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かっこいい形を考えるのは仕事の一部。地震で倒れないこと、法律を守ること、予算に収めることまで全部考えます

建築士

建築士は、家や学校、駅ビル、病院、オフィスビルなどの建物を設計し、図面のとおりに工事が進んでいるかを確かめる国家資格の仕事です。たとえば、みなさんが通う学校の校舎も、教室の広さ、廊下の幅、階段の数、地震に耐える柱の太さ、窓からの光の入り方まで、建築士が図面に描いて決めています。資格には一級建築士、二級建築士、木造建築士の3種類があり、大きな建物を設計するには一級建築士が必要です。働く場所は、設計事務所、ゼネコン(建設会社)、ハウスメーカー、役所など幅広く、独立して自分の設計事務所を開く人も多いです。

平均年収の目安約679万円約400万〜1,000万円以上(勤め先の種類と資格、役職で大きく差がある)
なるまでの難しさ★★★★★一級建築士試験は、学科試験と設計製図試験の2段階で、2025年の総合合格率は11.4%でした。学科で5科目125問を解いたあと、製図では6時間30分で建物の図面を描き上げます。大学で建築を学んでも、合格するまで数年かかる人が多く、さらに免許の登録には実務経験も必要です。二級建築士は総合合格率22.6%(2025年)で、一級よりは取りやすい資格です。
決めどき理系が中心

高校で理系を選び、大学の建築学科(工学部・理工学部・デザイン系学部)に進むのが最短。数学・物理を学んでおく

どんな職種がある?

押すと、その職種の仕事内容・必要な力・キャリアが見られます。

建築士の年収と昇進の流れ

設計スタッフ(資格取得前)330〜450万円
入社1〜3年、22〜26歳

先輩のもとで図面の一部を描き、模型や資料を作ります。現場に同行して工事の流れを学びながら、一級建築士試験の勉強をします。

担当者(一級建築士取得)420〜600万円
入社3〜7年、25〜30歳

一級建築士の免許を登録し、小さな建物や建物の一部を担当者として任されます。お客さんとの打ち合わせから図面、現場の確認まで一通り経験することが次の段階への条件です。

主任・プロジェクトリーダー550〜800万円
30代前半〜半ば

設計チームのリーダーとして、後輩を指導しながら一つのプロジェクトをまとめます。お客さんから信頼され、プロジェクトを予算と期限どおりに完成させた実績が求められます。

チーフアーキテクト・課長750〜1,100万円
30代後半〜40代

複数のプロジェクトや大きな建物の設計全体に責任を持ちます。コンペで勝つための提案や、新しいお客さんの獲得にもかかわります。

部長・設計部門の責任者1,000〜1,500万円
40代後半〜

設計部門全体の方針を決め、多くの建築士をまとめます。組織設計事務所やゼネコンでは、役員になる人もいます。

独立開業(設計事務所の所長)300〜2,000万円
30代〜

自分の設計事務所を開き、仕事の獲得から設計、スタッフの育成まで担当します。受ける仕事の数と規模で、収入の差がとても大きい段階です。

年収は目安です。会社や地域、本人の働き方で大きく変わります。

働き方で何が違う?

組織設計事務所経験を積むと700万〜1,000万円以上も

意匠、構造、設備などの専門家がそろい、超高層ビル、空港、病院、スタジアムなど大きく複雑な建物をチームで設計します。日建設計、日本設計、三菱地所設計などが知られています。役割分担がはっきりしていて、研修や福利厚生も整っています。

良いところ大きな建物にかかわれ、給料や働く環境が比較的整っている

大変なところ担当が分かれているため、若いうちは建物の一部しか担当できないことがある

アトリエ事務所若手は300万〜400万円台が多い

建築家個人の名前で開かれた少人数の設計事務所です。住宅、美術館、小さな公共建築などで、デザイン性の高い建物を作ります。建築家のもとで修業して、独立を目指す人が多く働いています。

良いところ若いうちから設計の全体にかかわれ、デザインの力を磨ける

大変なところ給料が低めで、締め切り前は非常に忙しいことが多い

ゼネコンの設計部・施工管理大手は800万〜1,200万円台が目安(全社員平均)

建設会社の設計部門で設計を担当したり、工事現場で施工管理をしたりします。設計から工事まで一貫して手がけるので、実際の作り方をよく知った建築士になれます。スーパーゼネコンの平均年収は1,000万円を超えます(2026年3月期、全社員)。

良いところ給料の水準が高く、設計と工事の両方の知識が身につく

大変なところ現場では残業や休日出勤が多く、転勤もある

ハウスメーカー・工務店400万〜800万円ほど(会社により異なる)

一戸建ての家やアパートを中心に設計します。家族と直接話しながら家を作るので、お客さんの喜びを身近に感じられます。二級建築士で活躍している人も多い分野です。

良いところお客さんと近い距離で仕事ができ、完成までの期間が比較的短い

大変なところ営業の目標があることや、土日に打ち合わせが入ることが多い

独立開業300万円以下〜数千万円(差がとても大きい)

自分の設計事務所を開き、住宅や店舗、公共建築などを設計します。コンペで勝ったり、口コミや紹介で仕事を増やしたりします。

良いところ自分の考える建築を作れ、定年がない

大変なところ仕事が安定せず、営業や経営もすべて自分の責任

代表的な会社・職場

組織設計事務所スーパーゼネコンハウスメーカー行政
日建設計 ›組織設計事務所

国内最大級の設計事務所で、超高層ビル、スタジアム、駅などの大きな建物を数多く設計しています。2024年版の売上高は約480億円です。

公表なし
日本設計組織設計事務所

超高層ビルや病院、公共建築などを設計する大手の設計事務所です。

公表なし
三菱地所設計組織設計事務所

三菱地所グループの設計事務所で、東京の丸の内などのオフィスビルや商業施設を手がけています。

公表なし
久米設計組織設計事務所

庁舎や病院、学校などの公共建築や、オフィスビルを設計する大手の設計事務所です。

公表なし
山下設計組織設計事務所

公共施設や病院、オフィスビルなどを設計する大手の設計事務所です。

公表なし
鹿島建設 ›スーパーゼネコン

超高層ビルや発電所、トンネルなどを手がける大手の総合建設会社です。設計部門も持っています。

約1,245万円(2026年3月期、単体の全社員平均)
大林組 ›スーパーゼネコン

東京スカイツリーの建設などで知られる大手の総合建設会社です。

約1,239万円(2026年3月期、単体の全社員平均)
大成建設 ›スーパーゼネコン

超高層ビル、スタジアム、トンネルなどを手がける大手の総合建設会社です。

約1,191万円(2026年3月期、単体の全社員平均)
清水建設 ›スーパーゼネコン

オフィスビルや病院、研究施設などを手がける大手の総合建設会社です。

約1,043万円(2026年3月期、単体の全社員平均)
竹中工務店 ›スーパーゼネコン

設計と施工を一貫して行うことで知られる大手の総合建設会社で、株式は上場していません。

非上場のため有価証券報告書の公表なし
大手ハウスメーカー(積水ハウス、大和ハウス工業、住友林業など)ハウスメーカー

全国で一戸建てやアパート、マンションを建てる会社です。建築士が設計担当として多く働いています。

各社の有価証券報告書による
国土交通省・都道府県・市役所行政

建物の安全の審査や、公共建築の計画を担当します。建築職の公務員として働く建築士もいます。

公務員の給料表による

›がついた会社は、会社図鑑で詳しく解説しています。

どうやって稼いでいる?

お客さん(建てる人) 目的・広さ・予算・完成時期を伝える 設計と工事を分ける 設計と工事をまとめる 設計料 設計事務所 設計と工事監理 図面どおりか 確認 建設会社 工事をする 工事代金と 一緒に ゼネコン ハウスメーカー 設計した会社が そのまま工事も ほかにも、こんな仕事で報酬 コンペ 勝てば大きな 仕事になる 耐震診断 改修計画や 土地の使い方 確認の審査 役所の代わりに 審査の手数料 建物は一つひとつがオーダーメイド 良い仕事が、次の紹介につながる
コンペに負けると、準備にかけた手間は報酬になりません

建築士の収入の中心は、お客さんからもらう「設計料(設計・監理報酬)」です。設計料は、建物の規模や難しさ、かかる手間に応じて決まり、国土交通省が業務量の目安(告示)を示しています。設計事務所は、設計と監理の仕事で報酬を受け取り、そこから社員の給料や事務所の経費を払います。ゼネコンやハウスメーカーでは、設計は工事とセットで受ける仕事の一部で、会社の主な収入は工事代金です。建物は一つひとつがオーダーメイドなので、良い仕事をして次のお客さんを紹介してもらえるかどうかが大切です。

1
設計料(設計・監理報酬)

お客さんから、建物を設計し、工事を監理する対価として報酬をもらいます。たとえば、住宅なら工事費の一定の割合を目安にすることもあり、大きな建物ほど設計料も大きくなります。

2
設計施工一括(ゼネコン・ハウスメーカー)

建設会社が設計と工事をまとめて引き受け、工事代金と一緒に受け取ります。たとえば、ハウスメーカーで家を建てると、設計した会社がそのまま工事もします。

3
コンペ・プロポーザル

公共の建物などでは、複数の設計事務所が案を出し合い、最も良い案を出した事務所が設計を任される「コンペ」や「プロポーザル」が行われます。勝てば大きな仕事になりますが、負けると準備にかけた手間は報酬になりません。

4
調査・診断・コンサルティング

古い建物が地震に耐えられるかを調べる耐震診断、建物を長く使うための改修計画、土地をどう使うかの提案などで報酬をもらいます。

5
建築確認の審査(指定確認検査機関)

役所の代わりに、建物が法律に合っているかを審査する民間の機関もあり、審査の手数料で収入を得ています。建築士の資格を持つ人が働いています。

入ってからどうなっていく?

大学・大学院建築を学ぶ時期大学の建築学科で、建築の歴史、構造、設備、法律、設計を学びます。設計演習では毎週のように課題が出て、図面と模型を作って発表します。卒業設計に打ち込み、大学院に進む人も多いです。大学で指定の科目を取って卒業すると、一級建築士の受験資格が得られます。
1〜3年目図面と現場を覚える設計事務所やゼネコン、ハウスメーカーなどに入り、先輩のもとで図面を描いたり、模型を作ったり、現場に同行したりします。ゼネコンでは最初に現場の施工管理を経験することが多いです。働きながら一級建築士の学科試験と製図試験の勉強をします。
3〜7年目一級建築士を取り、担当者になる一級建築士に合格し、実務経験の条件を満たして免許を登録します。小さな建物や建物の一部を担当者として任され、お客さんとの打ち合わせから図面、現場の確認までを経験します。
30代プロジェクトのリーダー大きな建物の設計チームのリーダーになり、後輩を指導しながらプロジェクトを進めます。構造や設備の専門家は、構造設計一級建築士や設備設計一級建築士を目指します。この時期に独立する人や、別の設計事務所やデベロッパーに転職する人もいます。
40代部門の管理者・独立した事務所の所長組織設計事務所やゼネコンでは、設計部門の部長やチーフアーキテクトとして、複数のプロジェクトをまとめます。独立した人は、自分の事務所の所長として、仕事の獲得からスタッフの育成までを担当します。
50代以降経営者・まちづくりの専門家事務所の役員や経営者として会社を動かしたり、大学で教えたり、まちづくりや建築の審査会の委員を務めたりする人もいます。建築士には定年がないため、独立した人は長く設計を続けられます。

ビルが建つまで(設計から完成まで)

図面を描く 1 企画・ヒアリング 目的・広さ・予算を聞き、敷地を調べる 2 基本設計 形・間取り・外観を模型や3Dで提案 3 実施設計 工事ができる細かい図面と仕様書 建物ができる 4 建築確認と工事の発注 法律に合っているか確認してもらう 5 工事と工事監理 現場で図面どおりかを確かめる 6 検査と完成 完了検査のあと、お客さんに引き渡す 7 完成後のフォロー 不具合や将来の改修の相談にのる 描いて終わりではなく、現場で確かめる
基本設計では、スケッチや模型、3Dの画像で案を固めていきます
1
企画・ヒアリング

お客さんから建物の目的、広さ、予算、完成時期を聞きます。敷地を調べ、どのくらいの大きさの建物が建てられるかを確認します。

2
基本設計

建物の形、間取り、外観、構造の方式などの大きな方針を決めます。スケッチや模型、3Dの画像でお客さんに提案し、案を固めていきます。

3
実施設計

工事ができるように、細かい図面を描きます。意匠、構造、設備のすべての図面と、材料や工事の方法を書いた仕様書をまとめます。

4
建築確認と工事の発注

役所や検査機関に建築確認を申請し、法律に合っていることを確認してもらいます。建設会社を選び、工事の契約をします。

5
工事と工事監理

建設会社が工事を進め、建築士は定期的に現場へ行って図面どおりにできているかを確認します。

6
検査と完成

工事が終わったら、役所や検査機関の完了検査を受けます。問題がなければお客さんに建物を引き渡します。

7
完成後のフォロー

建物が使われ始めたあとも、不具合の相談や、将来の改修の相談にのります。

一級建築士試験

合格率総合 11.4%(2025年。学科16.5%、設計製図35.0%)。二級建築士は総合22.6%(2025年)
勉強時間の目安働きながら資格学校に通い、1〜3年かけて合格する人が多い。学科で1,000時間程度と言われることが多い
受験資格大学・短大・高専・専門学校などで国土交通大臣が指定する建築の科目を修めて卒業した人、二級建築士など。免許の登録には、単位数に応じて2〜4年の実務経験が必要
一級建築士試験は、学科と製図の2段階を両方突破する必要があり、総合の合格率は1割ほどです。学科は5科目すべてに基準点があり、苦手な科目を作れません。製図は6時間30分という長い時間で、条件を守った図面を正確に描き上げる体力と集中力が必要です。多くの人が働きながら資格学校に通って勉強し、合格まで数年かかることも珍しくありません。建築系の国家資格の中で最も難しい資格の一つです。
試験科目(押すと中身が見られます)
合格までの流れ
  1. 受験資格を得る大学などで指定科目を修めて卒業します。
  2. 学科試験(7月)5科目125問の四肢択一式です。各科目の基準点と合計点の両方を超える必要があります。
  3. 設計製図試験(10月)課題に沿って6時間30分で図面を描きます。ランクⅠだけが合格です。
  4. 合格発表(12月)製図試験の合格で、一級建築士試験に合格となります。
  5. 実務経験と免許の登録学んだ単位数に応じた実務経験(2〜4年)を満たし、免許を登録します。

建築士のある1日

9:00

設計事務所に出勤して、メールと今日の予定を確認します。チームで進行中のプロジェクトの状況を共有します。

9:30

担当しているマンションの図面をBIMソフトで修正します。お客さんから言われた「玄関をもう少し広く」という変更を反映させます。

11:00

構造設計の担当者と打ち合わせをします。リビングの柱を減らしたいという希望が、地震の強さの面で可能かを相談します。

12:00

お昼休みです。

13:00

お客さんとオンラインで打ち合わせをします。外壁の色のサンプルや3Dの完成イメージを見せながら説明します。

14:30

工事中の現場へ移動します。ヘルメットをかぶって、コンクリートを流し込む前の鉄筋の本数や間隔が図面どおりかを確認します。

16:30

事務所に戻り、現場で見つけた修正点を記録して、建設会社に伝えます。

17:00

新しいプロジェクトのコンペに向けて、チームでアイデアを出し合い、模型を作ります。

19:00

退勤します。締め切り前は遅くまで図面を描くこともあります。

もっと知りたい人へ

そもそも建築士とは

建築士は、建築士法という法律で決められた国家資格で、建物の設計と工事監理を行う専門家です。建物は、住む人や使う人の命を守るものなので、一定の規模以上の建物は、建築士でなければ設計や工事監理ができないと法律で決まっています。たとえば、学校や病院、デパート、高層マンションなどは、多くの人が使うため、一級建築士でなければ設計できません。日本には、一級建築士が約38万4千人、二級建築士が約79万6千人、木造建築士が約1万9千人登録しています(2025年4月)。ただし、登録している人の中には、すでに引退した人や、設計以外の仕事をしている人も含まれます。

一級・二級・木造のちがい

一級建築士は、すべての建物を設計できます。二級建築士は、主に住宅など比較的小さな建物を設計でき、木造建築士は、小さな木造の建物を設計できます。たとえば、大きなオフィスビルや駅、体育館は一級、一般的な一戸建ての家は二級でも設計できることが多いです。一級は国土交通大臣、二級と木造は都道府県知事の免許です。

建築家と建築士

「建築家」という言葉は、デザイン性の高い建物を設計する人を呼ぶことが多いですが、法律上の資格の名前ではありません。法律で決められた資格の名前は「建築士」です。有名な建築家の多くも、一級建築士の資格を持っています。

工事監理とは

工事監理は、建物が設計図どおりに作られているかを、建築士の立場で確認することです。建設会社の社員が行う「施工管理」とは別の仕事で、お客さんの代わりに工事をチェックする役割があります。

なるためのルート

建築士になるには、大学、短大、高専、専門学校、工業高校などで建築を学び、建築士試験に合格して免許を登録する必要があります。2020年の制度の改正で、一級建築士は、大学などで指定の科目を学んで卒業すれば、実務経験がなくても試験を受けられるようになりました。ただし、免許の登録には、学んだ科目の単位数に応じて2〜4年の実務経験が必要です。大学の建築学科を卒業すると、一般的に2年の実務経験で登録できます。

  1. 高校理系を選び、数学と物理をしっかり学びます。美術の授業でデッサンや立体の表現に取り組むのも役立ちます。工業高校の建築科に進む道もあります。
  2. 大学の建築学科工学部、理工学部、デザイン系の学部などにある建築学科に進みます。指定科目を取って卒業すると一級建築士の受験資格が得られます。大学院に進む人も多いです。
  3. 就職設計事務所、ゼネコン、ハウスメーカー、役所などに就職し、実務経験を積み始めます。
  4. 一級建築士試験7月の学科試験に合格したあと、10月の設計製図試験に合格します。学科に合格すると、その後の製図試験で学科が免除される期間があります。
  5. 実務経験と免許の登録学んだ単位数に応じて2〜4年の実務経験を積み、国土交通大臣の免許を登録します。
  6. 専門資格へ経験を積んで、構造設計一級建築士や設備設計一級建築士を目指す人もいます。
大学卒業後すぐに受験できる

以前は、大学卒業後に2年間の実務経験がないと一級建築士試験を受けられませんでしたが、今は卒業した年から受験できます。たとえば、大学4年生の3月に卒業し、その年の7月の学科試験を受けることもできます。合格後、実務経験を積んでから免許を登録します。

工業高校から目指すルート

工業高校の建築科などで指定の科目を学ぶと、卒業後すぐに二級建築士の試験を受けられます。二級建築士の免許の登録には2年以上の実務経験が必要です。その後、二級建築士として働きながら一級建築士を目指すこともできます。

試験・選考の詳細

一級建築士試験は、7月の学科試験と10月の設計製図試験の2段階です。学科試験は、計画、環境・設備、法規、構造、施工の5科目、合計125問の四肢択一式で、各科目の基準点と合計点の両方を超える必要があります。設計製図試験は、事前に発表された課題(たとえば2026年は「ホテル」)について、6時間30分で図面と計画の説明を書き上げます。2025年は、学科の合格率が16.5%、製図の合格率が35.0%、両方を合わせた総合の合格率が11.4%でした。

学科試験の科目

計画は建物の使いやすさや歴史、環境・設備は空調や照明、法規は建築基準法などの法律、構造は力学と材料、施工は工事の方法を問われます。法規の時間だけは、法令集(法律の本)を持ち込めます。

設計製図試験の評価

製図試験は、ランクⅠからⅣまでの4段階で評価され、ランクⅠだけが合格です。図面の正確さだけでなく、課題の条件を守っているか、法律に違反していないか、使いやすい計画になっているかが見られます。2026年から製図試験でも法令集を持ち込めるようになりました。

学科合格の免除制度

学科試験に合格すると、その後の5年間のうち3回まで、学科試験を受けずに製図試験を受けられます。そのため、学科に合格した年に製図に落ちても、翌年以降に製図だけ再挑戦できます。

年収のリアル

厚生労働省の統計をもとにした建築設計技術者の年収の目安は約679万円です(令和7年調査)。ただし、勤め先の種類によって差がとても大きいのが建築の世界の特徴です。スーパーゼネコンの平均年収は1,000万円を超えますが、有名な建築家が開く小さなアトリエ事務所では、若いうちは年収300万円台のことも珍しくありません。一級建築士の資格を持つと資格手当がつく会社が多く、転職でも有利になります。

勤め先によるちがい

一般的に、スーパーゼネコンや大手デベロッパー、組織設計事務所は給料が高め、小さなアトリエ事務所や工務店は低めと言われます。たとえば、同じ一級建築士でも、勤め先によって年収が2倍近く違うこともあります。

独立すると

独立した建築士の収入は、受けた仕事の数と設計料で決まります。有名になって大きな仕事を受ければ収入は大きくなりますが、仕事が少ない年は収入が減ります。

資格手当

一級建築士の資格を持つと、毎月数万円の資格手当を出す会社が多いです。大きな建物の設計には一級建築士が必要なので、会社にとっても資格を持つ社員は大切です。

やりがい

建築士のやりがいは、自分が設計した建物が実際に形になり、何十年も人々に使われ続けることです。たとえば、自分が設計した学校で子どもたちが走り回る姿や、設計した家で家族が笑顔で暮らす様子を見られるのは、ほかの仕事ではなかなか味わえない喜びです。また、建物は街の景色の一部になるので、まちづくりにかかわっている実感も得られます。デザイン、工学、法律、お金など、いろいろな知識を組み合わせて一つの答えを出す、パズルのような面白さもあります。

形に残る

建物は、数十年から100年以上残ることもあります。自分が死んだあとも、設計した建物が誰かの役に立ち続けると思うと、大きなやりがいを感じられます。

人の命を守る

地震や火事のときに、建物が倒れず、人が安全に逃げられるようにするのも建築士の大切な役割です。目立たないけれど、人の命を守る仕事です。

チームでつくる喜び

建物は、建築士、構造や設備の専門家、職人さん、お客さんなど、たくさんの人の力で完成します。完成したときに、みんなで喜びを分かち合えます。

大変なこと・きついこと

建築士の仕事は、締め切りに追われることが多いです。コンペの提出前や、工事に間に合わせるための図面の修正などで、夜遅くまで働くこともあります。また、お客さんの要望、予算、法律、安全、デザインのすべてを満たす答えを出すのは簡単ではなく、何度も案を作り直すことがあります。建物に問題があれば、建築士が責任を問われることもあり、責任の重い仕事です。

長時間労働になりやすい

建設業界は長時間労働が問題になってきた業界で、2024年からは建設業にも残業時間の上限の規制が適用されました。働き方の改善が進められていますが、締め切り前は忙しくなりやすいです。

予算との戦い

材料の値段が上がると、同じ予算で同じ建物を作るのが難しくなります。たとえば、お客さんが希望したガラス張りの外観を、予算の都合で変えなければならないこともあります。

資格取得の大変さ

一級建築士試験は、働きながら勉強する人が多く、学科と製図の両方に合格するまで数年かかる人もいます。資格学校に通うための費用も大きな負担になります。

向いている人

建築士に向いているのは、建物や街を見るのが好きな人、ものを作るのが好きな人です。頭の中で立体をイメージする力や、絵や図で考えを表す力があると役立ちます。また、建物は多くの人と協力して作るので、人の話を聞き、自分の考えを説明できるコミュニケーション力も大切です。数学や物理の知識は、特に構造や設備の分野で必要になります。

観察するのが好きな人

たとえば、駅の階段の幅や、ショッピングモールの通路の明るさ、家の窓の位置など、身の回りの建物を「なぜこうなっているんだろう」と観察するのが好きな人は、建築士に向いています。

粘り強い人

設計は、一度で完成することはほとんどなく、何度も案を作り直します。うまくいかなくても、あきらめずに工夫を続けられる人が向いています。

理系とデザインの両方に興味がある人

建築は、工学とデザインの両方が必要な分野です。数学や物理も、美術や歴史も好きという人には、とても面白い分野です。

高校生のうちにできること

建築学科の多くは理系の学部にあるので、高校では理系を選び、数学と物理をしっかり学ぶことが大切です。また、建物を実際に見に行くことは、どんな勉強よりも建築への理解を深めます。有名な建築家が設計した美術館や図書館は、誰でも入れるものが多いので、休日に訪ねてみるとよいです。スケッチやデッサンの練習、模型づくりも、建築学科での学びに役立ちます。

建物を見に行く

たとえば、近くの美術館、図書館、駅、新しくできた商業施設などで、天井の高さや光の入り方、人の流れを観察してみましょう。気になった建物は、誰が設計したのかを調べると、建築家の考え方がわかってきます。

絵や模型で表現する

自分の部屋や学校の教室の間取りを、方眼紙に描いてみるのも良い練習です。段ボールや紙で簡単な模型を作ってみると、立体を考える力がつきます。

進学先の選び方

建築学科は、工学部、理工学部、デザイン系の学部、生活科学系の学部などにあります。一級建築士の受験資格を得られる学科かどうかを、大学のホームページで確認しましょう。

代表的な会社・職場

建築士の職場には、大きく分けて、組織設計事務所、アトリエ事務所、ゼネコン(建設会社)、ハウスメーカー・工務店、デベロッパー、役所などがあります。組織設計事務所は数百人から数千人の建築士が働き、超高層ビルや空港、スタジアムなど大きな建物を設計します。アトリエ事務所は、建築家が自分の名前で開く小さな事務所で、デザイン性の高い建物を手がけます。ゼネコンは、設計と工事の両方を行う会社です。

組織設計事務所

日建設計、日本設計、三菱地所設計、久米設計、山下設計などが知られています。日建設計は国内最大級の設計事務所で、2024年版の売上高は約480億円でした。

スーパーゼネコン

鹿島建設、大林組、大成建設、清水建設、竹中工務店の5社は、売上が特に大きく「スーパーゼネコン」と呼ばれます。どの会社にも大きな設計部があり、設計から工事まで一貫して手がけます。

ハウスメーカー

積水ハウス、大和ハウス工業、住友林業などは、全国で一戸建てやアパートを建てる大手のハウスメーカーです。建築士が設計担当として多く働いています。

組織設計事務所とアトリエ事務所のちがい

設計事務所には、大きく「組織設計事務所」と「アトリエ事務所」の2つのタイプがあります。組織設計事務所は、意匠、構造、設備などの専門家が社内にそろい、チームで大きな建物を設計します。アトリエ事務所は、建築家個人の名前で開かれ、その建築家の考え方やデザインを大切にした建物を作ります。どちらに入るかで、働き方や身につく力が大きく変わります。

組織設計事務所の特徴

超高層ビル、空港、病院、スタジアムなど、大きく複雑な建物を担当します。給料や福利厚生が整っていることが多く、チームで役割を分けて働きます。たとえば、一つの建物に何十人もの建築士がかかわることもあります。

アトリエ事務所の特徴

住宅、美術館、小さな公共建築など、デザイン性の高い建物を手がけます。少人数なので、若いうちから設計の全体にかかわれますが、給料は低めで、仕事は忙しいことが多いです。有名建築家の事務所で修業してから独立する人も多いです。

建物ができるまでにかかわる人たち

一つの建物ができるまでには、たくさんの人がかかわります。建物を建てたいお客さん(施主)、設計をする建築士、構造や設備の専門家、建物の安全を審査する役所や検査機関、工事をするゼネコン、そして実際に手を動かす大工さん、鉄筋屋さん、電気屋さんなどの職人さんです。建築士は、これらの人たちの真ん中に立って、建物が完成するまでの全体をまとめる役割を担います。

施主とデベロッパー

施主は建物を建てるお客さんです。マンションや商業施設では、土地を買って建物を企画し、完成後に売ったり貸したりする「デベロッパー」と呼ばれる会社が施主になることが多いです。

職人さんとの協力

設計図を形にするのは、現場の職人さんたちです。建築士が現場に行って職人さんと話すことで、図面ではわからなかった問題に気づき、より良い建物ができます。

よくある質問

絵が下手でも建築士になれますか?

なれます。今はCADやBIMといったソフトで図面を描くのが一般的なので、手描きの絵の上手さはそれほど必要ありません。ただし、考えをすばやくスケッチで伝えられると便利なので、練習しておくと役立ちます。

文系でも建築士になれますか?

建築学科の多くは理系の学部にあるため、入試で数学や物理が必要なことが多いです。ただし、一部の大学では文系の科目で受験できる建築系の学科もあります。意匠設計では、歴史や文化、人の暮らしへの関心も大切です。

一級建築士は何年くらいで取れますか?

大学の建築学科を卒業してすぐに受験でき、早い人は1〜2年で合格します。ただし、総合の合格率は11.4%(2025年)で、何度も挑戦する人も多いです。免許の登録には、さらに2年ほどの実務経験が必要です。

建築士と大工さんはどう違いますか?

建築士は建物を設計し、図面のとおりに工事が進んでいるかを確認する仕事です。大工さんは、木材を加工して組み立てるなど、実際に建物を作る職人さんです。建築士が描いた図面をもとに、大工さんなどの職人さんが建物を形にします。

女性の建築士は多いですか?

まだ男性が多いですが、女性の建築士は増えています。大学の建築学科でも女子学生の割合が高まっていて、住宅設計やインテリアなどの分野を中心に、多くの女性が活躍しています。

有名な建築家になるにはどうすればいいですか?

多くの有名建築家は、大学で建築を学んだあと、アトリエ事務所や組織設計事務所で修業し、独立しています。コンペで勝ったり、話題になる建物を設計したりして名前が知られるようになります。簡単な道ではありませんが、自分の考えを形にし続けることが大切です。

AIが設計するようになったら建築士はいらなくなりますか?

BIMやAIによって、図面の作成や法律のチェックなどは効率化が進んでいます。しかし、お客さんの思いを聞き取り、敷地や街の特徴を読み取って、最もふさわしい建物を考える部分は、人間の建築士の大切な役割です。新しい道具を使いこなす力が、これからの建築士に求められます。

海外で働くことはできますか?

日本の建築士の資格は日本国内のものですが、組織設計事務所やゼネコンには海外のプロジェクトを担当する部署があります。海外の大学院で学んだり、海外の設計事務所で働いたりする人もいます。英語力があると、活躍の場が広がります。

二級建築士だけでも仕事はできますか?

できます。一般的な一戸建ての家など、比較的小さな建物は二級建築士でも設計できるので、住宅を中心に活躍している二級建築士はたくさんいます。大きな建物を設計したい場合は、一級建築士が必要になります。

この分野のことば

年収について:厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)」の建築設計技術者の年収です(令和7年賃金構造基本統計調査をもとにした目安)。建築士の資格を持つ人だけの数字ではなく、建築の設計にかかわる技術者全体の目安です。スーパーゼネコンの平均年収は1,000万円を超えますが(2026年3月期の有価証券報告書)、これは設計以外の社員も含めた会社全体の平均です。

数字はすべて公開データにもとづく目安です。出典は出典・サイトポリシーにまとめています。

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