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人間科学部・人間学部

こころ・からだ・社会をまるごと研究する

人間科学部は、「人間とは何か」「人はどうすればよりよく生きられるか」を、ひとつの学問に閉じこもらずに研究する学部です。日本で最初の人間科学部は1972年に大阪大学にできたもので、その後、早稲田大学(1987年、所沢キャンパス)をはじめ多くの大学に広がりました。大学によって「人間学部」「人間社会学部」「人間環境学部」などの名前もあり、心理学が中心の大学、福祉や教育が中心の大学、からだや脳の科学まで扱う大学など、中身はかなり違います。たとえば「スマホを寝る前に見ると睡眠の質は下がるのか」という問いを、心理学のアンケート、睡眠中の脳波の測定、生活習慣の社会調査という3つの方法で調べられるのが人間科学部らしさです。卒業後は一般企業への就職が多く、公認心理師や社会福祉士などの専門職を目指す人もいます。

よくある勘違い

何を学ぶのかよくわからない「なんでも学部」

実は

人間を、心理学・社会学・教育学・福祉学・生物学・情報科学など複数の方法で調べる学部です。文系の読む・考える力と、理系の実験・データ分析の力の両方を使うのが特徴です。

どんな学科・専攻がある?

人間科学部・人間学部ではどんな授業がある?

押すと、その授業の中身が見られます。

実習・実験・研究

人間科学部の学びの中心は、自分で問いを立てて、データを集めて確かめることです。心理学なら実験室で人に協力してもらって反応時間や記憶の量を測り、社会学ならアンケートを数百人に配ったり、地域の人にインタビューしたりします。福祉系では施設での実習、心理系では病院や相談機関の見学実習もあります。集めたデータを統計で分析し、レポートや卒業論文にまとめる作業は、思っているよりずっと時間がかかります。たとえば実験に協力してくれる人を30人集めるだけでも何週間もかかり、データがうまく取れずにやり直すこともよくあります。

心理学実験実習2年生ごろに毎週行う授業です。記憶、錯視、反応時間などの古典的な実験を自分たちで行い、その結果を決まった形式のレポートにまとめます。レポートの量が多く、毎週締め切りに追われるのが定番です。
社会調査実習1年間かけて、テーマ決め、質問紙づくり、調査、集計、報告書づくりまでを班で行います。たとえば「地元の商店街を高校生はどう見ているか」を調べ、商店街の人に報告することもあります。
ソーシャルワーク実習(福祉系)社会福祉士の受験資格を目指す人が、福祉施設や病院、市役所などで合計240時間以上の実習を行います。実際の利用者や家族と接し、相談支援の現場を体験します。
心理実習(公認心理師コース)公認心理師を目指す人が、病院、学校、福祉施設などを見学し、心理職の仕事を知る実習です。学部で行うのは見学中心で、本格的な実習は大学院で行います。
ゼミ・卒業研究3年生からゼミに入り、4年生で卒業論文を書きます。テーマ設定からデータ収集、分析、執筆まで1年以上かかります。人を対象とする研究では、研究倫理の審査を受けてから調査を始める大学が多いです。

大学生活の流れ

1年心理・社会・生物の入門統計や情報処理の基礎も学ぶ2年めざす資格を決める心理学実験実習・社会調査法公認心理師ゼミ・見学中心の実習卒業研究大学院へ修士2年社会福祉士福祉施設で240時間以上2月に国家試験相談の専門職へ一般企業などゼミインターン就職活動卒業研究人事・企画など3年4年卒業2年生で、公認心理師や社会福祉士をめざすか決める公認心理師は大学院まで進むのが前提
社会福祉士の実習は福祉施設のほか病院や市役所などでも行います。公認心理師の学部の実習は見学が中心です
1年人間科学概論や心理学・社会学・生物学の入門科目を幅広く学びます。統計や情報処理の基礎もこの時期に学ぶことが多いです。どの分野に進むかを考える1年です。
2年心理学実験実習や社会調査法など、方法を学ぶ科目が増えます。コースや専攻を選ぶ大学も多く、公認心理師や社会福祉士を目指すかどうかもこの時期に決めます。
3年ゼミに入り、専門的な文献を読んだり小さな研究をしたりします。福祉系の実習もこの時期に入ることが多いです。後半からは就職活動の準備(インターンシップなど)も始まります。
4年卒業研究が中心です。前半は就職活動と並行してデータ集め、後半は分析と執筆を行います。社会福祉士などの国家試験を受ける人は、卒業直前の2月に受験します。
大学院公認心理師や臨床心理士を目指す人は、修士課程(2年)に進むのが一般的です。研究者を目指す人や、データ分析の専門性を高めたい人も進学します。

取れる資格・免許

公認心理師(国家資格)大学で指定科目を修めたあと、大学院で指定科目を修める(区分A)か、認定された施設で2年以上働いてから(区分B)国家試験を受けます。第9回試験(2026年3月)の合格率は60.0%でした。病院、学校のスクールカウンセラー、福祉施設などで使います。
社会福祉士(国家資格)福祉系大学で指定科目と実習を修めて卒業すると受験資格が得られます。第38回試験(2026年2月)の合格率は60.7%でした。病院の相談員、市役所、福祉施設、社会福祉協議会などで働く人に多い資格です。
精神保健福祉士(国家資格)指定科目と実習を修めて受験します。こころの病気がある人の生活や仕事への復帰を支える仕事で、精神科病院や地域の支援機関で使います。
認定心理士日本心理学会が認定する資格です。大学で心理学の基礎科目を所定の単位修得すると申請できます。国家資格ではありませんが、心理学を体系的に学んだ証明になります。
社会調査士社会調査協会が認定する資格で、大学で指定された調査や統計の科目を修めると取得できます。マーケティングや世論調査の仕事に関心がある人に向いています。
教員免許(中学・高校の社会・公民・保健など)教職課程を置く大学では、所定の科目と教育実習を修めると取れます。どの教科が取れるかは大学によってちがいます。

人間科学部・人間学部の卒業後の進路

人間科学部一般企業の人事・総合職多い採用面接、研修の企画、働きやすさを調べるアンケートなどマーケティング・調査会社アンケートや売れ方のデータを分析。統計の力が直接役立つIT・ウェブ(UXリサーチ)使う人の行動を観察して、アプリを使いやすくする公務員・家庭裁判所調査官市役所などの行政職や、少年事件などで家族に面接する仕事福祉・医療の専門職社会福祉士・精神保健福祉士として病院の相談室や福祉施設で心理職大学院修了後公認心理師として病院や学校などで。常勤の求人は多くないこころや行動を学んだ経験は買う人の気持ちを考える仕事と相性がよい

卒業生の多くは一般企業に就職し、営業、人事、企画、マーケティングなどの仕事をしています。人のこころや行動を学んだ経験は、商品を買う人の気持ちを考える仕事や、社員が働きやすい会社をつくる仕事と相性がよいです。公務員(市役所、家庭裁判所調査官など)や福祉の専門職に進む人もいます。公認心理師を目指す人は大学院に進学します。

一般企業の人事・総合職 ›もっとも多い進路のひとつです。たとえば、新入社員の採用面接、研修の企画、社員の働きやすさを調べるアンケートなどで、心理学や社会調査の知識が生きます。マーケティング・調査会社 ›お客さんにアンケートをとったり、商品の売れ方をデータで分析したりする仕事です。たとえば、新しいお菓子のパッケージをどちらにするか、何百人に見せて選んでもらう調査などです。統計の力が直接役立ちます。IT・ウェブ業界(UXリサーチなど) ›アプリやウェブサイトを使う人の行動を観察し、使いやすくする仕事です。たとえば、ゲームアプリのボタンの位置を変えると操作ミスが減るかを実験で確かめます。認知心理学との相性がよい分野です。公務員(行政職・家庭裁判所調査官など) ›市役所や県庁の一般行政職のほか、少年事件や離婚の問題で家族や子どもに面接する家庭裁判所調査官を目指す人もいます。心理学・社会学・教育学の知識が問われる試験です。
福祉・医療の専門職社会福祉士や精神保健福祉士として、病院の相談室、福祉施設、市役所、社会福祉協議会などで働きます。たとえば、退院するお年寄りが家でどう暮らすかを家族と一緒に考える仕事です。
心理職(大学院修了後)公認心理師として、病院、スクールカウンセラー、児童相談所、企業の相談室などで働きます。大学院進学が前提で、常勤の求人は多くないため、非常勤をかけもちする人もいます。
教員・教育業界学校の先生や、塾・通信教育・教育アプリの会社などに進む人もいます。教育心理学や発達心理学の知識が役立ちます。

もっと知りたい人へ

向いている人

人の行動や気持ちに「なぜ?」と思うことが多い人に向いています。たとえば「どうしてクラスの雰囲気は担任によって変わるのか」「行列ができている店に入りたくなるのはなぜか」と考えるのが好きな人です。また、文系と理系の両方に興味があって、どちらかに決めきれない人にも合っています。逆に、答えがはっきり決まった問題だけを解きたい人や、データや統計に一切ふれたくない人は、少し苦労するかもしれません。

人の話をじっくり聞ける人

インタビューやカウンセリングの練習では、相手の話をさえぎらずに聞く力が大切です。友だちの相談を聞くのが得意な人は、その力を学問として深められます。

自分の思い込みを疑える人

人間科学では「たぶんこうだろう」をデータで確かめます。予想と違う結果が出たときに、面白いと思える人は研究を楽しめます。

高校生のうちに(文理・受験科目)

人間科学部は文系・理系のどちらからも入れる大学が多く、入試も文系型(国語・英語・地歴公民など)と理系型(数学・理科・英語など)の両方を用意している大学があります。入学後は統計を必ず使うので、文系の人も数学I・Aの「データの分析」と「確率」はしっかり理解しておくと楽になります。脳や生理を学びたい人は、生物基礎や生物を選んでおくと役立ちます。また、英語の論文を読む機会が多いので、英語の長文読解にも慣れておきましょう。

今からできる小さな研究

たとえば、クラスで「睡眠時間と朝の眠さ」のアンケートを取り、表計算ソフトでグラフにしてみるだけでも、人間科学の研究の入口になります。総合的な探究の時間のテーマにするのもおすすめです。

本を読むなら

心理学や社会学の入門書(新書)を1冊読んでみると、自分の興味がどの分野にあるかがわかります。オープンキャンパスで模擬授業を受けると、大学ごとの中身のちがいもよくわかります。

よくあるギャップ

いちばん多いギャップは「心理学=人の心を読む方法を学ぶ」と思って入学し、実際は統計と実験の授業ばかりで驚くというものです。また、「人間科学部を出ればカウンセラーになれる」と思っている人もいますが、公認心理師になるには基本的に大学院まで進む必要があります。さらに、いろいろな分野を学べる反面、「結局何が専門なのか」を自分で決めないと、学びが広く浅くなってしまうこともあります。

大学による中身のちがいが大きい

同じ「人間科学部」でも、心理学が中心の大学、福祉が中心の大学、スポーツや健康科学まで含む大学があります。たとえば早稲田大学の人間科学部には、人間環境科学科、健康福祉科学科、人間情報科学科の3学科があります。名前だけで選ばず、学科や科目の一覧を必ず見ましょう。

キャンパスの場所

人間科学部は、都心から離れた広いキャンパスに置かれていることも少なくありません。通学時間やサークル活動のしやすさも、事前に確かめておくと安心です。

文学部・教育学部・社会学部とのちがい

心理学は文学部や教育学部にも置かれていることが多く、内容が重なる部分があります。大きなちがいは、人間科学部は「ひとつのテーマを複数の学問で見る」ことを重視している点です。たとえば「いじめ」を、心理学(加害者・被害者のこころ)、社会学(学級という集団のしくみ)、教育学(学校の対策)、福祉学(家庭への支援)から総合的に考えます。社会学部は社会のしくみそのもの、教育学部は先生になることや教育の制度、文学部は文献や思想をじっくり読むことに重心があります。

心理学を学びたいならどこを選ぶか

心理学を学べる学部は、文学部、人間科学部、教育学部、心理学部などたくさんあります。公認心理師を目指すなら、その大学が国の定める指定科目を開講しているかどうかと、同じ大学の大学院に心理の課程があるかを確かめるのが大切です。

福祉を学びたいならどこを選ぶか

社会福祉士を目指すなら、指定科目と実習がある学科かどうかを確認しましょう。人間科学部の中の福祉系コースのほか、社会福祉学部も選択肢になります。

これからの人間科学

AIやロボットが身近になるほど、「人はどう感じ、どう行動するのか」を理解する力の価値は上がっています。たとえば、自動運転の車が出す警告音を、どんな音にすれば人がすぐ気づくか、介護ロボットにどんな話し方をさせればお年寄りが安心するかといった研究は、心理学と工学の協力で進んでいます。また、心の健康(メンタルヘルス)への関心も高まっており、会社や学校でのストレス対策に人間科学の知識が求められています。

データサイエンスとの結びつき

スマートウォッチの睡眠データやSNSの投稿など、人の行動を記録した大量のデータを分析する研究が増えています。統計とプログラミングを身につけた人間科学部の卒業生は、IT企業やデータ分析の仕事でも求められています。

ウェルビーイング

「ただ病気でない」だけでなく、心もからだも社会的にも満たされた状態をウェルビーイングと呼び、企業や自治体の目標にも使われるようになっています。人間科学はその中身を測り、高める方法を研究する学問です。

よくある質問

人間科学部は文系ですか、理系ですか?

多くの大学で文系と理系の両方の性格を持っています。入試は文系型で受けられる大学が多いですが、入学後は統計や生物の知識も使います。どちらの人でも入りやすく、入ってから両方を学ぶ学部と考えるとよいです。

数学が苦手でも大丈夫ですか?

大丈夫ですが、統計の授業からは逃げられません。ただし、難しい計算はソフトがしてくれるので、大切なのは「この数字は何を意味するのか」を理解することです。高校の数学I・Aのデータの分析を復習しておくと安心です。

カウンセラーになれますか?

国家資格の公認心理師になるには、学部で指定科目を学んだうえで、大学院に進むのが一般的なルートです。学部卒業だけでは受験資格が得られないので、大学院進学まで考えて大学を選びましょう。

就職に不利ではありませんか?

特に不利ということはなく、卒業生は幅広い業界に就職しています。ただ、「何を学んだか」を説明しにくいと感じる人もいるので、ゼミや卒業研究でどんな問いをどう調べたかを話せるようにしておくと強みになります。

心理学部とのちがいは何ですか?

心理学部は心理学だけを深く学ぶ学部で、人間科学部は心理学に加えて社会学、教育学、福祉学、生物学などを組み合わせて学びます。心理学ひとすじなら心理学部、いろいろな角度から人間を見たいなら人間科学部が合っています。

どんな卒業論文を書くのですか?

たとえば「部活動の先輩後輩関係がストレスに与える影響」「高齢者のスマホ利用と孤独感」「推し活が生活満足度に与える影響」など、身近なテーマを実験やアンケートで調べるものが多いです。

人間科学部で教員免許は取れますか?

教職課程を置いている大学なら取れます。どの教科の免許が取れるかは大学ごとにちがうので、大学のホームページで「取得できる免許・資格」を確認しましょう。

福祉の仕事は大変だと聞きますが?

人の人生に深く関わるので、責任も大きく気持ちの負担もあります。一方で、困っている人の生活が変わる瞬間に立ち会えるやりがいがあります。実習で現場を体験してから進路を決める人が多いです。

大学院まで行く人は多いですか?

全体では学部卒業で就職する人が多いですが、公認心理師や研究者を目指す人は大学院に進みます。心理系の専攻では、大学院進学を選ぶ人の割合が他の分野より高めです。

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