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プログラミングができなくても入れる会社が多い業界

IT・通信

IT・通信業界は、会社や役所で使う仕組み(システム)を作るSIer(たとえば、コンビニのレジで商品を読み取ると在庫が自動で減る仕組み、銀行のATM、学校の出欠や成績をつけるアプリ、駅の改札など)、スマホや光回線のネットワークを運営する通信キャリア(たとえば、ドコモ、au、ソフトバンク)、アプリやWebサービスを自社で作るWeb系企業(たとえば、フリマアプリ、ニュースアプリ、動画配信サービスの会社)、クラウドで業務ソフトを月額提供するSaaS企業(たとえば、お店の売上を記録する会計ソフトや、アルバイトの出勤を記録する勤怠管理ソフトをネット経由で貸す会社)などからなる業界です。どれも「IT」とまとめられますが、誰からどうやってお金をもらうかがまったく違い、働き方や求められる力も変わります。国税庁の調査(令和7年分)では情報通信業の平均給与は682万円で、全業種平均487万円を大きく上回ります。未経験者を採用して研修で育てる会社も多く、文系出身のエンジニアも珍しくありません。

平均年収の目安約682万円情報通信業の平均業界平均約682万円〜大手で1,000万円超(会社の種類で大きく違う)
なるまでの難しさ★★★★★業界全体では人手不足が続き、未経験・文系からの採用も多いため入口は比較的広いです。一方、大手SIerや通信キャリア、人気Web系企業は応募者が多く難関で、Web系ではコーディングテストなど実力を見る選考もあります。入社後は技術の変化が速く、学び続けないと通用しなくなる点も難しさです。
決めどき文系・理系どちらでも

大学3年のインターンシップ期。エンジニア志望なら大学1〜2年から個人開発や長期インターンを始める人も

IT・通信の業界マップ

スマホや光回線を提供する通信会社と、会社や役所のシステムを作るシステム会社(SIer)、海外のIT企業の日本法人、ソフトや機器・サービスを売る会社に分かれます。

となりの業界

押すと、会社図鑑でその会社のくわしい解説が見られます。

どんな職種がある?

押すと、その職種の仕事内容・必要な力・キャリアが見られます。

IT・通信の年収と昇進の流れ

メンバー(プログラマー・SE)400〜550万円
入社1〜3年、22〜26歳

研修後にプロジェクトに配属され、テストやプログラミングを担当します。一人で設計や開発ができるようになると次に進みます。

シニアSE・エンジニア550〜750万円
入社4〜7年、26〜30歳

設計や重要な機能の開発を任され、後輩の指導もします。応用情報技術者試験などに合格する人が多い時期です。

チームリーダー・テックリード700〜950万円
入社8〜12年、30〜35歳

数人〜十数人のチームをまとめ、技術や進め方の方針を決めます。プロジェクトを成功させた実績が次の昇進につながります。

プロジェクトマネージャー・課長850〜1,200万円
35〜45歳

大規模プロジェクトや部門の責任者として、予算と人を管理します。

部長・事業部長1,100〜1,600万円
45〜55歳

事業部全体の売上と戦略に責任を持ちます。

役員・CTO1,500〜3,000万円
40代以降

会社全体の技術や経営の方針を決めます。Web系では30代でCTOになる人もいます。

年収は目安です。会社や地域、本人の働き方で大きく変わります。

働き方で何が違う?

SIer(大手・元請け)単体平均800万〜1,300万円前後(野村総合研究所1,333万円、NTTデータグループ923万円など)

企業や官公庁から直接依頼を受けて、大規模なシステムを作る会社です。たとえば銀行のATMや、マイナンバーなど行政のシステム、航空会社の予約システムなどを手がけます。上流工程(要件定義や設計)とプロジェクト管理が中心で、プログラミングは協力会社に任せることも多いです。安定した大きな取引先を持ち、待遇もよい会社が多いです。

良いところ社会を支える大きなシステムに関われる、安定している

大変なところ自分で手を動かしてプログラムを書く機会が少ない場合がある、納期前は忙しい

SIer(中小・下請け)・SES会社による差が大きく、情報通信業平均(682万円、令和7年分)を下回る会社も多い

元請けのSIerから仕事を受けて、設計の一部やプログラミング、テストを担当する会社です。SESでは、エンジニアがお客さんの会社に常駐して働きます。技術を実際に身につけやすい一方、会社によって待遇や働き方の差が大きいです。

良いところ未経験からでも入りやすい、技術を身につけられる

大変なところ待遇の差が大きい、常駐先によって働き方が変わる

通信キャリア単体平均900万〜1,050万円前後(KDDI1,051万円、2026年3月期)

携帯電話や光回線などの通信網を持ち、通信サービスを提供する会社です。たとえばNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク、楽天モバイルなどです。通信に加えて、スマホ決済、電気、銀行、動画配信、法人向けのDX支援など事業の幅を広げています。社員数が多く、文系・理系どちらも採用されます。

良いところ安定している、事業の幅が広く多様なキャリアがある

大変なところ大きな組織なので意思決定に時間がかかることがある、通信障害時のプレッシャー

Web系(自社サービス)単体平均750万〜1,250万円前後(メルカリ1,233万円、サイバーエージェント914万円など)

自社でアプリやWebサービスを作って運営する会社です。たとえば、LINEヤフー、メルカリ、サイバーエージェント、楽天グループなどです。利用者の反応を見ながら素早く改善するスタイルで、エンジニアの裁量が大きいのが特徴です。

良いところ自分が作ったものの反応がすぐ分かる、働き方が自由な会社が多い

大変なところ実力主義で成果を求められる、サービスの栄枯盛衰が激しい

SaaS会社による差があり、成長企業では600万〜900万円前後が目安

業務ソフトをクラウドで月額提供する会社です。たとえば、会計ソフトのfreeeやマネーフォワード、名刺管理のSansanなどです。比較的新しい会社が多く、営業がインサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスに分かれているのが特徴です。

良いところ成長が速く若いうちから責任ある仕事を任される

大変なところ変化が激しく、会社の成長段階によって安定性が違う

代表的な会社・職場

大手SIer(NTT系)大手SIer・コンサル総合ITベンダー独立系・商社系SIer独立系SIer通信キャリア(持株会社)通信キャリアWeb系Web系(広告・メディア・ゲーム)Web系・通信
NTTデータグループ ›大手SIer(NTT系)

銀行や官公庁などの大規模システムを手がける日本最大級のSIerです。

単体平均923万円(2025年3月期)
野村総合研究所 ›大手SIer・コンサル

証券会社や流通業向けのシステムとコンサルティングを提供しています。

単体平均1,333万円(2026年3月期)
富士通 ›総合ITベンダー

官公庁や企業のシステム開発、スーパーコンピューターなどを手がけています。

単体平均1,012万円(2026年3月期)
SCSK ›独立系・商社系SIer

製造業や流通業などのシステム開発と運用を手がけています。

単体平均797万円(2026年3月期)
TISインテック独立系SIer

クレジットカードの決済システムなどを手がけています。

単体平均829万円(2026年3月期)
NTT ›通信キャリア(持株会社)

NTTドコモ、NTT東日本・西日本、NTTデータなどを傘下に持つ通信グループの持株会社です。2025年7月に日本電信電話から社名を変更しました。

単体平均1,056万円(2026年3月期、持株会社)
KDDI ›通信キャリア

auブランドの携帯電話や光回線、金融・電力など生活サービスを提供しています。

単体平均1,051万円(2026年3月期)
ソフトバンク ›通信キャリア

携帯電話のソフトバンク・ワイモバイルなどのほか、法人向けのDX支援も手がけています。

単体平均871万円(2026年3月期)
LINEヤフー ›Web系

LINEやYahoo! JAPAN、PayPayなどのサービスに関わる会社です。

単体平均902万円(2026年3月期)
サイバーエージェント ›Web系(広告・メディア・ゲーム)

インターネット広告、動画配信のABEMA、スマホゲームなどを手がけています。

単体平均914万円(2025年9月期)
メルカリ ›Web系

フリマアプリのメルカリと、スマホ決済のメルペイなどを運営しています。

単体平均1,233万円(2026年6月期)
楽天グループ ›Web系・通信

ネット通販の楽天市場、楽天カード、楽天モバイルなどを運営しています。

単体平均851万円(2025年12月期)

›がついた会社は、会社図鑑で詳しく解説しています。

どうやって稼いでいる?

SIer システムを作って納める 代金は人月で計算 10人×6か月=60人月 通信キャリア スマホや光回線 毎月の通信料 全国に通信網をつくる Web系 自社のアプリやサービス 広告・手数料・課金 利用者が多いほど強い SaaS 業務ソフトをクラウドで 月額・年額の利用料 契約が積み上がる 作るたびの代金か、毎月積み上がるか 受託開発開発の代金+毎年の保守 保守開発 ストック型通信料・SaaSの利用料 稼ぎ方のちがいで、4つに分けて考える
大きな案件では、元請けのSIerが二次請け・三次請けの会社に開発を分けて発注することがあります

IT・通信業界は、ビジネスモデルの違いで大きく4つに分けると理解しやすいです。SIerは企業や官公庁から「システムを作ってほしい」と依頼を受け、エンジニアの人数と期間に応じた代金をもらう受託開発が中心です。通信キャリアは、携帯電話や光回線の利用者から毎月の通信料をもらうストック型のビジネスで、巨額の設備投資をして全国にネットワークを張りめぐらせます。Web系企業は自社でサービスを作り、広告収入、手数料、課金などで稼ぎます。SaaS企業はクラウド上の業務ソフトを月額や年額で貸し出し、契約が積み上がるほど売上が安定して伸びるのが特徴です。

1
受託開発・システム構築(SIer)

お客さんから依頼を受けてシステムを作り、人月(1人が1か月働く量)をもとに代金を受け取ります。たとえば、10人で6か月かかる開発なら60人月として見積もります。大規模案件は元請けのSIerが受け、二次請け・三次請けの会社に開発を分けて発注する多重下請け構造になっていることがあります。

2
保守・運用サービス

システムを作ったあとも、動き続けるように監視し、修正や機能追加を行う保守契約で毎年安定した収入を得ます。SIerにとって大切なストック収入です。

3
通信料(キャリア)

携帯電話や光回線の契約者から毎月の利用料を受け取ります。総務省のデータ(令和8年度第1四半期)では移動系通信の契約数は約2億3129万件で、NTTドコモ32.2%、KDDIグループ26.5%、ソフトバンク19.1%、楽天モバイル3.8%のシェアです。

4
広告収入(Web系)

検索サービスやSNS、ニュースアプリなどを無料で提供し、そこに表示する広告で稼ぎます。たとえば、無料の動画を見ている途中に流れる広告の代金が、運営会社の収入になります。利用者が多いほど広告の価値が上がります。

5
手数料・課金(Web系)

フリマアプリやECモールでの取引手数料、ゲームアプリのアイテム課金、動画や音楽の月額サブスクリプションなどです。

6
サブスクリプション(SaaS)

会計・人事・営業管理などの業務ソフトを月額や年額で提供します。解約率を低く保てば、毎月の売上が積み上がっていきます。

入ってからどうなっていく?

入社〜1年目研修と基礎づくり多くの会社で数か月のプログラミング・ネットワーク研修があり、文系出身者もここで基礎を学びます。その後プロジェクトに配属され、テストや簡単な開発から始めます。
2〜4年目担当領域を持つ若手設計やプログラミングの一部を任され、お客さんとの打ち合わせにも出るようになります。基本情報技術者試験などの資格を取る人が多い時期です。
5〜10年目チームリーダー・専門家数人〜十数人のチームをまとめるリーダーや、特定の技術に詳しいスペシャリストになります。Web系ではテックリードとして技術の方針を決める立場になる人もいます。
30代後半〜40代プロジェクトマネージャー・管理職大規模プロジェクトのPMや、部門の管理職として予算と人材を管理します。専門職としてアーキテクトやエキスパートの道を進む人もいます。
50代事業責任者・役員・技術顧問事業部長や役員として会社の方針を決めたり、グループ会社の経営に関わったりします。豊富な経験を生かし技術顧問や講師として働く人もいます。
転職・独立のパターン流動性の高い業界IT業界は転職が一般的で、SIerからWeb系・SaaS企業、ITコンサルティング、事業会社の社内SEへ移るパターンが多いです。フリーランスとして独立したり、スタートアップを起業したりする人もいます。

システムができるまで(ウォーターフォール型の例)

提案・受注課題を聞き、見積もる 要件定義必要な機能をまとめる 設計画面やデータを設計書に 開発設計書どおりにプログラム テスト部品から全体の順に確認 リリース・移行夜間や休日に切り替え 運用・保守止まらないよう監視 上流工程要件定義・設計お客さんと決める 大きな案件は多くの会社で分担して作る 滝のように、上の工程から順に進める
「全国のお店のレジを新しくしたい」といった相談から始まります
1
提案・受注

営業とSEがお客さんの課題を聞き、提案書と見積もりを出します。たとえば「全国のお店のレジを新しくしたい」という相談に、システムの案と費用を示して契約します。

2
要件定義

お客さんと何度も打ち合わせをして、システムに必要な機能や条件をまとめます。ここで決めたことが、その後のすべての作業の土台になります。

3
設計

画面の形、データの持ち方、ほかのシステムとのつながりなどを設計書にします。基本設計と詳細設計に分かれます。

4
開発(プログラミング)

設計書に沿ってプログラマーがプログラムを書きます。大規模なものでは多くの会社が分担して作ります。

5
テスト

部品ごと、つなげた全体、実際の業務の流れの順にテストし、不具合を直します。お客さんも一緒に確認します。

6
リリース・移行

古いシステムから新しいシステムに切り替えます。お店や銀行が休みの夜間や休日に作業することが多いです。

7
運用・保守

システムが止まらないように監視し、不具合の修正や機能の追加を続けます。次の改善の提案にもつながります。

IT・通信のある1日

9:30

在宅勤務でパソコンを開き、チャットとタスク管理ツールで今日の予定を確認します(Web系エンジニアの例)

10:00

チームの朝会(スタンドアップ)です。昨日やったこと、今日やること、困っていることを共有します

10:15

新機能のプログラムを書きます。生成AIのコード補完も使いながら進めます

12:00

昼休みです

13:00

同僚が書いたコードをレビューし、改善点をコメントします

14:00

プロダクトマネージャー、デザイナーと次の機能の仕様を相談します

15:30

テストを書き、新機能を検証用の環境に反映して動作を確かめます

17:00

利用データを見て、前回リリースした機能の効果を確認します

18:30

業務終了です。週に何日かは出社してチームで集まります

もっと知りたい人へ

そもそもIT・通信業界とは

IT・通信業界は、コンピューターとネットワークを使った製品やサービスを提供する業界です。統計上は「情報通信業」と呼ばれ、ソフトウェア業、情報処理サービス業、インターネット関連サービス業、電気通信業、放送業などが含まれます。大きく分けると、企業のシステムを作る「SIer」、ネットワークを運営する「通信キャリア」、自社サービスを運営する「Web系」、業務ソフトをクラウドで提供する「SaaS」、そしてハードウェアやソフトウェア製品を作る「メーカー・ベンダー」があります。今やどの業界もITなしでは動かないため(たとえば、病院の電子カルテ、宅配便の荷物追跡、スーパーのポイントカードもすべてシステムで動いています)、IT企業の顧客は銀行、メーカー、小売、役所などあらゆる分野に広がっています。

情報通信業の給料水準

国税庁の調査(令和7年分)では、情報通信業の平均給与は682万円で、電気・ガス業(854万円)、金融・保険業(726万円)に次ぐ高さです。人手不足でエンジニアの需要が高いことが背景にあります。

IT人材は不足している

経済産業省は、IT人材が将来大きく不足するという試算を公表してきました。デジタル化や生成AIの広がりで、あらゆる業界がIT人材を求めています。

「IT業界」と「IT職」は別

IT企業で働く人だけがIT職ではありません。銀行やメーカー、小売などの会社にも社内SEやデータ分析の部署があり、IT職として働く道はIT業界以外にも広がっています。

SIer・通信キャリア・Web系・SaaSのちがい

4つのタイプは、お客さんとお金のもらい方が根本的に違います。SIerのお客さんは特定の企業や官公庁で、「依頼されたシステムを納期どおりに作る」のが仕事です。通信キャリアのお客さんは全国の個人と企業で、「つながり続けるネットワーク」を提供し毎月の通信料をもらいます。Web系は不特定多数のユーザーに自社サービスを提供し、広告・手数料・課金で稼ぎます。SaaSは企業向けの業務ソフトを自社で作ってクラウドで提供し、月額料金を積み上げていきます。

SIer(エスアイヤー)

NTTデータグループ、富士通、NEC、日立製作所、野村総合研究所、SCSK、TISなどが代表です。銀行の勘定系(預金や振り込みのお金の動きを記録する中心のシステム)や官公庁のシステム(たとえば、マイナンバーカードを使った手続き)など、社会を支える大規模システムを手がけます。メーカー系、ユーザー系(親会社が銀行や商社など)、独立系という分け方もあります。

通信キャリア

NTTグループ(NTTドコモ、NTT東日本・西日本など)、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルが代表です。日本電信電話は2025年7月1日にNTT株式会社へ社名を変更しました。通信に加えて、金融・電力・エンタメなど生活サービスや法人向けDX支援にも事業を広げています。たとえば、スマホ決済、ネット銀行、電気の販売、動画配信なども通信キャリアのグループが手がけています。

Web系

LINEヤフー、楽天グループ、サイバーエージェント、メルカリ、ZOZOなどが代表です。自社サービスを素早く改善していく開発スタイルで、エンジニアの裁量が大きく、服装や働き方が自由な会社が多いです。

SaaS

会計ソフトのfreeeやマネーフォワード、名刺管理のSansan、海外ではSalesforceなどが代表です。月額課金で売上が積み上がるため、契約継続率や解約率を重視します。比較的新しい会社が多く、成長スピードが速いのが特徴です。

SIerの多重下請け構造と元請け

大規模なシステム開発では、お客さんから直接仕事を受ける元請けのSIerが、設計の一部や開発作業を二次請け・三次請けの会社に発注することがあります。このピラミッド型の構造を多重下請け構造と呼びます。上流の元請けほど要件定義やプロジェクト管理を担い(家づくりにたとえると、施主と話して設計図を描く工務店にあたります)、利益率や年収が高い傾向があります。下流ではプログラミングやテストを担当し、技術力を身につけやすい一方、待遇は会社によって差が大きくなります。エンジニアを客先に常駐させて働く時間に応じて代金をもらうSES(システムエンジニアリングサービス)という契約形態もあります。

上流工程と下流工程

システム開発の流れのうち、要件定義や基本設計を上流工程、詳細設計・プログラミング・テストを下流工程と呼びます。上流は業務とお客さんへの理解、下流は技術力が中心になります。

会社選びのポイント

SIerを選ぶときは、その会社が元請けとしてお客さんと直接取引しているか、どんな業界の案件が多いかを確認するとよいです。有価証券報告書や会社説明会で、主要な取引先を調べられます。

なるためのルート

IT・通信業界は、学部や文理を問わず新卒採用している会社が多いのが特徴です。情報系の学部出身者は即戦力として評価されやすいですが、大手SIerや通信キャリアでは文系出身のSEや営業も多く採用されています。Web系企業のエンジニア職は、学生時代のプログラミング経験や制作物を重視する傾向があります。専門学校や高専からエンジニアになる道もあり、社会人になってからの転職組も多い業界です。

  1. 高校で情報や数学に親しむ高校の必修科目「情報I」でプログラミングやネットワークの基本を学べます。数学の論理的な考え方はプログラミングにも役立ちます。
  2. 大学・専門学校で学ぶ情報系の学部・学科が最短ルートですが、文系学部からでも目指せます。専門学校や高専で実践的に学ぶ道もあります。
  3. 自分で何か作ってみるWebサイト、アプリ、ゲームなどを作り、GitHubで公開すると就活で見せられる実績になります。
  4. インターンシップに参加する大学3年の夏・冬に、SIer・キャリア・Web系それぞれのインターンに参加して違いを体感します。Web系では有給の長期インターンも多いです。
  5. 選考を受けるエントリーシート、適性検査、面接に加え、エンジニア職ではコーディングテストや技術面接がある会社もあります。
  6. 入社・研修・配属入社後は数か月の研修で基礎を学び、プロジェクトや部署に配属されます。
文系からエンジニアになる

大手SIerや通信キャリアは入社後の研修が充実しており、文系出身者もプログラミングやネットワークの基礎から学べます。大学時代に基本情報技術者試験に合格しておくと、意欲と基礎力のアピールになります。

理系・情報系からの道

情報工学、情報科学、電気電子などの学科がもっとも直結します。研究職やAI関連の専門職では大学院卒の採用が多く、通信キャリアの技術職でも修士卒が中心です。

試験・選考の詳細

大手SIerや通信キャリアの選考は、エントリーシート、Webテスト、グループディスカッション、複数回の面接という一般的な流れです。最近は職種別・コース別採用が増え、SE、インフラ、データサイエンス、営業などを最初から選んで応募する会社が多くなっています。Web系企業のエンジニア採用では、オンラインでプログラムを書くコーディングテストや、過去に作ったものについて深く聞かれる技術面接があります。国家試験の基本情報技術者試験は就職の必須条件ではありませんが、令和7年度の合格率は38.3%(IPA公表、受験者14万7千人あまり)で、取得していると基礎知識の証明になります。

見られるポイント

IT業界では、新しい技術を自分から学べるか、論理的に考えて説明できるかがよく見られます。プログラミング未経験でも、学ぶ意欲と具体的な行動を示せれば評価されます。

資格の位置づけ

ITパスポート、基本情報技術者、応用情報技術者などの国家試験や、クラウド各社の認定資格があります。入社後に取得を推奨され、合格すると報奨金や資格手当が出る会社も多いです。

インターンからの採用

Web系やSaaS企業では、インターンでの働きぶりを見て早期に内定を出すことがあります。長期インターンで実務経験を積むことが就活の近道になる場合もあります。

年収のリアル

国税庁の調査(令和7年分)では、情報通信業の平均給与は682万円です。ただしIT業界の年収は会社のタイプと立ち位置による差がとても大きい業界です。有価証券報告書(単体)では、野村総合研究所1,333万円(平均39.7歳、2026年3月期)、富士通1,012万円、NTTデータグループ923万円、KDDI1,051万円(平均42.3歳)、サイバーエージェント914万円(平均33.8歳、2025年9月期)、メルカリ1,233万円などが目安です。一方、下請けの開発会社やSESの会社には、平均年収が業界平均を下回るところもあります。

Web系は若くても実力次第

Web系企業は平均年齢が30代前半と若い会社が多く、スキルや成果で年収が決まる傾向があります。高い技術を持つエンジニアは、若くても高い報酬を得られることがあります。

転職で年収を上げる文化

IT業界は転職が一般的で、スキルを身につけて年収の高い会社に移る人が多いです。逆に、学ばずにいると年収が伸び悩むこともあります。

持株会社の数字に注意

NTT(単体従業員約2,600人)のような持株会社の平均年収は本社スタッフの水準です。グループ会社の年収は別に調べる必要があります。

システム開発の進め方

システム開発には大きく2つの進め方があります。ひとつはウォーターフォール型で、要件定義→設計→開発→テスト→リリースと順番に進め、前の工程に戻らないことを前提にします。銀行や官公庁の大規模システムなど、確実さが求められる場面で使われます。もうひとつはアジャイル型で、1〜2週間ほどの短い期間で「作って、見せて、直す」をくり返します。たとえば、スマホアプリが毎週のように小さくアップデートされるのは、この進め方のためです。Web系やSaaSでは、利用者の反応を見ながら素早く改善できるアジャイル型が主流です。

クラウドの広がり

以前は自社のサーバーを買ってシステムを動かすのが一般的でしたが、今はAWS、Microsoft Azure、Google Cloudなどのクラウドを使うのが主流になりつつあります。たとえば、写真をスマホではなくネット上に保存するサービスのように、会社のシステムもネット上のコンピューターを借りて動かすイメージです。インフラエンジニアにはクラウドの知識が欠かせません。

生成AIと開発の変化

プログラムの自動生成やテストの自動化に生成AIが使われるようになり、エンジニアの仕事の進め方も変わりつつあります。何を作るべきかを考える力や、AIの出力を正しく評価する力の重要性が高まっています。

やりがい

ITは今やすべての産業の土台であり、自分の作ったシステムが何百万人に使われることもある、影響力の大きな仕事です。通信キャリアなら、災害時にも人々の連絡手段を守るという社会的な使命があります。Web系やSaaSでは、自分が作った機能への反応がすぐにデータで見えるので、改善の手応えを感じやすいです。技術の進歩が速いため、常に新しいことを学べるのも魅力です。

社会インフラを支える

銀行のATM、電車の運行管理、病院の電子カルテ、行政手続きなど、多くの社会の仕組みがシステムで動いています。SIerのエンジニアはそれらを止めないように作り、守っています。

場所や時間に縛られにくい

パソコンとネットがあれば仕事ができるため、在宅勤務やフレックスタイム制を取り入れている会社が多い業界です。

大変なこと・きついこと

納期が迫ったプロジェクトでは残業が増えることがあり、システムに障害が起きれば夜間や休日でも対応が必要になります。技術の移り変わりが速く、数年前の知識が通用しなくなることもあるため、仕事以外の時間でも勉強が求められがちです。SIerでは、お客さんの要望が途中で変わり、予算とスケジュールの調整に苦労することがあります。長時間パソコンに向かうので、目や肩、腰の疲れなど体調管理も大切です。

障害対応のプレッシャー

通信障害や銀行システムのトラブルはニュースになるほど社会に影響します。原因を素早く見つけて復旧させるまで、強いプレッシャーの中で働くことになります。

会社による差が大きい

働き方や待遇は会社によって大きく違います。会社の立ち位置(元請けか下請けか)や、平均残業時間、研修制度などを就活でしっかり確認することが大切です。

向いている人

新しいものが好きで、自分で調べて試してみるのが苦にならない人はIT業界に向いています。プログラミングでは、うまく動かない原因を論理的に一つずつ探っていく粘り強さが大切です。システムはチームで作るので、人の話をよく聞き、自分の考えを分かりやすく伝えるコミュニケーション力も欠かせません。必ずしも数学が得意である必要はなく、物事を筋道立てて考えられることのほうが重要です。

SIerに向いている人

お客さんの困りごとを聞いて解決策を考えるのが好きな人、大きな仕組みを着実に作り上げることにやりがいを感じる人に向いています。

Web系・SaaSに向いている人

自分でサービスを改善していきたい人、変化の速い環境を楽しめる人、数字で成果を確かめたい人に向いています。

高校生のうちにできること

まずは無料の学習サイトなどで、PythonやJavaScriptを使って簡単なプログラムを書いてみましょう。高校の「情報I」の授業をしっかり理解しておくと、大学入学共通テストの「情報」対策にもなります。ITパスポート試験は高校生でも受験でき、ITと経営の基礎を幅広く学べます。プログラミングコンテストやアプリ開発のイベントに参加すると、同じ興味を持つ仲間とも出会えます。

作ったものを公開する

簡単なゲームや自分の趣味のWebサイトでも、作って公開した経験は将来の自己PRになります。うまく動かない原因を調べて解決した経験こそが、エンジニアとしての力になります。

ITのニュースに触れる

通信障害、新しいスマホやAIサービス、サイバー攻撃などのニュースを、どの会社のどんな仕組みが関係しているのか考えながら読むと業界理解が深まります。

代表的な会社・職場

SIerでは、NTTデータグループ、富士通、NEC、日立製作所、野村総合研究所、SCSK、TIS、BIPROGYなどが代表的です。通信キャリアでは、NTT(NTTドコモ、NTT東日本・西日本など)、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルがあります。Web系では、LINEヤフー、楽天グループ、サイバーエージェント、メルカリ、ZOZO、カカクコムなどが知られています。SaaSではfreee、マネーフォワード、Sansanなどがあり、外資系ではGoogle、Amazon(AWS)、Microsoft、Salesforceなどの日本法人もあります。

職場の場所

本社やオフィスは東京に集中していますが、大手SIerや通信キャリアは全国に拠点があります。SIerではお客さんの会社に常駐して働くこともあります。

事業会社の社内SE

メーカーや銀行、小売などの会社のIT部門で、自社のシステムを企画・管理する社内SEという働き方もあります。IT業界からの転職先としても人気です。

よくある質問

文系でもIT業界に入れる?

入れます。大手SIerや通信キャリアでは文系出身のSEや営業が多く、入社後の研修でプログラミングの基礎から教えてもらえます。Web系のエンジニア職は経験を重視する会社が多いので、学生のうちに何か作っておくと有利です。

SIerとWeb系、何が一番違う?

SIerはお客さんから依頼を受けてシステムを作り、Web系は自社のサービスを作って運営します。SIerは納期と品質を守ることが、Web系はサービスを改善して利用者や売上を伸ばすことが重視されます。

通信キャリアの仕事はスマホを売ること?

店頭での販売は主に代理店の仕事で、キャリアの社員はネットワークの設計・運用、料金プランやサービスの企画、法人向けの提案、新規事業などを担当します。

SaaSってなに?

インターネット経由で使うソフトウェアを、買い切りではなく月額や年額で利用できるサービスです。会計ソフトや勤怠管理などが代表例で、利用者はソフトをインストールせずにブラウザから使えます。

数学が苦手でもエンジニアになれる?

一般的なWebやシステムの開発では、高度な数学を使う場面は多くありません。論理的に考える力のほうが大切です。ただしAIやデータ分析、通信の研究開発では数学の知識が重要になります。

IT業界はブラックって本当?

会社によって大きく異なります。働き方改革や在宅勤務が進み、残業が少ない会社も増えています。就活では平均残業時間や有給休暇の取得率、離職率などを確認すると実態が分かります。

AIにエンジニアの仕事が奪われない?

簡単なプログラムはAIが書けるようになっていますが、何を作るべきかを考え、AIの出力を確かめ、システム全体を設計する仕事は人が担っています。AIを使いこなせるエンジニアの需要はむしろ高まっています。

資格は必要?

エンジニアになるのに必須の資格はありません。ただ、基本情報技術者試験(令和7年度の合格率38.3%)などの国家試験に合格していると、基礎知識の証明になり就活でもアピールできます。

転職は多い業界?

多いです。スキルを持ったエンジニアは他社からの需要が高く、SIerからWeb系、Web系からSaaSなど、経験を生かして移る人がたくさんいます。

在宅勤務はできる?

IT業界は在宅勤務を取り入れている会社が多い業界です。ただし客先常駐の仕事やネットワーク設備の保守など、現場に行く必要がある仕事もあります。

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年収について:国税庁「民間給与実態統計調査」令和7年分の情報通信業平均は682万円です。有価証券報告書(単体)では野村総合研究所1,333万円(平均39.7歳、2026年3月期)、NTTデータグループ923万円(2025年3月期)、KDDI1,051万円(平均42.3歳、2026年3月期)、サイバーエージェント914万円(平均33.8歳、2025年9月期)などです。中小のSIerやSESの会社はこれより低い傾向があり、あくまで目安です。

数字はすべて公開データにもとづく目安です。出典は出典・サイトポリシーにまとめています。

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