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理系じゃなくてもなれる、空の職人

パイロット

パイロットは、旅客機や貨物機、ヘリコプターなどを操縦して、人やモノを安全に目的地まで運ぶ仕事です。旅客機を操縦するには国の資格(定期運送用操縦士など)が必要で、機長と副操縦士の2人で乗務するのが基本です。航空会社の自社養成、航空大学校、私立大学の操縦学科、自衛隊など入り口はいくつかあり、文系出身のパイロットもたくさんいます。年収は職業別でトップクラスですが、何年もかかる訓練と、毎年の厳しい審査・身体検査を続けてクリアする必要があります。

平均年収の目安約1,632万円20代後半で約700万円台、50代で2,000万円を超えることも
なるまでの難しさ★★★★★採用枠が少なく倍率が高いうえ、入ってからも数年かかる訓練と国家試験、毎年の航空身体検査と技能審査に合格し続けなければならないためです。視力などの身体条件で進めない場合もあります。
決めどき文系・理系どちらでも

高校のうちに方向を決め、大学・短大の選び方を考えるのが理想

どんな職種がある?

押すと、その職種の仕事内容・必要な力・キャリアが見られます。

パイロットの年収と昇進の流れ

訓練生入社1〜4年目300〜500万円副操縦士(任用直後)入社4〜5年目600〜800万円副操縦士(中堅)30代前半1,100〜1,500万円機長(昇格直後)30代後半〜40代前半1,500〜1,900万円ベテラン機長・教官40代後半〜50代2,000〜2,700万円シニア乗務60代(68歳未満)1,200〜1,500万円帯は年収の目安(統計の年齢別推計など)機長になると、年収が大きく上がる
会社・機種・役職で大きく異なります。機長になるには約1年の昇格訓練と国の審査に合格する必要があります
訓練生(地上勤務・基礎訓練)300〜500万円
入社1〜4年目、22〜26歳

空港での地上勤務のあと、小型機で操縦の基礎を学び、事業用操縦士などの資格を取ります。統計の年齢別推計で20代前半は約300万円台です。段階ごとの審査に合格することが次に進む条件です。

副操縦士(任用直後)600〜800万円
入社4〜5年目、26〜29歳

型式限定を取り、路線訓練を終えて副操縦士になります。統計の年齢別推計で20代後半は約700万円です。定期訓練と審査に合格し続けることが求められます。

副操縦士(中堅)1,100〜1,500万円
30代前半

さまざまな空港や天候を経験し、機種移行や国際線を担当します。統計の年齢別推計で30代前半は約1,300万円です。定期運送用操縦士を取ることが機長への条件です。

機長(昇格直後)1,500〜1,900万円
30代後半〜40代前半

約1年の機長昇格訓練と国の審査に合格して機長になります。統計の年齢別推計で30代後半は約1,600万円、40代前半は約1,800万円です。

ベテラン機長・教官2,000〜2,700万円
40代後半〜50代

大型機・長距離国際線の機長や、教官・審査担当を務めます。統計の年齢別推計で40代後半は約2,100万円、50代後半は約2,600万円です。

シニア乗務1,200〜1,500万円
60代(68歳未満)

定年後に再雇用や他社への移籍で乗務を続けます。統計の年齢別推計で60代は約1,300万〜1,400万円です。航空身体検査に合格し続けることが条件です。

年収は目安です。会社や地域、本人の働き方で大きく変わります。

働き方で何が違う?

大手航空会社(ANA・JAL)パイロット全体の平均(約1,600万円台)より高めになることが多い

国内線から長距離国際線まで、幅広い路線と機種を運航しています。自社養成の採用枠が大きく、訓練の仕組みも整っています。大型機で世界中の空港に飛べるのが魅力です。採用は人気が高く難関です。

良いところ訓練環境が整い、大型機・国際線に乗れる

大変なところ採用倍率が高く、国際線では時差の負担がある

LCC(格安航空会社)大手より低めの傾向

短距離の路線を1日に何往復もするのが一般的です。機体を1種類にそろえている会社が多く、同じ機種で経験を積みます。即戦力採用が中心ですが、自社養成を行う会社もあります。家に帰れる日帰り勤務が多いことも特徴です。

良いところ日帰り勤務が多く、離着陸の回数で経験を積める

大変なところ1日の便数が多く体力を使う

地域航空会社大手より低めの傾向

離島路線や地方空港を結ぶ路線を運航します。プロペラ機や小型ジェット機が中心で、地域の人の生活の足を支えます。たとえば、長崎や鹿児島の離島と本土を結ぶ便は、病院に通う人や高校生の大切な交通手段です。

良いところ地域に密着し、社会的な役割を実感しやすい

大変なところ天候の厳しい空港が多く、機材も小さい

自衛隊・官公庁公務員の給料に航空手当が加わる

防衛、救助、警備などの公共の任務で操縦します。訓練費は国が負担し、給料をもらいながら学べます。任務の内容は民間の旅客輸送とは大きく異なります。

良いところ訓練費の負担がなく、人命救助などのやりがいが大きい

大変なところ民間大手より年収は低め、勤務地を選びにくい

代表的な会社・職場

大手航空会社中堅航空会社LCCLCC(中長距離)貨物専門航空会社公的な養成機関防衛省官公庁
全日本空輸(ANA) ›大手航空会社

国内線・国際線を運航する日本最大級の航空会社です。2027年度入社で自社養成パイロットを65人採用すると報じられています。

職種別の開示なし(パイロット全体の統計では約1,600万円台)
日本航空(JAL) ›大手航空会社

国内線・国際線を運航する大手航空会社です。自社養成のほか、グループにLCCや地域航空会社を持っています。

職種別の開示なし
スカイマーク ›中堅航空会社

国内線を中心に運航する航空会社です。ボーイング737で路線を広げています。

職種別の開示なし
ピーチ・アビエーションLCC

ANAグループのLCCです。2027年度入社で運航乗務員を40人程度採用する予定と報じられています。

職種別の開示なし
ジェットスター・ジャパンLCC

国内線と近距離国際線を運航するLCCです。

職種別の開示なし
ZIPAIR TokyoLCC(中長距離)

JALグループで、ボーイング787を使って中長距離の国際線を運航するLCCです。

職種別の開示なし
AIRDO・ソラシドエア・スターフライヤー中堅航空会社

北海道、九州などを拠点に国内線を運航する航空会社です。

職種別の開示なし
日本貨物航空貨物専門航空会社

大型の貨物専用機で国際貨物を運ぶ航空会社です。

職種別の開示なし
航空大学校公的な養成機関

宮崎・帯広・仙台でパイロットを育てる国の機関です。教官として働く道もあります。

職種別の開示なし
航空自衛隊・海上自衛隊・陸上自衛隊防衛省

戦闘機、輸送機、哨戒機、ヘリコプターなどを操縦するパイロットを自ら育てています。

国家公務員の俸給表に航空手当
海上保安庁・警察・消防の航空隊官公庁

捜索・救助や警備、消火などのために航空機とヘリコプターを運用しています。

公務員の給与体系

›がついた会社は、会社図鑑で詳しく解説しています。

どうやって稼いでいる?

航空会社飛行機で人とモノを運ぶ入ってくるお金出ていくお金旅客運賃いちばん大きい機体購入やリース貨物運賃電子部品・医薬品燃料マイル提携カード会社など空港の使用料整備などの受託ほかの航空会社から人件費座席をどれだけ埋められるか(搭乗率)が利益を大きく左右するLCC(格安航空会社)のくふう座席を詰める・サービスを有料に・機体を1種類にそろえて費用を抑える→ 安い運賃でも利益を出すパイロットは、1便の安全と定時運航の中心
パイロットが足りないと、会社は便を減らさざるを得なくなります

パイロットが働く航空会社は、飛行機という高価な機材を使って、人とモノを運ぶことでお金を得ています。収入の柱は旅客の運賃で、そのほか貨物運賃、マイレージ提携、整備や地上業務の受託などがあります。たとえば、ANAのマイルがたまるクレジットカードを作ると、カード会社が航空会社にマイル代を払っています。一方で、機体の購入やリース、燃料、空港の使用料、人件費など大きなコストがかかるため、座席をどれだけ埋められるか(搭乗率)が利益を大きく左右します。パイロットは1便ごとの安全と定時運航を担う中心で、パイロットが足りないと便を減らさざるを得なくなるため、会社にとって最も重要な人材のひとつです。

1
旅客運賃(国内線・国際線)

乗客が払う航空券の代金が最大の収入です。同じ便でも予約の時期や座席クラスで値段が変わり、ビジネスクラスなどの上位クラスは利益への貢献が大きくなります。

2
貨物運賃

旅客機の床下スペースや貨物専用機で荷物を運び、運賃を得ます。電子部品や医薬品、生鮮食品など、速さが必要な荷物が中心です。たとえば、北海道でとれたウニがその日のうちに東京のお寿司屋さんに届くのは航空貨物のおかげです。

3
マイレージ・提携ビジネス

クレジットカード会社や買い物サービスと提携し、マイルを販売することで収入を得ます。旅客数が減った時期にも会社を支える収入源として注目されました。

4
整備・地上業務の受託

自社の整備部門やグランドハンドリング部門(たとえば、空港で荷物を積み込んだり、飛行機を誘導路まで押し出したりする係)が、ほかの航空会社の機体整備や空港業務を引き受けて手数料を得ます。

5
LCC(格安航空会社)のモデル

座席を詰め、サービスを有料オプションにし、機体を1種類にそろえて整備や訓練の費用を抑えることで、安い運賃でも利益を出す仕組みです。ピーチやジェットスター・ジャパンなどが代表例です。

入ってからどうなっていく?

1〜2年目地上勤務の時期航空会社の自社養成では、入社後すぐに空を飛ぶのではなく、空港の旅客業務や営業などの地上配置から始まることが多いです。ANAでは約1〜2年の地上配置を経て訓練に入ると案内されています。運航を支える仲間の仕事を知る大切な期間です。
2〜4年目基礎訓練(ライセンス取得)国内外の訓練施設で、小型機を使って操縦の基礎を学び、事業用操縦士や計器飛行証明などの資格を取ります。ANAの例では基礎訓練に約1年半〜2年かかります。不合格が続くと訓練を続けられない場合もある、真剣勝負の期間です。
4〜5年目副操縦士任用訓練乗務する機種(ボーイング787など)の型式限定を取り、シミュレーターと実機で訓練します。シミュレーターは、たとえばゲームセンターのレースゲームを本物そっくりにしたような装置で、エンジン故障や大雨などの非常事態も安全に練習できます。最後に実際の路線で経験豊富な機長の指導を受ける路線訓練を経て、副操縦士として正式に乗務を始めます。
20代後半〜30代副操縦士として経験を積む毎日のフライトを重ね、さまざまな空港、天候、トラブル対応を経験します。年に数回の定期訓練と審査があり、ここで操縦技術と判断力を磨き続けます。国際線への移行や大型機への機種移行を経験する人も多いです。
30代後半〜40代前半機長に昇格約1年の機長昇格訓練と国の審査に合格すると機長になります。job tagでは30代後半から40代前半で機長に昇格するのが一般的とされています。年収が大きく上がるのもこのタイミングです。
40代〜50代ベテラン機長・教官・管理職大型機の機長として長距離国際線を担当したり、教官や審査担当として後輩を育てたりします。運航本部の管理職として安全対策や乗務計画に関わる人もいます。
50代〜60代シニア乗務・転職日本では2015年に航空会社のパイロットの年齢上限が68歳未満に引き上げられました。大手を定年で離れたあと、LCCや地域航空会社、海外の航空会社、訓練校の教官として操縦を続ける人もいます。

1便の飛行機が飛ぶまで

地上空1出社・アルコール検査乗務前に必ず受ける2ブリーフィング天気・燃料・機体を確認3機体の点検と準備飛行計画を2人で確認4離陸管制官の許可を受けて巡航計器を見て高度やルートを調整6着陸進入の手順をチェック7引き継ぎ不具合を整備士に伝える国内線では1日に2〜4便ほど、これをくり返す
飛ぶ前の準備に、機長と副操縦士の2人で多くの時間をかけます
1
出社・アルコール検査

乗務前に必ずアルコール検査を受け、体調を確認します。

2
ブリーフィング

機長と副操縦士で天気、燃料、機体の状態を確認し、客室乗務員とも情報を共有します。

3
機体の点検と準備

外部点検を行い、コックピットで飛行計画を入力して二重に確認します。

4
離陸

管制官の許可を受けて滑走路に入り、離陸します。

5
巡航

自動操縦を使いながら計器を監視し、揺れや天気の変化に合わせて高度やルートを調整します。

6
着陸

目的地の天気を確認し、進入の手順をチェックしてから着陸します。

7
引き継ぎ

機体の不具合を記録して整備士に伝え、次の便の準備に入ります。

航空大学校の入学試験(パイロット養成のおもな入り口のひとつ)

合格率倍率の公表値は確認できていません(定員108人)
勉強時間の目安入学後2年間の訓練で事業用操縦士と計器飛行証明を取得します
受験資格入学年の4月1日時点で20歳以上25歳未満、身長158cm以上、4年制大学に2年以上在学し62単位以上取得、または短大・高専卒業など
学力だけでなく、身体検査と操縦適性検査を通らなければ合格できないのが特徴です。一度身体検査の脳波検査で不合格になると再び出願できないなど、身体条件が非常に重視されます。航空会社の自社養成も同じように身体検査と適性検査があり、採用人数が少ないため難関です。
試験科目(押すと中身が見られます)
合格までの流れ
  1. 出願例年5〜6月ごろに出願します。
  2. 一次試験夏に筆記試験を受けます。
  3. 二次試験秋から冬にかけて2回に分けて身体検査を受けます。
  4. 三次試験冬に面接と操縦適性検査を受け、最終合格が発表されます。
  5. 入学・訓練宮崎で学科、帯広と宮崎で単発機、仙台で多発機の訓練を受けます。

パイロットのある1日

6:00

起床します。体調を整え、飲酒をしていないことは前日から徹底して管理しています。

7:30

空港の乗員室に出社します。アルコール検査を受け、出勤手続きをします。

7:45

機長と副操縦士で天気図、目的地の空港情報、燃料、機体の整備状況を確認するブリーフィングを行います。

8:15

客室乗務員とのブリーフィングです。当日の乗客情報や揺れが予想される場所を共有します。

8:30

機体に移動し、外部点検とコックピットの準備をします。飛行計画をシステムに入力し、2人で何度も確認します。

9:10

出発です。管制官と英語で交信しながら滑走路へ向かい、離陸します。

10:30

目的地に着陸します。到着後すぐに次の便の準備に入ります。国内線では1日に2〜4便ほど乗務することがあります。

13:00

2便目、3便目と乗務を続けます。途中で天候が変わればルートや高度を変更する判断も行います。

17:00

最終便の到着後、機体の不具合などを記録し、整備士に伝えます。

17:30

乗務終了です。宿泊先のホテルへ移動するステイや、帰宅して翌日の休日を迎える日もあります。

もっと知りたい人へ

そもそもパイロットとは

パイロットは、航空機を操縦する人の総称です。旅客機のパイロットは、機長と副操縦士の2人以上で乗務し、離陸から着陸までの操縦、管制官との無線交信、計器の監視、トラブル時の判断を行います。現代の旅客機は自動操縦が発達していますが、自動操縦をどう使うかを決め、異常時に手で操縦するのは人間です。パイロットになるには、国土交通大臣による航空従事者技能証明(ライセンス)が必要で、旅客機の機長には定期運送用操縦士という最上位の資格が求められます。

自動操縦があるのにパイロットはいる?

旅客機の多くの時間は自動操縦で飛んでいますが、離陸や着陸、悪天候、機械の不具合など、状況に合わせた判断はパイロットが行います。自動操縦はあくまで道具で、正しく設定し監視する力が必要です。万が一自動操縦が使えなくなっても安全に飛ばせることが、パイロットの条件になっています。

パイロットは何人くらいいるの?

job tagによると、パイロットの就業者数は約7,040人(令和2年国勢調査)です。主要な航空会社で働くパイロットは2023年1月時点で7,091人(機長4,235人、副操縦士2,856人)とする報道もあります。人数が少ない専門職であることがわかります。

英語は必要?

国際線では管制官との交信は英語で行われ、国の航空英語能力証明が必要です。国内線でも、パイロット同士の用語や機体のマニュアルは英語が基本です。ペラペラに話せる必要はありませんが、正確に聞き取り、決まった表現で伝える力が求められます。

なるためのルート

旅客機のパイロットになるルートは大きく4つあります。航空会社の自社養成、航空大学校、私立大学の操縦学科(パイロット養成課程)、自衛隊です。どのルートでも、航空会社に入るには大学・短大・専門学校などを卒業していることが求められるのが一般的で、高校卒業後すぐに旅客機のパイロットになれる道はほぼありません。費用、年齢制限、倍率がルートごとに大きく違うので、高校生のうちに比べておくことが大切です。

  1. 高校で基礎学力をつける数学(特に物理に関わる計算)と英語はどのルートでも重要です。視力や健康管理も早めに意識しましょう。
  2. 大学・短大などに進学する自社養成を目指すなら4年制大学(学部は自由)、航空大学校なら大学2年以上で62単位以上か短大・高専卒など、私大の操縦学科なら入学と同時に訓練が始まります。
  3. 自社養成・航空大学校・自衛隊などに応募自社養成は大学3〜4年で就職活動として応募します。航空大学校は入学年の4月1日時点で20歳以上25歳未満が条件です。
  4. 事業用操縦士・計器飛行証明を取る小型機で操縦の基礎を学び、国家試験に合格して基本となる資格を取ります。
  5. 型式限定を取り副操縦士に航空会社で乗務する機種の訓練を受け、路線訓練を経て副操縦士になります。
  6. 定期運送用操縦士を取り機長へ経験を積んで最上位の資格を取り、機長昇格訓練と審査に合格すれば機長です。
自社養成のメリットと難しさ

航空会社が大学卒業予定者などを正社員として採用し、訓練費用を会社が負担してパイロットに育てる方法です。お金の負担がほぼないため最も人気があり、採用人数に対して応募が多く難関です。ANAは2027年度入社で自社養成パイロットを65人採用すると報じられています。文系・理系を問わず応募できるのが特徴です。

お金がかかるルート

私立大学のパイロット養成課程は、学費に飛行訓練費が加わり、4年間で概算1,600万〜2,600万円かかるとされます。航空大学校は国の機関のため比較的安く、入学料28万2,000円、2年間の授業料合計約480万円に寮費や生活費が加わります。奨学金制度を用意している学校もあります。

試験・選考の詳細

パイロットの選考は、一般の就職活動よりも段階が多く、身体検査と適性検査が重要です。航空会社の自社養成では、書類選考、筆記試験、面接に加えて、操縦適性検査、航空身体検査に準じた精密な身体検査、英語力の確認などが行われます。航空大学校も一次試験(筆記)、二次試験(身体検査)、三次試験(面接・操縦適性検査など)と段階を踏みます。いずれも、勉強の得意不得意だけでなく、冷静さやチームワーク、体の条件まで総合的に見られます。

身体検査で見られること

パイロットには国の航空身体検査(旅客機は第1種)に合格し続けることが求められます。視力、聴力、心臓、血圧、脳波などが細かく確認されます。メガネやコンタクトで矯正した視力が基準を満たせばよいケースが多いですが、目の手術歴などで条件がつく場合もあるので、志望する学校や会社の最新の要項を必ず確認しましょう。

操縦適性検査とは

シミュレーターや専用の機械を使い、複数のことを同時に処理する力、空間を把握する力、指示を正確にこなす力などを見ます。航空大学校の受験資格には、過去に身体検査B(脳波検査)で不合格になった人は出願できないという決まりもあり、身体面の条件の大切さがわかります。

航空大学校の待機問題

航空大学校では、教官や機材の不足などで訓練が予定どおり進まず、訓練を待つ待機学生が令和6年度末時点で161人、令和6年度卒業者の平均待機期間は475日という資料が国土交通省から出ています。改善に向けた取り組みが進められていますが、受験前に最新状況を調べておくと安心です。

年収のリアル

パイロットの年収は、厚生労働省のデータで職業別トップクラスです。job tag掲載の令和7年賃金構造基本統計調査では約1,632万円、令和6年調査では航空機操縦士で約1,697万円が目安です。ただし、訓練中や副操縦士になる前は一般の会社員と大きく変わらず、令和5年調査の年齢別推計では20代前半で約300万円台、20代後半で約700万円台と、副操縦士・機長になるにつれて大きく伸びる形です。大手航空会社とLCC、地域航空会社、官公庁では水準が異なり、乗務時間に応じた手当が年収に大きく影響します。

なぜそんなに高いの?

数百人の命を預かる責任の重さ、何年もかかる訓練、数が少なく替えがききにくい専門性が理由です。さらに、世界的にパイロットが不足しているため、海外の航空会社との人材の取り合いも給与を押し上げる要因になっています。

年収が下がるタイミング

年齢別推計では60代になると年収が下がる傾向があります。定年後に再雇用や他社への転職で乗務を続けると、契約の形が変わり年収が下がることが多いためです。また身体検査に通らなくなると乗務できなくなり、地上勤務に移ることもあります。

やりがい

パイロットの最大のやりがいは、多くの人を目的地まで安全に送り届けたときの達成感です。旅行、出張、帰省、医療搬送など、乗客一人ひとりに大切な目的があります。コックピットからしか見られない景色や、世界中の空港を訪れる経験も、この仕事ならではです。さらに、機長として経験を重ねるほど判断の幅が広がり、一生成長し続けられる仕事でもあります。

チームで飛ばす喜び

飛行機は、パイロットだけでは飛びません。整備士、運航管理者、客室乗務員、管制官、グランドスタッフなど多くの人が関わります。全員の仕事がつながって1便が定刻に飛んだとき、チームの一員としての誇りを感じられます。

社会インフラを支える誇り

航空は離島や遠い地域をつなぐ交通手段であり、災害時には救援物資や人を運ぶ役割も担います。観光客を増やす国の目標(2030年に訪日外国人6,000万人)を支える仕事でもあります。

大変なこと・きついこと

パイロットは華やかに見えますが、体と心の管理が一生続く仕事です。毎年(年齢によってはより短い間隔で)航空身体検査を受け、不合格になれば乗務できません。定期的な技能審査もあり、ベテランでも審査に向けて勉強を続けます。また早朝や深夜の勤務、泊まりの乗務、時差のある国際線など、生活リズムが不規則になりやすい面があります。

飲酒や体調の管理が厳しい

乗務前のアルコール検査は厳格で、基準を超えれば乗務できず、会社や本人が処分を受けることもあります。風邪薬などの薬も使えるものが限られるため、日頃から健康管理を徹底する必要があります。

訓練で脱落する可能性

自社養成や航空大学校の訓練では、段階ごとの審査に合格できないと訓練を続けられない場合があります。せっかく採用されても全員がパイロットになれるとは限らない点は、知っておくべき現実です。

家族との時間

土日や年末年始、お盆など、世の中が休むときほど飛行機は混みます。休日はシフトで決まるため、家族や友人と予定を合わせにくいことがあります。

向いている人

パイロットに向いているのは、決まった手順をきちんと守れる人、予想外のことが起きても慌てず優先順位をつけられる人です。操縦技術以上に、確認を面倒がらない几帳面さや、年上の機長にも必要なことをはっきり言えるコミュニケーション力が大切にされます。体力と健康を自分で管理できる人、学び続けることが苦にならない人にも向いています。

文系でも大丈夫?

大丈夫です。自社養成は学部を問わず募集されており、文系出身のパイロットも多くいます。訓練では航空力学や気象を学びますが、高校レベルの数学や物理の基礎があれば理解できるように教えられます。

向いていないかもしれない人

自己流にこだわり手順を省きたくなる人、他人からの指摘を受け入れにくい人は苦労しやすいでしょう。逆に、それを自覚して直せる人なら十分にチャンスがあります。

高校生のうちにできること

まずは健康な体づくりと視力の管理です。スマホやゲームで目を酷使しすぎない、睡眠をしっかりとるといった生活習慣は、将来の身体検査にもつながります。勉強では英語と数学、物理の基礎を固めておくと、訓練や試験で役立ちます。また、航空会社や航空大学校のオープンキャンパス、空港の見学イベントに参加して、実際に働く人の話を聞くのもおすすめです。

進学先の選び方

自社養成を狙うなら、学部より「4年制大学を卒業すること」が大切です。航空大学校を考えるなら、大学2年以上で62単位以上などの条件を満たせる進学先を選びます。私大の操縦学科は入学後すぐに訓練が始まりますが、費用が大きいので家族とよく話し合いましょう。

部活や経験

チームスポーツや部活の役職など、仲間と協力して目標を達成した経験は面接で話せる材料になります。留学やボランティアなどで視野を広げることも評価されやすい傾向があります。

代表的な会社・職場

旅客機のパイロットの主な職場は航空会社です。大手はANA(全日本空輸)とJAL(日本航空)で、それぞれグループに地域航空会社やLCCを持っています。そのほか、スカイマーク、AIRDO、ソラシドエア、スターフライヤー、フジドリームエアラインズ、ピーチ・アビエーション、ジェットスター・ジャパン、ZIPAIR Tokyoなどがあります。貨物では日本貨物航空、ヘリコプターでは民間の航空事業会社、公的機関では自衛隊、海上保安庁、警察、消防が職場になります。

大手とLCCのちがい

大手は国際線の長距離路線や大型機が多く、自社養成の枠も大きめです。LCCは短距離路線を1日に何往復もすることが多く、即戦力の採用に加えて自社養成を行う会社もあります。ピーチは2027年度入社で運航乗務員を40人程度採用する予定と報じられています。

海外の航空会社という選択

中東やアジアの航空会社では、経験を積んだ日本人パイロットが働いている例もあります。英語での業務が前提になり、住む国も変わりますが、キャリアの選択肢のひとつです。

パイロットの資格の種類

パイロットの資格は段階的に取っていきます。自家用操縦士は趣味などで報酬なしに飛ぶための資格、事業用操縦士はお金をもらって飛ぶための資格、定期運送用操縦士は旅客機の機長になるための最上位資格です。これに加えて、雲の中などで計器だけを頼りに飛ぶための計器飛行証明、乗る機種ごとの型式限定、国際線に必要な航空英語能力証明などを組み合わせます。そして、どの資格も航空身体検査証明が有効でなければ使えません。

航空大学校で取れる資格

航空大学校の2年間では、事業用操縦士(陸上単発・陸上多発)と計器飛行証明を取得します。学科座学を宮崎で約5か月、単発機の操縦を帯広と宮崎で各約6か月、多発機の操縦を仙台で約7か月学ぶ流れです。

飛行機とヘリはべつの資格

飛行機(固定翼)とヘリコプター(回転翼)では資格の区分が分かれています。ヘリコプターから飛行機へ、またはその逆に移るには追加の訓練と試験が必要です。

パイロット不足と2030年問題

日本では、パイロットの年齢構成が50歳以上に偏っていることから、多くのベテランが一斉に退職する時期を迎える「2030年問題」が指摘されています。報道によると、国土交通省は2030年の新規パイロット需要を年400〜700人と見込む一方、2021年の供給は265人にとどまりました。こうした背景から、年齢上限の引き上げ、航空大学校の定員拡大(72人から108人へ)、自社養成の採用拡大などの対策が進められています。

高校生にとっての意味

パイロットが不足しているということは、今の高校生が社会に出るころにも採用が続く可能性が高いということです。ただし需要は景気や感染症などで大きく変わるため、ひとつの会社だけに絞らず、複数のルートを考えておくと安心です。

女性パイロットも増加中

日本のパイロットの多くは男性ですが、航空会社は女性パイロットの採用と育成に力を入れています。体力よりも判断力やチームワークが大切な仕事なので、性別に関係なく目指せます。

よくある質問

文系でもパイロットになれますか?

なれます。航空会社の自社養成は学部を問わず募集されていて、文系出身のパイロットも多くいます。訓練に必要な物理や数学は基礎から学べますが、高校のうちに基礎を固めておくと安心です。

メガネをかけていてもなれますか?

多くの場合、メガネやコンタクトで矯正した視力が基準を満たせば問題ありません。ただし裸眼視力や屈折度、目の手術歴に条件がある場合があるので、志望する会社や学校の最新の募集要項で確認しましょう。

高校を卒業してすぐパイロットになれますか?

旅客機のパイロットとしてはほぼ難しいです。航空会社の自社養成は大学などの卒業が条件で、航空大学校も大学2年以上の在学などが必要です。ただし自衛隊の航空学生は高校卒業後(18歳以上21歳未満)に入隊して操縦士を目指せます。

パイロットになるのにお金はいくらかかりますか?

自社養成なら訓練費は会社が負担するので大学の学費以外はほとんどかかりません。航空大学校は入学料と2年間の授業料で約500万円台に生活費が加わり、私立大学の操縦学科は4年間で概算1,600万〜2,600万円とされます。

機長になるまで何年かかりますか?

会社によって違いますが、ANAの案内では副操縦士になってから機長になるまで約10年、その後約1年の機長昇格訓練があります。入社から考えると十数年かかり、job tagでは30代後半から40代前半での昇格が一般的とされています。

何歳まで飛べますか?

日本では2015年に航空会社のパイロットの年齢上限が68歳未満に引き上げられました。ただし実際には身体検査に合格し続けることが条件で、会社ごとの定年や契約の形もあります。

女性でもなれますか?

もちろんなれます。航空会社は女性パイロットの採用を増やそうとしており、機長として活躍する女性もいます。体力より判断力やチームワークが重視される仕事です。

飛行機酔いしやすいのですが大丈夫?

訓練の中で慣れていく人も多いですが、ひどい乗り物酔いが続く場合は大変かもしれません。気になるなら、オープンキャンパスの体験飛行や遊覧飛行で確かめてみるとよいでしょう。

パイロットはAIや自動操縦に置き換わりませんか?

技術は進んでいますが、乗客を乗せた旅客機を無人で飛ばすには、安全面や法律、社会の受け入れなど多くの課題があります。当面は人間のパイロットが判断の中心であり続けると考えられています。

英語が苦手でも大丈夫ですか?

最初から話せる必要はありませんが、国際線には航空英語能力証明が必要で、マニュアルも英語が基本です。高校のうちからリスニングを中心に英語に慣れておくと、訓練でとても役立ちます。

この分野のことば

年収について:厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)」掲載の令和7年賃金構造基本統計調査による「パイロット」の年収目安です(平均年齢39.7歳)。令和6年調査の航空機操縦士は約1,697万円です。年齢別の幅は令和5年調査の年齢階級別推計(25〜29歳約706万円、55〜59歳約2,618万円)を参考にした目安で、会社・機種・役職で大きく異なります。

数字はすべて公開データにもとづく目安です。出典は出典・サイトポリシーにまとめています。

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