師や動物看護師に引き継ぎます。

19:30

診察終了です。急患が来れば延長します。帰宅後に学会の資料や論文を読むこともあります。

もっと知りたい人へ

そもそも獣医師とは

獣医師は、獣医師法という法律で定められた国家資格で、動物の診療や、動物と人の健康に関わる仕事をします。獣医師法では、獣医師の役割を「動物に関する保健衛生の指導」「動物の診療」を通じて、畜産業の発達、動物の保健衛生の向上、公衆衛生の向上に寄与することとしています。つまり、ペットの病気を治すだけでなく、食べ物の安全や伝染病の予防など、人の暮らしを守ることも獣医師の大切な役目です。2024年の届出では、獣医師は約4万人(39,664人)で、女性は約35%です。

獣医師の職域のバランス

2024年の届出では、小動物診療が約42%、産業動物診療が約11%、農林水産分野の公務員が約8%、公衆衛生分野などの公務員が約14%、教員や民間企業などが約15%です。ペットの病院で働く人が一番多いものの、半分以上はそれ以外の仕事をしています。

ワンヘルスという考え方

人の健康、動物の健康、環境の健康は一つにつながっているという考え方を「ワンヘルス」といいます。たとえば、鳥インフルエンザや狂犬病のように、動物から人にうつる病気を防ぐには、医師と獣医師が協力する必要があります。

獣医師と動物看護師

動物病院では、獣医師と愛玩動物看護師(動物看護師)がチームで働きます。愛玩動物看護師は2023年に初めて国家試験が行われた新しい国家資格で、採血や検査、入院動物の世話などを担当します。

なるためのルート

獣医師になるには、獣医学を学べる大学(6年制)を卒業して、獣医師国家試験に合格する必要があります。獣医学部・獣医学科がある大学は全国に17校で、国公立が11校、私立が6校です。国公立は数が少なく入学定員も1校あたり30〜40人程度と少ないため、競争が激しくなります。私立の学費は6年で1,000万円台後半から2,000万円程度かかる大学が多いです。

  1. 高校で理系を選ぶ多くの獣医学部で数学と理科(化学・生物が多い)が必要です。英語も重視されます。
  2. 獣医学部に合格する国公立は共通テストと二次試験、私立は大学独自の試験で選ばれます。地域枠の推薦入試を行う大学もあります。
  3. 6年間で獣医学を学ぶ基礎、病気、臨床、公衆衛生の4つの柱を順番に学びます。
  4. 共用試験に合格する4年生ごろにvetCBT(知識)とvetOSCE(技能)を受け、合格すると参加型の臨床実習に進めます。
  5. 獣医師国家試験に合格する6年生の2月に2日間の試験を受け、3月に合格発表があります。
  6. 就職して臨床研修を受ける診療に従事する獣医師は、6か月以上の臨床研修を受けるよう努めることとされています。動物病院や大学の研修医制度などで経験を積みます。
共同獣医学部

いくつかの国立大学は、2つの大学が協力して一つの獣医学部を作る「共同獣医学部」の形をとっています。たとえば、北海道大学と帯広畜産大学、岩手大学と東京農工大学、岐阜大学と鳥取大学、山口大学と鹿児島大学のような組み合わせがあり、遠隔授業や交流で学びます。

地域枠と修学資金

産業動物の獣医師や公務員の獣医師が足りない地域では、卒業後にその地域で働くことを条件に、学費の一部を貸し出し、一定期間働けば返済を免除する修学資金の制度があります。たとえば、県の家畜保健衛生所で働くことを条件にしたものなどです。

試験・選考の詳細

獣医師国家試験は、農林水産省が年1回、2月に2日間で行います。問題は、獣医師として必ず知っておくべき「必須問題」と、基礎から臨床まで幅広く問う「問題A〜D」に分かれています。2026年に行われた第77回では、受験者1,433人のうち980人が合格し、合格率は68.4%でした。新卒者は83.9%が合格しましたが、既卒者は32.4%にとどまり、一度で合格することがとても大切な試験です。

合格の基準

第77回では、必須問題は補正後の点数の70%以上、その他の問題は総合点の60%以上が合格基準でした。必須問題の基準が高いので、基本的な問題を落とさないことがカギになります。

公務員になるための試験

都道府県や国の獣医師として働くには、国家試験とは別に、各自治体などの採用試験に合格する必要があります。たとえば、県の獣医師職の試験では、獣医学の専門試験と面接が行われます。獣医師が足りない自治体では、通年で募集していることもあります。

年収のリアル

雇われて働く獣医師の平均年収の目安は、2024年の国の統計で約885万円です。ただし、この数字は職場や年齢によって大きくちがいます。動物病院の新人は年収300万〜400万円台から始まることが多く、医師や歯科医師と比べると若いうちの給料は低めです。公務員は給料表に沿って安定して上がり、企業の研究職は会社によって高い場合もあります。動物病院を開業して患者さんが多く集まれば、勤務時代を大きく上回る収入も目指せます。

なぜ若いうちは低めなのか

動物病院は、人の病院のような国の保険制度がなく、飼い主さんが全額を払うので、診療の値段を高くしすぎることができません。また、小規模な病院が多いことも理由の一つです。たとえば院長1人、勤務獣医師2人の病院では、給料の原資になる売上にも限りがあります。

公務員獣医師の待遇改善

公務員の獣医師は全国的に人手不足で、初任給を高くする調整や手当を設ける自治体が増えています。安定した給料と休みを重視する人には、選びやすい働き方になっています。

やりがい

言葉を話せない動物の不調を見つけ、治療で元気になった姿を飼い主さんと一緒に喜べるのは、獣医師ならではのやりがいです。家族の一員として大切にされているペットの命を預かる責任は重いですが、その分だけ感謝の気持ちも大きく返ってきます。産業動物の獣医師は、農家さんの生活と日本の食卓を支えているという実感を持てます。公務員の獣医師は、伝染病の発生を食い止めたり、食中毒を防いだりして、目に見えにくい形で多くの人の健康を守っています。

動物の一生に関わる

たとえば、子犬のときにワクチンを打ちに来た犬を、年をとって病気になるまで十数年にわたって診ることがあります。飼い主さんと一緒に動物の一生を見守れるのは、町の動物病院ならではの喜びです。

社会を守る仕事

豚熱や鳥インフルエンザが発生したとき、現場で防疫の指揮をとるのは公務員の獣医師です。食肉の検査も含めて、私たちが安心して肉や卵、牛乳を食べられるのは、獣医師が見えないところで働いているからです。

大変なこと・きついこと

動物はかんだり引っかいたりすることがあり、大きな牛や馬ならけがの危険もあります。動物病院では、飼い主さんが治療費を払えない、望む治療ができないといった場面で、つらい決断に向き合うこともあります。安楽死の判断に立ち会うこともあり、心の負担は小さくありません。産業動物の獣医師は、夜中のお産や雪の中の往診など、体力的にきつい場面があります。公務員の獣医師は、伝染病が発生すると何日も泊まり込みで対応することがあります。

飼い主さんとのコミュニケーション

飼い主さんにとってペットは家族です。治療がうまくいかなかったときや、高額な治療費の説明をするときは、気持ちに寄り添いながら正直に話す力が求められます。

獣医師の偏り

小動物診療を希望する獣医師が多い一方、産業動物や公務員の分野では人手が足りないという偏りがあります。たとえば地方の農業共済組合では、限られた人数で広い地域を担当することになり、一人あたりの負担が大きくなりがちです。

向いている人

動物が好きなことはもちろん大切ですが、それだけでは務まりません。動物は自分で症状を話せないので、小さな変化に気づく観察力が必要です。また、実際に治療費を払い、治療方法を決めるのは飼い主さんなので、人とのコミュニケーションが得意な人のほうが活躍しやすいです。理科、とくに生物と化学に興味がある人、体力に自信がある人、困っている人や社会の役に立ちたいと思う人に向いています。

動物好きだけでは足りない理由

獣医学部では、解剖実習や、病気で亡くなった動物の解剖、実験動物を使った実習があります。動物の命と向き合う場面が多いので、「かわいい」だけでなく、命を守るために冷静に判断できる強さが必要です。

こんな経験が生きる

たとえば、家でペットを飼って毎日の世話をしてきた人、生物部で生き物を観察してきた人、牧場や動物園でのボランティア経験がある人は、獣医師の仕事の一部をすでに体験しています。

高校生のうちにできること

獣医学部の入試に向けて、生物と化学を中心に理系科目を固めましょう。オープンキャンパスでは、大学の動物病院や牧場を見学できることがあります。動物病院でのアルバイトや見学、動物園・牧場の職業体験に参加すると、仕事の実際がよくわかります。ペット以外の獣医師の仕事、たとえば食肉衛生検査所や家畜保健衛生所について調べておくと、志望理由の面接でも説得力が増します。

職業体験の探し方

地域の獣医師会や動物病院が、中高生向けの職業体験を行っていることがあります。県の家畜保健衛生所や動物愛護センターでも、見学を受け入れている場合があります。

志望理由を深める

「動物が好き」だけでなく、なぜ獣医師なのか、どの分野で働きたいのかを考えておきましょう。たとえば、ニュースで見た鳥インフルエンザの対応に関心を持った、など具体的なきっかけがあると強い理由になります。

代表的な会社・職場

獣医師の職場は、動物病院、農業共済組合、都道府県や国の行政機関、動物園・水族館、製薬会社や食品会社、大学など多岐にわたります。動物病院には、個人で開業した小さな病院から、複数の病院を経営するグループ、夜間救急専門の病院、大学の動物病院のような高度医療を行う病院まであります。公務員の獣医師は、都道府県の家畜保健衛生所、食肉衛生検査所、保健所、動物愛護センターなどで働きます。

二次診療病院

町の動物病院(一次診療)で治しにくい病気を、紹介を受けて診る病院を二次診療病院といいます。大学の動物病院や、民間の高度医療センターがこれにあたり、CTやMRIを使った検査、がんの手術、心臓の手術などを行います。

農業共済組合(NOSAI)

農家が入る保険制度を運営する団体で、多くの産業動物獣医師が職員として働いています。北海道や九州など畜産が盛んな地域に多くの診療所があります。

ペットと家畜で何がちがうのか

同じ獣医師でも、ペットを診るのか家畜を診るのかで、考え方が大きくちがいます。ペットの診療では、動物1匹の命と生活の質をできるだけ守ることが目標になり、飼い主さんが望めば高度な治療も行います。一方、家畜の診療では、牛乳や肉を生産するという目的があり、治療費とその家畜の経済的な価値のバランスを考えます。また、家畜は群れで飼われるので、1頭を治すことより、群れ全体の病気を予防することが重視されます。

群れの健康を守る

たとえば、何万羽もの鶏を飼う養鶏場では、1羽ずつ治療することはできません。ワクチンの計画、鶏舎の温度や換気、エサの管理などで、群れ全体が病気にならないようにします。これを「衛生管理」や「予防獣医療」といいます。

食の安全とのつながり

家畜に使った抗生物質などの薬は、決められた期間が過ぎるまでその牛乳や肉を出荷できません。獣医師は薬の使い方を指導し、食べ物に薬が残らないようにする責任も負っています。

公務員獣医師の仕事

獣医師のうち、2024年の届出で2割以上が国や自治体の公務員として働いています。都道府県では、家畜の伝染病を防ぐ家畜保健衛生所、食肉の安全を守る食肉衛生検査所、食品衛生や動物愛護を担う保健所や動物愛護センターなどがあります。国では、農林水産省や厚生労働省、空港や港の動物検疫所などで働きます。いずれも、社会全体の健康と安全を守る仕事で、人手不足が続いている分野です。

防疫の最前線

家畜の伝染病が発生すると、県の獣医師が現場に入り、検査、消毒、家畜の処分、周辺の農場の移動制限などを法律に沿って進めます。たとえば、一つの農場で発生すると、半径数キロ以内の農場の家畜の移動が制限されることもあります。

動物愛護センター

迷い犬や飼えなくなった犬猫を保護し、健康チェックをして新しい飼い主さんを探します。飼い主への正しい飼い方の啓発や、災害時のペット避難の準備も担当します。

よくある質問

獣医学部はどのくらい難しいですか

全国に17校しかなく、入学定員が少ないため、国公立は医学部・歯学部に近い難しさです。私立も人気が高く、倍率が高い大学が多いです。

動物が苦手な動物もいますが大丈夫ですか

大学では牛、馬、豚、鶏、犬、猫など、さまざまな動物を扱う実習があります。すべてを得意にする必要はありませんが、一通りの動物に触れることになります。就職後は、自分の得意な動物の分野を選ぶことができます。

解剖や実験はありますか

あります。動物の体のしくみや病気を理解するために、解剖実習や病理解剖、実験動物を使った実習があります。命の大切さを学ぶ場として、慰霊祭を行う大学も多いです。

ペットの獣医師になるには、どの大学がよいですか

どの獣医学部でも国家試験に合格すれば獣医師になれます。大学の動物病院の規模や、卒業生の就職先、国家試験の合格率などを比べて選びましょう。

女性の獣医師は多いですか

2024年の届出で獣医師の約35%が女性で、小動物診療や公衆衛生分野では女性の割合がさらに高くなっています。獣医学部の学生では女性が半数前後を占める大学も多いです。

獣医師は人の病気を診られますか

診られません。人の診療は医師の仕事で、獣医師は動物だけを診ます。ただし、人と動物に共通する感染症の研究や予防では、医師と協力します。

動物病院の開業にはいくらかかりますか

場所や規模によりますが、建物の工事や検査機器、手術設備などで数千万円かかることが多いです。多くの人は勤務医として経験と資金をためてから開業します。

エキゾチックアニマルも診られますか

うさぎ、フェレット、鳥、爬虫類などは「エキゾチックアニマル」と呼ばれ、専門的に診る動物病院もあります。大学で学ぶ内容は犬猫や家畜が中心なので、就職後に専門の病院で学ぶ人が多いです。

公務員の獣医師になるにはどうすればよいですか

獣医師免許を取ったうえで、都道府県や国の獣医師職の採用試験を受けます。人手不足の自治体が多く、修学資金の制度を設けているところもあります。

この分野のことば

年収について:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」の獣医師(企業規模10人以上)で、きまって支給する給与月約71.3万円×12か月+年間賞与約29.2万円から計算した目安です。調査対象が少なく年によって上下します。自分の動物病院を経営する開業獣医師は含まれません。公務員の獣医師は国や自治体の給料表に沿います。

数字はすべて公開データにもとづく目安です。出典は出典・サイトポリシーにまとめています。

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