ミライ図鑑ログイン
先生として教える人より、教える仕組みを作る人のほうが多い業界

教育サービス(塾・予備校・EdTech・出版教材)

教育サービス業界は、学校の外で学びを売る会社の集まりです。たとえば、駅前の学習塾や予備校、家に届く通信教育の教材、本屋に並ぶ参考書や問題集、タブレットで解くAI教材、英会話スクールや資格の学校などがすべてこの業界に入ります。矢野経済研究所によると、学習塾・予備校や通信教育、資格取得学校などを合わせた教育産業の主要15分野の市場規模は2024年度で2兆8,555億7,000万円で、そのうち最も大きいのが学習塾・予備校です。子どもの数は減っていますが、1人あたりにかける教育費や大人の学び直しの需要があり、市場全体はほぼ横ばいからわずかに伸びています。社内には講師だけでなく、教室長、教材編集、営業、マーケティング、エンジニア、データ分析などさまざまな職種があり、文系も理系も活躍しています。

平均年収の目安約550万〜860万円上場大手の平均中小の塾で300万〜500万円台、上場大手で550万〜960万円前後
なるまでの難しさ★★★★★学習塾や教材の会社は全国に多く、新卒採用の門は比較的広いです。ただし、ベネッセや大手予備校、教育系の大手出版社、人気のEdTech企業は応募が集中し、倍率が高くなります。講師職では模擬授業が選考に入る会社が多く、教科の学力と話す力の両方が見られます。
決めどき文系・理系どちらでも

大学3年の夏〜冬のインターンシップ期。塾講師のアルバイト経験があると職場のイメージをつかみやすい

教育サービス(塾・予備校・EdTech・出版教材)の業界マップ

通信教育や参考書・図鑑をつくる会社と、塾や予備校で直接教える会社に分かれます。

となりの業界

押すと、会社図鑑でその会社のくわしい解説が見られます。

どんな職種がある?

押すと、その職種の仕事内容・必要な力・キャリアが見られます。

教育サービス(塾・予備校・EdTech・出版教材)の年収と昇進の流れ

講師・営業担当(一般社員)300〜420万円
入社1〜3年、22〜25歳

授業や営業、編集補助などの担当業務を覚えます。生徒の成績や担当業務で成果を出すと、校舎や商品の責任者に上がります。

教室長・主任380〜550万円
入社3〜7年、25〜30歳

1つの校舎や1冊の教材、営業エリアを任されます。売上・生徒数・品質の目標を安定して達成すると、複数拠点をまとめる立場に進みます。

エリアマネージャー・課長500〜700万円
入社7〜12年、30〜35歳

5〜10校舎ほどの地域や、教材シリーズ、営業チームをまとめます。部下の教室長を育て、地域全体の数字を伸ばすことが求められます。

部長・事業部長650〜950万円
入社12〜20年、35〜45歳

地域全体や一つの事業(高校生部門、デジタル教材事業など)の責任者です。出店や新サービス、予算を決め、経営陣に提案します。

執行役員・取締役900〜1,500万円
45歳〜

会社全体の経営にかかわります。M&Aや新規事業、上場企業なら株主への説明も担います。報酬は会社の規模によって大きく異なります。

年収は目安です。会社や地域、本人の働き方で大きく変わります。

働き方で何が違う?

集団指導塾・大手予備校上場大手で平均600万〜860万円前後(有価証券報告書、単体)

教室で1人の講師が10〜30人ほどの生徒に授業をする形です。たとえば、早稲田アカデミーや、大学受験の予備校などがあります。正社員講師が授業を担当し、授業の上手さが評判や生徒数に直結します。受験の合格実績で勝負する会社が多く、受験期は夜遅くまで働くこともあります。

良いところ自分の授業で生徒の成績や合格が変わる手ごたえがある

大変なところ夕方から夜の勤務が中心で、受験期や講習期は忙しい

個別指導塾・フランチャイズ平均500万〜600万円前後(上場大手、単体)

1対1や1対2で教える形で、大学生のアルバイト講師が授業を担当し、正社員は教室長として運営をまとめます。明光義塾のようにフランチャイズの加盟校が多いブランドもあります。勉強が苦手な生徒から受験生まで幅広く対応し、教室長には経営者に近い力が求められます。

良いところ若いうちから校舎運営と経営の経験が積める

大変なところアルバイトの採用・シフト管理が大変で、売上目標のプレッシャーもある

通信教育・教材出版大手で500万〜900万円前後(会社による)

進研ゼミやZ会、学研などのように、教材を作って家庭や学校に届ける会社です。社員の多くは編集、商品企画、マーケティング、営業として働き、生徒に直接教えることは少なめです。勤務時間は一般的な会社と同じく昼間が中心です。

良いところ全国の多くの子どもに届く教材を作れる、昼間中心の勤務

大変なところ紙の教材の需要が減り、デジタル化への対応が求められる

EdTechベンチャー経験によって400万〜1,000万円以上と幅が大きい

AI教材やオンライン授業、学校向けのアプリなどを開発する比較的新しい会社です。社員数は数十〜数百人のことが多く、エンジニアやデザイナー、データ分析の専門家が中心です。成長が速い一方で、会社の方針が変わりやすく、一人ひとりの役割も広くなります。

良いところ新しい学び方を自分たちで作れる、IT業界で通用する力がつく

大変なところ会社の安定性はさまざまで、学校の予算や制度の変化に左右される

英会話・資格・社会人向けスクール会社によって400万〜700万円前後が多い

子どもだけでなく、大人の英会話、プログラミング、資格試験(簿記や公務員試験、宅建など)を教える学校です。たとえば、ナガセはビジネススクール部門を持ち、資格の学校を専門にする会社もあります。少子化の影響を受けにくい分野として注目されています。

良いところ大人の人生の転機を支えられる、少子化の影響が比較的小さい

大変なところ景気や資格制度の変更で受講者数が変わりやすい

代表的な会社・職場

通信教育最大手大手予備校・塾教室型学習(フランチャイズ)教育出版・塾・医療福祉集団指導塾(首都圏)個別指導塾(フランチャイズ)個別指導塾通信教育・塾大手予備校オンライン学習サービスEdTechベンチャー学習参考書・教科書出版
ベネッセコーポレーション(ベネッセグループ) ›通信教育最大手

小中高生向けの進研ゼミ、こどもちゃれんじ、高校向けの進研模試などを提供しています。グループでは介護事業も大きな柱です。2024年に投資ファンドEQTと創業家による買収で上場を廃止しました。

非上場のため有報の開示なし
ナガセ ›大手予備校・塾

東進ハイスクール、東進衛星予備校、四谷大塚、早稲田塾、イトマンスイミングスクールなどを運営しています。2025年3月期の営業収益は552億円で、そのうち高校生部門が273億円です。

単体平均861万円(平均38.3歳、2025年3月期)
公文教育研究会(KUMON)教室型学習(フランチャイズ)

公文式の教室を国内外で展開しています。2024年9月時点で62の国と地域、教科別の学習者数は世界で約355万(国内約131万)、教室は2024年3月時点で世界約2万3,300(国内約1万5,100)です。

非上場のため有報の開示なし
学研ホールディングス ›教育出版・塾・医療福祉

学習参考書や図鑑などの出版、学研教室、塾の運営に加え、高齢者住宅などの医療福祉事業も大きく展開しています。2025年9月期の連結売上高は1,991億円です。

単体平均963万円(平均44.3歳、持株会社85人、2025年9月期)
早稲田アカデミー集団指導塾(首都圏)

首都圏を中心に、難関中学・高校・大学の受験指導をする集団指導塾です。2026年3月期の売上高は377億円です。

単体平均611万円(平均39.0歳、2026年3月期)
明光ネットワークジャパン個別指導塾(フランチャイズ)

個別指導の明光義塾を、直営とフランチャイズの両方で全国に展開しています。2025年8月期の売上高は248億円です。

単体平均554万円(平均36.9歳、2025年8月期)
東京個別指導学院個別指導塾

首都圏や関西などで個別指導塾を運営しています。ベネッセグループの会社です。

有価証券報告書で開示(年度により変動)
Z会通信教育・塾

難関大学受験向けで知られる通信教育と、映像授業や教室での指導を行っています。

非上場のため有報の開示なし
河合塾・駿台予備学校大手予備校

大学受験の予備校として全国に校舎を持ち、全国規模の模試も実施しています。学校法人などが運営しています。

非上場のため有報の開示なし
リクルート(スタディサプリ) ›オンライン学習サービス

月額制の映像授業アプリ「スタディサプリ」を提供しています。学校向けにも導入され、先生が宿題を配信するなどの使い方をされています。

リクルートグループとしての開示
atama plus・COMPASSなどのEdTech企業EdTechベンチャー

AIが一人ひとりの苦手に合わせて問題を出す教材を、塾や学校向けに提供しています。

非上場のため開示なし(求人では経験により幅が大きい)
旺文社・数研出版などの教育出版社学習参考書・教科書出版

英検の問題集、学校で使う教科書や副教材、参考書などを出版しています。

非上場の会社が多く開示なし

›がついた会社は、会社図鑑で詳しく解説しています。

どうやって稼いでいる?

生徒・保護者 入会金・毎月の授業料 季節講習・模試・教材 通信教育の会員 毎月の会費 (定額制) 塾・教育の会社 お金の入り口がたくさん 学校・自治体 模試・副教材 アプリ使用料 加盟校 加盟金と ロイヤリティ 書店 参考書や 問題集の売上 お金 たとえば1つの校舎で 月2万円 × 100人 = 月200万円 生徒の数が、そのまま売上になる夏と冬の講習や受験期に、売上が偏る
季節講習は1回で数万円から十数万円になることもあります

教育サービスの基本は、生徒や保護者から授業料や会費を受け取るBtoCのビジネスです。塾は入会金、毎月の授業料、夏期講習や冬期講習などの季節講習費、模試代、教材費の組み合わせで売上を作ります。特に季節講習は、1回で数万円から十数万円になることもあり、売上が夏と冬、受験期に偏るのが特徴です。一方で、学校や自治体にデジタル教材や模試を売るBtoB(企業や学校向け)の売上や、フランチャイズ加盟校からのロイヤリティ、本や問題集の販売など、収入の入り口はさまざまです。子どもの数が減る中で、多くの会社は1人あたりの単価を上げる(個別指導や映像授業、難関校向けコースなど)、大人向けの英語や資格講座に広げる、学校向けのデジタル事業を育てる、といった方法で売上を守ろうとしています。

1
授業料・入会金(月謝型)

塾や予備校の最も基本的な収入です。生徒1人ごとに毎月の授業料を受け取るため、生徒数がそのまま売上に直結します。たとえば月2万円の生徒が100人いれば、校舎の売上は月200万円になります。

2
季節講習・特別講座

春期・夏期・冬期の講習や、受験直前の特訓講座の費用です。普段の授業料に加えて支払われるため、塾の売上と利益の大きな柱になります。予備校では、入学や講座申し込みが集中する3月や夏前に売上が偏ります。

3
通信教育・会員制の会費

進研ゼミやZ会、公文式のように、毎月の会費で教材や指導を届けるサブスクリプション(定額制)型の収入です。会員数を増やし、長く続けてもらうことで売上が安定します。

4
フランチャイズのロイヤリティ

加盟校から受け取る加盟金とロイヤリティです。たとえば東進衛星予備校では、加盟時に加盟金300万円を支払い、その後は校舎の売上に応じたロイヤリティを本部に払う仕組みになっています(2025年3月期の有価証券報告書)。本部は自分で校舎を持たなくても売上が入ります。

5
学校・自治体向けのBtoB販売

模試、問題集などの副教材、学習アプリのライセンス料(使用料)などを学校単位で販売します。たとえば、1人1台のタブレットで使うAI教材を自治体がまとめて契約するケースです。一度採用されると毎年続くことが多く、安定した収入になります。

6
書籍・教材の販売

参考書、問題集、児童書、辞書などを本屋やネット書店で売る収入です。取次という卸の会社を通して書店に並び、売れなかった本は返品されるため、どれだけ刷るかの判断が利益を左右します。

入ってからどうなっていく?

1〜3年目現場で教える・売る塾なら校舎に配属され、講師や副教室長として授業と生徒対応を覚えます。教材会社なら営業や編集の補助から始めます。生徒や保護者、先生と直接向き合う経験が、その後の土台になります。
4〜7年目一つの校舎・商品を任される教室長として1校舎の売上と生徒数に責任を持ったり、編集者として1冊の教材を丸ごと担当したりします。数字の管理と人をまとめる力が問われる時期です。
8〜15年目エリア・事業をまとめる複数の校舎を見るエリアマネージャー、教材シリーズの編集長、営業チームのリーダーなどになります。本部の企画やマーケティング、人事に移る人も多い時期です。
15〜25年目事業責任者・管理職地域全体の責任者、事業部長、本部の部長などとして、出店計画や新サービスの立ち上げを決めます。M&Aで加わった会社の経営を任されることもあります。
転職・独立独立開業やEdTech・人材業界へ教室運営の経験を生かして自分の塾を開く人や、フランチャイズに加盟して教室を経営する人がいます。また、教育の知識とITやマーケティングの経験を組み合わせてEdTech企業へ移る人、学校の先生や人材・研修の会社に転職する人もいます。
50代〜経営・後進の育成役員として会社全体の方針を決めたり、講師研修や教材の監修に専念したりします。長年の指導経験を生かして、参考書の著者や教育コンサルタントとして活動する人もいます。

塾の1年(生徒が入って合格するまで)

1 1〜4月 春の生徒募集 チラシ・体験授業 1年の売上を左右 2 4〜7月 通常授業 定期テストの対策 点が上がると口コミ 3 7〜8月 夏期講習 授業が最も多い 講習後の入会が大切 4 9〜11月 模試と面談 志望校を決める 冬期講習を提案 5 12〜2月 冬期・直前期 過去問・面接練習 講師も休日返上 6 2〜3月 合格発表 合格実績を発信 次の春の募集へ 塾の 1年 合格実績が、次の春の生徒集めにつながる
塾の1年(生徒が入って合格するまで)の例
1
春の生徒募集(1〜4月)

新学年が始まる前に、チラシやWeb広告、無料体験授業で新しい生徒を集めます。この時期の入会数が1年間の売上を大きく左右します。

2
通常授業と定期テスト対策(4〜7月)

毎週の授業に加え、中間・期末テストの前には対策授業を開きます。テストの点が上がると口コミで生徒が増えます。

3
夏期講習(7〜8月)

1年で最も授業が多い時期です。講習だけ受けに来る生徒も多く、講習後にそのまま入会してもらうことが大切です。

4
模試と進路面談(9〜11月)

模試の結果をもとに、保護者・生徒と志望校を決める面談を重ねます。受験生には冬期講習や直前講座を提案します。

5
冬期講習・直前期(12〜2月)

受験生は毎日のように塾に来て、過去問演習や面接練習をします。講師も休日を返上することが多い時期です。

6
合格発表と実績の発信(2〜3月)

合格発表を生徒と一緒に見届け、合格実績をまとめてホームページやチラシで発信します。これが次の春の生徒募集につながります。

教育サービス(塾・予備校・EdTech・出版教材)のある1日

12:30 出社・連絡の確認 13:00 保護者に電話 模試の結果を伝える 14:00 体験の家庭と面談 志望校を聞きプランを提案 15:30 授業の準備 小テストを印刷する 16:30 小学生の授業 自習室の質問にも答える 19:00 中学生の授業 数学を担当し、個別も見回る 21:30 授業終了・見送り 22:00 日報を本部へ・退社 帯の長さ=かける時間 授業 保護者・家庭 準備・事務 昼は保護者対応と準備、夕方から夜は授業
塾の教室長の1日の例。教材会社や本部勤務は9時〜18時ごろが一般的です
12:30

(塾の教室長の場合)出社。メールと本部からの連絡を確認し、今日の授業とアルバイト講師のシフトを確かめます。

13:00

保護者への電話。前回の模試の結果を伝え、夏期講習の受講を相談します。

14:00

体験授業に申し込んだ家庭との面談。学校の成績や志望校を聞き、学習プランを提案します。

15:30

授業の準備。小テストを印刷し、今日の範囲を確認します。

16:30

小学生の授業がスタート。授業の合間に自習室の生徒の質問に答えます。

19:00

中学生の授業。自分も数学のクラスを担当し、アルバイト講師の個別指導も見回ります。

21:30

授業終了。生徒の帰宅を見送り、講師と今日の生徒の様子を共有します。

22:00

日報の作成。入会数や退塾の相談、売上の数字を本部に報告し、退社します。教材会社や本部勤務の場合は9時〜18時ごろの勤務が一般的です。

もっと知りたい人へ

そもそも教育サービス業界とは

教育サービス業界は、学校の授業とは別に、お金を払って受ける学びを提供する業界です。たとえば、学習塾、予備校、通信教育、参考書や問題集の出版、英会話スクール、資格の学校、プログラミング教室、学習アプリなどが含まれます。矢野経済研究所の調査では、主要15分野を合わせた教育産業の市場規模は2024年度で2兆8,555億7,000万円で、前年度より0.7%増えました。分野別では学習塾・予備校が最も大きく、法人向けのeラーニング(会社の研修をネットで受ける仕組み)は伸びている一方、個人向けは伸び悩んでいるとされています。家庭の側から見ると、文部科学省の「子供の学習費調査」(2023年度)では、公立中学校に通う子どもの家庭が学校外の学習費として年間約35.6万円を使っており、その大部分が塾や家庭学習などの補助学習費です。

学校の外で「学び」を売るということ

公立学校の授業料は国や自治体が負担しているため、家庭は基本的に払いません。教育サービスの会社は、それとは別に、家庭が自分でお金を出してでも受けたい学びを提供しています。たとえば「志望校に合格したい」「学校の授業についていけない」「英語を話せるようになりたい」といった目的です。家庭の財布から直接お金が出るので、成果が見えなければすぐにやめられてしまう厳しさがあります。

子ども向けと大人向け、BtoCとBtoB

教育サービスの中心は子ども向けですが、社会人の英会話や資格取得、会社の研修といった大人向けの市場もあります。また、家庭から直接お金をもらうBtoC(個人向け)だけでなく、学校や自治体、会社にサービスを売るBtoB(法人向け)の売上もあります。たとえば、学校で受ける模試や、授業で使うタブレットの教材アプリは、学校が契約しているBtoBの商品です。

少子化と市場の関係

子どもの数は年々減っていますが、教育産業の市場規模はほぼ横ばいから少し増えています。これは、中学受験をする家庭の増加、1人あたりの教育費の上昇、大人の学び直し、学校のデジタル化などが需要を支えているためです。ただし、地域によっては生徒数が大きく減り、校舎の統廃合や会社同士の合併が進んでいます。

塾・予備校・通信教育・EdTechのちがい

教育サービスといっても、教え方と売り方によってビジネスの形はかなり違います。塾や予備校は校舎を持ち、講師が対面で教える「場所と人」のビジネスです。通信教育は教材を家庭に届ける「商品と会員」のビジネスで、校舎は持ちません。EdTechはアプリやWebで学びを提供する「ソフトウェア」のビジネスで、一度作れば多くの人に届けられる反面、開発に大きな投資が必要です。教材出版は本を作って書店で売る「出版」のビジネスです。実際には、塾が映像授業を取り入れたり、通信教育の会社が塾を持ったりと、組み合わせる会社が増えています。

集団指導と個別指導

集団指導は1人の講師が多くの生徒に教えるため、1人あたりの授業料を抑えながら利益を出しやすい形です。個別指導は1人ひとりに合わせて教えられますが、講師の人数が多く必要なため、大学生のアルバイト講師に支えられています。最近は、映像授業を見て自分で進め、わからないところだけ講師に質問する「映像授業+個別サポート」型の塾も増えています。

直営とフランチャイズ

直営は本部の会社が自分で校舎を持ち、社員を配置して運営する形です。フランチャイズは、地域の会社や個人が本部のブランドとノウハウを借りて教室を開く形で、本部は加盟金やロイヤリティを受け取ります。たとえば、東進衛星予備校は2025年3月末時点で925校の加盟校があります。フランチャイズは少ない投資で教室を増やせますが、加盟校の質を保つための指導が欠かせません。

EdTechの広がり

EdTechには、生徒が個人で使う学習アプリ、塾が使うAI教材、学校が使う授業支援アプリなどがあります。国のGIGAスクール構想で小中学生に1人1台の端末が配られたことで、学校向けのデジタル教材の市場が広がりました。一方で、無料の動画やAIの学習支援も増えており、お金を払ってもらうだけの価値をどう出すかが課題です。

教育サービスのお金の流れ

教育サービスのお金の流れを、塾を例に見てみます。家庭が払う授業料が売上になり、そこから講師やアルバイトの給料、校舎の家賃、チラシや広告の費用、教材や模試の仕入れ代、本部の費用を差し引いた残りが利益になります。塾にとって大きな費用は人件費と家賃で、特に生徒が少ない校舎は家賃を払うだけで赤字になりやすいです。逆に、同じ校舎・同じ講師で生徒が増えると利益が大きく伸びるため、生徒募集が経営の生命線です。通信教育やEdTechは校舎がない代わりに、教材やアプリの開発費と広告費が大きくなります。

売上が季節で偏る理由

塾の売上は、春の入会、夏期講習、冬期講習、受験直前期に集中します。予備校では、入学や講座の申し込みが集まる3月に売上が偏ることが有価証券報告書にも書かれています。そのため、会社は1年を通して資金が足りなくならないよう計画を立て、講習期に向けて講師を確保します。

1人の生徒が生む売上を考える

たとえば、月の授業料が2万5,000円の中学生が、夏と冬の講習で合計15万円を払うと、1年間で約45万円の売上になります。これが3年間続けば100万円を超えます。だからこそ塾は、新しい生徒を集めることと同じくらい、途中でやめずに続けてもらう(退塾を防ぐ)ことを大切にします。

国や自治体のお金が入る場面

教育サービスは基本的に家庭のお金で成り立っていますが、学校向けのデジタル教材や、自治体が生活に困っている家庭の子どもに塾代を補助する制度など、公的なお金が入る場面もあります。たとえば、一部の自治体では、塾で使えるクーポンを配って学習を支援しています。

なるためのルート

教育サービス業界には、大学の学部を問わず就職できます。講師職では担当教科の学力が見られますが、教育学部出身である必要はなく、経済学部や工学部の人も多く働いています。教材編集では、その教科に強い学部(理系教材なら理学部や工学部など)の出身者が多いです。EdTechのエンジニアは情報系の学部の出身者が多い一方、文系から独学でプログラミングを身につけて入る人もいます。教員免許は必須ではありませんが、教育実習の経験が授業づくりに役立つと考える人もいます。

  1. 高校で得意教科を伸ばす講師や編集の仕事では、教科の深い理解が土台になります。人に教えられるくらい得意な教科を作っておくと強みになります。
  2. 大学で学部を選ぶ学部はどこでも就職できます。教育学部、文学部、理学部、情報系など、自分が深めたい分野を選びます。
  3. アルバイトやインターンで現場を知る塾講師、家庭教師、教育系企業のインターンなどで、教える仕事と運営の仕事の両方に触れます。
  4. 就職活動(大学3〜4年)塾・予備校、通信教育、教育出版、EdTechなどを比べて応募します。講師職では模擬授業の選考がある会社が多いです。
  5. 入社と研修授業の研修や教材づくりの研修を受け、校舎や部署に配属されます。
塾講師のアルバイトから就職する人

大学時代に塾講師のアルバイトをして、そのまま同じ会社に就職する人は少なくありません。授業や生徒対応の経験があると、入社後のギャップが少なくなります。ただし、アルバイトで見えるのは授業の部分だけなので、教室長の売上管理や生徒募集の仕事についても調べておくとよいでしょう。

学校の先生からの転職、先生への転職

学校の先生から塾や教材会社に転職する人、逆に塾で経験を積んでから教員採用試験を受けて学校の先生になる人もいます。教える技術は共通しているので、行き来しやすい業界です。

試験・選考の詳細

教育サービス業界の就職に必須の国家資格はありません。選考はエントリーシート、適性検査、面接が基本で、講師職ではこれに模擬授業や教科の筆記試験が加わることがあります。模擬授業では、10分前後で中学生向けの数学や英語の単元を説明し、話し方、板書、生徒への問いかけなどが見られます。教材編集では、文章の校正テストや企画書の提出を求められることがあります。EdTechのエンジニア職では、プログラミングの課題やこれまでに作ったものの説明が選考に入ることが多いです。

模擬授業で見られるところ

模擬授業では、正しい知識だけでなく、生徒が理解しているかを確かめながら進められるかが見られます。たとえば、一方的に説明するのではなく「ここまででわからないところはある?」と問いかけたり、身近な例を使ったりできると評価されやすいです。大学時代のアルバイト経験が生きる場面です。

あると役に立つ資格

必須ではありませんが、英語の講師や教材編集では英検やTOEICの高いスコア、本部の仕事では簿記の知識が役立ちます。また、教員免許を持っていると、授業づくりの基礎を学んだ証明になります。

年収のリアル

教育サービス業界の年収は、会社の規模と職種によって大きく変わります。上場している大手の平均年間給与は、ナガセ861万円(2025年3月期)、早稲田アカデミー611万円(2026年3月期)、明光ネットワークジャパン554万円(2025年8月期)が目安です。国税庁「民間給与実態統計調査」の全業種平均(令和7年分で487万円)と比べると、大手は平均以上の水準です。一方で、中小の塾や個人経営の塾では、これより低い会社も多くあります。講師としての人気や校舎の業績によって給料が上がる仕組みの会社もあり、実力が年収に反映されやすい業界です。

夜型の勤務と年収の関係

塾の正社員は、昼過ぎから夜遅くまで働く勤務が一般的です。講習期には休日出勤が増える会社もあり、残業代を含めて年収が決まる場合があります。働く時間帯も含めて比較することが大切です。

人気講師と独立

大手予備校では、人気講師が授業の評判によって高い報酬を得るケースが知られています。また、独立して自分の塾を経営すれば、生徒が集まるほど収入が増えますが、生徒が集まらなければ赤字になるリスクもあります。

やりがい

教育サービスの最大のやりがいは、生徒の成長と合格を間近で見られることです。成績が上がらずに悩んでいた生徒が、自分の授業で問題を解けるようになり、志望校に合格したときの喜びは格別です。教材やアプリを作る仕事では、自分が作ったものが全国の何万人もの子どもに使われます。また、塾の教室長は20代から校舎の経営を任されることが多く、若いうちから人をまとめる経験ができます。

卒業生が会いに来てくれる

塾で教えた生徒が、大学に合格したあとや社会人になってから報告に来てくれることがあります。中には、自分が教えた生徒がアルバイト講師として戻ってくることもあり、人を育てる仕事ならではの喜びがあります。

学び方そのものを変えられる

EdTechや教材開発の仕事では、新しい学び方を作り出せます。たとえば、紙のドリルではできなかった「間違えた問題だけをもう一度出す」仕組みを作ることで、勉強が苦手な子どもでも少しずつ前に進めるようになります。

大変なこと・きついこと

塾の仕事は、生徒が学校から帰ってくる夕方から夜が本番のため、帰宅が遅くなりがちです。土日に模試やイベントがあることも多く、友人や家族と生活の時間帯がずれる人もいます。また、成績や合格という結果が数字ではっきり出るため、保護者からの期待とプレッシャーが大きくなります。教室長には生徒数や売上の目標があり、教育への思いと会社の数字との両立に悩む人もいます。少子化で生徒の取り合いが激しくなっている地域も多く、会社の合併や校舎の閉鎖が起こることもあります。

受験期の忙しさ

冬期講習から入試本番までの数か月は、毎日のように授業や面談、願書のチェックが続きます。正月に特訓授業をする塾もあり、体力的にきつい時期です。

教材やアプリ側の苦労

教材を作る仕事では、一つの誤植が全国の生徒に影響するため、締め切り前は細かいチェックに追われます。EdTechでは、学校の制度や予算が変わるとサービスの方針も変わるため、変化に対応し続ける柔軟さが必要です。

向いている人

人に教えることや、誰かが成長する姿を見ることが好きな人に向いています。ただし、教えるのが好きなだけでなく、保護者と信頼関係を作る力、数字を見て校舎を運営する力も必要です。教材やアプリを作る仕事では、細かいところまで気を配れる人、子どもの目線で「どうすればわかりやすいか」を考え続けられる人が活躍しています。変化の大きい業界なので、新しいやり方を試すのが好きな人にも合っています。

向いている人の特徴

勉強で苦労した経験がある人は、つまずいている生徒の気持ちがわかるので、かえって良い講師になることがあります。また、話すのが得意でなくても、相手の話をじっくり聞ける人は保護者面談や個別指導で力を発揮します。

向いていないかもしれない人

夜型の生活や休日出勤がどうしても合わない人は、塾の現場よりも、教材会社やEdTechの本部など昼間中心の職場を選ぶとよいでしょう。同じ業界でも働き方はかなり違います。

高校生のうちにできること

まず、自分が受けている塾や通信教育、学習アプリを「お客さん」ではなく「作る側」の目で見てみましょう。なぜこの順番で教えているのか、なぜ講習を勧められるのか、なぜこのアプリは続けやすいのか、と考えると、教育サービスの仕組みが見えてきます。友達に勉強を教えて、相手がわかったかどうかを確かめる経験も、講師の仕事の練習になります。プログラミングに興味があれば、簡単な学習クイズのアプリを作ってみるのもよいでしょう。

教え方を練習する

テスト前に友達や後輩に勉強を教えてみましょう。自分がわかっていても、相手に伝わる説明をするのは別の力だと気づけます。説明がうまくいかなかったときに、別の例を考える練習が、講師や教材編集の仕事にそのまま生きます。

教育のニュースを追う

大学入試の制度改革、学習指導要領の改訂、学校の1人1台端末、生成AIの学習への活用などのニュースは、教育サービスの会社の戦略に直結します。新聞やニュースサイトで教育の話題を追っておくと、面接や小論文でも役立ちます。

代表的な会社・職場

教育サービス業界には、大学受験の予備校、首都圏や地方の集団指導塾、全国展開する個別指導塾、通信教育の会社、教育出版社、EdTechのベンチャーなど、多くの種類の会社があります。上場企業では、ナガセ、早稲田アカデミー、明光ネットワークジャパン、学研ホールディングスなどが代表的です。ベネッセや公文、河合塾、駿台、Z会のように上場していない大手も多くあります。地方には、その県で一番の進学塾といった地域密着の会社も多く、地元で働きたい人の選択肢になっています。

大手と地域密着の塾

全国展開の大手は、教材や研修の仕組みが整っていて、転勤の可能性があります。地域密着の塾は、地元の高校入試に強く、転勤が少ないのが特徴です。どちらも、その地域の学校や入試に詳しくなることが求められます。

教育以外の事業を持つ会社

教育の会社の中には、ほかの事業も大きく手がけるところがあります。たとえば、ベネッセグループや学研グループは介護や高齢者住宅などの事業を、ナガセはスイミングスクールの事業を持っています。入社後に教育以外の部署に配属される可能性もあります。

これからの教育サービス

教育サービス業界は、少子化、デジタル化、生成AIという3つの大きな変化の中にあります。子どもの数が減る中で、会社同士の合併や買収が進み、大手のグループに入る塾が増えています。学校では1人1台の端末が当たり前になり、紙の教材からデジタル教材への置き換えが進んでいます。さらに、生成AIが質問に答えたり問題を作ったりできるようになり、講師や教材の役割そのものが問われ始めています。その一方で、学ぶ意欲を引き出す、生徒一人ひとりに寄り添う、といった人にしかできない仕事の価値はむしろ高まるとも考えられています。

大人の学び直し(リスキリング)

社会人が仕事に必要な新しい技術を学び直すリスキリングが注目され、会社の研修や社会人向けのオンライン講座が伸びています。子ども向けで培った教材づくりや指導のノウハウを、大人向けに生かす会社も増えています。

生成AIと先生の役割

AIは問題の解説や英作文の添削などを短時間でこなせるようになりました。これからの講師には、AIを使いこなして生徒一人ひとりに合った学習計画を作ること、やる気が出ない生徒を支えることなど、人ならではの役割がより求められると考えられます。

よくある質問

塾の先生になるには教員免許が必要ですか?

必要ありません。塾や予備校は学校ではないため、教員免許がなくても講師として働けます。ただし、教科の学力や授業の上手さは選考でしっかり見られます。

教育学部でないと教育業界に就職できませんか?

いいえ、学部は問われません。経済学部、文学部、理学部、工学部など、さまざまな学部の出身者が働いています。教材編集やEdTechでは、それぞれの専門分野の知識がむしろ強みになります。

塾の正社員は授業だけをしているのですか?

授業だけではありません。特に教室長は、生徒募集、保護者面談、アルバイト講師の採用と研修、売上管理など、校舎の経営にかかわる仕事を幅広く担当します。授業の時間より運営の時間のほうが長いこともあります。

少子化で教育業界はなくなりませんか?

子どもの数は減っていますが、教育産業全体の市場規模は2024年度で約2兆8,556億円と、ほぼ横ばいから少し増えています。1人あたりの教育費の増加や大人の学び直しが需要を支えています。ただし、会社ごとの差は広がっていて、合併や校舎の統廃合も進んでいます。

塾の仕事は夜遅くまでですか?

塾や予備校の校舎で働く場合は、昼過ぎに出社して夜10時ごろまで働く勤務が一般的です。一方、教材会社や通信教育、EdTech、塾の本部などは、一般的な会社と同じ昼間中心の勤務が多いです。

EdTechの会社で働くにはプログラミングが必須ですか?

エンジニア職では必須ですが、EdTech企業にも営業、マーケティング、カスタマーサポート、教材コンテンツの担当など、プログラミングをしない職種があります。ただし、ITの基礎知識があると仕事の理解が早くなります。

自分の塾を開くことはできますか?

できます。塾を開くのに特別な資格は必要ありません。大手の塾で教室長を経験してから独立する人や、フランチャイズに加盟して教室を開く人がいます。ただし、生徒を集められなければ家賃や人件費で赤字になるため、経営の力が欠かせません。

塾講師のアルバイトをすると就職に有利になりますか?

有利になるとは言い切れませんが、授業や保護者対応の経験は、選考の模擬授業や面接で具体的に話せる材料になります。入社後の仕事のイメージもつかみやすくなります。

教育業界の仕事は文系と理系どちらが多いですか?

どちらも多く働いています。講師では文系教科と理系教科の両方が必要で、特に数学や理科を教えられる人は求められています。EdTechのエンジニアやデータ分析は理系の出身者が多いです。

この分野のことば

年収について:有価証券報告書(単体)の平均年間給与の目安です。ナガセ861万円(平均38.3歳、2025年3月期)、早稲田アカデミー611万円(平均39.0歳、2026年3月期)、明光ネットワークジャパン554万円(平均36.9歳、2025年8月期)、学研ホールディングス963万円(平均44.3歳、2025年9月期、85人の持株会社単体)。持株会社の数字は管理職が多いため高めに出ます。中小の塾や個人経営の塾は公的な統計がまとまっておらず、これより低いことが多いです。

数字はすべて公開データにもとづく目安です。出典は出典・サイトポリシーにまとめています。

ほかの仕事も見てみる