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資格は大学で取れる。むずかしいのは、正規の席に座ることです

学芸員・司書

学芸員は、博物館や美術館、科学館、動物園、水族館などで、資料を集めて調べ、守り、展示や講座で多くの人に伝える専門職です。たとえば、恐竜の化石を発掘して研究したり、江戸時代の絵巻物の傷みを防ぐ方法を考えたり、夏休みの子ども向けワークショップを企画したりします。司書は、図書館で本や資料を選んで集め、整理し、利用者が知りたいことにたどり着けるよう手助けする専門職です。どちらも大学で決められた科目の単位を取れば資格が得られますが、資格を持つ人に比べて正規職員の求人がとても少なく、非正規で働く人が多いのが現実です。

平均年収の目安正規の公務員として採用されれば、自治体の行政職員と同じくらいの給料が目安非正規の司書は年収200万円前後のことも多く、正規職員は年収400万〜700万円台が目安
なるまでの難しさ★★★★★資格そのものは、大学で決められた科目を学べば取れるため、試験の難しさはありません。難しいのは就職です。学芸員の資格を取る人は毎年およそ1万人いるといわれる一方、博物館の学芸員は全国で5,350人(2021年度)しかおらず、正規の募集は欠員が出たときに1人か2人ということがよくあります。公立図書館の司書は21,520人(2021年度)いますが、そのうち75.4%は非常勤や指定管理者の職員です。
決めどき文系・理系どちらでも

大学で学芸員課程・司書課程を選ぶときが最初の決めどきです。学芸員を目指すなら、専門分野(美術史、考古学、生物学など)を深めるため大学院に進むかどうかも考えます

どんな職種がある?

押すと、その職種の仕事内容・必要な力・キャリアが見られます。

学芸員・司書の年収と昇進の流れ

非常勤・任期つき職員180〜300万円
大学・大学院修了後、22〜30歳ごろ

非常勤の司書や任期つきの学芸員として、実務を学びます。正規の採用試験に合格することが次の段階に進む条件です。数字は勤務先によって大きく違うおおまかな目安です。

正規職員(主事・学芸員)350〜480万円
採用1〜5年目、25〜35歳ごろ

公務員として採用され、カウンター業務や展示の補助から始めます。数年で展覧会や事業を1人で担当するようになります。給与は自治体の給与表によります。

主任・主任学芸員450〜600万円
採用5〜15年目、30〜45歳ごろ

展覧会や図書館サービスの中心となり、後輩を指導します。研究の成果を論文や図録として発表します。

係長・学芸係長550〜700万円
40代ごろ

係のまとめ役として、事業の計画や予算を管理します。

課長・学芸課長650〜850万円
40代後半〜50代

館の展示計画や図書館サービス全体の方針を決めます。

館長・副館長750〜1,000万円
50代〜

館全体の運営に責任を持ちます。館長は行政職員や外部の研究者が務めることもあります。数字はおおまかな目安です。

年収は目安です。会社や地域、本人の働き方で大きく変わります。

働き方で何が違う?

働き方で年収が大きくちがう 非常勤 180〜300万円 正規職員 400万〜700万円台 0 200 400 600 800 万円 多くの人がたどる道 非常勤 任期つき 採用試験 に合格 正規職員 公務員など 司書の多くは1年ごとの任用で働く 正規の募集は1人の枠に多くの応募 資格は大学の単位で取れる むずかしいのは正規の採用
年収はおおまかな目安です。くわしくは各自治体の募集要項で確かめましょう
公立の博物館・図書館(正規職員)地方公務員の行政職と同程度

都道府県や市町村の職員として働きます。給与は公務員の給与表で決まり、安定しています。ただし募集は欠員が出たときに限られることが多く、競争率はとても高いです。自治体によっては、専門職として採用されず、ほかの部署へ異動することもあります。

良いところ収入と雇用が安定している、長く専門性を磨ける

大変なところ採用枠が非常に少ない、異動の可能性がある

非常勤・会計年度任用職員時給制・月給制で年収200万円前後のことも多い

1年ごとの任用で働く形です。図書館の司書の多くはこの形で働いています。実務経験を積みながら正規の採用試験を目指す人も多いです。

良いところ採用されやすい、実務経験を積める

大変なところ収入が低い、雇用が不安定、昇給が少ない

指定管理者・民間の運営会社会社の給与体系による

自治体から運営を任された会社や団体の社員・スタッフとして働きます。会社によっては、司書の資格者を正社員として採用しているところもあります。

良いところ新しいサービスに挑戦しやすい

大変なところ指定管理の期間が終わると職場がなくなることもある

国立の館・大学・国立国会図書館各法人や国家公務員の給与規程による

国立の博物館・美術館は独立行政法人として研究員を採用し、大学図書館は国立大学法人等職員採用試験などで採用します。国立国会図書館は独自の採用試験を行っています。

良いところ研究や専門的な仕事に集中しやすい

大変なところ採用人数がきわめて少なく倍率が高い

代表的な会社・職場

国立博物館国立美術館公立博物館国立図書館公共図書館大学図書館博物館相当施設など指定管理者
東京国立博物館国立博物館

日本でいちばん古い博物館で、国宝や重要文化財を多く持っています。研究員が日本や東洋の美術と考古の資料を研究しています。

独立行政法人の給与規程による
国立科学博物館国立博物館

東京・上野にある自然史と科学技術の博物館です。動物、植物、地学、人類学などの研究員が標本の研究をしています。

独立行政法人の給与規程による
国立西洋美術館国立美術館

西洋の絵画や彫刻を集めた美術館で、建物は世界遺産に登録されています。

独立行政法人の給与規程による
九州国立博物館国立博物館

アジアとの交流の歴史をテーマにした博物館で、文化財の保存修復の施設も持っています。

独立行政法人の給与規程による
都道府県立・市町村立の博物館公立博物館

地域の歴史や自然、美術を伝える博物館です。全国の博物館の多くを占めます。

自治体の給与表による
国立国会図書館国立図書館

日本で出版されたすべての本を集めて保存する図書館で、国会議員の調査も手伝います。職員は国家公務員です。

国家公務員に準じた給与
都道府県立・市区町村立の図書館公共図書館

地域の人が無料で使える図書館で、全国に3,000館以上あります。

自治体の給与表、または非常勤の条件による
大学図書館大学図書館

大学の学生や研究者のための図書館です。電子ジャーナルや学術データベースの管理も行います。

大学の給与規程による
動物園・水族館博物館相当施設など

生き物を飼育し、研究や教育を行う施設です。学芸員の資格を持つ職員が働いていることがあります。

運営する自治体や会社による
図書館運営の受託会社指定管理者

自治体から図書館の運営を任され、司書のスタッフを配置して運営する会社です。

会社の給与体系による

どうやって稼いでいる?

国や自治体の予算 もとは税金。運営費のほとんど 運営費・給料・資料代 博物館・図書館 公立図書館は法律で入館無料 ほかの収入 入館料 特別展は大きな収入 寄付・会員 修復費などを集める ショップ・カフェ グッズや図録の販売 指定管理料 運営を任された会社へ 民間などに運営を任せる館 指定管理者制度・2021年度 公立図書館 20.9% 公立博物館 26.6% 税金で支える、だれもが使える施設
博物館は入館料を取るところが多いですが、それだけで運営費をまかなえる館はわずかです

博物館や図書館の多くは、国や都道府県、市町村が設置する公共の施設で、運営費の大部分は税金でまかなわれています。公立図書館は図書館法で入館料などを取ってはいけないと決まっていて、誰でも無料で使えます。博物館は入館料を取るところが多いですが、それだけで運営費をまかなえる館はわずかです。近年は、自治体が民間の会社や団体に運営を任せる指定管理者制度が広がり、2021年度は公立図書館の20.9%、公立博物館の26.6%が指定管理者によって運営されていました。

1
国や自治体の予算

公立の博物館や図書館の運営費、職員の給料、本や資料を買うお金は、主に税金から出ます。毎年の予算は議会で決まります。

2
入館料・展覧会の収入

博物館や美術館は入館料を取ることが多く、人気の特別展ではたくさんの収入が生まれます。新聞社やテレビ局と共同で大きな展覧会を開くこともあります。

3
指定管理料

指定管理者になった会社や団体は、自治体から指定管理料を受け取って施設を運営します。図書館の運営を受け持つ会社もあります。

4
寄付・会員制度

友の会や会員制度の会費、企業や個人からの寄付、クラウドファンディングで資料の購入費や修復費を集める館もあります。

5
ミュージアムショップ・カフェ

グッズや図録の販売、館内のカフェなどの収入も運営を支えます。

入ってからどうなっていく?

大学1〜4年学芸員課程・司書課程を学ぶ大学で学芸員課程や司書課程の科目を取ります。学芸員を目指す人は3〜4年生で博物館実習を受けます。並行して、美術史、考古学、生物学など自分の専門分野を深めます。
大学院(2〜5年)専門分野を深める(学芸員)学芸員の正規採用では、大学院で修士以上の学位を持っていることを条件にする館が多くあります。研究の実績を積み、論文を書きます。司書は大学卒業で採用試験に挑む人が多いです。
20代後半非常勤・任期つきで経験を積むまず任期つきの学芸員、非常勤の司書、指定管理者の職員などとして働き、実務経験を積む人が多いです。働きながら正規の採用試験を受け続けます。
20代後半〜30代正規職員として採用自治体の学芸員採用試験や司書採用試験、国立大学法人の試験などに合格すると、正規職員になります。採用は欠員が出たときだけということも多く、何年もかかる人もいます。
30代〜40代展覧会や図書館サービスの中心に学芸員は展覧会を担当し、図録や論文を書きます。司書は選書やレファレンス、イベントの企画を担当し、後輩の指導もします。
40代〜50代係長・課長・館長学芸課長や図書館の館長として、館の方針や予算、人の配置を決めます。研究の実績が評価されて大学教員になる学芸員もいます。

企画展ができるまで

2〜3年前から テーマを決める 研究の成果や館の方針から 資料を借りる交渉 ほかの館や持ち主にお願い 予算と広報 輸送費・保険・ポスターやSNS 展示構成と原稿 並べ方を決め、パネルや図録 輸送と展示作業 専門の業者と運び、照明を調整 開幕・イベント ギャラリートークや講演会 撤収と返却 丁寧に梱包して持ち主に返す 開幕 まで 会期中 会期後 1つの展覧会に、何年もかけて準備する
博物館の企画展の例
1
テーマを決める

2〜3年前から、館の方針や研究の成果をもとに展覧会のテーマを決めます。

2
資料を調べ、借りる交渉をする

展示したい資料を調べ、ほかの館や個人の持ち主に貸し出しをお願いします。

3
予算と広報の計画

輸送費、保険、印刷物などの予算を立て、ポスターやチラシ、SNSの広報を計画します。

4
展示構成と原稿づくり

資料の並べ方を決め、解説パネルや図録の原稿を書きます。

5
輸送と展示作業

資料を専門の業者と一緒に運び、展示ケースに並べ、照明を調整します。

6
開幕と関連イベント

展覧会が始まったら、ギャラリートークや講演会、ワークショップを開きます。

7
撤収と返却

会期が終わったら資料を丁寧に梱包し、持ち主に返します。

学芸員資格・司書資格(大学での単位取得が基本)

合格率資格は単位取得で得られるため合格率はありません。就職の例として、国立国会図書館の2026年度試験は総合職で申込者396人に対し最終合格者4人
勉強時間の目安大学の4年間で、通常の授業と並行して学芸員課程・司書課程の科目を取ります
受験資格学芸員は学士の学位と博物館に関する科目の単位、司書は大学卒業と図書館に関する科目の単位、または大学・短大卒業などのうえで司書講習を修了
資格を取る難しさは、ほかの国家資格と比べると高くありません。大学で単位をそろえれば取れるため、資格を持つ人は多くいます。その分、就職の競争が激しく、学芸員の正規の募集は1人の枠に多くの応募が集まります。司書も正規の採用区分を設ける自治体が限られ、多くの人が非常勤から働き始めます。
試験科目(押すと中身が見られます)
合格までの流れ
  1. 課程のある大学に入学学芸員課程・司書課程がある大学を選びます。
  2. 必要な科目を履修学芸員は博物館に関する科目、司書は図書館に関する科目の単位を取ります。
  3. 博物館実習(学芸員)3〜4年生ごろに、博物館で実習を受けます。
  4. 卒業して資格を得る学位を得ると資格が成立します。
  5. 採用試験を受ける自治体や法人の採用試験に合格して職員になります。

学芸員・司書のある1日

8:30

出勤し、収蔵庫と展示室の温度と湿度の記録を確認します(博物館の学芸員の一日の例)。

9:30

開館。学校の団体見学の受け入れ準備をします。

10:00

小学生の団体に展示の解説をします。質問に答えながら、展示の見どころを伝えます。

11:00

寄贈の申し出があった古文書を受け取りに行き、状態を確認します。

12:00

昼食。

13:00

次の企画展の会議。展示する資料のリストや、パネルの文章を話し合います。

14:30

ほかの館から借りる資料について、電話とメールで打ち合わせをします。

16:00

収蔵資料の調査。写真を撮り、データベースに記録します。

17:15

閉館後、週末のワークショップの準備をします。

18:00

退勤。研究の論文は、空いた時間や休日に進めることも多いです。

もっと知りたい人へ

そもそも学芸員・司書とは

学芸員は博物館法、司書は図書館法という法律にもとづく専門職です。学芸員は、資料の収集、保管、展示、調査研究などの専門的な仕事を行います。司書は、図書館の資料の選び方、整理、提供などの専門的な仕事を行います。2021年度の社会教育調査では、全国の博物館は1,305館、博物館に似た施設(博物館類似施設)は4,466館、図書館は3,394館ありました。働く学芸員は博物館に5,350人、類似施設に3,686人、図書館の司書は21,520人です。

博物館の種類

博物館法でいう博物館には、歴史博物館や美術館だけでなく、科学館、動物園、水族館、植物園も含まれます。たとえば、水族館で魚の飼育や研究にかかわる人の中にも、学芸員の資格を持つ人がいます。

図書館の種類

図書館には、市や町の公共図書館、大学図書館、学校図書館、国立国会図書館、会社や研究所の専門図書館があります。司書の資格は主に公共図書館で働くためのものですが、ほかの図書館でも役立ちます。

なるためのルート

学芸員の資格は、大学で博物館に関する科目(法令上の必修は9科目19単位)を学び、学士の学位を得ると取れます。文部科学省の学芸員資格認定という試験で取る方法もあります。司書の資格は、大学で図書館に関する科目を学んで卒業するか、大学・短大を卒業したあとで夏に行われる司書講習を修了すると取れます。資格を取ったら、自治体や博物館、大学などの採用試験を受けて、職員として採用されて初めて学芸員・司書として働けます。

  1. 大学で課程を選ぶ学芸員課程や司書課程がある大学に進み、必要な科目を取ります。
  2. 専門分野を深める学芸員を目指すなら、美術史・考古学・民俗学・生物学・地学など自分の専門を決めて学びます。
  3. 博物館実習・図書館での経験博物館実習で実際の館の仕事を体験します。図書館でのアルバイトやボランティアも経験になります。
  4. 大学院で研究(学芸員)修士課程などで研究し、論文を書きます。
  5. 採用試験を受ける自治体の学芸員・司書採用試験、国立大学法人等職員採用試験、国立国会図書館の試験などを受けます。
  6. 採用されて働く正規、任期つき、非常勤など、さまざまな形で働き始めます。
学芸員は大学院まで進む人が多い

学芸員の正規採用では、修士以上の学位や専門分野の研究実績を求められることがよくあります。たとえば、美術館の日本画の担当を募集するときは、日本美術史を専門に研究してきた人が求められます。

司書は採用区分に注意

自治体によっては「司書」という区分で採用試験を行いますが、行っていない自治体も多くあります。その場合は一般の事務職として採用され、図書館に配属されるかどうかはわかりません。

試験・選考の詳細

学芸員も司書も、資格を取るための試験は基本的にありません。大学で単位を取ることで資格が得られます。本当の関門は、就職のための採用試験です。公立の博物館や図書館では、自治体の職員採用試験として、教養試験、専門試験(専門分野の論文など)、面接が行われます。国立国会図書館の2026年度の試験では、総合職の申込者396人に対し最終合格者4人、一般職(大卒程度)の申込者591人に対し最終合格者12人でした。

学芸員の採用試験

募集は「日本美術史」「考古学」「昆虫学」のように専門分野を指定して行われることが多く、1人の枠に全国から応募が集まります。専門の論文試験や、研究の実績、面接での発表などで選ばれます。

学芸員資格認定

大学で単位を取らなかった人のために、文部科学省が行う学芸員資格認定があります。筆記試験で科目の単位に相当する力を認定する試験認定と、経験や業績を審査する審査認定があります。

年収のリアル

正規の公務員として採用された学芸員や司書は、自治体の給与表にしたがって給料が決まり、地方公務員の行政職と同じくらいの水準です。年齢とともに上がっていき、安定しています。一方で、非常勤や任期つきの職員は、時給や月給制で、年収200万円前後にとどまることも少なくありません。公立図書館の司書の75.4%(2021年度)は非常勤か指定管理者の職員で、司書全体で見ると、安定した収入を得られる人は少数です。

統計の数字の見方

厚生労働省のjob tagでは、学芸員の年収は583.3万円(令和7年)と示されていますが、これは学芸員だけでなくほかの職業を含む分類の数字です。正規職員の多い層の数字に近く、非正規で働く人の実感とは離れている場合があります。

非正規の待遇

日本図書館協会は、図書館で働く会計年度任用職員の継続雇用や処遇の改善を求めています。1年ごとの契約で、何年働いても給料がほとんど上がらないという声もあります。

やりがい

自分が好きな分野の資料や本にかこまれて、その価値を多くの人に伝えられることが一番のやりがいです。学芸員は、何年もかけて調べた成果を展覧会として形にし、来館者が「面白かった」と言ってくれたときに大きな喜びを感じます。司書は、利用者が探していた本や情報を見つけて「ありがとう」と言われたとき、人の学びや暮らしの役に立てた実感があります。

新しい発見ができる

学芸員は、資料を調べる中で、誰も知らなかった事実を見つけることがあります。たとえば、蔵の中から見つかった古文書から、地域の歴史が書き換わることもあります。

地域の居場所をつくる

図書館は、子どもからお年寄りまで、誰でも無料で使える数少ない場所です。司書は、勉強の場、子育ての場、情報を得る場として、地域の人の居場所を支えています。

大変なこと・きついこと

もっとも大きな壁は、正規の職につくのがとても難しいことです。学芸員の資格を持つ人は多いのに、正規の募集はわずかで、何年も非常勤で働きながら採用試験を受け続ける人もいます。司書は非正規の割合が高く、収入が低く不安定になりがちです。また、正規になっても、小さな館では少ない人数で研究、展示、教育、事務まで何でもこなすため、忙しくなります。

「雑芸員」という言葉

学芸員が、研究や展示だけでなく、受付、掃除、予算の書類作りなど何でもこなす様子を、自分たちで「雑芸員」と呼ぶことがあります。華やかなイメージとちがい、地道な作業の多い仕事です。

異動の可能性

自治体によっては、学芸員や司書として採用されても、図書館や博物館以外の部署に異動することがあります。専門職として長く働けるかどうかは、自治体の方針しだいです。

向いている人

歴史、美術、生き物、本など、好きな分野をとことん調べるのが楽しい人に向いています。同時に、それを人にわかりやすく伝えることに喜びを感じられることも大切です。資料を丁寧に扱う慎重さ、コツコツと記録をつける根気も欠かせません。就職までに時間がかかることもあるので、あきらめずに挑戦を続ける粘り強さも必要です。

こんな人は楽しめる

博物館の展示を見て「この並べ方にはどんな意味があるのだろう」と考える人、図書館で本を探すのが好きな人、友達に好きなものの魅力を語り出すと止まらない人は、この仕事を楽しめます。

理系の人にも道がある

自然史博物館や科学館、動物園、水族館では、生物学、地学、天文学などを学んだ学芸員が働いています。学芸員は文系だけの仕事ではありません。

高校生のうちにできること

まずは、いろいろな博物館や図書館に足を運んでみましょう。展示の見せ方や解説文の書き方を意識して見ると、学芸員の工夫が見えてきます。学校の図書委員になるのも、司書の仕事を知るよい経験です。大学選びでは、学芸員課程や司書課程があるかどうか、自分の興味のある分野(美術史、考古学、生物学など)を学べるかどうかを確認しましょう。

ボランティアやイベントに参加する

博物館の中には、高校生も参加できるボランティアや、発掘体験、学芸員と一緒に標本を作る講座を開いているところがあります。図書館でも、中高生向けのイベントや職場体験を受け入れていることがあります。

文理の選び方

美術史、歴史、考古学、民俗学を学びたいなら文系、生物学、地学、天文学などを学びたいなら理系の学部が多いです。司書は文系の学部で課程を置く大学が多いですが、どの学部でも取れる大学もあります。

代表的な会社・職場

学芸員の職場は、国立の博物館や美術館、都道府県や市町村の博物館、私立の美術館、科学館、動物園、水族館などです。司書の職場は、公共図書館、大学図書館、学校図書館、国立国会図書館、企業や研究所の資料室です。図書館の運営を受け持つ民間の会社で働く司書もいます。

国立の館

東京国立博物館、国立科学博物館、国立西洋美術館などの国立の館は、独立行政法人として運営されていて、研究員として採用される人もいます。研究の実績が強く求められます。

民間の図書館運営会社

指定管理者として図書館を運営する会社では、司書の資格を持つ人を社員や契約スタッフとして採用しています。書店チェーンや図書館の業務を専門にする会社などがあります。

学芸員と司書のちがい

学芸員と司書は、どちらも社会教育施設で働く専門職ですが、扱うものが違います。学芸員は「一点もの」の実物資料(化石、美術品、古文書など)を扱い、調査研究と展示が中心です。司書は「多くの人が使う」本や情報を扱い、整理と提供が中心です。学芸員は専門分野ごとの採用が多く大学院まで進む人が多いのに対し、司書は大学卒業で目指す人が多いです。

両方の資格を取る人も

大学によっては、学芸員課程と司書課程を両方取ることができます。小さな町では、博物館と図書館が同じ建物にあり、両方の仕事をすることもあります。

アーキビスト

公文書館で古い公文書を保存し、公開する専門職をアーキビストといいます。国立公文書館が認証アーキビストという資格制度を設けていて、学芸員や司書と近い仕事として注目されています。

非正規化と指定管理者制度

公立図書館の司書のうち、非常勤や指定管理者の職員の割合は、1999年度の23.2%から2021年度には75.4%まで上がりました。自治体の財政が厳しい中で、正規職員を減らし、非常勤職員や民間の運営に切り替える動きが進んだためです。指定管理者制度には、開館時間を延ばしたりサービスを工夫したりする良い面もありますが、契約期間が数年で区切られるため、職員が長く働き続けにくいという課題もあります。

会計年度任用職員

2020年から、自治体の非常勤職員は会計年度任用職員という制度に変わりました。1年ごとの任用ですが、ボーナスが出るようになるなどの改善もありました。ただし、雇い止めへの不安は残っています。

これから目指す人へ

正規の職を目指すなら、専門分野の力を磨くこと、採用区分のある自治体や法人を調べること、非正規で経験を積みながら挑戦を続けることが現実的な戦略です。

よくある質問

学芸員の資格はどこの大学でも取れますか

学芸員課程を置いている大学でのみ取れます。文学部や教育学部、理学部などに置かれていることが多いので、大学選びのときに確かめましょう。

司書の資格は難しいですか

大学で必要な科目の単位を取れば資格が得られるので、試験の難しさはありません。司書講習という夏の集中講座で取る方法もあります。難しいのは資格を取ったあとの就職です。

学芸員になるには大学院に行かないといけませんか

法律上は大学卒業で資格が取れますが、正規の採用では修士以上の学位を条件にする館が多くあります。特に美術館や大きな博物館を目指すなら、大学院に進む人が多いです。

図書館で働いている人はみんな司書ですか

いいえ。図書館では司書の資格を持つ人と持たない人が一緒に働いています。また、資格を持っていても、非常勤職員や民間会社の社員として働いている人も多くいます。

動物園や水族館の飼育員も学芸員ですか

飼育員の中に学芸員の資格を持つ人もいますが、全員ではありません。動物園や水族館では、飼育と研究、教育活動を担当する人が学芸員として働いていることがあります。

学校の図書室の先生は司書ですか

学校図書館には、先生の資格を持つ人がなる司書教諭と、図書館の仕事を専門に担う学校司書がいます。学校司書は自治体の非常勤職員であることが多いです。

本が好きなだけでも司書になれますか

本が好きなことは大切ですが、司書の仕事は自分が本を読むことより、利用者が必要な本や情報にたどり着けるよう手助けすることが中心です。人と接することや、情報を整理することが好きな人に向いています。

学芸員の仕事はなくなりませんか

資料をデジタル化してインターネットで公開する取り組みが進んでいますが、実物の資料を守り、調べ、価値を伝える仕事は人にしかできません。むしろ、デジタルの知識を持つ学芸員が求められるようになっています。

この分野のことば

年収について:厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)では、学芸員の年収は583.3万円(令和7年賃金構造基本統計調査を加工)と示されていますが、これは学芸員だけでなくほかの職業も含む分類の数字です。公立の博物館や図書館の正規職員は自治体の給与表にしたがうため、地方公務員とほぼ同じ水準になります。会計年度任用職員などの非正規職員は時給や月給制で、正規職員より大幅に低いことが多いです。個別の自治体の募集要項で確かめることが大切です。

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