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「まだ誰も知らない答え」を探すのが本業で、授業はその一部

大学教員・研究者

大学教員・研究者は、大学で学生に授業をしながら、自分の専門分野で新しい知識を生み出す「研究」をする仕事です。たとえば、がんの新しい治療薬の仕組みを調べる生物学者、江戸時代の手紙を読み解いて当時の暮らしを明らかにする歴史学者、AIの新しい計算方法を考える情報科学者など、分野は文系・理系を問わずあらゆる学問に広がっています。研究の成果は論文として発表され、世界中の研究者に読まれます。全国の大学教員は約18万人(2020年国勢調査)で、教授・准教授・講師・助教という職の段階があり、多くの人は博士号を取ったあと、任期のあるポスドクや助教を経て、任期のない准教授・教授を目指します。

平均年収の目安約1,083万円約450万〜1,300万円(職位・年齢・大学で差が大きい)
なるまでの難しさ★★★★★大学教員になるには、多くの分野で博士号(大学院の博士課程を修了すると取れる学位)が必要で、大学入学から最短でも9年ほどかかります。さらに、博士号を取ったあとも任期のない職に就くまでに、ポスドクや任期付きの助教として何年も研究成果を積み上げる必要があります。国立大学の40歳未満の教員の約7割は任期付き(2023年度)で、安定した職を得るまでの競争が厳しいことが、難しさを最高レベルにしています。
決めどき文系・理系どちらでも

高校で興味のある学問を見つけ、大学3〜4年の研究室選びと、修士1年での博士課程進学の判断が大きな分かれ道

どんな職種がある?

押すと、その職種の仕事内容・必要な力・キャリアが見られます。

大学教員・研究者の年収と昇進の流れ

任期なし任期付きが多い博士課程の学生24〜27歳ごろDCなら月20万円ポスドク27〜33歳ごろ350〜500万円助教30〜38歳ごろ500〜700万円講師30代後半ごろ600〜800万円准教授30代後半〜40代750〜950万円教授40代後半〜定年950〜1,300万円博士号を取ってから任期付きの職を経て、任期なしの職を目指す
年齢と年収は目安です。博士課程の学生は特別研究員(DC)に採用された場合
博士課程の学生(特別研究員DCなど)〜240万円
24〜27歳ごろ

独自の研究を進めて論文を発表し、博士論文をまとめます。特別研究員DCに採用されると月20万円の研究奨励金を受けられます。博士号の取得が次の段階の条件です。

ポスドク(博士研究員)350〜500万円
博士取得後1〜5年、27〜33歳ごろ

任期付きで研究に専念し、論文の数と質を高めます。特別研究員PDは月36.2万円です。公募で助教などの職を得ることが次の目標です。

助教500〜700万円
30〜38歳ごろ

研究を進めながら学生の実験や演習を指導します。任期付きの場合が多く、任期中の成果で講師や准教授への昇任・転出を目指します。

講師600〜800万円
30代後半ごろ

授業を担当しながら独立した研究を進めます。研究費の獲得と論文の実績を積み、准教授への昇任を目指します。

准教授750〜950万円
30代後半〜40代

独立した研究者として研究室を運営し、学生を指導します。教授選考(公募や昇任審査)に通ると教授になります。

教授950〜1,300万円
40代後半〜定年(65歳前後)

研究室のリーダーとして研究と教育を引っぱり、学部や大学の運営、学会の役員などを担います。学部長や副学長などの要職に就く人もいます。

年収は目安です。会社や地域、本人の働き方で大きく変わります。

働き方で何が違う?

国立大学教授の平均年間給与約1,100万円台の例(国立大学法人の公表)

国立大学法人が運営する大学で、研究に力を入れているところが多くあります。教員の給料は各法人の給与規程で決まり、国家公務員に近い水準です。運営費交付金が減ってきたため、外部の研究費を獲得することが一層求められています。若手教員の任期付きの割合が高いことが課題です。

良いところ研究の設備や環境が整っていて、研究に打ち込みやすい

大変なところ若手は任期付きが多く、外部資金の獲得の負担が大きい

私立大学学校法人の規程による(大学により差が大きい)

学校法人が運営する大学で、規模や特色はさまざまです。授業料が収入の中心のため、教育や学生への支援に力を入れる大学が多く、授業のコマ数が国立より多いことがあります。有名な大規模大学では給料が国立より高い場合もあります。

良いところ大学によっては給料が高く、教育や社会連携に特色を出せる

大変なところ授業や学生対応の負担が大きく、研究時間が限られることがある

国立研究開発法人・企業の研究所機関・企業の規程による

理化学研究所などの公的研究機関や企業の研究所で、研究に専念する働き方です。授業をほとんど担当しないため、研究時間を多く確保できます。大型の実験施設を使った研究や、社会での実用化を目指した研究ができます。

良いところ研究に集中でき、大型の設備を使える

大変なところ任期付きの研究員も多く、組織のテーマにそった研究が求められることがある

任期付き(ポスドク・助教)/任期なし(准教授・教授)任期付き:年収約350万〜700万円/任期なし:年収約750万〜1,300万円

大学教員の働き方は、任期付きと任期なしで大きく違います。任期付きの職は1〜5年ごとに次の職を探す必要があり、若手研究者の多くがこの段階にいます。任期なしの職を得ると、定年まで安定して研究と教育に取り組めます。

良いところ任期付きの時期は研究に集中でき、いろいろな機関を経験できる

大変なところ任期付きは将来が不安定で、生活の計画が立てにくい

専任教員/非常勤講師専任:職位による/非常勤:1コマあたりの報酬で決まる

専任教員は大学に常勤で雇われ、研究、教育、大学運営を担当します。非常勤講師は特定の授業だけを契約で担当し、1コマごとに報酬を受け取ります。専任の職を探す若手や、他の仕事をしながら教える専門家が非常勤講師を務めます。

良いところ非常勤は時間の自由がきき、複数の大学で教えられる

大変なところ非常勤だけで生活するのは難しく、研究の環境も自分で確保する必要がある

代表的な会社・職場

国立大学(研究大学)国立大学私立大学(大規模)公立大学国立研究開発法人研究支援機関
東京大学国立大学(研究大学)

日本の代表的な研究大学の一つで、幅広い分野で世界的な研究を行っています。

法人の給与規程による
京都大学国立大学(研究大学)

自由な学風で知られる研究大学で、ノーベル賞受賞者を多く出しています。

法人の給与規程による
東京外国語大学国立大学

外国語と地域研究の専門大学です。令和7年度の教授の平均年間給与は約1,133万円(平均58.9歳)と公表されています。

教授約1,133万円、准教授約934万円(令和7年度)
各都道府県の国立大学国立大学

全国の都道府県にある国立大学で、地域の産業や医療と結びついた研究も行っています。

法人の給与規程による
早稲田大学私立大学(大規模)

学生数の多い大規模な私立大学で、文系・理系の幅広い研究と教育を行っています。

学校法人の規程による
慶應義塾大学私立大学(大規模)

医学部を含む総合大学で、研究と教育の両方に力を入れています。

学校法人の規程による
公立大学公立大学

都道府県や市が設置する大学で、地域に根ざした教育と研究を行っています。

法人の給与規程による
理化学研究所 ›国立研究開発法人

物理学、化学、生命科学など幅広い分野の研究を行う日本最大級の研究機関です。スーパーコンピュータなどの大型施設があります。

機関の規程による
産業技術総合研究所 ›国立研究開発法人

産業に役立つ技術の研究を行う機関で、企業との共同研究も多く行っています。

機関の規程による
日本学術振興会研究支援機関

科研費や特別研究員の制度を運営し、研究者を支援している機関です。

特別研究員DC月20万円、PD月36.2万円(2024年度)

›がついた会社は、会社図鑑で詳しく解説しています。

どうやって稼いでいる?

大学に入るお金先生が申請して取るお金運営費交付金国から国立大学へ授業料・入学金私立の収入の中心科研費国が審査して配る共同研究企業と一緒に研究寄附・助成卒業生や財団から大学教員の給料施設の維持研究室実験の材料を買うポスドクを雇う給料や施設のお金は大学の収入から研究費は、先生も自分で申請して取る
科研費の2025年度の新規採択率は全体で28.8%でした

大学教員の給料と研究費は、大学の収入から出ています。国立大学は、国から配られる「運営費交付金」と、学生が払う授業料、病院の収入、外部から獲得する研究費などで運営されています。私立大学は、授業料や入学金が収入の中心で、国からの私学助成も受けています。教員は自分の研究のために、国の科研費(科学研究費助成事業)や、企業との共同研究費、財団の助成金などの「外部資金」を申請して獲得します。たとえば、ある教授が企業と一緒に新しい電池の材料を開発するなら、企業から共同研究費を受け取り、そのお金で実験の材料を買ったりポスドクを雇ったりします。

1
運営費交付金(国立大学)

国が国立大学に配る基本的な運営費で、教員の給料や施設の維持に使われます。2004年の法人化以降、少しずつ減らされてきたため、外部資金の重要性が増しています。

2
授業料・入学金

学生が払う授業料と入学金です。私立大学の収入の中心で、学生の数が大学の経営に直結します。

3
科研費(科学研究費助成事業)

国が研究者に配る競争的な研究費で、申請書を審査して選ばれた研究に配られます。2025年度の新規採択率は全体で28.8%、若手研究は40.2%でした。

4
共同研究・受託研究

企業や国の機関と一緒に研究したり、研究を頼まれたりして受け取るお金です。たとえば製薬会社と新しい薬の候補を探す研究などがあります。

5
寄附金・財団の助成

卒業生や企業からの寄附、民間の財団からの研究助成です。研究のテーマや若手研究者の支援に使われます。

入ってからどうなっていく?

大学・修士(18〜24歳)研究の入り口大学3〜4年で研究室に入って卒業研究をし、修士課程(2年)で本格的に研究を始めます。修士1年ごろに、博士課程に進むか就職するかを決める人が多いです。
博士課程(24〜27歳)博士号を目指す博士課程(3年が標準)で独自の研究を進め、論文を学術誌に発表して博士論文をまとめます。日本学術振興会の特別研究員(DC)に採用されると月20万円の研究奨励金を受けられます。
27〜32歳ポスドク・任期付き助教博士号を取ったあと、任期付きのポスドクや助教として研究成果を積みます。海外の大学に移って研究する人もいます。
30代助教・講師助教や講師として研究を続けながら、授業や学生指導の経験を積みます。この時期に任期のない職を得ることが大きな目標です。
30代後半〜40代准教授独立した研究者として研究室を運営し、研究費を獲得し、学生を指導します。在外研究で海外の大学に滞在する人もいます。
40代後半〜60代教授研究室のリーダーとして研究と教育を引っぱり、学部や大学の運営、学会の役員なども担います。定年後は名誉教授として研究や教育を続ける人もいます。

研究が論文になるまで(問いを立ててから世界に発表するまで)

1問いを立てる未解明の謎を見つける2研究費を申請科研費などに申し込む3実験・調査失敗しながら何か月も4データを分析統計やプログラムで5学会で発表意見をもらい改善6論文を投稿学術誌に送る7査読と修正1年以上かかることも8論文が掲載世界中で読まれる掲載された成果が、次の研究の出発点になる
査読は数か月から1年以上かかることもあります
1
問いを立てる

これまでの論文を読み、まだわかっていないことや解決されていない問題を見つけます。たとえば「この物質はなぜ低温で電気抵抗がゼロになるのか」という問いを立てます。

2
研究費を申請する

研究計画を申請書にまとめ、科研費などの研究費を申請します。採択されると、実験装置や材料、人を雇うお金が手に入ります。

3
実験・調査をする

計画にそって実験や調査、史料の分析を行います。失敗や予想外の結果も多く、方法を変えながら何か月も続けます。

4
データを分析する

集めたデータを統計やプログラムで分析し、問いへの答えになる結果を探します。

5
学会で発表する

途中の成果を学会で発表し、ほかの研究者から質問や意見をもらって研究を改善します。

6
論文を書いて投稿する

結果を論文にまとめ、学術誌に投稿します。

7
査読と修正

専門家による査読を受け、指摘に応じて実験を追加したり書き直したりします。数か月から1年以上かかることもあります。

8
論文が掲載される

査読に通ると論文が学術誌に掲載され、世界中の研究者に読まれます。その成果が次の研究の出発点になります。

大学教員・研究者のある1日

9:00

研究室に来て、メールを確認し、学生や共同研究者からの連絡に返信します。

9:30

学部の講義を1コマ(90〜100分程度)担当します。

11:30

研究室に戻り、学生の実験データを一緒に見てアドバイスします。

12:30

昼食をとりながら、研究室のメンバーと雑談します。研究のアイデアが生まれることもあります。

13:30

教授会や入試、カリキュラムなどの委員会に出席します。

15:00

研究室のゼミで、学生や若手研究者の研究発表を聞き、議論します。

17:00

自分の論文の執筆や、科研費の申請書の作成をします。

18:30

海外の共同研究者とオンラインで打ち合わせをします。時差があるので夕方や夜になることもあります。

20:00

帰宅します。論文の締め切りや学会の前は遅くまで作業することもあります。

もっと知りたい人へ

そもそも大学教員・研究者とは

大学教員は、学校教育法で決められた大学で、教育と研究を行う人です。小学校から高校までの先生と大きく違うのは、教えることと同じくらい、あるいはそれ以上に「研究」が仕事の中心にあることです。研究とは、まだ誰も知らない問いに答えを出し、新しい知識を生み出すことです。たとえば「なぜ人は夢を見るのか」「新しい半導体の材料はどう作れるか」「明治時代の新聞は人々の考えにどう影響したか」といった問いを立て、実験や調査、文献の分析で答えを探し、論文として世界に発表します。大学の授業では、そうした研究の最前線の知識を学生に伝えます。大学教員には教授、准教授、講師、助教、助手という職の段階があり、それぞれ役割が違います。

教育・研究・社会貢献

大学教員の仕事は、教育、研究、社会貢献(地域や企業との連携、政府の委員会への参加など)の3つに分けられます。たとえば、災害の研究者が自治体の防災計画づくりに協力したり、経済学者が政府の審議会で意見を述べたりするのが社会貢献です。

研究の時間は減っている

国の調査では、大学教員の仕事時間のうち研究に使われる割合は、2002年度の46.5%から2023年度には32.2%に下がりました。授業や学生対応、大学の事務の仕事が増えたことが理由とされ、研究時間をどう確保するかが大きな課題になっています。

論文と査読

研究の成果は論文として学術誌に投稿され、同じ分野の専門家が内容をチェックする「査読」を受けてから掲載されます。査読で厳しい指摘を受けて書き直すことも多く、1本の論文が出るまでに1年以上かかることもあります。

なるためのルート

大学教員になる一般的なルートは、大学を卒業後、大学院の修士課程(2年)と博士課程(3年)に進んで博士号を取り、そのあとポスドクや任期付きの助教として研究実績を積み、公募に応募して大学教員の職を得る、という流れです。大学入学から博士号取得まで最短で9年、そこから任期のない職に就くまでさらに数年から10年ほどかかることもあります。分野によって違いがあり、医学部では6年制の学部のあと医師として働きながら研究する人が多く、芸術や実務系の分野では博士号がなくても実績で教員になる人もいます。大学の教員の募集は「公募」で行われることが多く、研究者向けの求人サイトで公開されます。

  1. 高校で興味のある学問を見つける好きな教科や、もっと知りたい疑問を大切にし、その学問を研究できる学部を選びます。
  2. 大学で研究室に入る(4年)3〜4年生で研究室やゼミに入り、卒業研究で初めて本格的な研究を経験します。
  3. 修士課程で研究を深める(2年)大学院の修士課程で研究を進め、学会で発表します。博士課程に進むかどうかをここで決めます。
  4. 博士課程で博士号を取る(3年が標準)独自の研究で論文を発表し、博士論文をまとめて博士号を取得します。
  5. ポスドク・助教として実績を積む任期付きの職で研究成果を積み重ね、公募に応募します。
  6. 任期のない准教授・教授へ公募や昇任審査を通って任期のない職を得て、研究室を運営します。
公募のしくみ

大学が教員を募集するときは、分野や職位、応募の条件を公開し、応募者は履歴書、業績リスト(論文の一覧)、研究計画、教育の抱負などを提出します。書類審査のあと、模擬授業や研究発表、面接を経て採用が決まります。1つのポストに数十人が応募することも珍しくありません。

企業から大学へ

企業の研究所で研究をしていた人や、弁護士、公認会計士、デザイナーなどの実務家が、その経験を生かして大学教員になる「実務家教員」の道もあります。社会での経験を学生に伝える授業が求められています。

試験・選考の詳細

大学教員には、医師や弁護士のような国家試験はありません。そのかわりに、博士号の取得と、研究の実績(論文や研究費の獲得)が選考の中心になります。博士号は、博士課程で研究を進めて論文を学術誌に発表し、博士論文を書いて大学の審査に合格すると授与されます。大学教員の採用は多くが公募で、書類審査(論文の数と質、研究計画、教育の経験)、面接、模擬授業、研究発表で選ばれます。若手研究者の登竜門として、日本学術振興会の特別研究員(DC・PD)があり、採用されると研究奨励金を受けながら研究に専念できます。

特別研究員(学振)

日本学術振興会の特別研究員は、博士課程の学生(DC1・DC2)と博士号取得後の若手(PD)を対象にした制度で、2024年度はDCが月20万円、PDが月36.2万円の研究奨励金を受けられます。審査では研究計画と業績が評価され、採用されることが研究者としての実績にもなります。

科研費の獲得

大学教員として評価されるには、国の科研費などの研究費を獲得できるかどうかも重要です。2025年度の科研費の新規採択率は全体で28.8%、若手研究は40.2%で、申請書の質が問われます。

年収のリアル

大学教員の年収は、職位によって大きく変わります。令和6年の賃金構造基本統計調査では、教授が約1,093万円、准教授が約881万円、講師・助教が約712万円でした。job tagの大学教員全体の平均年収は約1,083万円ですが、平均年齢が57.5歳と高いことに注意が必要です。一方で、博士課程の学生の時期は収入がほとんどなく、特別研究員に採用されても月20万円です。ポスドクの時期も任期付きで、給料は研究費の種類によって変わります。つまり大学教員は、20代後半から30代前半にかけての収入が低く不安定で、任期のない准教授・教授になってから安定する、という特徴があります。

国立と私立の差

国立大学の教員の給料は、各国立大学法人の給与規程で決まり、国家公務員に近い水準です。私立大学は学校法人ごとに決まり、有名な私立大学では国立より高い場合もあります。

副収入

大学教員は、本の執筆、講演、企業のアドバイザー、ほかの大学での非常勤講師などで副収入を得ることもあります。大学の規則で認められた範囲で行います。

やりがい

大学教員・研究者のいちばんのやりがいは、世界で誰も知らなかったことを自分が最初に明らかにできることです。たとえば、何か月も失敗し続けた実験で、ある日ついに予想どおりの結果が出たとき、その瞬間は世界で自分だけがその事実を知っている、という特別な体験をします。その成果が論文となって世界中の研究者に読まれ、教科書に載ったり、新しい薬や技術につながったりすることもあります。また、自分が育てた学生が研究者として独り立ちしたり、社会で活躍したりする姿を見られるのも大きな喜びです。

自由に問いを立てられる

大学教員は、自分が面白いと思うテーマを自分で選んで研究できる、数少ない職業の一つです。好奇心をそのまま仕事にできることが、多くの研究者の原動力になっています。

世界とつながる

国際学会や共同研究を通して、世界中の研究者と議論し、友人になれます。海外の大学で研究したり、海外から研究者を招いたりする機会も多くあります。

大変なこと・きついこと

大学教員の最大の大変さは、安定した職に就くまでの道のりの長さと不安定さです。国立大学では、40歳未満の教員の約69%が任期付き(2023年度)で、数年ごとに次の職を探さなければならない若手研究者が多くいます。研究は失敗の連続で、何年もかけた研究が思ったような結果にならないこともあります。論文を学術誌に投稿しても、査読で何度も書き直しを求められたり、掲載を断られたりします。准教授や教授になってからも、授業、学生指導、大学の委員会、研究費の申請書の作成などに追われ、研究に使える時間が減ってしまうという悩みを抱える人が多くいます。

博士課程の経済的な負担

博士課程の学生は、学費を払いながら研究をする立場で、収入が少ないことが課題です。国は博士課程の学生への経済的な支援を増やしていて、研究奨励金や授業料の免除を受けられる大学もあります。

ポストの少なさ

大学教員のポスト(職の数)は限られていて、博士号を持つ人の数に比べると少ないのが現状です。そのため、企業の研究職や公的機関、研究支援の仕事など、大学以外の道も視野に入れておくことが大切です。

向いている人

大学教員・研究者に向いているのは、「なぜ?」を考え続けるのが好きな人です。たとえば、教科書に書いてあることを読んで「本当にそうなのかな」「その先はどうなっているのかな」と気になってしまう人は、研究者の素質があります。研究は失敗の連続なので、うまくいかなくてもあきらめずに試し続けられる粘り強さも大事です。自分の考えを論文や発表でわかりやすく伝える力、英語で世界の研究者とやりとりする力、学生を育てることを楽しめる気持ちも求められます。

一人で考える力とチームの力

研究は一人でじっくり考える時間が必要な一方、理系の多くの分野ではチームで研究を進めます。一人で集中する力と、仲間と協力する力の両方が大切です。

不確実さを楽しめる人

研究には「答えがあるかどうかわからない」問いに取り組む面白さがあります。先が見えないことを不安に感じるより、わくわくできる人が向いています。

高校生のうちにできること

高校生のうちにできることは、興味のある学問を見つけて、その分野の本を読んでみることです。たとえば、新書や一般向けの科学雑誌には、第一線の研究者が自分の研究をやさしく紹介したものがたくさんあります。大学のオープンキャンパスで研究室を見学したり、高校生向けの研究プログラム(大学の公開講座や科学研究のコンテストなど)に参加したりするのもよい経験です。課題研究や探究の時間で、自分で問いを立てて調べてまとめる経験は、研究の練習そのものです。英語は論文を読んだり書いたりするために必ず必要になるので、しっかり身につけておきましょう。

大学選びのポイント

研究者を目指すなら、興味のある分野の研究が盛んな大学、大学院まで進める大学を選ぶとよいでしょう。大学のホームページで、どんな研究室があり、どんな研究をしているかを調べてみましょう。

高校生の研究発表

日本学生科学賞や高校生の科学研究コンテスト、大学が主催する高校生の研究発表会などがあります。文系の分野でも、論文コンテストや探究の発表会があります。自分の研究を発表する経験は、研究者への第一歩です。

代表的な会社・職場

大学教員・研究者の主な職場は、国立大学、公立大学、私立大学、そして国立研究開発法人などの研究機関です。国立大学には、東京大学、京都大学などの研究が盛んな大学や、各都道府県の国立大学があり、研究に力を入れています。私立大学には、早稲田大学や慶應義塾大学のような大規模な大学から、地域に根ざした小規模な大学までさまざまあります。研究機関としては、理化学研究所、産業技術総合研究所、物質・材料研究機構などがあり、研究に専念できる環境があります。

研究型大学と教育型大学

大学によって、研究に重点を置く大学と、教育に重点を置く大学があります。研究型大学では研究の時間と実績が重視され、教育型大学では授業や学生の指導に多くの時間を使います。自分がどちらを大事にしたいかで、目指す職場が変わります。

海外の大学

アメリカやヨーロッパ、アジアの大学で教員になる日本人研究者もいます。海外の大学では、テニュアトラック(任期付きで採用し、審査に通れば任期のない職になる仕組み)が一般的です。

ポスドクから教授までの道(任期とテニュア)

大学教員のキャリアで最も重要なのが「任期」の問題です。博士号を取ったばかりの若手研究者の多くは、1〜5年の任期付きの職(ポスドクや任期付き助教)に就きます。2023年度の国立大学では、教員全体の約38%が任期付きで、40歳未満に限ると約69%が任期付きでした。任期中に論文を出し、研究費を獲得し、次の職を得る、ということを繰り返して、最終的に任期のない職(テニュア)を目指します。最近では「テニュアトラック制度」を導入する大学が増えていて、若手を任期付きで採用し、5年ほどの間に審査に合格すれば任期のない准教授などになれる仕組みです。

若手教員の割合

国立大学の教員のうち40歳未満の若手は約24%(2023年度)にとどまっています。国は若手研究者のポストを増やし、安定した環境で研究できるようにする取り組みを進めています。

大学以外のキャリア

博士号を持つ人は、大学以外にも、企業の研究開発、製薬会社、IT企業のデータサイエンティスト、シンクタンク、官公庁、研究支援の専門職(URA)、科学ジャーナリストなど、さまざまな分野で活躍しています。博士号は専門性を証明する世界共通の資格として、多くの場で評価されます。

文系と理系の研究のちがい

大学の研究は、文系と理系で進め方がかなり違います。理系の多くの分野では、教授を中心とした研究室で、学生や若手研究者がチームとなって実験を行い、何人もの共著で論文を書きます。たとえば化学の研究室では、毎日実験室で試薬を混ぜて新しい物質を作り、測定装置でその性質を調べます。文系の多くの分野では、研究者が一人で文献や史料、データを読み込み、単独で論文や本を書くことが多くあります。たとえば歴史学の研究者は、図書館や資料館で古い文書を読み、何年もかけて一冊の本にまとめます。どちらも、まだ誰も知らない問いに答えを出すという点では同じです。

論文と本

理系では英語の論文を学術誌に発表することが評価の中心ですが、文系の分野では日本語の論文や専門書(研究書)も重要な業績とされます。分野によって何が評価されるかが違います。

博士課程への進学

博士課程の入学者は2024年に約1万5,700人で、分野では保健(医学など)が約4割を占めます。人文・社会科学の博士課程の入学者は20年前と比べると大きく減っています。

よくある質問

大学教授になるには何年かかりますか?

大学入学から博士号取得まで最短で9年(学部4年、修士2年、博士3年)かかり、そのあとポスドクや助教を経て准教授、教授になるまでにさらに10〜20年ほどかかるのが一般的です。教授になる年齢は40代後半〜50代が多いです。

博士号がないと大学の先生になれませんか?

多くの分野では博士号が事実上必要です。ただし芸術や実務系の分野では、作品や実務の経験が評価されて博士号がなくても教員になる人がいます。

大学の先生の給料はどのくらいですか?

令和6年の調査では、教授が約1,093万円、准教授が約881万円、講師・助教が約712万円です。ただし博士課程やポスドクの時期は収入が低く不安定なことが多いです。

文系でも研究者になれますか?

なれます。文学、歴史学、法学、経済学、社会学、心理学など、文系にも多くの研究分野があります。文系の研究者は文献や調査をもとに研究し、論文や本を書きます。

大学教員と研究所の研究員は何が違いますか?

大学教員は研究に加えて授業や学生の指導を担当します。研究所の研究員は授業をほとんど担当せず、研究に集中できることが多いです。両方を行き来する研究者もいます。

ポスドクってどんな立場ですか?

博士号を取ったあと、任期付きで研究を専門に行う研究者です。授業はほとんどなく研究に集中できますが、任期が1〜3年程度と短いことが多く、次の職を探しながら研究を続けます。

英語は必要ですか?

ほとんどの分野で必要です。世界の最新の研究は英語の論文で発表され、自分の研究も英語で論文を書いたり国際学会で発表したりします。文系でも外国語の文献を読む力が求められます。

博士課程に行くとお金がかかりますか?

学費がかかりますが、日本学術振興会の特別研究員(DCで月20万円)や、大学独自の奨学金、授業料の免除など、支援の制度が増えています。研究室によってはリサーチアシスタントとして給料をもらえることもあります。

研究者にならなかったら博士号はむだになりますか?

むだにはなりません。博士号を持つ人は、企業の研究開発、データ分析、コンサルティング、官公庁などで専門性を評価されて活躍しています。課題を見つけて解決する力は、どの職場でも役立ちます。

この分野のことば

年収について:厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)」の大学・短期大学教員の年収1,082.6万円(令和7年賃金構造基本統計調査をもとにした目安、平均年齢57.5歳と高いことに注意が必要です)。令和6年同調査では、教授が約1,093万円、准教授が約881万円、講師・助教が約712万円でした。国立大学法人の例(東京外国語大学、令和7年度)では、教授の平均年間給与が約1,133万円(平均58.9歳)、准教授が約934万円(平均50.0歳)です。博士課程の学生やポスドクの時期は収入が低く、日本学術振興会の特別研究員はDCで月20万円、PDで月36.2万円です(2024年度)。

数字はすべて公開データにもとづく目安です。出典は出典・サイトポリシーにまとめています。

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