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心臓がドキドキするしくみは?

医学部

6年で終わらない、一生学び続ける場所

医学部医学科は、医師を育てる6年制の学科です。前半で人のからだのしくみと病気の原因(基礎医学。たとえば、走ると心臓がドキドキするしくみや、かぜをひくと熱が出る理由)を、後半で病気の診断と治療(臨床医学。たとえば、おなかが痛い人の原因が盲腸なのか胃腸炎なのかを見分けて治す方法)を学び、5〜6年生はほぼ毎日病院で臨床実習をします。全国に82の医学部(防衛医科大学校を含む)があり、入学定員は2025年度で9,393人です。多くの大学では、同じ医学部の中に看護学科や保健学科(4年制)も置かれています。

よくある勘違い

医学部を出たら、すぐに一人前の医者として働ける

実は

医師国家試験に受かったあとも2年以上の臨床研修(たとえば、内科・救急・外科などを数か月ずつ回り、先輩医師の下で実際の患者さんを診る研修)が義務で、その後3年以上の専門研修を受けて専門医をめざすのがふつうです。一人前と言われるまでに、大学入学から10年以上かかります。

どんな学科・専攻がある?

医学部ではどんな授業がある?

押すと、その授業の中身が見られます。

実習・実験・研究

医学部の後半は「臨床実習(クリニカル・クラークシップ)」が中心です。共用試験(CBTとPre-CC OSCE)に合格した学生は「スチューデント・ドクター」として、医師の指導のもとで実際に患者さんを受け持ち、問診や診察、カルテ(診察の記録。たとえば、保健室の来室記録をずっと詳しくしたようなもの)の記載、一部の医療行為を行います。2023年4月に共用試験が国の制度(公的化)となり、合格した医学生が実習で医業を行えることが法律で定められました。実習は朝早くから夕方まで病院で過ごし、毎日のレポートや症例発表、各科ごとの評価があります。国際基準への対応で実習の期間は長くなり、多くの大学で70週前後を確保しています。体力と同時に、国家試験の勉強を並行する大変さがあります。

早期臨床体験実習1年生ごろに病院や福祉施設を見学し、患者さんや医療職の仕事を間近で見ます。数日〜数週間の短い実習です。
人体解剖実習2年生ごろに数か月かけて行う、医学部を代表する実習です。献体されたご遺体を班で解剖し、からだのつくりを自分の目と手で確かめます。
共用試験CBT4年生ごろに受ける、コンピュータでの知識試験です。基礎医学と臨床医学の幅広い範囲から出題され、合格しないと臨床実習に進めません。全国で合格基準が統一されています。
共用試験Pre-CC OSCE4年生ごろに受ける実技試験で、医療面接、頭頸部・胸部・腹部の診察、神経の診察、救急対応などを、模擬患者さんやシミュレーターに対して行い、試験官が採点します。
診療参加型臨床実習4年生の終わりから6年生まで、大学病院の内科・外科・小児科・産婦人科・精神科・救急などを1〜4週ずつ回ります。地域の病院や診療所、在宅医療の現場で実習する期間もあります。
Post-CC OSCE(臨床実習後OSCE)6年生で受ける、臨床実習の成果を確かめる実技試験です。2020年から正式に実施されています。
卒業試験と国家試験6年生の秋ごろに大学の卒業試験があり、2月に医師国家試験を受けます。第120回(2026年2月)は全体の合格率91.6%、新卒者は94.7%でした。

大学生活の流れ

1年教養と医学入門早期臨床体験で病院を見学2年最初の山場基礎医学解剖学・生理学・生化学人体解剖実習3年病気のしくみ病理学・薬理学・微生物学臨床医学の講義も始まる4年臨床医学の講義一通り学び終える共用試験 CBT・Pre-CC OSCE5年臨床実習大学病院の各診療科を回る朝から夕方まで病院で6年実習の仕上げ学外病院・選択実習マッチング・卒業試験2月 医師国家試験卒業臨床研修医へまず2年間、病院で研修共用試験に通ると、白衣を着て病院での実習へ後半の2年はほぼ毎日が病院
医師国家試験の合格率は第120回(2026年2月)で全体91.6%、新卒者94.7%
1年英語、物理・化学・生物、統計などの教養科目と、医学入門、早期臨床体験を学びます。部活動にも打ち込みやすい時期です(医学部だけの部活「医学部〇〇部」がある大学も多いです)。
2年解剖学・生理学・生化学など基礎医学が本格化します。人体解剖実習があり、試験も多く、最初の大きな山場です。
3年病理学・薬理学・微生物学・社会医学と、臨床医学の講義が始まります。研究室配属がある大学も多いです。
4年臨床医学の講義を一通り終え、共用試験(CBT・Pre-CC OSCE)を受けます。合格すると白衣を着て臨床実習を始めます。
5年大学病院の各診療科を回る臨床実習が中心です。朝から夕方まで病院にいて、患者さんを受け持ちます。
6年学外病院での実習や選択実習(興味のある科を長く回る)、Post-CC OSCE、研修先を決めるマッチング、卒業試験、2月の医師国家試験と忙しい1年です。
大学院博士課程は4年で、研究をして博士(医学)の学位を取ります。臨床研修や専門研修のあとに入学し、医師として働きながら学ぶ人も多いです。

取れる資格・免許

医師免許医学科を卒業(見込み)して医師国家試験に合格し、登録すると取れます。試験は2日間で400問、必修問題は8割以上の得点が必要で、患者さんに危険な「禁忌肢」を一定数以上選ぶと不合格になります。
専門医臨床研修のあと、日本専門医機構の制度で内科・外科・小児科・総合診療など19の基本領域から1つを選び、3年以上の専門研修を受けて試験に合格すると取れます。その上にさらに細かい専門(循環器、消化器など)の専門医があります。
医学博士(博士(医学))大学院の博士課程で研究し、論文が認められると取れる学位です。大学教員や研究職には多くの場合必要です。
産業医医師が日本医師会などの所定の研修を修了すると認定されます。会社で働く人の健康を守る仕事で、一定以上の規模の事業場(たとえば、50人以上が働く工場や会社)には選任が義務づけられています。
精神保健指定医など一定の臨床経験と研修を積んだ医師が申請して取る資格で、精神科での特定の判断(たとえば、本人が同意しなくても入院が必要かどうかの判断)に必要です。このように、医師免許の上に分野ごとの資格が積み重なっていきます。

医学部の卒業後の進路

医学部医学科(6年)2月 医師国家試験臨床研修医(2年)研修先はマッチングで決まる大学病院以外 約65%大学病院 約35%マッチした人の内訳(2025年度)専門を決めて分かれる病院の勤務医最も多い進路開業医医師で経営者研究医・大学教員病気のしくみを研究医系技官医療の政策をつくる製薬・医療機器新薬の試験を評価産業医働く人の健康を守るコンサル・起業医療AIやアプリまず2年間の臨床研修で幅広く経験するそのあと専門を決めて進路が分かれる
医師の年収の目安は約1,436万円(平均46.1歳、厚労省「令和5年賃金構造基本統計調査」の集計)

卒業生のほとんどは、まず臨床研修医として病院で2年間働きます。研修先はマッチングという仕組みで決まり、2025年度は参加者9,902人、マッチ率92.3%で、マッチした人の約65%が大学病院以外の臨床研修病院、約35%が大学病院でした。その後は専門を決め、病院の勤務医、開業医、研究医などに分かれます。医師の年収の目安は、厚労省の令和5年賃金構造基本統計調査を集計した数字で約1,436万円(平均46.1歳)です。

病院の勤務医 ›最も多い進路です。大学病院や市中病院で、外来・入院・手術・当直などを担当します。開業医(診療所) ›経験を積んだあと、自分のクリニックを開く医師も多くいます。医師であり経営者でもあります。研究医・大学教員 ›病気のしくみや新しい治療法を研究します。基礎医学の研究者は不足しているとされ、研究医養成コースを置く大学もあります。医系技官(厚生労働省など) ›医師免許を持つ国家公務員として、医療制度や感染症対策などの政策をつくります。たとえば、ワクチン接種の進め方や、病院の窓口で払うお金の割合を決める制度づくりです。保健所長として自治体で働く医師もいます。製薬企業・医療機器メーカー ›新薬の臨床試験(たとえば、新しい薬を患者さんに使ってもらい、本当に効くか、副作用はないかを確かめる試験)を計画・評価したり、薬の安全性を管理したりする「メディカルドクター」として働く医師もいます。産業医 ›企業に勤めたり複数の会社と契約したりして、働く人の健康診断や職場環境の改善、メンタルヘルス対策(たとえば、残業が多すぎる社員と面談して、休ませるべきかを助言すること)にかかわります。コンサル・IT・起業 ›医療系スタートアップを起業したり、医療AIやヘルスケアの事業(たとえば、スマホで医師に相談できるオンライン診療のアプリや、レントゲン写真から病気を見つけるAI)にかかわったりする医師も少しずつ増えています。

もっと知りたい人へ

向いている人

人のからだや病気への興味が長く続く人に向いています。6年間の勉強に加えて、医師になってからも新しい知識を学び続ける必要があります。患者さんや家族の話を最後まで聞ける人、チームで動ける人、命にかかわる判断の責任を引き受けられる人も向いています。夜間の当直や長時間の手術もあるので、体力と気持ちの切りかえも大切です。

「頭がいい」だけでは続かない

医学部の勉強は難しい問題を解くより、膨大な量をコツコツ覚えて使えるようにする作業が中心です。暗記が苦手でも、毎日続ける習慣がある人は伸びます。

血が苦手でも大丈夫?

最初は苦手でも慣れる人が多いです。また、精神科、放射線科、病理、公衆衛生など、手術や採血にあまりかかわらない分野もあります。

高校生のうちに(文理・受験科目)

理系コースが基本です。国公立の一般選抜では共通テストで国語・数学・英語・理科2科目・社会などを使い、二次試験で数学(数学III・Cまで)、英語、理科2科目(化学と、物理か生物)を課す大学が多いです。ほぼすべての大学で面接があり、小論文を課す大学も多くあります。入試は全学部の中でも特に難しく、浪人して合格する人も少なくありません。

地域枠とは

卒業後に一定期間、その都道府県の病院で働くことを条件にした入試の枠で、奨学金がつく場合もあります。2026年度は全国で935人分ありました。条件を途中でやめると奨学金の返還などが必要になるので、内容をよく理解して出願しましょう。

学費が特別な大学

自治医科大学は卒業後に出身都道府県の指定する医療機関で一定期間(修学年数の1.5倍、通常9年)働くと修学資金の返還が免除されます。防衛医科大学校は学生が公務員の身分で手当が出る一方、卒業後に自衛隊の医官として9年間勤務する義務があります。

今からできること

生物を入試で使わなくても、教科書レベルの基礎は入学後に大いに役立ちます。英語の論文を読む機会も多いので英語力も大切です。病院見学や医療系のボランティア、医師の書いた本を読むことは、面接の準備にもなります。

よくあるギャップ

入学前は「人を助ける仕事」のイメージが強くても、最初の2〜3年は教室と実験室で基礎医学を学ぶ毎日で、患者さんに会う機会はあまりありません。また試験が非常に多く、1科目でも落とすと留年する大学が多いので、思っていたより厳しく感じる人もいます。一方で、医学部は1学年100人前後の同じメンバーで6年間を過ごすため、仲間との結びつきが強いのも特徴です。

留年は珍しくない

進級の基準が厳しく、留年する学生は珍しくありません。大学ごとの留年率や国家試験合格率は公表されていることが多いので、志望校選びの参考にしましょう。

私立の学費の差

6年間の学費は国公立で約350万円ですが、私立では大学によって約2,000万円前後から4,000万円台まで大きく違います。奨学金や地域枠の制度も合わせて調べましょう。

卒業後の長い研修

国家試験に合格すると、2年間の初期臨床研修で内科、救急、外科、小児科、産婦人科、精神科、地域医療などを回り、基本的な診療能力を身につけます。その後、専攻医として3年以上の専門研修に進みます。専門医を取ってからも、さらに細かい専門の研修や大学院、留学などが続くことがあります。

マッチングで研修先が決まる

6年生の夏に病院の面接を受け、学生と病院がそれぞれ希望順位を登録し、コンピュータで研修先が決まります。都会の人気病院は倍率が高いです。

医師の働き方改革

2024年4月から勤務医にも時間外労働の上限規制(たとえば、残業は原則として年960時間までという上限)が始まりました。長時間労働が当たり前だった医療現場で、働き方を変える取り組みが進んでいます。

診療科の選び方

医師の専門は、内科、外科、小児科、産婦人科、精神科、整形外科、眼科、皮膚科、耳鼻咽喉科、放射線科、麻酔科、救急科、病理、総合診療などに分かれます。多くの人は臨床実習や初期研修でいろいろな科を経験してから決めます。手術が好きか、長く患者さんとかかわりたいか、生活とのバランスをどう考えるかなど、選ぶ基準は人それぞれです。

総合診療という選択

特定の臓器にしぼらず、幅広い病気を診る専門です。高齢化が進む地域医療で必要とされ、2018年度から専門医の基本領域の一つになりました。

診療科による医師の偏り

外科や産婦人科など一部の科や地方では医師不足が指摘され、国や自治体は地域枠や研修医の募集定員の調整で偏りをなくそうとしています。

よくある質問

医学部は何年通うの?

医学科は6年制です。卒業後に2年間の臨床研修、さらに3年以上の専門研修があるので、専門医になるまでには入学から最短でも11年ほどかかります。

医師国家試験はどのくらい難しい?

第120回(2026年2月)の合格率は全体で91.6%、新卒者で94.7%です。数字は高く見えますが、6年間の進級試験と卒業試験を乗り越えた人が受けるので、受験者全員がしっかり準備しています。

文系でも医学部に行ける?

ほとんどの大学で数学III・Cと理科2科目が必要なので、理系コースでの準備が基本です。一部に学校推薦型や総合型選抜、学士編入学(大学卒業後に2年次などに編入)の制度があります。

学費はどのくらい?

国公立大学は6年間で約350万円です。私立大学は約2,000万円台から4,000万円台まで大学で大きく違います。地域枠の奨学金や大学独自の減免制度もあります。

女子は不利って本当?

2018年に一部の大学で女子や浪人生を不利に扱う不適切な入試が発覚し、文部科学省が全大学を調査しました。その後は男女別の合格率が公表されるようになり、公正な入試が強く求められています。

医学部に入ったら医者になるしかないの?

多くは臨床医になりますが、研究者、厚生労働省の医系技官、製薬企業、産業医、起業家など、医師免許を持ちながら別の形で医療にかかわる人もいます。

部活やアルバイトはできる?

できます。医学部独自の部活が多く、東医体・西医体など医学生だけの大会もあります。家庭教師や塾講師のアルバイトをする学生も多いです。ただ5〜6年生は実習で忙しくなります。

浪人する人は多い?

他の学部より浪人して入学する人の割合が高いと言われます。社会人を経験してから入学する人や、学士編入で入る人もいて、年齢の幅は広めです。

研修医の給料は?

研修医は病院に雇われて給料をもらいながら研修します。金額は病院によって違い、大学病院は市中病院より低めの傾向があります。

AIが進んだら医師はいらなくなる?

画像診断などでAIが医師を助ける場面は増えていますが、最終的な判断や説明、患者さんとの信頼関係づくりは医師の役割です。AIを使いこなせる医師が求められるようになると考えられています。

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