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スマホを分解すると、日本の会社の部品だらけ

電機・半導体・電子部品

電機・半導体・電子部品業界は、家電やパソコン、発電機や鉄道の設備をつくる電機メーカー、電子機器の頭脳になる半導体をつくる半導体メーカー、その半導体をつくるための製造装置メーカー、そしてコンデンサやセンサーなどの小さな電子部品をつくる電子部品メーカーの集まりです。電気機械器具製造業の出荷額は約21.3兆円、電子部品・デバイス・電子回路製造業は約17.0兆円(いずれも2022年、経済産業省)で、合わせると製造業の約1割を占めます。日本は完成品のスマホやパソコンでは海外勢に押されましたが、電子部品、半導体製造装置、イメージセンサー、パワー半導体などでは世界トップクラスの会社が多く、AIやデータセンター、電気自動車の広がりで再び注目されています。研究開発、設計、プロセス技術、フィールドエンジニアなど、理系の専門職が活躍する業界です。

平均年収の目安約573万円(製造業全体の平均)。大手は800万〜1,400万円前後、一部の装置メーカーはさらに高い中堅部品メーカーで600万円台〜大手装置・半導体メーカーで1,000万円超
なるまでの難しさ★★★★★電機・半導体・電子部品の大手は、理系の技術職を大量に採用しており、電気電子・情報・物理・機械・材料・化学など幅広い学科から入れます。修士卒が中心で、研究室推薦も多く使われます。一般の知名度が低い装置・部品メーカーには、待遇がとても良い会社がある一方で、知らないまま選択肢から外してしまう学生も多い業界です。文系の総合職は営業や調達、経理などで採用されます。
決めどき理系が中心

高校で理系(物理・数学)を選ぶとき。大学3年〜修士1年で研究室を選ぶとき

電機・半導体・電子部品の業界マップ

家電から社会インフラまで手がける総合電機と、カメラ・プリンターなどの精密機器、小さな電子部品や工場の機器、半導体とその製造装置の会社に分かれます。

となりの業界

押すと、会社図鑑でその会社のくわしい解説が見られます。

どんな職種がある?

押すと、その職種の仕事内容・必要な力・キャリアが見られます。

電機・半導体・電子部品の年収と昇進の流れ

担当(エンジニア・一般社員)450〜650万円
入社1〜5年、23〜29歳

設計、工程、装置、部品などの担当として、ツールや装置を使いこなし、任された範囲で成果を出します。お客さんとの技術的なやりとりを一人で行えることが次の段階の目安です。

主任・シニアエンジニア650〜950万円
入社6〜12年、29〜36歳

新製品や新工程の中心メンバーとして、後輩を指導しながらプロジェクトを進めます。海外のお客さんや拠点との仕事が増える段階です。

課長・グループリーダー900〜1,300万円
入社13〜20年、36〜45歳

設計グループや製造課、開発チームを率い、予算と成果に責任を持ちます。技術の専門家として専門職のコースに進む道もあります。

部長・工場長1,200〜1,700万円
45〜55歳

事業部の技術部門や工場全体を率い、どの技術や設備に投資するかを決めます。

事業部長・執行役員・技術責任者(CTO)1,600〜3,000万円
50代〜

一つの事業や会社全体の技術戦略に責任を持ちます。世界の競合との戦い方を決める立場です。

年収は目安です。会社や地域、本人の働き方で大きく変わります。

働き方で何が違う?

総合電機メーカー平均900万〜1,000万円前後(有報単体、2026年3月期)

社会インフラ、IT、エネルギー、家電、FAなど、幅広い事業を持つ大手です。発電所や鉄道、ビル、工場、官公庁のシステムなど、大規模なプロジェクトに関われます。事業の数が多く、社内でさまざまなキャリアを選べるのが特徴です。

良いところ事業の幅が広く安定している、社会を支える大きな仕事ができる

大変なところ組織が大きく意思決定に時間がかかることがある、事業の売却や再編が多い

半導体メーカー平均750万〜1,000万円前後の会社が多い(有報単体)

メモリ、マイコン、パワー半導体、イメージセンサーなどの半導体を設計・製造する会社です。最先端の技術を扱い、工場への投資も大きい業界です。景気の波の影響を大きく受けます。

良いところ最先端の技術に関われる、世界的に人材が求められる

大変なところ景気の波が大きい、工場勤務や交替勤務がある

半導体製造装置メーカー平均1,000万〜1,900万円の会社がある(有報単体、2026年3月期・6月期)

半導体をつくるための装置を開発・製造し、世界中の半導体メーカーに売る会社です。日本企業が世界で強い分野で、海外売上の比率が非常に高い会社が多くあります。フィールドエンジニアとして海外の工場で働く機会も多いです。

良いところ年収が高い会社が多い、世界の最先端の工場と仕事ができる

大変なところ業績連動で年収が変わりやすい、海外出張や顧客対応が多い

電子部品メーカー平均650万〜920万円前後(有報単体、2026年3月期)

コンデンサ、センサー、コネクタ、モーターなどの部品をつくる会社です。世界シェアの高い製品を持つ会社が多く、スマホや自動車、データセンターなど幅広い分野に部品を供給しています。

良いところ世界トップシェアの技術に関われる、取引先の業界が幅広い

大変なところスマホなど特定の製品の売れ行きの影響を受ける、工場が地方に多い

代表的な会社・職場

総合電機(重電・IT)総合電機(重電)電機・エンタメ大手電機大手(家電)半導体製造装置(国内最大手)半導体製造装置(検査装置)半導体製造装置(洗浄装置)半導体メーカー(メモリ)半導体メーカー(マイコン)半導体メーカー(パワー半導体)電子部品最大手電子部品大手
日立製作所 ›総合電機(重電・IT)

ITサービス、鉄道、電力・エネルギー、ビルシステムなど、社会インフラとデジタルを組み合わせた事業を世界で展開しています。

約995万円(2026年3月期・単体)
三菱電機 ›総合電機(重電)

工場の自動化(FA)機器、エアコン、ビルのエレベーター、電力システム、パワー半導体、宇宙関連などを手がけています。

約913万円(2026年3月期・単体)
東芝 ›総合電機(重電)

発電や送電などのエネルギー、社会インフラ、パワー半導体、ハードディスクなどを手がけています。

非上場化のため最新の有報なし
ソニーグループ ›電機・エンタメ大手

ゲーム、音楽、映画、イメージセンサー、カメラなどを手がけ、スマホ向けのイメージセンサーで世界的なシェアを持っています。

約1,155万円(2026年3月期・持株会社単体)
パナソニックホールディングス ›電機大手(家電)

家電、住宅設備、電気自動車向けの電池、企業向けのシステムなどを手がけています。

約988万円(2026年3月期・持株会社単体)
東京エレクトロン ›半導体製造装置(国内最大手)

ウエハーに膜をつける装置、回路を削る装置、洗浄装置などを手がけ、世界の半導体メーカーに供給しています。

約1,380万円(2026年3月期・単体)
アドバンテスト ›半導体製造装置(検査装置)

できあがった半導体が正しく動くかを調べる検査装置(テスター)で世界大手の会社です。

約1,098万円(2026年3月期・単体)
レーザーテック半導体製造装置(検査装置)

半導体の回路の原版(マスク)の欠陥を見つける検査装置などで、世界的なシェアを持っています。

約1,881万円(2026年6月期・単体)
SCREENホールディングス半導体製造装置(洗浄装置)

ウエハーを洗う洗浄装置で世界大手の会社で、印刷関連の機器も手がけています。

約1,080万円(2026年3月期・持株会社単体)
キオクシア ›半導体メーカー(メモリ)

スマホやパソコン、データセンターのデータを記憶するフラッシュメモリをつくっています。

キオクシアHD約1,307万円(2026年3月期・持株会社単体)
ルネサスエレクトロニクス ›半導体メーカー(マイコン)

車や家電、工場の機器を制御するマイコンなどの半導体を手がけ、自動車向けで大きなシェアを持っています。

約750万円(2025年12月期・単体)
ローム ›半導体メーカー(パワー半導体)

電気を効率よく制御するパワー半導体や、さまざまな電子部品を手がけています。

約804万円(2026年3月期・単体)
村田製作所 ›電子部品最大手

積層セラミックコンデンサで世界トップクラスのシェアを持ち、通信用のフィルターなども手がけています。

約838万円(2026年3月期・単体)
TDK ›電子部品大手

電池、センサー、コンデンサ、磁気部品など幅広い電子部品をつくり、スマホ向けの小型電池でも知られています。

約921万円(2026年3月期・単体)

›がついた会社は、会社図鑑で詳しく解説しています。

どうやって稼いでいる?

製造装置メーカー工場に装置を売る 電子部品メーカーコンデンサなど 半導体メーカーチップを設計・製造 電子機器・車のメーカースマホ・パソコン・車・家電 装置 保守・部品 チップ 小さな部品を大量に 半導体の需要の波(シリコンサイクル) 増える減る 数年ごとにくり返す お客さんの多くは、ほかのメーカー 需要の波で、業績が大きく変わる
総合電機メーカーは、発電所や鉄道、官公庁のシステムなども手がけます

この業界は、会社によってビジネスの形が大きく異なります。半導体メーカーは、チップを設計・製造してスマホ、パソコン、車、家電などのメーカーに売ります。最先端の工場は一つで数兆円規模の投資が必要になることもあり、工場を持たずに設計だけを行うファブレス、製造だけを請け負うファウンドリといった分業も進んでいます。半導体製造装置メーカーは、半導体メーカーが工場を建てたり増やしたりするときに装置を売り、さらに交換部品や保守サービスで長く稼ぎます。電子部品メーカーは、小さな部品を毎日何億個も大量生産して、世界中の電子機器メーカーに売ります。総合電機メーカーは、家電から発電・鉄道・ビル・ITシステムまで幅広く手がけ、最近は社会インフラやデジタルサービスに力を移しています。半導体の需要は数年ごとに大きく増減する「シリコンサイクル」と呼ばれる波があり、業績が景気に大きく左右されるのも特徴です。

1
半導体の販売

スマホやパソコンの頭脳になるロジック半導体、データを記憶するメモリ、電気を効率よく制御するパワー半導体、カメラの目になるイメージセンサーなどを売る売上です。たとえば、スマホのカメラには日本企業のイメージセンサーが多く使われています。

2
半導体製造装置の販売と保守

半導体メーカーの工場に、膜をつける装置、回路を削る装置、洗浄装置、検査装置などを売る売上です。装置を売ったあとも、交換部品や保守、性能を上げる改造で長く収入が続きます。

3
電子部品の大量販売

コンデンサ、センサー、コネクタ、モーターなどの小さな部品を、世界中の電子機器や自動車のメーカーに大量に売る売上です。一つは数円から数十円でも、何十億個と売ることで大きな売上になります。

4
社会インフラ・システム事業

発電所や送電網、鉄道、エレベーター、工場の設備、官公庁や銀行の情報システムなどを、総合電機メーカーが受注して構築する売上です。一つの案件が大きく、完成後も何十年も保守の収入が続きます。

5
家電・デジタル機器の販売

テレビ、冷蔵庫、エアコン、カメラ、ゲーム機などの完成品を、家電量販店やネット通販を通じて消費者に売る売上です。海外メーカーとの競争が激しく、日本の大手の中には家電の比率を下げた会社もあります。

6
デジタルサービス・ソフトウェア

機器やシステムから集めたデータを分析して、故障の予測や省エネを提案したり、ゲームや音楽、映画などのコンテンツを配信したりする収入です。機器を一度売るだけでなく、継続的にお金が入る仕組みづくりが進んでいます。

入ってからどうなっていく?

1〜3年目研修と担当業務の基礎技術系は研究所、設計部門、工場などに配属され、ツールや装置の使い方、製品の仕組みを身につけます。半導体工場では、クリーンルームでの作業のルールから学びます。
4〜7年目製品・工程の主担当チップの主要な回路、工程の条件、新しい部品や装置の開発などで主担当になります。お客さんとの技術的な打ち合わせを任されることも増えます。
8〜12年目プロジェクトリーダー・海外経験新製品や新しい工場の立ち上げのリーダーを任されます。台湾、アメリカ、韓国、中国などのお客さんの工場や自社の海外拠点で働く人も多い時期です。
13〜20年目課長・グループリーダー設計グループや製造課、営業課などを率い、予算と成果に責任を持ちます。技術の専門家として「専門職」のコースに進む人もいます。
20年目以降部長・事業部長・技術責任者一つの事業や工場全体、研究部門の責任者として、どの技術に投資するかなど大きな判断に関わります。
転職のパターン業界内外への転職半導体・装置・部品メーカー同士の転職、外資系半導体メーカーやファウンドリへの転職、IT企業への転職などがあります。半導体の技術者は世界的に不足しており、経験を積むと転職の選択肢が広がりやすい分野です。

半導体チップができるまで

設計 前工程 クリーン ルーム 後工程 設計 回路をツールで設計 マスクづくり 回路の原版をつくる 膜をつける 原子の層のレベルで積む 模様を焼きつけて削る 光で写し、不要な部分を削る ウエハーの検査 チップが動くか1つずつ調べる 切り分けて包む チップにしてパッケージへ 最終検査と出荷 スマホや車のメーカーへ 何百回もくり返す 膜をつけて削る作業を、何百回もくり返す
前工程は、防塵服を着て入るクリーンルームの中で行います
1
設計

設計者がEDAツールで回路を設計し、シミュレーションで正しく動くかを確かめます。設計データは工場に送られます。

2
マスク(回路の原版)づくり

回路の模様を写した原版(フォトマスク)をつくります。写真のネガのような役割をします。

3
前工程:膜をつける

クリーンルームの中で、シリコンウエハーの表面に、薄い膜を原子の層のレベルで積み重ねます。

4
前工程:模様を焼きつけて削る

フォトレジストをぬって光で回路の模様を焼きつけ、不要な部分を削ります。この作業を何百回もくり返します。

5
ウエハーの検査

検査装置で、ウエハー上のチップが正しく動くかを一つずつ調べます。

6
後工程:切り分けて包む

ウエハーを一つ一つのチップに切り分け、配線をつないでパッケージに入れます。

7
最終検査と出荷

完成したチップを最終検査し、スマホや車、家電のメーカーに出荷します。

電機・半導体・電子部品のある1日

8:30

半導体工場に出社し、夜のあいだの生産データと検査結果をパソコンで確認します。

9:00

工程の担当者が集まる朝会で、不良の増えている工程や装置の状態を共有します。

10:00

防塵服に着替えてクリーンルームに入り、装置の状態を確認し、条件を変えたテストを始めます。

12:00

クリーンルームを出て、社員食堂で昼食。

13:00

テストしたウエハーの測定データを分析し、条件と結果の関係をグラフにまとめます。

14:30

製造装置メーカーのフィールドエンジニアと打ち合わせ。装置の部品交換の計画を立てます。

16:00

設計部門とオンライン会議。新製品の量産に向けた課題を話し合います。

17:00

分析結果を報告書にまとめ、翌日の実験の準備をします。

18:00

夜勤の担当者に引き継ぎをして退社します。

もっと知りたい人へ

そもそも電機・半導体・電子部品業界とは

この業界は、電気の力で動くものと、その中に入る部品をつくる会社の集まりです。大きく分けると、家電や社会インフラのシステムをつくる電機メーカー、電子機器の頭脳となる半導体をつくる半導体メーカー、その半導体をつくる装置をつくる半導体製造装置メーカー、コンデンサやセンサーなどの電子部品をつくる電子部品メーカーがあります。たとえば一台のスマホの中には、計算をするチップ、記憶するメモリ、カメラのイメージセンサー、電気を安定させるコンデンサ、通信のためのフィルターなど、多くの半導体と電子部品が入っています。電気機械と電子部品・デバイスの製造業を合わせると、出荷額は約38兆円(2022年)、働く人は約93万人(2023年6月)にのぼります(経済産業省)。

半導体とは

半導体は、電気を通す性質と通さない性質の中間の性質を持つ材料(シリコンなど)のことで、それを使ってつくった電子回路のチップも半導体と呼ばれます。スマホ、パソコン、車、家電、データセンターなど、電気で動くほとんどの製品に使われていて、「産業のコメ」とも呼ばれてきました。

完成品から部品・装置へ

かつて日本は、テレビやパソコンなどの完成品で世界をリードしていましたが、海外メーカーとの競争で多くの分野でシェアを失いました。一方で、電子部品、半導体製造装置、半導体材料、イメージセンサーなどでは、今も世界トップクラスの会社が数多くあります。

半導体ができるまでと業界の分業

半導体は、設計、ウエハーの上に回路をつくる「前工程」、チップを切り出して包む「後工程」という流れでつくられます。前工程では、シリコンウエハーの上に膜をつけ、光で回路の模様を焼きつけ、不要な部分を削る、という作業を何百回もくり返します。後工程では、ウエハーを一つ一つのチップに切り分け、配線をつないでパッケージに入れ、最後に検査します。この流れを一社ですべて行う会社を垂直統合型(IDM)といい、設計だけを行う会社をファブレス、製造だけを請け負う会社をファウンドリといいます。たとえば、アメリカの有名なファブレス企業が設計したAI向けのチップを、台湾のファウンドリが製造する、といった分業が世界的に進んでいます。

日本が強い製造装置と材料

半導体をつくるには、何百種類もの装置と材料が必要です。日本には、東京エレクトロン、SCREEN、アドバンテスト、レーザーテック、ディスコなどの装置メーカーや、信越化学工業、SUMCO、JSR、東京応化工業などの材料メーカーがあり、世界の半導体づくりに欠かせない存在です。

国内の新しい工場

近年、熊本県に台湾の大手ファウンドリが中心となる工場ができたり、北海道で最先端の半導体の国産化をめざす会社が工場を建てたりと、日本国内で半導体工場への大きな投資が続いています。半導体の技術者の需要が高まっている理由の一つです。

電子部品の世界:小さな部品の大きな存在感

電子部品は、電子機器の中で電気の流れを整えたり、信号を受け取ったり、つないだりする小さな部品です。代表的なものに、電気を一時的にためて安定させるコンデンサ、電流の変化をなめらかにするインダクタ、特定の電波だけを通すフィルター、温度や動き、光を感じ取るセンサー、部品どうしをつなぐコネクタ、小さなモーターなどがあります。日本の電子部品メーカーは、こうした部品の多くで世界的に高いシェアを持っています。たとえば村田製作所やTDK、太陽誘電は積層セラミックコンデンサ、ソニーグループはイメージセンサー、日本電産(ニデック)は小型モーターで知られています。電気自動車やAIのデータセンターでは、一台あたりに使われる電子部品の数がさらに増えています。

なぜ日本の部品は強いのか

電子部品は、材料の配合や、薄い膜を何百層も重ねる技術など、長年積み重ねたノウハウがものをいう世界です。日本の部品メーカーは、材料から製造装置まで自社で開発することが多く、ほかの国の会社がまねしにくい技術を持っています。

部品は「採用」が勝負

電子部品は、お客さんの製品の設計段階で採用されると、その製品が売れているあいだずっと注文が続きます。そのため、営業や技術者は、お客さんの次の製品の計画をいち早くつかみ、開発の初期から提案することが大切です。

総合電機と専業メーカー

電機メーカーは、さまざまな分野を手がける総合電機と、特定の分野に強い専業メーカーに分けられます。総合電機の代表は、日立製作所、東芝、三菱電機で、かつては家電から発電所、鉄道、半導体まで幅広く手がけていました。いまは、各社が得意な分野にしぼりこみ、日立はITと社会インフラ、三菱電機は工場の自動化(FA)や空調・ビルシステム、東芝はエネルギーやインフラなどに力を入れています。ソニーグループはゲーム、音楽、映画、イメージセンサーなどを持つ会社に、パナソニックは家電に加えて電池や住宅設備、企業向けの事業を持つ会社へと姿を変えています。会社の名前から想像する事業と、実際の主力事業が大きくちがうことも多い業界です。

FA(ファクトリーオートメーション)

工場の機械を自動で動かすための制御装置、センサー、ロボット、モーターなどをまとめてFAといいます。たとえば、自動車工場の溶接ロボットや、食品工場の箱詰めの機械を動かしているのがFA機器です。キーエンス、ファナック、三菱電機、オムロン、安川電機などが代表的な会社です。

NECや富士通など

NECや富士通は、かつては電機メーカーとして半導体やパソコンもつくっていましたが、いまはITサービスや通信機器が中心の会社になっています。電機業界とIT業界の境目にある会社といえます。

なるためのルート

電機・半導体・電子部品業界の技術職には、大学の電気電子工学、情報工学、物理、機械工学、材料工学、化学などの学科を卒業し、修士課程まで進んでから入る人が多いです。半導体のように専門性が高い分野では、大学院で半導体デバイスや材料、回路を研究していた人が有利というより「多い」のが実情ですが、入社後に一から学ぶ人も少なくありません。文系の総合職は、営業、調達、経理、人事などで採用されます。工場の生産職や保守の技術者としては、工業高校や高専から就職する道もあります。

  1. 高校で理系を選ぶ物理と数学を中心に学びます。電気や電磁気の単元は、この業界の仕事に直結します。
  2. 大学・高専で専門を選ぶ電気電子、情報、物理、機械、材料、化学などの学科が代表的です。半導体に関わる授業や研究室がある大学も増えています。
  3. 研究室で研究する回路設計、半導体デバイス、材料、プロセス、ソフトウェアなどのテーマで研究し、実験やシミュレーションの経験を積みます。
  4. 大学院(修士)に進む技術職をめざす多くの人が修士課程に進みます。学会発表やインターンシップの経験も役立ちます。
  5. 就職活動・推薦応募インターンシップ、技術面接、研究内容のプレゼンなどを経て内定を得ます。
  6. 入社・配属研究所、設計部門、工場などに配属され、研修を受けてから仕事を始めます。
理系のルート

高校で物理と数学をしっかり学び、大学の工学部や理学部で電気・情報・物理・材料などを専攻し、大学院で研究経験を積むのが最も多い道です。研究室推薦で応募する人もいます。

高専・工業高校からのルート

高専の電気電子工学科や情報工学科、工業高校の電気科・電子科などから、工場の技術員、生産職、装置の保守技術者として就職する道があります。半導体工場の増加で、地方の高専や工業高校からの採用も増えています。

試験・選考の詳細

この業界に入るために必須の国家資格はありません。技術職の選考では、大学での研究内容がとても重視され、技術面接で研究の目的、方法、結果、苦労した点を説明します。面接官は専門の技術者なので、研究の中身を論理的に、わかりやすく話す練習が大切です。半導体製造装置メーカーやフィールドエンジニアの選考では、海外の顧客と仕事をすることが多いため、英語への意欲や、海外で働く気持ちがあるかを聞かれることもあります。

役に立つ資格

必須ではありませんが、電気主任技術者(電験)、電気工事士、基本情報技術者、TOEICのスコアなどは評価されることがあります。電気工事士や基本情報技術者は高校生でも受験できます。

面接でよく聞かれること

「なぜ半導体(電子部品)なのか」「当社の製品がどこに使われているか知っているか」「研究で壁にぶつかったときどうしたか」などがよく聞かれます。完成品の中に会社の製品がどう入っているかを調べておくと、志望理由に深みが出ます。

年収のリアル

この業界は、会社や分野によって年収の差が大きい業界です。国税庁の調査による製造業平均は573万円(令和7年分)ですが、半導体製造装置メーカーには非常に高い会社があり、レーザーテック1,881万円(2026年6月期)、東京エレクトロン1,380万円、アドバンテスト1,098万円、SCREEN HD 1,080万円(いずれも2026年3月期・単体)です。総合電機では日立製作所995万円、三菱電機913万円、電子部品ではTDK 921万円、村田製作所838万円、半導体メーカーではローム804万円、ルネサスエレクトロニクス750万円(2025年12月期)となっています。半導体の景気の波によって、賞与が大きく増えたり減ったりすることも知っておきましょう。

景気の波と年収

半導体業界には、数年ごとに好況と不況がくり返される「シリコンサイクル」があります。好況のときは賞与が大きく増え、不況のときは減ることがあります。長い目で見て安定して働けるかどうかも、会社選びのポイントです。

FAや計測機器メーカー

工場の自動化に使うセンサーや計測機器のメーカーには、平均年収がとても高い会社もあります。たとえばキーエンスの単体平均年収は2,178万円(2026年3月期、平均35.0歳)です。ただし、成果を強く求められる働き方であることも知られています。

やりがい

この業界のやりがいは、世界最先端の技術に関われることです。半導体は、数年ごとにより細かく、より高性能になり続けていて、その進歩がスマホやAI、自動運転、医療機器などの新しいサービスを可能にしています。自分が関わった部品や装置が、世界中の電子機器の中で使われているという実感は、大きな誇りになります。また、電力や鉄道などの社会インフラに関わる仕事では、多くの人の毎日の生活を支えている責任とやりがいがあります。

世界の技術者と仕事ができる

お客さんや協力会社が世界中にいるため、台湾、アメリカ、韓国、ヨーロッパなどの技術者と一緒に仕事をする機会が多くあります。技術という共通の言葉で、国をこえて協力できるのは大きな魅力です。

未来をつくる技術

AI、電気自動車、再生可能エネルギー、量子コンピュータなど、これからの社会を変える技術の多くは、半導体と電子部品がなければ実現しません。未来の土台をつくる仕事に関われます。

大変なこと・きついこと

技術の進歩がとても速いため、常に新しい知識を学び続ける必要があります。半導体業界は景気の波が大きく、好況のときは注文に追われて忙しく、不況のときは生産や投資が減るなど、環境が大きく変わります。半導体工場ではクリーンルームでの作業や交替勤務があり、フィールドエンジニアはお客さんの都合に合わせた夜間や休日の対応、長期の海外出張があることもあります。また、海外企業との競争が激しく、国際情勢や各国の規制の影響を受けやすいのも特徴です。

クリーンルームでの仕事

半導体工場のクリーンルームでは、全身を覆う防塵服、マスク、手袋をつけて作業します。慣れるまでは動きにくさを感じますが、ほこり一つが不良品の原因になる世界なので、ルールを守ることがとても大切です。

国際情勢の影響

半導体は国の安全保障に関わる重要な製品とされ、各国が輸出の規制や補助金の政策を打ち出しています。こうした政策の変化で、売れる国や工場の計画が変わることがあります。

向いている人

電気や電子工作、プログラミング、ものの仕組みに興味がある人は、この業界に向いています。目に見えないほど小さな世界で起きていることを、データや理論から想像するのが好きな人も向いています。また、技術の変化が速いので、新しいことを学ぶのが好きな人、世界の人と協力して仕事をしたい人にも合っています。一方、半導体の量産では、地道なデータ分析と改善の積み重ねが成果につながるため、粘り強さも大切です。

こんな経験が生きる

電子工作でLEDを光らせたり、マイコンでロボットを動かしたりした経験は、回路や制御の仕事に直結します。パソコンを自分で組み立てた経験も、部品の役割を知るよい機会になります。

理科が好きなら

物理の電気や電磁気、化学の結合や反応が好きな人は、半導体や電子部品の材料・プロセスの仕事で、その知識を生かせます。

高校生のうちにできること

物理の電気と電磁気、数学の微分・積分や複素数などは、電気電子の学問の土台になるので、しっかり理解しておきましょう。プログラミングや電子工作にも挑戦してみると、回路やソフトウェアの仕事のイメージがつかみやすくなります。また、家にある古い家電やおもちゃを、安全に気をつけながら分解して、中にどんな部品があるかを見てみるのもおすすめです。ニュースで半導体や電子部品の会社の名前が出てきたら、その会社の製品が何に使われているかを調べてみましょう。

資格に挑戦する

第二種電気工事士や基本情報技術者試験は、高校生でも受験でき、電気やITの基礎を学ぶのに役立ちます。工業高校では在学中に取る生徒も多いです。

企業の展示や科学館

電機メーカーや半導体メーカーの中には、ショールームや科学館を公開している会社があります。半導体のウエハーや、製品の中の部品を実際に見ると、技術の細かさに驚くはずです。

代表的な会社・職場

総合電機では、日立製作所、東芝、三菱電機が代表で、ソニーグループ、パナソニック、シャープ、NEC、富士通なども電機業界の大手です。半導体メーカーでは、キオクシア(メモリ)、ルネサスエレクトロニクス(マイコン)、ソニーセミコンダクタソリューションズ(イメージセンサー)、ローム(パワー半導体)、ソシオネクスト(設計中心)などがあります。半導体製造装置では、東京エレクトロン、アドバンテスト、SCREEN HD、レーザーテック、ディスコ、KOKUSAI ELECTRICなど、電子部品では、村田製作所、TDK、京セラ、太陽誘電、ニデック、アルプスアルパイン、ヒロセ電機などが知られています。

外資系やファウンドリ

日本国内には、海外の半導体メーカーや装置メーカーの日本法人、台湾のファウンドリの国内工場、最先端の半導体の国産化をめざす新しい会社などもあります。英語を使う機会が多く、国際的な環境で働ける職場です。

商社やエンジニアリング会社

電子部品や半導体を扱う専門商社(マクニカ、加賀電子など)や、半導体工場のクリーンルームを建てる建設会社・設備会社も、この業界と深く関わる職場です。

よくある質問

半導体と電子部品はどうちがいますか。

半導体は、計算や記憶、電気の制御などを行う電子回路のチップのことです。電子部品は、コンデンサやセンサー、コネクタなど、半導体以外も含めた電子機器の部品全体を指すことが多いです。どちらもスマホや車の中で一緒に使われています。

文系でもこの業界に入れますか。

入れます。営業、調達、経理、人事、法務などで文系の総合職の採用があります。BtoBの業界なので、入社後に製品や技術の基本を研修で学びます。

どの学部・学科が多いですか。

電気電子工学、情報工学、物理、機械工学、材料工学、化学などの出身者が多いです。半導体は多くの技術が組み合わさっているため、理系のさまざまな分野の人が活躍しています。

半導体業界は不安定だと聞きましたが本当ですか。

数年ごとに好況と不況がくり返される「シリコンサイクル」があり、業績が上下しやすいのは事実です。ただし、AIや電気自動車、データセンターなどで半導体の使い道は長い目で見て広がり続けています。

日本の電機メーカーは弱くなったのですか。

テレビやスマホなどの完成品では海外メーカーにシェアを奪われた分野もあります。一方で、電子部品、半導体製造装置、材料、イメージセンサー、工場の自動化機器などでは、今も世界トップクラスの会社がたくさんあります。

クリーンルームとは何ですか。

空気中のちりやほこりを極限まで減らした部屋です。半導体は非常に細かい回路を持つため、目に見えないほどのちりでも不良品の原因になります。働く人は防塵服を着て作業します。

海外で働くことはありますか。

お客さんや工場が世界中にあるため、技術職、フィールドエンジニア、営業などで海外出張や駐在の機会が多い業界です。とくに台湾、アメリカ、韓国、中国などの半導体工場との仕事が多くあります。

大学院に行かないと技術職になれませんか。

大手の研究・設計職は修士卒が中心ですが、学部卒や高専卒でも、生産技術、品質保証、フィールドエンジニアなどで多く採用されています。入社後に経験を積んで専門性を高める人もたくさんいます。

高校生のうちに取れる資格はありますか。

第二種電気工事士、基本情報技術者試験、ITパスポートなどは高校生でも受験できます。電気やITの基礎を身につけるのに役立ちます。

この分野のことば

年収について:国税庁「民間給与実態統計調査」令和7年分の製造業平均は573万円。有価証券報告書(単体)では東京エレクトロン1,380万円(2026年3月期、平均43.1歳)、レーザーテック1,881万円(2026年6月期)、アドバンテスト1,098万円、SCREEN HD 1,080万円、ソニー1,155万円(持株会社)、日立製作所995万円、三菱電機913万円、TDK 921万円、村田製作所838万円、ローム804万円(いずれも2026年3月期)、ルネサスエレクトロニクス750万円(2025年12月期)など。半導体は景気の波が大きく、業績で賞与が大きく変わります。あくまで目安です。

数字はすべて公開データにもとづく目安です。出典は出典・サイトポリシーにまとめています。

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