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乗船実習で網を引く!

水産学部・海洋学部

魚を獲るだけでなく、育てる・守る・食べる・調べる

水産学部・海洋学部は、海や川、湖の生き物と環境について学び、それを食べ物や資源として持続的に利用する方法を研究する学部です。北海道大学、長崎大学、鹿児島大学などの水産学部、東京海洋大学、東海大学の海洋学部、近畿大学農学部水産学科などで学べます。学ぶ分野は、魚の生態や体のしくみを調べる生物学、魚や貝を育てる増養殖学、海の流れや水質を調べる海洋学、水産物を加工して食品にする食品科学、漁業や水産物の流通を考える経済学まで、理系から文系寄りまで広がっています。たとえば、スーパーで売られている養殖のブリやマダイ、回転寿司のサーモン、缶詰のツナなどは、どれも水産学の研究や技術に支えられています。練習船に乗って海に出る実習があるのも、この学部ならではの特徴です。

よくある勘違い

漁師になるための学部

実は

水産学部・海洋学部で学ぶのは、魚や貝、海藻の生き物としてのしくみ、育てる技術(養殖)、海の環境、水産物を安全でおいしい食品にする技術、漁業の経済や資源管理など、とても幅広い分野です。卒業生の多くは、食品メーカー、水産会社、研究機関、公務員などで働いています。

どんな学科・専攻がある?

水産学部・海洋学部ではどんな授業がある?

押すと、その授業の中身が見られます。

実習・実験・研究

海の上乗船実習数日〜数週間練習船で網を引き、魚やプランクトンをとる水温・塩分を測り、船で共同生活陸の上臨海実験所磯の貝・カニ・海藻を潮が引いた時に採集養殖施設卵から稚魚を育てるエサ・水質を毎日記録加工の実習かまぼこ・干物・缶詰成分や細菌の数も測る魚市場・漁港早朝のせりを見学水揚げや加工場も4年卒業研究例:養殖のエサ・魚の鮮度を保つ方法船酔いや早朝、寒い海での作業もあるが教室では学べない体験ができる

水産学部・海洋学部の大きな特徴は、海や川に出て行う実習が多いことです。大学の練習船に乗って数日から数週間の航海に出る乗船実習では、網で魚やプランクトンをとったり、海水を採取したりして、海の生き物と環境を調べます。たとえば北海道大学水産学部には「おしょろ丸」などの練習船があり、北の海での調査を行っています。陸上でも、大学の臨海実験所や養殖場で魚を育てる実習、魚市場や水産加工場の見学、水産物の加工実習などがあります。船酔いや早朝の作業、寒い季節の海上での作業など、体力的にきつい面もありますが、教室では学べない体験ができます。4年生では研究室に所属して卒業研究を行います。

乗船実習大学の練習船に乗って、数日から数週間、海に出ます。船の上で網を引いて魚やプランクトンをとり、水温や塩分を測り、とれた生き物を観察します。船の上での共同生活も経験します。
臨海実習・磯の生物観察大学の臨海実験所などで、海岸や磯にすむ生き物を観察し、種類を調べます。潮が引いた時間に、岩場で貝やカニ、海藻を採集することもあります。
増養殖実習大学の養殖施設で、魚の卵をふ化させて稚魚を育てたり、貝や海藻を育てたりします。エサやり、水質の管理、成長の記録などを、決まった期間毎日続けます。
水産加工・食品実習魚をさばいて、かまぼこ、干物、缶詰などを作る実習です。加工の前後で成分や細菌の数を測り、品質や安全を確かめます。
魚市場・漁港・加工場の見学早朝の魚市場のせり、漁港での水揚げ、水産加工場の生産ラインなどを見学します。授業で学んだ流通や加工の知識を現場で確かめます。
卒業研究4年生で研究室に所属し、1年間かけて研究を行います。たとえば、新しい養殖のエサの開発、ある魚の回遊のしかたの調査、魚の鮮度を保つ方法、漁村の経済の調査などです。

大学生活の流れ

1年英語、数学、化学、生物などの教養科目と、水産学・海洋学の入門を学びます。海や水産業の全体像を知る授業や、磯の生物観察などの実習が始まる大学もあります。
2年魚類学、海洋学、水産化学、資源学などの専門の基礎科目が始まります。実験や実習の時間が増え、乗船実習を経験する大学もあります。北海道大学のように、学年が上がるとキャンパスを移る大学もあります。
3年学科やコースごとの専門科目が本格化し、乗船実習、養殖実習、加工実習などで、より専門的な技術を学びます。年度の後半には研究室を選び、インターンシップに参加する人もいます。
4年研究室に所属して卒業研究に取り組み、卒業論文を書きます。研究のために船に乗ったり、フィールド調査に出たりすることもあります。就職活動や大学院の入試も行います。
大学院修士課程(2年)に進み、研究をさらに深める人も多いです。水産試験場や国の研究機関、大学の研究者を目指す人は、博士課程まで進むことがあります。研究航海に参加し、学会で発表する機会もあります。

取れる資格・免許

海技士(航海・機関)船の航海士や機関士として働くための国家資格です。東京海洋大学などの航海・機関のコースで学び、乗船実習を積むと、筆記試験の免除などを受けて目指すことができます。水産大学校でも目指せます。
中学校・高等学校教諭一種免許状(理科・水産)教職課程の授業を取り、教育実習を行うと取得できます。水産の免許は、水産高校の先生になるための免許です。
学芸員博物館や水族館で、資料の収集や展示、調査研究を行う専門職の資格です。大学で指定の科目を修めると取得できます。水族館で働きたい人が取ることが多いです。
食品衛生管理者・食品衛生監視員(任用資格)水産学など指定の課程を修めた人は、法律にもとづいてこれらの役職につく資格が得られる場合があります。食品工場の衛生管理や、保健所での食品の検査の仕事につながります。対象になるかは大学や学科で確認が必要です。
潜水士空気ボンベなどを使って水中で仕事をするための国家資格です。海の調査や養殖の作業、水族館の仕事で必要になることがあり、在学中に取る学生もいます。

水産学部・海洋学部の卒業後の進路

水産学部・海洋学部1海で とる・育てる・調べる公務員(水産職)・水産試験場資源の管理・養殖技術の研究研究機関・大学大学院を出た人が多いとれた魚を2食品にする食品メーカー・水産会社最も多い業界の一つ品質管理・商品開発・生産管理できた食品を3食卓へ届ける商社・卸・流通海外のサーモンを回転寿司へほかにも水族館環境調査の会社も水族館は狭き門海運・船舶航海士・機関士として世界の海を行き来する海から食卓まで、魚と海にかかわるいろいろな段階に進路がある
航海士・機関士は、東京海洋大学などの航海・機関のコースで学んだ人の進路です

水産学部・海洋学部の卒業生は、食品メーカーや水産会社、商社、流通など、魚や食に関わる業界に進む人が多いです。そのほか、国や都道府県の水産職の公務員、水産試験場などの研究機関、水族館、環境調査の会社、海運会社などにも進みます。理系の学部の中では就職先の業界がとても幅広く、学んだ専門をそのまま生かす人もいれば、食品や流通の仕事で広く活躍する人もいます。研究職を目指す人は大学院に進むことが多いです。

食品メーカー・水産会社 ›最も多くの卒業生が進む業界の一つです。冷凍食品、缶詰、かまぼこ、調味料などを作る会社で、品質管理、商品開発、生産管理などを担当します。マルハニチロ(現Umios)、ニッスイ、極洋などの水産会社では、漁業から養殖、加工、販売まで幅広く手がけています。商社・水産物の卸・流通 ›世界中から水産物を仕入れて日本で売る商社や、魚市場の卸売会社、スーパーの鮮魚の部門などで働きます。たとえば、ノルウェーのサーモンやチリのサケを買い付けて、日本の回転寿司チェーンに届ける仕事です。公務員(水産職)・水産試験場 ›国(水産庁)や都道府県の水産職として、漁業の振興、資源管理、漁港の整備などを担当します。都道府県の水産試験場では、地域の魚の資源調査や養殖技術の研究を行います。研究機関・大学 ›水産研究・教育機構などの国の研究機関や大学で、資源の評価、養殖技術、海洋環境などの研究を行います。大学院の修了者が多い進路です。
水族館・環境調査会社水族館の飼育員や学芸員、海や川の環境を調べる環境コンサルタント会社などで働きます。水族館の採用は少なく、狭き門です。
海運・船舶 ›航海や機関のコースの卒業生は、海運会社の航海士や機関士として、大きな貨物船やタンカーで世界の海を行き来します。

もっと知りたい人へ

水産学部と海洋学部のちがい

水産学部は、魚や貝などの水産物を「とる・育てる・加工する・売る」ことと、そのための資源や環境の研究が中心です。海洋学部や海洋系の学部は、それに加えて、海そのものの科学(海流、地形、気候)、船や港、海の工学、海洋政策など、より広く海全体を扱う傾向があります。たとえば、東京海洋大学には海洋生命科学部、海洋資源環境学部、海洋工学部の3つの学部があり、東海大学の海洋学部では海洋生物、海洋環境、水産などの分野を学べます。どちらに進んでも海の生き物は学べるので、食べ物としての水産物に興味があるのか、海の環境や科学に興味があるのかで選ぶとよいです。

農学部の中の水産

近畿大学農学部水産学科のように、農学部の中で水産を学べる大学もあります。近畿大学はクロマグロの完全養殖で知られ、養殖の研究がさかんです。

水産大学校

水産大学校(山口県下関市)は、農林水産省が所管する大学校で、水産業の担い手を育てています。大学ではありませんが、所定の課程を修めると学士の学位を得る道があり、航海士や機関士も目指せます。

海とともに学ぶフィールド

水産学部・海洋学部の多くは、海の近くにキャンパスや実験施設を持っています。北海道大学水産学部は函館に、長崎大学や鹿児島大学の水産学部は港町にあり、大学の練習船や臨海実験所、養殖場などを使って学びます。教室での講義だけでなく、実際に海に出て、生き物や海水を自分の手で調べるのがこの学部の学び方です。海の近くで暮らしながら学ぶことで、漁業や水産業を身近に感じられるのも魅力です。

練習船での生活

乗船実習では、学生が船に寝泊まりし、交代で観測や作業を行います。たとえば、夜中に網を引いてプランクトンを集めたり、早朝に海水をくみ上げたりします。船酔いに苦しむ学生もいますが、仲間との一体感が生まれる貴重な体験です。

キャンパスの移動

大学によっては、1〜2年生は本部のキャンパスで教養科目を学び、学年が上がると海の近くのキャンパスに移ることがあります。たとえば北海道大学水産学部では、学年の途中から函館キャンパスで学びます。

向いている人

水産学部・海洋学部に向いているのは、海や川、魚などの生き物が好きな人、自然の中で体を動かして学ぶのが好きな人です。魚を食べるのが好き、料理が好きという興味も、水産食品の分野につながります。実習では、早朝の作業、寒い海での作業、船酔い、魚の解剖などもあるので、体力と好奇心が大切です。また、生き物を育てる実習では毎日の世話が欠かせないので、こつこつ続けられる人に向いています。

こんな経験が生きる

たとえば、つりが好きな人、家で熱帯魚やメダカを育てている人、水族館に通うのが好きな人、磯遊びで生き物を探すのが好きだった人は、この学部での学びを楽しめる素質があります。

環境問題に関心がある人

海洋プラスチックごみ、地球温暖化、魚のとりすぎなど、海の環境問題に関心がある人にも向いています。研究を通して、問題の解決に関わることができます。

高校生のうちに(文理・受験科目)

水産学部・海洋学部は理系の学部で、入試では数学、理科(生物と化学が中心)、英語が課されるのが一般的です。国立大学では共通テストで5教科7科目程度が必要です。入学後は生物と化学の知識を多く使い、資源管理や海洋学では数学や物理も使います。水産経済などの文系寄りの分野もありますが、入試は理系科目で受けることが多いので、高校では理系を選んでおくと選択肢が広がります。

生物と化学を固める

魚の体のしくみ、遺伝子、食品の成分など、入学後の授業の多くは高校の生物と化学の延長です。両方をしっかり学んでおくと、専門の授業の理解が早くなります。

水族館や漁港に行ってみる

水族館のバックヤードツアーや、漁港の朝市、魚市場の見学に参加すると、水産の仕事が身近に感じられます。大学の公開講座や、臨海実験所の一般公開に参加するのもおすすめです。

よくあるギャップ

入学前は「魚や海の生き物の研究がしたい」と思って入る人が多いですが、実際には化学、統計、経済など、思っていた以上に幅広い科目を学びます。また、水族館の飼育員になりたいと思って入学する人もいますが、水族館の採用は少なく、実際には食品メーカーや水産会社、公務員などに進む人が多いです。乗船実習では、船酔いや寒さ、早朝の作業がつらいと感じる人もいます。一方で、学んでいくうちに、食品の開発や資源管理など、入学前には知らなかった分野に魅力を感じて進路を決める人もたくさんいます。

水族館の仕事は狭き門

水族館の飼育員や学芸員は人気が高く、採用人数がとても少ないです。水族館を目指す人は、学芸員の資格を取る、アルバイトやボランティアで経験を積むなどの準備をしている人が多いです。

就職先は食品関係が多い

水産学部の卒業生は、魚に限らず、食品全般を扱う会社に就職する人も多いです。水産食品の授業で学んだ品質管理や衛生の知識は、どんな食品の会社でも生かせます。

日本の水産業のこれから

日本は海に囲まれ、昔から魚をたくさん食べてきた国ですが、近年は漁獲量が大きく減り、漁業で働く人も減って高齢化が進んでいます。海水温の上昇によって、とれる魚の種類が変わってきている地域もあります。その一方で、養殖の技術の進歩、資源を守りながらとるためのルールづくり、日本の水産物の海外への輸出、AIやセンサーを使った新しい漁業など、新しい取り組みも広がっています。水産学部・海洋学部で学ぶ人には、こうした課題を解決する担い手としての期待がかかっています。

養殖の広がり

天然の魚をとる量に限りがある中で、魚を育てる養殖の重要性が増しています。たとえば、陸上の水槽でサーモンを育てる「陸上養殖」の取り組みが各地で始まっています。

資源管理とTAC

TACは、国が魚の種類ごとに決める、1年間にとってよい量の上限のことです。魚をとりすぎないようにして、将来も魚がとれるようにするためのしくみで、対象の魚の種類を増やす取り組みが進んでいます。

よくある質問

水産学部を出たら漁師になるのですか?

漁師になる人はごく一部です。多くの卒業生は、食品メーカー、水産会社、商社、公務員、研究機関などで働いています。漁業を支える立場で関わる人も多いです。

泳げなくても大丈夫ですか?

入学の条件として泳げることが必要な大学はほとんどありません。ただし、乗船実習や海での実習では、ライフジャケットを着て安全に配慮しながら作業します。不安な場合は、オープンキャンパスで実習の様子を聞いてみましょう。

船酔いしやすいのですが大丈夫ですか?

船酔いする学生は多いです。酔い止めの薬を使ったり、だんだん慣れたりして乗り越える人がほとんどです。研究の内容によっては、船にあまり乗らない分野を選ぶこともできます。

水族館で働けますか?

働いている卒業生はいますが、水族館の採用は少なく狭き門です。学芸員の資格を取る、アルバイトやボランティアで経験を積むなどの準備をする人が多いです。

女子学生は多いですか?

学科や大学によって違いますが、生物や食品の分野を中心に、女子学生も多く学んでいます。乗船実習も男女ともに参加します。

魚を解剖する実習はありますか?

あります。魚の体のしくみや病気を学ぶために、魚を解剖したり、さばいたりする実習があります。最初は苦手でも、慣れていく学生がほとんどです。

水産学部と農学部はどう違いますか?

農学部は主に陸の作物や家畜、森林を、水産学部は海や川の生き物を対象にします。ただし、近畿大学のように農学部の中に水産学科を置く大学もあり、食品や生命科学など共通する分野も多いです。

船の航海士になりたい場合はどこに行けばよいですか?

航海士や機関士を目指すなら、東京海洋大学や神戸大学など、航海・機関のコースがある大学や、水産大学校、商船高等専門学校などが代表的な進路です。水産学部のすべてで航海士の資格が目指せるわけではないので、確認が必要です。

公務員の水産職とはどんな仕事ですか?

国の水産庁や都道府県で、漁業の振興、魚の資源の管理、漁港の整備、水産試験場での研究などを担当します。採用試験に水産の専門試験がある自治体もあります。

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