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同じ「不動産」でも、街をつくる人・建てる人・売買をつなぐ人・貸して稼ぐ人で仕事も年収もまるで違う

不動産・建設

不動産・建設業界は、土地や建物にかかわる仕事をまとめた業界です。たとえば、渋谷や丸の内の高層ビル、駅前のショッピングモール、家族で住むマンション、学校の体育館まで、すべてこの業界の人たちがつくり、売り、貸し、管理しています。大きく分けると、街やビルの計画を立てる「デベロッパー」、実際に建物を建てる「ゼネコン」、家や土地の売り買いをつなぐ「仲介」、ビルやマンションを持って貸す「不動産賃貸」の4つがあり、同じ業界でも仕事の中身と年収の水準はかなり違います。どの立場を選ぶかで働き方が大きく変わるので、違いを知ってから選ぶことが大切です。

平均年収の目安約500万〜1,900万円立場と会社で大きく違います仲介や地場の会社で400万〜600万円台、スーパーゼネコンで約1,000万〜1,200万円、大手デベロッパーで約1,300万〜1,900万円、少数精鋭のビル賃貸会社では2,000万円を超える例もあります
なるまでの難しさ★★★★★大手デベロッパーは1社あたりの新卒採用が数十人程度と少なく、総合商社並みの難関と言われます。スーパーゼネコンは採用人数が多めですが、施工管理の技術者として一級建築施工管理技士などの国家資格を取り続ける必要があります。仲介会社は採用の門は広い一方、成果がはっきり数字で出る厳しさがあります。
決めどき文系・理系どちらでも

高校で文理を選ぶとき(建築・土木の技術者なら理系の建築学科・土木学科が最短)、事務系なら大学3年の夏

不動産・建設の業界マップ

ビルや街を開発するデベロッパー、家を建てるハウスメーカー、家の売り買いや賃貸を仲立ちする会社、工事を担うゼネコン、プラントや設備工事・設計の専門会社に分かれます。

となりの業界

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不動産・建設の年収と昇進の流れ

若手社員(ゼネコン施工管理・デベロッパー総合職)450〜650万円
入社1〜3年、22〜26歳

現場の一担当やプロジェクトのアシスタントとして基本を学びます。宅建や施工管理技士の受験準備を進め、任される範囲を広げることが次の段階への条件です。

担当者・工事主任600〜1,000万円
入社4〜7年、26〜30歳

自分の担当物件や工種を持ち、一人で判断する場面が増えます。資格の取得と、担当プロジェクトをやり遂げた実績で次の段階に進みます。

主任・係長・現場副所長800〜1,300万円
入社8〜12年、30〜35歳

プロジェクトの実務の中心として、後輩を指導しながら大きな案件を動かします。一級の資格や、大型案件での成果が昇進のかぎになります。

課長・現場所長1,000〜1,600万円
入社13〜20年、35〜42歳

チームや一つの現場の責任者として、予算と人を預かります。ゼネコンの現場所長は、大型の工事全体の責任を負います。

部長・支店長1,300〜2,000万円
入社20年以降、43歳〜

事業部や支店全体の業績に責任を持ちます。会社全体の投資判断や、受注の戦略にかかわります。

役員2,000〜4,000万円
50代〜

会社の経営そのものにかかわります。人数はごく限られます。

年収は目安です。会社や地域、本人の働き方で大きく変わります。

働き方で何が違う?

大手デベロッパー平均約750万〜1,900万円(三井不動産1,756万円・三菱地所1,347万円・住友不動産749万円、2025年3月期)

三井不動産、三菱地所、住友不動産などの大手デベロッパーは、オフィスビル、商業施設、マンション、ホテル、物流施設など幅広い不動産を手がけます。土地の取得から企画、運営まで、プロジェクト全体を動かす立場です。社員数は少なめで、一人ひとりの担当する金額が大きくなります。完成後も長くビルを持ち続けて家賃で稼ぐため、街づくりに長くかかわれます。

良いところ年収が高く、街全体をつくるスケールの大きな仕事ができます。

大変なところ採用人数が少なく難関で、何百億円もの判断を担うプレッシャーがあります。

スーパーゼネコン・ゼネコンスーパーゼネコンで平均約1,000万〜1,200万円(2025年3月期)、建築施工管理技術者全体では679.1万円(令和7年調査)

鹿島建設、大林組、大成建設、清水建設、竹中工務店の5社がスーパーゼネコンです。ビルや工場、トンネル、ダム、橋など、あらゆる建設工事を請け負います。技術系社員は工事現場で施工管理を担当し、研究所での技術開発や設計部門もあります。準大手、中堅、地域の建設会社まで、規模はさまざまです。

良いところ自分がつくった建物が形として残り、技術者として専門性を深められます。

大変なところ現場勤務や転勤が多く、工期が迫ると忙しくなりがちです。

不動産仲介会社住宅・不動産営業で平均660.7万円(令和7年調査)、成果で大きく変わります

三井不動産リアルティ、住友不動産販売、東急リバブルなどの大手から、駅前の地域密着の会社まであります。家や土地の売買、部屋探しをお手伝いし、成約したときの手数料が収入です。宅建の資格が強く求められます。土日に営業し、平日に休む会社が多いです。

良いところ成果が年収に反映されやすく、お客さんから直接感謝されます。

大変なところ成績のプレッシャーがあり、土日や夜に働くことが多くなります。

不動産賃貸会社(ビルを持って貸す会社)ヒューリック2,036万円(2024年12月期)、森ビル1,011万円など、会社によって大きく違います

ヒューリック、東京建物、森ビルなどのように、自社でビルや商業施設を持ち、家賃収入で稼ぐことに力を入れる会社です。物件の取得、改装、テナント集め、売却までを少ない人数で行います。家賃という安定した収入があるため、業績が比較的安定しやすいのが特徴です。

良いところ少人数で大きな資産を動かせ、年収が高い会社があります。

大変なところ採用人数がごく少なく、金利や景気で物件の価値が変わるリスクがあります。

代表的な会社・職場

大手デベロッパー不動産賃貸スーパーゼネコン大手仲介
三井不動産 ›大手デベロッパー

東京ミッドタウン、ららぽーと、三井アウトレットパークなど、オフィス・商業施設・住宅を幅広く手がけます。

1,756万円(2025年3月期、算定方法の変更あり)
三菱地所 ›大手デベロッパー

東京・丸の内のビル群の多くを持ち、街全体を運営しています。

1,347万円(2025年3月期)
住友不動産 ›大手デベロッパー

都心のオフィスビルの賃貸と、マンションの分譲に強みがあります。

749万円(2025年3月期)
東京建物 ›大手デベロッパー

オフィスビルの賃貸や、マンション「ブリリア」の分譲を手がけます。

1,185万円(直近の有価証券報告書ベース)
森ビル ›大手デベロッパー

六本木ヒルズや虎ノ門ヒルズなど、都心の大規模再開発で知られます。

1,011万円(直近の有価証券報告書ベース)
ヒューリック不動産賃貸

都心の駅近のビルを中心に保有し、家賃収入で稼ぐことに力を入れています。

2,036万円(2024年12月期、単体)
鹿島建設 ›スーパーゼネコン

超高層ビルや原子力発電所、ダムなどに強みがあり、2025年3月期の連結売上高は2兆9,118億円です。

1,184.7万円(2025年3月期)
大林組 ›スーパーゼネコン

東京スカイツリーの施工などで知られる大手ゼネコンです。

1,140.4万円(2025年3月期)
大成建設 ›スーパーゼネコン

国立競技場の施工などを手がけ、土木分野にも強みがあります。

1,058.0万円(2025年3月期)
清水建設 ›スーパーゼネコン

建築分野に強く、技術研究所での研究開発にも力を入れています。

1,011.6万円(2025年3月期)
竹中工務店 ›スーパーゼネコン

建築工事が中心で、設計と施工を一体で行うことに強みがあります。

1,032.1万円(2024年12月期)
三井不動産リアルティ ›大手仲介

「三井のリハウス」のブランドで、個人の住宅の売買仲介を全国で行っています。

非上場のため公表なし
東急リバブル ›大手仲介

東急不動産ホールディングスのグループで、住宅や投資用不動産の仲介を行っています。

非上場のため公表なし

›がついた会社は、会社図鑑で詳しく解説しています。

どうやって稼いでいる?

同じ業界でも、立場で稼ぎ方がちがう デベロッパー 売る・貸す マンションを建てて売る ビルを建てて家賃を得る ゼネコン 工事の請負 工事の代金から、かかった 費用を引いた差が利益 仲介会社 仲介手数料 売買や賃貸の契約が 成立したら受け取る 不動産賃貸会社 家賃+売却益 毎月の家賃が安定収入 ビルを売って入れ替え 例:三井不動産の事業利益 2025年3月期 賃貸 1,764億円 分譲 1,670億円 マネジメント 716億円 建てる・売る・貸す・つなぐで稼ぐ
仲介手数料の上限は、たとえば3,000万円の家なら96万円(+消費税)です

不動産・建設業界のお金の流れは、立場によってまったく違います。デベロッパーは、土地を買って建物を建て、それを「売る」か「貸す」かで稼ぎます。たとえば三井不動産の2025年3月期の事業利益は、ビルや商業施設を貸す賃貸が1,764億円、マンションなどを売る分譲が1,670億円で、この2つが大きな柱です。ゼネコンは、デベロッパーや国・自治体から工事を請け負い、工事の代金と実際にかかった費用の差で利益を出します。鹿島建設の2025年3月期の連結売上高は2兆9,118億円です。仲介会社は、自分では不動産を持たず、売買や賃貸の取引が成立したときの手数料で稼ぎます。不動産賃貸会社は、自社でビルを持ち、毎月の家賃という安定した収入で稼ぎ、ときどき物件を売って売却益も得ます。

1
分譲(売って稼ぐ)—デベロッパー

マンションや戸建て、オフィスビルを建てて売り、建築費や土地代との差額で利益を得ます。たとえば、1戸5,000万円のマンションを100戸売れば50億円の売上になります。景気や金利の影響を受けやすく、売れ残ると大きな損失になります。

2
賃貸(貸して稼ぐ)—デベロッパー・不動産賃貸会社

オフィスビルや商業施設、賃貸マンションを持ち、毎月の家賃を受け取ります。一度建てれば何十年も収入が入る安定した稼ぎ方で、大手デベロッパーや不動産賃貸会社の利益の土台です。ただし建物を建てたり買ったりするのに巨額のお金が必要です。

3
工事の請負—ゼネコン

発注者から「このビルをこの金額で建ててほしい」と依頼を受け、工事を完成させて代金を受け取ります。専門業者への支払いや資材費を差し引いた残りが利益で、資材や人件費が値上がりすると利益が減ることがあります。

4
仲介手数料—仲介会社

売買や賃貸の契約が成立したときに、売主・買主などから手数料を受け取ります。売買の手数料の上限は、400万円を超える物件で「取引価格×3%+6万円(+消費税)」と法律で決まっており、2024年7月からは800万円以下の物件は一律30万円(+消費税)まで受け取れるようになりました。たとえば3,000万円の家なら上限は96万円(+消費税)です。

5
管理・運営のフィー—管理会社・デベロッパー

マンションやビルの管理、駐車場やホテルの運営などで、毎月の管理料や運営の手数料を得ます。三井不動産でも、こうしたマネジメントの事業利益が716億円(2025年3月期)あります。

6
物件の売却益—不動産賃貸会社・デベロッパー

持っているビルの価値が上がったところで、投資家やJ-REIT(不動産投資信託)に売って利益を得ます。売ったお金で別の物件を買い、資産を入れ替えていきます。

入ってからどうなっていく?

1〜3年目現場と基本を学ぶ時期デベロッパーでは、ビルの運営やマンション販売の現場、ゼネコンでは工事現場、仲介会社では営業店に配属されることが多いです。宅地建物取引士(宅建)は多くの会社で入社前後に取得を勧められます。ゼネコンの技術系は、実務経験を積みながら施工管理技士の受験準備を始めます。
4〜7年目担当を任される時期デベロッパーでは土地の取得やリーシングで一つのプロジェクトを担当し、ゼネコンでは工事主任として工種ごとの管理を任されます。仲介会社では自分の顧客を多く持ち、成績上位の人は早くから昇進します。
8〜15年目(30代)プロジェクトの中心デベロッパーでは大規模な再開発のチームリーダー、ゼネコンでは現場の副所長や所長、仲介会社では店長として活躍します。一級建築施工管理技士や一級建築士など、上位の資格を取る人が多い時期です。
40代管理職・事業責任者デベロッパーでは部長として事業全体の判断にかかわり、ゼネコンでは大型現場の所長や支店の工事部長になります。仲介会社ではエリアの責任者として複数の店舗を率います。
50代役員・グループ会社の経営役員として会社の経営にかかわる人や、グループの管理会社、ホテル運営会社などの社長になる人もいます。ゼネコンでは、技術の伝承や安全管理の責任者として後輩を育てる立場にもなります。
転職・独立よくある別ルートデベロッパーやゼネコンから、不動産ファンド、J-REITの運用会社、外資系の不動産サービス会社に移る人がいます。ゼネコンの技術者は、デベロッパーの建築部門や官公庁の技術職に転じることもあります。仲介の経験者は、宅建の資格を生かして自分の不動産会社を開業する人が少なくありません。

ビルが建って街に根づくまで

1 土地を探して買う デベロッパー 再開発は何年も 2 計画を立てる デベロッパー 費用と家賃を計算 3 設計する 設計事務所 ゼネコン設計部 4 建てる ゼネコン 大きなビルは2〜3年 5 売る・貸す デベロッパー 仲介会社 6 管理・運営する 管理会社など 何十年も家賃を得る 7 売却・建て替え 不動産賃貸会社 デベロッパー 古くなったら 建て替えて 次の街づくりへ 1つのビルに、たくさんの会社がかかわる 土地を買ってから何十年もバトンをつなぐ
再開発では、多くの地主の合意を得るのに何年もかかります
1
土地を探して買う(デベロッパー)

駅前の古いビルや空き地などの土地を探し、地主と交渉して買います。再開発では、多くの地主の合意を得るのに何年もかかります。

2
計画を立てる(デベロッパー)

どんな建物をつくるか、何階建てで、どんなテナントを入れるかを考え、費用と収入を計算します。

3
設計する(設計事務所・ゼネコン設計部)

デザイン、構造、設備の図面をつくり、行政から建築確認を受けます。

4
建てる(ゼネコン)

ゼネコンが専門業者をまとめて工事を行います。大きなビルでは2〜3年かかります。

5
売る・貸す(デベロッパー・仲介会社)

マンションなら一戸ずつ販売し、オフィスビルや商業施設ならテナントを集めます。

6
管理・運営する(管理会社・デベロッパー・不動産賃貸会社)

清掃や点検、修繕をしながら、何十年も建物を守り、家賃を受け取ります。

7
売却・建て替え(不動産賃貸会社・デベロッパー)

建物が古くなったら改装や建て替えをしたり、投資家やJ-REITに売って次の投資に回したりします。

宅地建物取引士(宅建)

合格率18.7%(令和7年度、受験者245,462人・合格者45,821人、合格点50点中33点)
勉強時間の目安一般に300時間前後の勉強が目安と言われます
受験資格受験資格はなく、年齢や学歴に関係なく誰でも受験できます
合格率は毎年15〜18%前後で、受験者数は20万人を超える国内最大級の国家試験の一つです。法律系の国家資格の中では入門的な位置づけと言われますが、民法などの範囲が広く、しっかりとした準備が必要です。不動産会社では入社前後に取得を勧められることが多く、高校生や大学生の合格者もいます。
試験科目(押すと中身が見られます)
合格までの流れ
  1. 申し込み例年7月ごろに申し込みます。インターネットでも申し込めます。
  2. 本試験例年10月に、50問の四肢択一式で行われます。
  3. 合格発表例年11月ごろに発表されます。
  4. 登録実務経験が2年以上ない場合は登録実務講習を受けてから、都道府県に登録します。
  5. 宅建士証の交付法定講習を受けるなどして宅建士証の交付を受けると、宅建士として仕事ができます。

不動産・建設のある1日

現場 打ち合わせ 事務所 休憩 7:30 予定と天気を確認 8:00 朝礼・ラジオ体操 9:00 鉄筋を図面と照合 10:30 専門業者と段取り 12:00 昼休み 13:00 発注者と定例会議 15:00 安全パトロール 16:30 工程表・資材の発注 17:30 翌日の確認・戸締まり 18:30 書類を仕上げて退勤 帯の長さ=かける時間 2024年4月から建設業にも残業の上限規制 朝が早く、現場と事務所を行き来する
ゼネコンの施工管理のある1日の例
7:30

(ゼネコンの施工管理の例)現場事務所に到着し、今日の作業予定と天気を確認します

8:00

朝礼とラジオ体操をします。職人さんたちと今日の危険なポイントを話し合います

9:00

現場を回り、鉄筋の本数や間隔が図面どおりか確認して写真を撮ります

10:30

専門業者と来週のコンクリート打設の段取りを打ち合わせます

12:00

昼休みです。職人さんたちと一緒に休憩します

13:00

発注者(デベロッパー)と設計事務所との定例会議で、工事の進み具合を報告します

15:00

安全パトロールをして、足場や手すりに危ないところがないか確認します

16:30

現場事務所で、工程表の修正や資材の発注、施工図の確認をします

17:30

翌日の作業内容を職長さんと確認し、片づけと戸締まりをして作業を終えます

18:30

書類を仕上げて退勤します。2024年4月から残業時間の上限規制が建設業にも適用され、働き方の見直しが進んでいます

もっと知りたい人へ

そもそも不動産・建設業界とは

不動産とは、土地と、その上に建っている建物のことです。不動産・建設業界は、土地を探して計画を立てる人、建物を建てる人、売り買いや貸し借りをつなぐ人、建物を持って貸す人、建物を管理する人など、多くの立場の会社が協力して成り立っています。たとえば、駅前に新しいタワーマンションが建つとき、デベロッパーが土地を買って計画を立て、ゼネコンが建て、販売会社や仲介会社が買う人を探し、完成後は管理会社が建物を守ります。私たちの住む家、通う学校、遊びに行くモールも、すべてこの業界の仕事の成果です。

デベロッパー・ゼネコン・仲介・賃貸の関係

デベロッパーは「発注者」としてゼネコンに工事を頼み、完成した建物を売ったり貸したりします。仲介会社は、デベロッパーのマンションの売買や、個人同士の中古住宅の売買をつなぎます。不動産賃貸会社は、ビルを持って家賃で稼ぐ立場で、デベロッパーの賃貸部門と仕事が重なる部分もあります。

不動産業と建設業は別の業種

統計では、不動産業と建設業は別の業種として扱われます。国税庁の調査(令和6年分)では、平均給与は建設業565.4万円、不動産業・物品賃貸業495.5万円です。ただし、どちらも会社の規模による差がとても大きい業界です。

ハウスメーカーとの違い

積水ハウスや大和ハウス工業などのハウスメーカーは、主に個人向けの戸建て住宅を設計・販売・建築する会社です。最近はマンションや商業施設、物流施設なども手がけ、デベロッパーやゼネコンに近い仕事もしています。

デベロッパー・ゼネコン・仲介・不動産賃貸で仕事と年収はどう違う?

同じ「不動産」でも、4つの立場で仕事と年収ははっきり違います。デベロッパーは、街やビルの計画を立てて事業を動かす「プロデューサー」で、三井不動産1,756万円(2025年3月期)、三菱地所1,347万円(同)と平均年収は業界でトップクラスですが、採用人数が少なく難関です。ゼネコンは実際に建物をつくる「つくり手」で、スーパーゼネコンの平均年収は鹿島建設1,184.7万円、大林組1,140.4万円、大成建設1,058.0万円、清水建設1,011.6万円(いずれも2025年3月期)と高水準ですが、現場勤務や転勤が多くなります。仲介は売り手と買い手をつなぐ「つなぎ役」で、厚労省job tagの住宅・不動産営業の平均年収は660.7万円(令和7年調査)ですが、成果で年収が大きく変わります。不動産賃貸は、ビルを持って貸す「大家さん」で、ヒューリックのように少ない社員で巨額の資産を動かす会社は平均年収が2,000万円を超えます。

デベロッパー:街をつくるプロデューサー

土地の取得から、建物の企画、完成後の運営まで、プロジェクト全体の責任を持ちます。自分で図面を引いたり工事をしたりするのではなく、設計事務所やゼネコン、行政、地主など多くの人をまとめる仕事です。たとえば「この駅前を、子育て世代が住みたくなる街にする」という大きな目標を立て、何年もかけて実現します。年収は高い一方、一つの判断で何百億円も動く重い責任があります。

ゼネコン:ものづくりの最前線

設計図を、実際の建物に変える仕事です。技術系社員は工事現場で施工管理を担当し、事務系社員は営業(工事の受注)、積算、経理などを担当します。完成した建物が何十年も街に残り、「あのビルは自分が建てた」と言える誇りがあります。現場は全国にあり、完成までは現場に通う生活になります。

仲介:人生の大きな買い物を支える

個人の家やマンションの売買、部屋探しをサポートします。宅建の資格が強く求められ、成果が数字で見えやすい仕事です。基本給に加えて成約に応じた報酬がある会社が多く、若くして高い年収を得る人もいれば、成果が出ず苦労する人もいます。土日や夕方に、お客さんの都合に合わせて働くことが多いです。

不動産賃貸:ビルを持って家賃で稼ぐ

自社でビルやマンションを持ち、長い期間にわたって家賃を受け取る会社です。売上は毎月の家賃なので安定しやすく、物件の買い方・直し方・売り方の判断が利益を左右します。社員数が少ない会社も多く、一人あたりの年収が高くなりやすい一方、採用はごく少人数です。

なるためのルート

不動産・建設業界への入り方は、どの立場の、どの職種を目指すかで変わります。ゼネコンや設計事務所の技術職を目指すなら、大学の建築学科や土木工学科などで学ぶのが最短のルートで、大学院まで進む人も多くいます。デベロッパーの総合職は、文系・理系を問わず採用されており、法学部、経済学部、建築学科などさまざまな学部から入社しています。仲介会社は学部を問わず採用する会社が多く、高校や専門学校から入る人もいます。どの立場でも、宅地建物取引士の資格を持っていると強みになります。

  1. 高校で文理を選ぶ建築・土木の技術者を目指すなら理系(数学・物理)を選ぶのが最短です。デベロッパーや仲介の営業・企画なら、文系・理系どちらでも目指せます。
  2. 大学・専門学校に進学する技術職なら建築学科・土木工学科など、事務系なら学部は自由です。在学中に宅建の資格に挑戦する学生もいます。
  3. インターンに参加する大学3年の夏から冬にかけて、デベロッパーやゼネコンのインターンが行われます。ゼネコンでは工事現場の見学ができるものもあります。
  4. 選考を受けて内定エントリーシート、Webテスト、面接で選考されます。技術職では、大学での研究や設計課題について聞かれることもあります。
  5. 入社後に資格を取る宅建、施工管理技士、建築士など、職種に応じた資格を働きながら取得し、任される仕事の範囲を広げていきます。
建築・土木を学べる学部

建築学科は工学部や理工学部、建築学部などに置かれています。土木(社会基盤)を学べる学科もあります。高校では物理と数学をしっかり学んでおくと、大学の授業についていきやすくなります。

文系からデベロッパー・仲介へ

文系の学生も、デベロッパーの用地取得やリーシング、仲介会社の営業、ゼネコンの事務系の仕事などで活躍しています。法律や経済の知識は、契約や事業計画の場面で役立ちます。

試験・選考の詳細

不動産業界で最も代表的な資格が宅地建物取引士(宅建)です。不動産会社の事務所には、従業員5人に1人以上の割合で宅建士を置くことが法律で決められており、契約前の重要事項説明は宅建士にしかできません。令和7年度の宅建試験は受験者245,462人、合格者45,821人、合格率18.7%、合格点は50点満点中33点でした。受験資格はなく、高校生でも受験できます。ゼネコンの技術者には施工管理技士の資格が重要で、令和7年度の1級建築施工管理技士は第一次検定の合格率48.5%、第二次検定の合格率39.0%でした。建物の設計を担う一級建築士は難関で、令和7年の学科の試験の合格率は16.5%でした。

会社の選考で見られること

デベロッパーは「どんな街をつくりたいか」「人をまとめた経験」、ゼネコンは「ものづくりへの思い」「チームで働く力」、仲介は「人と話すのが好きか」「目標に向かって粘れるか」がよく見られます。

その他の資格

マンション管理士、管理業務主任者、不動産鑑定士、賃貸不動産経営管理士、土木施工管理技士なども、仕事の内容によって役立ちます。不動産鑑定士は国家資格の中でも難関として知られ、厚労省job tagによる平均年収は583.3万円(令和7年調査)です。

年収のリアル

不動産・建設業界の年収は、立場と会社によって大きく違います。大手デベロッパーは、三井不動産1,756万円(2025年3月期、算定方法の変更あり)、三菱地所1,347万円(2025年3月期)と非常に高い一方、住友不動産は749万円(2025年3月期)で、同じ大手でも差があります。不動産賃貸のヒューリックは2,036万円(2024年12月期)ですが、単体の社員は200人台です。スーパーゼネコンは約1,000万〜1,200万円(2025年3月期)、仲介などの住宅・不動産営業は厚労省job tagで660.7万円(令和7年調査)です。業種全体の平均給与(国税庁、令和6年分)は建設業565.4万円、不動産業・物品賃貸業495.5万円で、中小企業まで含めると大手との差が大きいことがわかります。

仲介の年収は「成果しだい」

仲介会社では、基本給に加えて、成約した取引の手数料に応じた報酬(インセンティブ)が支払われる会社が多くあります。そのため、トップの営業担当は大きく稼ぐ一方、同じ会社でも年収に大きな差がつきます。

ゼネコンの手当

ゼネコンでは、現場手当、資格手当、転勤に伴う住宅の補助などがつくことが多く、施工管理技士や建築士の資格を取ると給与が上がる仕組みの会社が一般的です。

平均年収の見方に注意

有価証券報告書の平均年収は、その会社「単体」の社員だけの平均です。ヒューリックや大手デベロッパーの持株会社のように単体の社員が少ない会社では、グループ全体の社員の年収とは違う点に注意しましょう。

やりがい

自分がかかわった建物や街が、地図に残り、何十年も多くの人に使われ続けることが、この業界の一番のやりがいです。たとえば、完成したショッピングモールに家族連れがあふれる光景や、新しいマンションに引っ越してきた家族の笑顔を見られます。ゼネコンの技術者は、更地だった場所に少しずつ建物が立ち上がっていく過程を、毎日自分の目で確かめられます。仲介では、「この家に決めてよかった」とお客さんから直接感謝されることが大きな励みになります。不動産賃貸では、古いビルを生まれ変わらせて、街の価値を上げる手ごたえを感じられます。

街の未来をつくる

再開発では、駅前の古い建物を建て替えて、広場や公園、保育園などをつくり、街全体を新しくすることもあります。10年後、20年後の街の姿を考える、スケールの大きな仕事です。

災害に強い社会をつくる

地震の多い日本では、建物の耐震性能を高めることが人の命を守ります。ゼネコンの技術や、古いビルの建て替えは、安全な街づくりに直結しています。

大変なこと・きついこと

ゼネコンの施工管理は、朝が早く、天候に左右され、工期が迫ると忙しくなりがちです。2024年4月から建設業にも残業時間の上限規制が適用され、休日の確保などの改善が進んでいますが、まだ課題は残っています。デベロッパーは、地主や行政との交渉が何年も続き、一つの判断で巨額のお金が動くプレッシャーがあります。仲介は、土日や夜に働くことが多く、毎月の成績がはっきり数字で出るため、精神的にきつい時期もあります。業界全体として、景気や金利の動き、建築資材や人件費の値上がりの影響を受けやすいことも知っておきましょう。

人手不足

建設業では職人さんや技術者の高齢化が進み、人手不足が大きな課題になっています。そのため、ロボットやドローン、BIMなどを使った省力化の取り組みが急速に進んでいます。

転勤と現場暮らし

ゼネコンやデベロッパーの全国型の社員は、数年ごとに転勤があることが多いです。ゼネコンでは大きな現場の近くに住んで何年も通うこともあります。

向いている人

街の風景や建物が好きで、「この建物はどうやって建てたんだろう」と考えるのが楽しい人に向いています。デベロッパーには、多くの人の意見をまとめ、長い時間をかけて一つの目標を実現する粘り強さが求められます。ゼネコンには、ものづくりが好きで、チームで協力して形にすることに喜びを感じる人が向いています。仲介には、人の話を聞くのが好きで、目標に向かって行動し続けられる人が向いています。不動産賃貸には、数字やお金の動きに強く、物件の価値を見抜く目を持ちたい人が向いています。

こんな高校生におすすめ

街歩きや建物めぐりが好きな人、文化祭の準備で段取りを組むのが得意な人、プラモデルやマインクラフトなどで建物をつくるのが好きな人は、この業界と相性がいいかもしれません。

立場ごとの向き不向き

自分で手を動かしてものをつくりたいならゼネコン、全体の計画を立てたいならデベロッパー、人と直接向き合いたいなら仲介、お金の判断をしたいなら不動産賃貸、というように考えると、自分に合う立場が見えてきます。

高校生のうちにできること

建築や土木の技術者を目指すなら、数学と物理をしっかり学んでおきましょう。大学の建築学科では構造力学など、物理と数学を使う授業が多くあります。文系の人も、政治・経済で学ぶ金利や景気の話は、不動産の値段の動きに直結します。街を歩くときに、「このビルはどの会社が建てたのか」「この駅前はなぜ再開発されたのか」と考える習慣をつけると、業界の見え方が変わります。宅建試験は受験資格がないので、興味があれば高校生のうちから挑戦することもできます。

工事現場の看板を見る

工事現場の入り口には、発注者(デベロッパーなど)、設計者、施工者(ゼネコン)の名前が書かれた看板があります。通学路の工事現場で看板を見てみると、どの会社がどんな役割をしているかがわかります。

建物見学や街歩き

オープンハウス(建物の公開イベント)や、自治体の再開発の説明会、住宅展示場などに行ってみるのもおすすめです。実物を見ることで、仕事のイメージがぐっとわきます。

代表的な会社・職場

大手デベロッパーには、三井不動産、三菱地所、住友不動産、東急不動産、野村不動産、東京建物、森ビルなどがあります。スーパーゼネコンと呼ばれるのは、鹿島建設、大林組、大成建設、清水建設、竹中工務店の5社です。仲介の大手には、三井不動産リアルティ(三井のリハウス)、住友不動産販売、東急リバブル、野村不動産ソリューションズなどがあり、デベロッパーのグループ会社が多いのが特徴です。不動産賃貸の分野では、ヒューリックのように自社でビルを持って貸すことを中心にする会社があり、大手デベロッパーの賃貸部門も大きな存在です。

デベロッパーのグループ

大手デベロッパーは、仲介会社、管理会社、ホテル運営会社、ハウスメーカーなどをグループに持っています。グループ会社に入社して、その一員として働く道もあります。

ゼネコンの規模

スーパーゼネコンの下には、準大手ゼネコン、中堅ゼネコン、地域の建設会社があります。地域の建設会社は、道路や河川の工事、災害時の復旧など、地元のくらしを支える大切な役割を担っています。

ビルが建つまでの流れ

一つのビルが建つまでには、長い時間と多くの人の協力が必要です。まずデベロッパーが土地を探して買い、どんな建物をつくるかを計画します。次に設計事務所やゼネコンの設計部門が図面をつくり、行政から建築確認を受けます。その後、ゼネコンが工事を行い、何十社もの専門業者が力を合わせて建物を完成させます。完成後は、デベロッパーが売ったり貸したりし、管理会社が建物を守っていきます。

大型ビルにかかる時間

都心の大規模な再開発では、土地をまとめ始めてから完成まで10年以上かかることも珍しくありません。工事だけでも数年かかります。

それぞれの出番

デベロッパーは最初から最後まで、ゼネコンは設計・工事の段階、仲介や販売会社は完成前後の販売の段階、管理会社は完成後の何十年にわたって活躍します。

金利と不動産の関係

不動産は、買う人も、建てる会社も、銀行からお金を借りることが多いため、金利の影響を強く受けます。たとえば、住宅ローンの金利が上がると、毎月の返済額が増えるので、家を買う人が減ったり、買える家の値段が下がったりします。デベロッパーや不動産賃貸会社も、ビルを建てたり買ったりするための借り入れの利息が増えます。日本では2024年3月にマイナス金利政策が解除され、その後段階的に金利が上がり、2026年6月には政策金利が1%になりました。金利が上がる時代に、どう物件の価値を高めて稼ぐかが、各社の腕の見せどころです。

金利が上がると家賃は?

景気がよく物価が上がる時期には、オフィスやお店の家賃も上がりやすくなります。不動産賃貸会社にとっては、家賃の上昇で金利の負担を打ち消せるかが重要です。

J-REITと金利

J-REIT(不動産投資信託)は、投資家からお金を集めてビルなどを買い、家賃収入を分配する仕組みです。金利が上がると、借り入れのコストが増えたり、ほかの投資先と比べた魅力が変わったりします。

よくある質問

デベロッパーとゼネコンは何が違うの?

デベロッパーは、土地を買って「どんな建物をつくるか」を計画し、完成後に売ったり貸したりする会社です。ゼネコンは、デベロッパーなどから依頼を受けて、実際に建物を建てる会社です。たとえば映画にたとえると、デベロッパーはプロデューサー、ゼネコンは撮影チームのような関係です。

不動産業界で一番年収が高いのは?

平均年収で見ると、大手デベロッパーや一部の不動産賃貸会社が高く、三井不動産は1,756万円(2025年3月期)、ヒューリックは2,036万円(2024年12月期)です。ただしこれらの会社は採用人数がとても少なく、難関です。

仲介の営業はきついって本当?

成果が数字ではっきり出るので、プレッシャーを感じる人はいます。一方で、成果に応じた報酬がある会社が多く、頑張りが年収に反映されやすい仕事でもあります。お客さんの人生の大きな買い物を支えるやりがいも大きいです。

建築学科に行かないとゼネコンに入れない?

施工管理や設計などの技術職は、建築学科や土木工学科の出身者が多いです。ただし、ゼネコンには営業、経理、人事などの事務系の仕事もあり、文系の学生も採用されています。

宅建は高校生でも取れる?

宅建試験には受験資格がないので、高校生でも受験できます。令和7年度の合格率は18.7%で簡単ではありませんが、高校生の合格者もいます。

女性も施工管理の仕事ができる?

できます。建設業界では女性の技術者を増やす取り組みが進んでおり、現場の更衣室やトイレの整備なども進んでいます。女性の現場所長も生まれています。

不動産賃貸の会社って、大家さんと同じ?

考え方は大家さんと同じで、建物を持って家賃を受け取ります。ただし会社として、何十棟、何百棟ものビルを持ち、建て替えや売却で価値を高める点が違います。少人数で巨額の資産を動かすのが特徴です。

人口が減っても不動産業界は大丈夫?

人口が減ると、地域によっては家が余るなどの課題があります。一方で、古い建物の建て替え、都市の再開発、物流施設やデータセンターなど新しい需要も生まれています。どこに、どんな建物をつくるかを見きわめる力がますます重要になっています。

建設業界は休みが少ないって本当?

これまでは休みが少ないと言われてきましたが、2024年4月から建設業にも残業時間の上限規制が適用され、週休2日の現場を増やす取り組みも進んでいます。会社や現場によって差があるので、説明会などで確かめましょう。

文系でもデベロッパーに入れる?

入れます。デベロッパーの総合職は、法学部、経済学部、商学部、文学部など、文系出身者も多く採用されています。建築の専門知識より、人をまとめる力や交渉力が重視されます。

この分野のことば

年収について:有価証券報告書ベースの平均年収の例:三井不動産1,756万円(2025年3月期、算定方法の変更あり)、三菱地所1,347万円(2025年3月期)、住友不動産749万円(2025年3月期)、ヒューリック2,036万円(2024年12月期、単体社員は約200人台)、鹿島建設1,184.7万円、大林組1,140.4万円、大成建設1,058.0万円、清水建設1,011.6万円(いずれも2025年3月期)です。厚労省job tag(令和7年賃金構造基本統計調査)では住宅・不動産営業660.7万円、建築施工管理技術者679.1万円です。国税庁「民間給与実態統計調査」(令和6年分)の平均給与は建設業565.4万円、不動産業・物品賃貸業495.5万円です。

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