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患者さんを一度も診ない医師もいる

医師

医師は、病気やけがの診断と治療を行い、人の命と健康を守る仕事です。病院や診療所で患者さんを診る臨床医が大部分ですが、研究者、病理医、厚生労働省などの行政で働く医師、会社で働く人の健康を守る産業医など、働き方はさまざまです。医師になるには大学の医学部(6年制)を卒業し、医師国家試験に合格したうえで、2年間の臨床研修を受けます。2024年末の時点で日本の医師は約34万8千人で、そのうち女性は24.4%です。

平均年収の目安約1,512万円研修医は年収数百万円台から、経験を積むと1,000万〜2,000万円程度が多い
なるまでの難しさ★★★★★医学部の入試は、国公立・私立ともに大学入試の中で最も難しいレベルです。入学後も6年間でたくさんの科目と実習をこなし、共用試験と医師国家試験に合格しなければなりません。国家試験の合格率は2026年で91.6%と高いですが、それは6年間しっかり勉強してきた人が受けるからです。資格を取ったあとも研修と専門医の取得で10年近く学び続けるため、難しさは最高レベルです。
決めどき理系が中心

高校1〜2年で理系を選び、医学部受験を決めるのが一般的(3年生からでは間に合いにくい)

どんな職種がある?

押すと、その職種の仕事内容・必要な力・キャリアが見られます。

医師の年収と昇進の流れ

初期研修医300〜600万円
卒業後1〜2年目(24〜26歳ごろ)

いろいろな診療科を回り、医師としての基本を身につけます。2年間の研修を修了すると、専門研修に進めます。

専攻医(後期研修医)500〜900万円
3〜5年目(27〜30歳ごろ)

専門の診療科で研修を受けます。研修を終えて試験に合格すると専門医になります。

専門医・医員800〜1,400万円
6〜10年目(30代前半)

専門医として一人前に診療し、サブスペシャルティの専門医を目指します。大学院で研究をする人もいます。

医長・指導医1,200〜1,800万円
11〜20年目(30代後半〜40代)

診療科の中心となって診療を行い、若手の指導を担当します。この時期に開業を選ぶ人も多いです。

部長・教授・院長1,500〜2,500万円
20年目以降(40代後半〜)

診療科や病院全体をまとめる立場になります。大学では教授として、診療・研究・教育の責任者を務めます。

年収は目安です。会社や地域、本人の働き方で大きく変わります。

働き方で何が違う?

勤務医(大学病院)若手は低めで、アルバイトを含めて収入を確保することが多い

大学病院は、高度な医療と研究・教育の拠点です。重い病気や珍しい病気の患者さんが集まり、最先端の治療にかかわれます。研究をして医学博士をとったり、教授を目指したりする道があります。一方で、給料は民間病院より低めといわれ、外部の病院でのアルバイトで収入を補う医師が多いです。

良いところ最先端の医療、研究の機会、指導体制

大変なところ給料が低めで、診療・研究・教育が重なり忙しい

勤務医(市中病院)大学病院より高めになることが多い

地域の総合病院や民間病院で働く勤務医です。地域の患者さんを多く診て、たくさんの臨床経験を積めます。救急医療を担う病院では当直や呼び出しが多くなりますが、そのぶん実践的な力がつきます。

良いところ豊富な臨床経験、比較的高い給料

大変なところ病院によっては当直が多く、忙しい

開業医経営次第で、勤務医より高くなることもある

自分のクリニックを経営する医師です。地域のかかりつけ医として、長く同じ患者さんを診ます。診療時間を自分で決めやすく、当直がないのが一般的です。一方で、開業資金の借り入れやスタッフの管理など、経営者としての責任を負います。

良いところ自分の方針で診療できる、当直がない、定年がない

大変なところ経営のリスク、患者さんが集まるかどうかの不安

産業医・行政・企業勤め先の給料体系による

患者さんの治療ではなく、働く人の健康管理、国の政策づくり、新薬の開発などに医師の知識を使う働き方です。夜勤や当直がないことが多く、ワークライフバランスを重視する人にも選ばれています。

良いところ規則正しい働き方、社会全体への影響

大変なところ臨床の腕を磨く機会は少なくなる

代表的な会社・職場

大学病院公的病院グループ自治体病院民間病院行政企業
東京大学医学部附属病院大学病院

国立大学の附属病院で、高度な医療、研究、医師の教育を行っています。

大阪大学医学部附属病院大学病院

西日本の代表的な大学病院の一つで、先進的な治療や研究に取り組んでいます。

国立病院機構 ›公的病院グループ

全国に病院を持つ国の独立行政法人で、地域医療や結核、重症心身障害など、民間では難しい医療も担っています。

日本赤十字社(赤十字病院)公的病院グループ

全国に赤十字病院を持ち、救急医療や災害時の医療救護に力を入れています。

済生会公的病院グループ

全国に病院や福祉施設を持つ社会福祉法人で、生活に困っている人の医療にも取り組んでいます。

都道府県立・市立病院自治体病院

都道府県や市町村が運営する病院で、救急やへき地医療など、地域に欠かせない医療を担っています。

民間の医療法人の病院・クリニック民間病院

全国にある民間の病院や診療所で、医療機関の大部分を占めています。

厚生労働省・保健所行政

医系技官として、医療制度や感染症対策などの政策をつくります。

製薬会社・医療機器メーカー企業

メディカルドクターとして、新薬の治験や安全性の評価を担当します。

›がついた会社は、会社図鑑で詳しく解説しています。

どうやって稼いでいる?

値段は国が決める(診療報酬)1点=10円、原則2年ごとに見直し 患者さん窓口で1〜3割 健康保険保険料と税金 1〜3割 残り 病院・クリニック診察・検査・手術ごとに点数がつく 給料・手当 収入 勤務医病院から給料当直・アルバイトも 開業医診療報酬から経費を引いた残りが収入 保険以外の収入も 自由診療美容・人間ドック 健診・産業医会社と契約 研究費国や製薬会社 医療費の多くは健康保険から値段は国が全国一律で決める
若手の勤務医は、ほかの病院での当直や外来のアルバイトで収入を増やすことも一般的です

日本では、病院や診療所の収入の大部分は「診療報酬」という公的な仕組みから入ってきます。たとえば、みなさんが風邪でクリニックに行って窓口で1,000円ほど払ったとき、実際の医療費はその数倍で、残りは健康保険から病院に支払われています。患者さんは窓口で医療費の1〜3割を払い、残りは健康保険(国民みんなが払っている保険料と税金)から病院に支払われます。診療報酬の金額は、診察や検査、手術、薬など1つ1つの医療行為ごとに国が全国一律で決めていて、原則2年ごとに見直されます。勤務医は病院から給料を受け取り、開業医はクリニックの診療報酬から経費を引いた残りが収入になります。若手の勤務医は、ほかの病院での当直や外来のアルバイトで収入を増やすことも一般的です。

1
診療報酬(保険診療)

診察、検査、手術、入院などのたびに、国が決めた点数(1点=10円)に応じて病院に支払われるお金です。医療機関の収入の中心で、患者さんの自己負担と健康保険からの支払いでなりたっています。

2
自由診療

美容医療や一部の予防接種、健康診断(人間ドック)など、健康保険が使えない医療です。値段を病院が自由に決められるので、美容外科などでは大きな収入源になっています。

3
健康診断・産業医の契約料

会社の健康診断を引き受けたり、産業医として会社と契約したりすることで入るお金です。開業医にとって安定した収入源の1つです。

4
勤務医の給料と手当

病院から受け取る基本給に、当直手当や時間外手当などが加わります。大学病院は給料が比較的低めで、民間病院のほうが高い傾向があるといわれます。

5
アルバイト(外勤)

勤務医が、ほかの病院の当直や外来、健康診断などを手伝って収入を得ることです。とくに大学病院の若手医師にとっては大事な収入源です。

6
研究費

大学や研究機関の医師は、国の科学研究費や製薬会社との共同研究費を獲得して研究を進めます。たとえば、「がんを早く見つける血液検査の方法」を研究するために、実験の機械や材料、研究スタッフの給料にそのお金を使います。給料とは別に、研究のための資金として使われます。

入ってからどうなっていく?

医学部1〜4年 基礎から臨床医学へ4年ごろ共用試験(CBT・OSCE) 5〜6年 臨床実習6年生の2月に医師国家試験 卒業後1〜2年目 初期臨床研修医いろいろな科を回る 3〜5年目 専攻医19の基本領域から専門を選ぶ 6〜10年目 専門医さらに細かい分野・大学院 合格率91.6% 30代後半〜 病院に残る医長・部長教授をめざす 開業する自分のクリニックを持つ 国家試験のあとも、研修で専門を身につける
合格率は2026年(第120回)のものです
医学部1〜6年医学生1〜2年で教養科目と解剖学・生理学などの基礎医学を学び、3〜4年で病気について学ぶ臨床医学に進みます。4年生ごろに共用試験(CBT・OSCE)に合格すると、5〜6年で病院での臨床実習に参加します。6年生の2月に医師国家試験を受けます。
卒業後1〜2年目初期臨床研修医医師免許をとったあと、2年間の臨床研修を受けます。内科・救急・外科・小児科・産婦人科・精神科・地域医療などをローテーションで回り、医師としての基本を身につけます。研修先の病院はマッチングという仕組みで決まり、2025年度は参加者9,902人のうち92.3%がマッチしました。
3〜5年目専攻医(後期研修)内科、外科、小児科など、19ある基本領域から専門を選び、専門研修プログラムで3年以上学びます。研修を終えて試験に合格すると、その分野の専門医になれます。2025年度に専門研修を始めた専攻医は9,762人で、過去最多でした。
6〜10年目専門医・サブスペシャルティ専門医をとったあと、循環器内科や消化器内科など、さらに細かい分野(サブスペシャルティ)の専門医を目指します。大学院に入って研究し、医学博士をとる人も多い時期です。海外の大学や病院に留学する人もいます。
30代後半〜40代中堅医師・指導医病院の中心となって診療を行い、若手医師の指導も担当します。診療科の医長や部長になる人もいます。この時期に開業する人が多く、病院を辞めて自分のクリニックを持つか、病院に残って管理職を目指すかの分かれ道になります。
50代以降部長・教授・院長・開業医大学病院なら教授、一般の病院なら診療部長や病院長として、組織全体をまとめる立場になります。開業医として地域に根ざした医療を続ける人もいます。医師には定年後も非常勤などで働き続ける人が多く、70代でも現役の医師は珍しくありません。

患者さんが入院してから退院するまで

1
外来で診察

患者さんの症状を聞き、診察と検査をします。たとえば、ずっと続くせきで来た人に、胸のレントゲンや血液検査をします。

2
診断と入院の決定

検査の結果から病気を診断し、入院して治療が必要かを判断します。患者さんと家族に病気と治療の方針を説明し、同意を得ます。

3
治療の計画

カンファレンスで、医師・看護師・薬剤師などが治療計画を話し合います。薬で治すのか、手術をするのかなどを決めます。

4
治療(薬・手術)

点滴や薬の治療、または手術を行います。毎日の回診で体の状態を確かめ、治療を調整します。

5
リハビリと退院の準備

体力が戻るように、リハビリの専門職と一緒に回復を支えます。家に帰ってからの生活に必要なサポートも準備します。

6
退院と外来でのフォロー

退院したあとも、外来やかかりつけ医で経過を見守ります。地域のクリニックに紹介状を書いて、治療を引き継ぐこともあります。

医師国家試験

合格率91.6%(2026年・第120回、受験者9,980人中9,139人合格、新卒者94.7%)
勉強時間の目安医学部6年間の学習が前提で、6年生の1年間は国家試験の勉強に集中する人が多い
受験資格大学の医学部医学科(6年制)を卒業した人、または卒業見込みの人など
医師国家試験の合格率は90%前後と高いですが、受験するのは難関の医学部入試を突破し、6年間勉強を続けてきた人たちです。必修問題で8割をとることに加え、禁忌肢を3問以下に抑えるなど、基本を確実におさえていないと合格できない仕組みになっています。むしろ大きな関門は医学部の入試そのもので、大学入試の中で最も難しいレベルといわれます。
試験科目(押すと中身が見られます)
合格までの流れ
  1. 医学部入学大学の医学部医学科(6年制)に入学します。
  2. 共用試験(CBT・OSCE)4年生ごろに受け、合格すると臨床実習に参加できます。
  3. 臨床実習5〜6年生で、病院の診療科を回りながら患者さんの診療に参加します。
  4. 医師国家試験(2月)2日間の試験を受け、3月に合格発表があります。
  5. 初期臨床研修(2年)医師免許をとったあと、マッチングで決まった病院で研修を受けます。

医師のある1日

7:30

病院に着き、担当している入院患者さんの電子カルテを確認します。夜の間に熱が出た人や検査の結果をチェックします。

8:00

朝のカンファレンス(会議)に出ます。医師どうしで、新しく入院した患者さんの情報や治療方針を共有します。

8:30

病棟を回診します。一人ひとりの患者さんの体調を聞き、聴診器で胸の音を聞き、その日の治療や検査を決めて看護師に指示を出します。

9:00

外来で診察をします。1日に数十人の患者さんを診ることもあり、問診・診察・検査の指示・薬の処方を次々と行います。

13:00

昼食は短時間ですませることが多いです。午後の検査や手術の準備をします。

13:30

検査や手術を行います。内科医なら胃カメラや心臓カテーテル検査、外科医なら数時間におよぶ手術を担当します。

16:30

検査結果を説明します。患者さんとご家族に、病気の状態と治療の選択肢をわかりやすく伝え、一緒に治療方針を決めます。

17:30

カルテの記載や、紹介状・診断書などの書類を作ります。医師の仕事は書類も多いです。

18:30

学会発表の準備をしたり論文を読んだりして、新しい治療法の情報を勉強します。

19:30

帰宅します。当直の日は翌朝まで病院に残り、夜間の救急患者さんや入院患者さんの急な変化に対応します。

もっと知りたい人へ

そもそも医師とは

医師は、医師法という法律で「医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保する」と定められた仕事です。病気の診断をする、薬を処方する、手術をするといった医療行為は、原則として医師にしかできません。そのぶん責任も重く、診察を求められたら正当な理由なく断れない「応召義務」なども定められています。医師はチーム医療のリーダーとして、看護師、薬剤師、検査技師、リハビリの専門職などと協力して患者さんを支えます。

臨床医と基礎医学研究者

医師の大部分は患者さんを直接診る臨床医ですが、病気の仕組みを実験で解き明かす基礎医学の研究者もいます。iPS細胞の研究でノーベル賞を受賞した山中伸弥さんも、もともとは整形外科の臨床医でした。

医師が足りない地域・診療科

日本全体で医師の数は増えていますが、地方や、救急・産婦人科・外科などの一部の診療科では医師が不足しているといわれます。そのため、卒業後に一定期間その地域で働くことを条件にした「地域枠」という入試の枠が多くの大学に設けられています。

診療科は40以上

医師は医師免許があればどの診療科でも名乗れますが、実際には内科、外科、小児科、整形外科、眼科、皮膚科、精神科、麻酔科などから専門を選びます。日本専門医機構の基本領域は19あり、そのうえにさらに細かい専門分野があります。

なるためのルート

医師になる道は、大学の医学部医学科に入学することから始まります。医学部は6年制で、国公立・私立あわせて全国に80以上あります。卒業すると医師国家試験の受験資格を得られ、合格すると医師免許がもらえます。そのあと2年間の初期臨床研修を終えると一人で診療ができるようになり、さらに専門研修で専門医を目指すのが一般的な流れです。

  1. 高校で理系を選ぶ医学部の入試では、数学(数学III・Cまで)、理科2科目(化学と生物または物理が多い)、英語が重要です。高校1〜2年のうちに理系を選択しましょう。
  2. 医学部医学科に合格共通テストと大学ごとの個別試験、さらに面接が課されるのが一般的です。面接では、医師になりたい理由や、医療の倫理についての考えが問われます。
  3. 6年間で基礎医学・臨床医学を学ぶ解剖学・生理学・薬理学などの基礎から、内科・外科などの臨床医学まで、膨大な量を学びます。
  4. 共用試験(CBT・OSCE)に合格4年生ごろに、知識を問うCBTと、診察の技能を問うOSCEを受けます。合格するとスチューデントドクターとして病院で臨床実習ができます。
  5. 医師国家試験に合格6年生の2月に2日間の試験を受け、3月に合格発表があります。合格すると医籍に登録され、医師免許が交付されます。
  6. 初期臨床研修(2年)マッチングで決まった病院で、さまざまな診療科を回りながら医師としての基本を身につけます。
  7. 専門研修で専門医へ3年目以降は自分の専門を決めて専門研修プログラムに入り、専門医の資格を目指します。
国公立と私立のちがい

国公立大学の医学部は6年間の学費が約350万円ですが、私立大学は大学によって約2,000万円前後から4,000万円以上まで大きな差があります。私立でも奨学金や、地域枠による修学資金の貸与(一定期間地域で働けば返済が免除される)を利用できる場合があります。

地域枠・推薦入試

多くの大学に、卒業後に特定の都道府県で一定期間(多くは9年程度)働くことを約束する地域枠があります。一般入試より入りやすい場合もありますが、働く場所や診療科が制限されることがあるので、よく調べてから選びましょう。

再受験・学士編入

一度ほかの大学を卒業したり社会人として働いたりしてから、医学部に入り直す人もいます。一部の大学には、大学卒業者向けの学士編入試験があり、2年生や3年生から入学できます。

試験・選考の詳細

医師国家試験は毎年2月に2日間行われます。2026年の第120回試験は2月7日と8日に行われ、受験者9,980人のうち9,139人が合格し、合格率は91.6%(新卒者は94.7%)でした。問題は、医師として絶対に知っておくべき「必修問題」と、一般問題、患者さんの症例をもとにした臨床実地問題で構成されています。合格するには、必修問題で高い得点(第120回は200点中160点以上、つまり8割)をとり、それ以外の問題でも基準点を超え、さらに「禁忌肢」を選んだ数が3問以下でなければなりません。

必修問題は8割が必要

必修問題は、医師なら誰でも知っておくべき基本的な内容で、ほかの問題よりも高い8割という合格ラインが決められています。どんなに難しい問題が解けても、基本ができていなければ不合格になる仕組みです。

禁忌肢とは

禁忌肢は、実際の医療で選ぶと患者さんの命にかかわるような、絶対に選んではいけない選択肢です。この禁忌肢を一定の数以上選ぶと、ほかの点数がよくても不合格になります。

共用試験の公的化

医学部4年生ごろに受ける共用試験(CBTとOSCE)は、2023年4月から法律で正式な試験として位置づけられました。合格した学生は、指導医のもとで実際の医療行為の一部を行えるようになります。

研修先を決めるマッチング

初期研修の病院は、学生と病院がそれぞれ希望の順位をつけ、コンピューターで組み合わせを決める「マッチング」で決まります。人気の病院には全国から応募が集まり、病院見学や面接、筆記試験が行われます。

年収のリアル

医師はほかの職業とくらべて年収が高い仕事です。厚生労働省のjob tagでは、医師の年収の目安は約1,512万円(令和7年賃金構造基本統計調査をもとにした値、平均年齢45.7歳)となっています。ただし、研修医のころは他の新社会人より少し高い程度で、本格的に年収が上がるのは専門医になってからです。また、高い年収の背景には、夜間の当直や休日の呼び出し、長時間労働があることも知っておきましょう。

勤務先による差

一般に、大学病院の給料は民間病院よりも低めといわれ、大学病院の若手医師はアルバイトで収入を補うことが多いです。民間病院や、医師が不足している地方の病院では、高い給料を出すところもあります。

開業医の収入

開業医はクリニックの売上から、スタッフの給料、家賃、医療機器の費用などを引いた残りが収入になります。うまく経営できれば勤務医より高い収入を得られますが、開業には数千万円規模の資金が必要で、経営のリスクも負います。

働き方改革で何が変わる?

2024年4月から、医師の残業時間に上限が設けられました。一般的な病院の医師は年960時間まで、救急医療などを担う病院や研修中の医師は特例として年1,860時間までとされています。長時間労働を前提にした働き方を見直す動きが進んでいます。

やりがい

医師のやりがいは、何といっても患者さんの命を救い、病気を治し、笑顔で退院していく姿を見られることです。人が生まれる瞬間から人生の最期まで、あらゆる場面に寄り添える仕事はほかにありません。医学は日々進歩しているので、学べば学ぶほど治せる病気が増え、知的な好奇心も満たされます。社会からの信頼も厚く、どこに行っても必要とされる仕事です。

チームの中心として働ける

医師は、看護師や薬剤師などの多くの専門職とチームを組んで治療を進めます。チームをまとめ、みんなで一人の患者さんを救えたときの達成感は大きいです。

医学の進歩に貢献できる

臨床の現場で気づいた疑問を研究にして論文を書けば、世界中の医師がその成果を使います。自分の研究が新しい治療法につながる可能性があります。

働き方を選びやすい

医師免許があれば、病院、クリニック、研究、行政、企業、海外など、さまざまな場所で働けます。ライフステージに合わせて働き方を変えやすいのも魅力です。

大変なこと・きついこと

医師の仕事は、人の命を預かる責任の重い仕事です。ミスが許されない緊張感の中で、長時間働くことも少なくありません。夜中に救急患者さんが来れば対応し、担当の患者さんの容態が急変すれば休日でも呼び出されることがあります。どんなに手を尽くしても助けられない患者さんもいて、精神的にもつらい場面に向き合わなければなりません。

勉強が一生続く

医学の知識は数年で古くなることもあり、医師は働きながら学会や論文で常に勉強を続ける必要があります。専門医の資格も、更新のために一定の研修や診療の実績が求められます。

当直と長時間労働

病院によっては月に何回も当直があり、当直明けもそのまま働くことがあります。働き方改革で改善が進められていますが、診療科や病院によってはまだ大変な状況が続いています。

お金と時間がかかる

医学部は6年制で、とくに私立大学は学費が高額です。さらに卒業後も研修期間が続くので、一人前になるまでに長い年月がかかります。

向いている人

医師に向いているのは、人の役に立ちたいという強い気持ちを持ち、それを長く持ち続けられる人です。膨大な知識を覚えるための勉強を続ける根気も欠かせません。また、患者さんやご家族の不安な気持ちに寄り添い、わかりやすく説明できるコミュニケーション力も重要です。体力と、プレッシャーのかかる場面で冷静に判断できる精神的な強さも求められます。

理科と数学だけが大事ではない

医学部の入試には理系科目が欠かせませんが、医師になってからは、人の話を聞く力や、チームで協力する力のほうが大切になる場面も多いです。

手先の器用さはあとから身につく

外科医には器用さが必要と思われがちですが、手術の技術は練習と経験で身につけていくものです。不器用だからと最初からあきらめる必要はありません。

診療科ごとに向き不向きがある

じっくり考えるのが好きな人は内科や病理、手を動かすのが好きな人は外科、子どもが好きな人は小児科など、性格に合った診療科を選べます。

高校生のうちにできること

医学部を目指すなら、まずは数学・理科・英語の成績をしっかり上げることが最優先です。医学部の入試はとても難しいので、高校1年生のうちから計画的に勉強を進めましょう。また、多くの大学で面接があり、医師を目指す理由を自分の言葉で話せることが大切です。医療ドラマだけでなく、医師が書いた本を読んだり、医療ニュースに関心を持ったりして、医療の現実を知っておきましょう。

医療体験・オープンキャンパス

大学の医学部のオープンキャンパスや、病院が行う高校生向けの職場体験・医療体験セミナーに参加してみましょう。実際の医師から話を聞くと、仕事のイメージが具体的になります。

生物と化学の理解を深める

医学部に入ってからの勉強は、高校の生物と化学が土台になります。入試で物理を選ぶ人も、生物の基礎を学んでおくと入学後に役立ちます。

ボランティア活動

介護施設や地域のボランティアに参加すると、病気や障害を持つ人の生活を身近に感じられます。面接で話せる経験にもなります。

代表的な会社・職場

医師の主な職場は病院と診療所です。全国の大学病院(東京大学医学部附属病院や大阪大学医学部附属病院など)は、高度な医療と研究・教育の拠点です。地域の中心となる総合病院には、国立病院機構、日本赤十字社の赤十字病院、済生会の病院、都道府県立や市立の病院などがあります。そのほか、民間の医療法人が運営する病院やクリニックも数多くあります。

国・自治体系の病院

国立病院機構や都道府県・市町村の病院は、救急医療やへき地医療など、地域に欠かせない医療を担っています。公的な病院の医師は、地方公務員などの立場で働くこともあります。

医療以外の職場

厚生労働省などの役所、保健所、製薬会社、保険会社、医療系IT企業、大学の研究所など、病院以外にも医師が活躍する職場はたくさんあります。

海外で働く

国境なき医師団のような国際的な団体で、紛争地域や災害の被災地で医療を行う医師もいます。アメリカなどの医師免許をとって海外の病院で働く人もいます。

診療科の選び方

医師は初期研修の2年間でいろいろな診療科を経験し、そのあとで専門を選ぶことが一般的です。日本専門医機構の基本領域は、内科、外科、小児科、産婦人科、精神科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、整形外科、脳神経外科、形成外科、救急科、麻酔科、放射線科、病理、臨床検査、リハビリテーション科、総合診療の19です。患者さんとの関わり方、手術の多さ、緊急の呼び出しの頻度などは診療科によって大きくちがいます。

内科系と外科系

内科系は、薬や生活指導で病気を治すのが中心で、じっくり診断を考える仕事です。外科系は手術で治すのが中心で、技術を磨く楽しさがあります。

総合診療科

特定の臓器にしぼらず、体全体や生活の背景まで含めて患者さんを診る新しい専門分野です。高齢化が進む日本で必要性が高まっていて、2025年度には専攻医が初めて300人を超えました。

マイナー科とは

眼科、耳鼻咽喉科、皮膚科などは、医学部の中で「マイナー科」と呼ばれることがあります。体の一部を専門にするという意味で、仕事の重要さが小さいわけではありません。

医師の働き方改革

日本の医師は長時間労働が問題になってきました。そこで2024年4月から、医師の時間外・休日労働に上限を設ける制度が始まりました。一般的な病院の医師は年960時間(A水準)が上限ですが、救急医療を担う病院や、研修中の医師などは特例として年1,860時間まで認められています。病院では、医師の仕事の一部を看護師などに任せる「タスクシフト」や、複数の医師で患者さんを担当する「チーム制」などの工夫が進められています。

タスクシフト・タスクシェア

これまで医師がしていた仕事の一部を、看護師、薬剤師、医師事務作業補助者などに任せることです。特定行為研修を受けた看護師が一部の医療行為を行う取り組みもその一つです。

女性医師の働きやすさ

女性医師の割合は2024年末で24.4%と年々増えています。病院内の保育所や短時間勤務の制度を整える病院が増え、出産や子育てと両立しながら働く医師も多くなっています。

よくある質問

医学部と医学科のちがいは何ですか?

医師になれるのは医学部の中の「医学科」です。大学によっては医学部の中に看護学科や保健学科もあり、そこを卒業しても医師にはなれません。出願するときは学科名をよく確認しましょう。

医師国家試験はどのくらい難しいですか?

2026年の第120回試験の合格率は91.6%(新卒者94.7%)と高いです。ただし、受験者は6年間しっかり勉強してきた医学生なので、油断すると落ちる試験です。とくに必修問題で8割をとれないと不合格になります。

私立の医学部は学費がいくらかかりますか?

大学によってちがいますが、6年間で約2,000万円前後から4,000万円以上かかります。国公立大学なら約350万円です。私立でも、成績優秀者の学費免除や地域枠の修学資金など、負担を軽くする制度を設けている大学もあります。

文系から医師になれますか?

医学部の入試はほとんどが理系科目を課すので、高校で文系を選ぶと受験が難しくなります。ただし一度ほかの学部を卒業してから学士編入や再受験で医学部に入る人もいます。医師を目指すなら、高校では理系を選ぶのが確実です。

血を見るのが苦手でも医師になれますか?

最初は苦手でも、実習を重ねるうちに慣れる人が多いです。また、精神科、皮膚科、放射線科、病理、産業医など、手術や出血にほとんど関わらない診療科や働き方もあります。

研修医とは何ですか?

医師国家試験に合格したあと、2年間の初期臨床研修を受けている医師のことです。すでに医師免許を持っていますが、指導医のもとで、いろいろな診療科を回りながら経験を積みます。

医師は何歳まで働けますか?

勤務医は病院の定年(60〜65歳が多い)がありますが、その後も別の病院やクリニックで非常勤として働く人が多いです。開業医には定年がなく、70代や80代でも診療を続けている医師がいます。

女性でも医師として長く働けますか?

女性医師は年々増えていて、2024年末で医師の24.4%を占めます。出産や子育ての時期は短時間勤務や非常勤にする人もいますが、医師免許は一生有効なので、復帰しやすい仕事です。

AIが進んだら医師はいらなくなりますか?

画像診断などではAIが医師をサポートする場面が増えていますが、最終的な診断や治療方針の決定、患者さんへの説明と同意、手術などは医師が責任を持って行います。AIを道具として使いこなす医師がこれからの時代に求められます。

医師になるのに浪人する人は多いですか?

医学部は難関なので、浪人してから合格する人も少なくありません。大学によっては合格者のかなりの割合が浪人生のこともあります。現役合格を目指しつつ、自分のペースで目標に向かうことが大切です。

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年収について:厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)」の医師(内科医・産業医など)の年収です(令和7年賃金構造基本統計調査をもとにした目安で、平均年齢は45.7歳です)。勤務先(大学病院・民間病院・開業)、診療科、当直やアルバイトの有無で大きく変わります。

数字はすべて公開データにもとづく目安です。出典は出典・サイトポリシーにまとめています。

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