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戦車や戦闘機だけじゃない。料理人も、音楽家も、看護師も、気象予報士も自衛官

自衛官

自衛官は、日本の平和と安全を守るために、防衛省・自衛隊で働く特別職の国家公務員です。陸上・海上・航空の3つの自衛隊があり、外国からの侵略を防ぐ訓練や警戒監視だけでなく、地震や豪雨のときの災害派遣、海外での国際平和協力活動なども行います。自衛官の定員は約24万7千人で、戦車や護衛艦、戦闘機を動かす人のほかに、通信、整備、輸送、医療、会計、音楽など、とても多くの職種があります。高校卒業後すぐに入る道、大学卒業後に幹部として入る道、防衛大学校で学ぶ道など、入り方も多様です。

平均年収の目安40代で約640万〜870万円高卒1年目 約350万円前後〜幹部の上位で1,000万円以上
なるまでの難しさ★★★★★自衛官候補生や一般曹候補生の試験は高校卒業程度の筆記と面接・身体検査で、受験しやすい試験です。一方、防衛大学校や航空学生、一般幹部候補生は倍率が高く、難しい試験です。入隊後は体力訓練や集団生活があり、昇任のたびに試験や選抜があるため、総合的な難しさは中くらいです。
決めどき文系・理系どちらでも

高校3年で自衛官候補生・一般曹候補生・防衛大学校・航空学生を受験するか、大学4年で一般幹部候補生を受験

どんな職種がある?

押すと、その職種の仕事内容・必要な力・キャリアが見られます。

自衛官の年収と昇進の流れ

曹・士 幹部 1曹・曹長30代〜50代550〜700万円 3曹・2曹20代前半〜30代400〜580万円 士長19〜23歳ごろ330〜420万円 2士・1士18〜20歳ごろ280〜380万円 1佐・将補・将40代後半〜定年900〜1,500万円 3佐・2佐30代後半〜50代700〜950万円 3尉〜1尉幹部任官後〜30代480〜700万円 部内試験 防衛大学校など一般幹部候補生も 約1年学ぶ 一般曹候補生・自衛官候補生 現場をまとめる曹と、指揮する幹部の2つの道
年収は目安です。3曹として4年以上たつと、部内の幹部候補生試験を受けられます
2士・1士(教育隊・新隊員)280〜380万円
入隊1年目前後(18〜20歳ごろ)

教育隊で基礎を学び、職種の専門教育を受けて部隊に配属される段階です。営内生活が基本で、食事や住まいが支給されます。

士長330〜420万円
入隊1〜4年目(19〜23歳ごろ)

部隊の一員として任務や訓練をこなします。一般曹候補生は入隊後1年で士長になり、選考を経て3曹をめざします。

3曹・2曹(陸曹・海曹・空曹)400〜580万円
20代前半〜30代

小さなチームのリーダーとして後輩を指導し、専門技能を発揮します。3曹として4年以上勤めると、部内の幹部候補生試験を受けられます。

1曹・曹長550〜700万円
30代〜50代

部隊の現場をまとめるベテランで、幹部を支えて隊員の教育や生活指導を担います。40代の准曹自衛官の年収は約640万円が目安です。

3尉〜1尉(尉官・小隊長など)480〜700万円
幹部任官後〜30代

小隊長や艦の各部署の長、飛行隊のパイロットとして部隊を指揮します。勤務成績や教育を経て、3佐への昇任をめざします。

3佐・2佐(佐官・大隊長など)700〜950万円
30代後半〜50代

大隊長や艦長、司令部の幕僚として、大きな部隊の運営や作戦計画を担当します。40代の幹部自衛官の年収は約870万円が目安です。

1佐・将補・将(上級幹部)900〜1,500万円
40代後半〜定年

連隊長や司令、防衛省の幹部として、組織全体を率います。将官は全自衛官の中でもごく一部です。

年収は目安です。会社や地域、本人の働き方で大きく変わります。

働き方で何が違う?

陸上自衛隊階級と手当による(落下傘隊員手当など特殊な手当がつく部隊もある)

陸で日本を守る、3つの自衛隊の中で一番人数の多い組織です。全国の駐屯地に部隊があり、普通科、機甲科、施設科など16の職種があります。災害派遣で被災地に行くことが多く、人命救助や生活支援を直接担います。野外での訓練が多く、体力が特に求められます。

良いところ災害派遣で人を直接助けられる、職種が多く自分に合う仕事を選びやすい

大変なところ野外演習が多く体力的にきつい、全国への転勤がある

海上自衛隊艦艇に乗ると乗組手当、潜水艦では潜水艦手当がつき、同じ階級でも高めになりやすい

海から日本を守る組織で、護衛艦や潜水艦、哨戒機などを運用します。主な基地は横須賀・呉・佐世保・舞鶴・大湊などで、艦艇に乗って長期間海の上で生活することもあります。航海、機関、通信、料理など、艦の中の役割が細かく分かれています。

良いところ手当が多く年収が高めになりやすい、海外の港に寄港する機会もある

大変なところ航海中は家族と長く離れる、艦内は狭く生活が制限される

航空自衛隊パイロットには航空手当がつき、技術系の職域は他の自衛官と同じ給料表

空から日本を守る組織で、戦闘機や輸送機、レーダーなどを運用します。全国の航空基地や山の上のレーダーサイトが主な職場です。パイロットのほか、管制、整備、気象、情報通信、宇宙など、技術系の専門職が多いのが特徴です。

良いところ技術や資格を身につけやすい、宇宙やサイバーなど新しい分野にかかわれる

大変なところパイロットは身体基準が厳しい、レーダーサイトなど山奥の勤務地もある

幹部ルート(防衛大学校・一般幹部候補生)大卒任官時の月額296,100円(2024年改定)、40代で年収約870万円が目安

防衛大学校や一般幹部候補生から入り、最初から幹部として部隊を指揮する道です。幹部候補生学校で約1年学んだあと3尉に任官し、小隊長などからスタートします。数年ごとに全国を転勤しながら、部隊の指揮や司令部、防衛省本省での仕事を経験します。

良いところ若いうちから大きな責任を持てる、将来は大部隊や組織全体を率いられる

大変なところ転勤が多い、指揮官としての重い責任がある

代表的な会社・職場

防衛省・自衛隊防衛省の教育機関自衛隊の医療機関防衛省の司令部組織自衛隊の地域窓口
陸上自衛隊防衛省・自衛隊

陸で日本を守る組織です。全国の駐屯地に部隊があり、災害派遣での救助や生活支援も担います。

海上自衛隊防衛省・自衛隊

護衛艦、潜水艦、哨戒機などで日本のまわりの海を守る組織です。

航空自衛隊防衛省・自衛隊

戦闘機やレーダーで日本の空を守る組織です。ブルーインパルスも航空自衛隊の部隊です。

防衛大学校防衛省の教育機関

将来の幹部自衛官を育てる大学で、神奈川県横須賀市にあります。4年間、学問と訓練の両方を学びます。

学生手当 月151,300円(2024年改定)
防衛医科大学校防衛省の教育機関

医官(医師)や看護官を育てる大学で、埼玉県所沢市にあります。医学科は6年、看護学科は4年です。

学生手当 月151,300円(2024年改定)
陸上自衛隊高等工科学校防衛省の教育機関

中学卒業後に入る陸上自衛隊の学校で、神奈川県横須賀市にあります。高校の勉強と技術・自衛官の教育を受けます。

生徒手当 月138,000円(2024年改定)
自衛隊中央病院自衛隊の医療機関

東京都世田谷区にある自衛隊の中心的な病院で、医官や看護官が隊員や地域の人の医療を担います。

統合幕僚監部・各幕僚監部防衛省の司令部組織

陸・海・空の自衛隊の運用や計画をまとめる組織で、東京・市ヶ谷の防衛省にあります。

自衛隊地方協力本部自衛隊の地域窓口

各都道府県にあり、採用の相談や試験、退職者の就職支援を行います。

どうやって稼いでいる?

国民所得税や消費税などを納める 税金 国の予算(防衛関係費)毎年、国会で審議して決まる 人件・糧食費給料・手当隊員の食事 装備品戦車・護衛艦研究開発も 基地対策費学校や家の防音工事など 災害派遣でも、お金はもらわない被災した人からは受け取らない かせがず、税金をもとにした国の予算で動く
装備品は国内外の防衛産業の会社から購入します

自衛隊は会社ではないので、お金をかせぐことはありません。自衛官の給料や戦車・護衛艦・戦闘機などの装備、基地の運営にかかるお金は、すべて国の予算(防衛関係費)でまかなわれています。この予算は、国会で毎年審議されて決まります。たとえば、みなさんの家族が払っている所得税や、買い物のときの消費税などの税金の一部が、自衛官の給料や災害派遣の費用に使われているということです。災害派遣で被災地に行っても、被災した人からお金をもらうことはありません。

1
国の予算(防衛関係費)

防衛省・自衛隊の活動に使うお金は、国の一般会計の防衛関係費から出ます。毎年、政府が予算案を作り、国会で審議されて決まります。

2
人件・糧食費

自衛官の給料や手当、食事の費用などで、防衛関係費の中でも大きな割合を占めます。営内で生活する隊員の食事もここから出ています。

3
装備品の購入・研究開発

戦車、護衛艦、戦闘機、ミサイル、レーダーなどの装備品の購入や、新しい装備の研究開発にもお金が使われます。装備品は国内外の防衛産業の会社から購入します。

4
基地対策費

基地や演習場の周りに住む人たちのために、騒音対策の工事や公共施設の整備を助けるお金も使われます。たとえば、飛行場の近くの学校や家の防音工事などです。

入ってからどうなっていく?

入隊〜1年目教育隊での基礎教育自衛官候補生は約3か月の基礎教育訓練を受けて2士に任官し、一般曹候補生も教育隊で基本を学びます。体力づくり、規律、射撃、救急法、集団生活のルールなどを身につけます。
1〜3年目職種の決定と部隊配属(士)本人の希望と適性で職種・職域が決まり、専門の教育を受けたあと部隊に配属されます。一般曹候補生は入隊後1年で士長に昇任し、自衛官候補生は任期(陸1年9か月、海空2年9か月)を務めます。
3〜10年目陸曹・海曹・空曹(3曹〜2曹)選抜試験などを経て3曹に昇任すると、小さなチームのリーダーとして後輩を指導します。3曹として4年たつと部内の幹部候補生試験の受験資格が得られます。
10〜20年目ベテランの曹・部内幹部1曹・曹長として部隊の中心を担うか、部内試験で幹部になって小隊長などを務めます。専門技能をきわめて、教官として後輩を育てる人もいます。
20〜30年目准尉・中堅幹部准尉は、曹の最上位として部隊の運営を支えるベテランです。幹部は3佐・2佐として、大きな部隊や司令部の要職を担当します。
50代〜退職定年と再就職自衛官は「若年定年制」で、階級ごとに定年が決まっています(2024年10月以降、2曹・3曹は55歳、1曹〜1尉は多くが56歳、2佐・3佐は57歳、1佐は58歳)。退職後は、防衛省の支援を受けて民間企業や自治体の防災担当などに再就職する人が多いです。

災害派遣で被災地に向かうまで

1
災害の発生と情報収集

大きな地震や豪雨が起きると、自衛隊はヘリコプターや航空機を飛ばして被害の状況を確認します。

2
派遣の要請

都道府県知事などから自衛隊に災害派遣の要請が出されます。急を要する場合は、要請を待たずに出動することもあります。

3
部隊の出動

近くの駐屯地や基地から、救助や輸送の部隊がすぐに出動します。被害が大きいときは全国から部隊が集まります。

4
人命救助

がれきの下や浸水した家から人を助け出し、行方不明者を捜索します。災害発生から72時間がとくに重要とされます。

5
生活支援

避難所への給水、温かい食事の提供、仮設のお風呂の設置、物資の輸送、医療支援などを行います。

6
撤収

自治体や民間の支援で生活が立て直せる段階になると、知事などからの撤収要請を受けて部隊が引き上げます。

自衛官採用試験(一般曹候補生・自衛官候補生を中心に)

合格率種目と年度で大きく異なる(一般曹候補生は2024年度の採用者4,720人で募集計画の58%)
勉強時間の目安一般曹候補生・自衛官候補生は数か月、防衛大学校や航空学生は大学受験と同じくらいの準備が目安
受験資格一般曹候補生・自衛官候補生は18歳以上33歳未満、航空学生は18歳以上21歳未満(海自は23歳未満)、防衛大学校は18歳以上21歳未満、一般幹部候補生は26歳未満(大学院卒は28歳未満)
一般曹候補生や自衛官候補生は、高校卒業程度の基礎学力があれば十分に合格を狙える試験で、採用計画を満たせていない年が続いていることから受験しやすい状況です。一方、防衛大学校は大学入試としても難関で、航空学生も身体検査や操縦適性検査など何段階もの選考があり倍率が高いです。一般幹部候補生は大学卒業程度の教養・専門試験があり、国家公務員試験に近い難しさです。どの種目でも、入隊後の訓練と昇任の選抜が続くため、入ってからの努力が大切です。
試験科目(押すと中身が見られます)
合格までの流れ
  1. 地方協力本部で相談・出願各都道府県の地方協力本部で試験の案内を受け、申し込みます。
  2. 1次試験筆記試験、作文、適性検査を受けます(一般曹候補生の例)。
  3. 2次試験口述試験(面接)と身体検査を受けます。
  4. 合格・採用合格すると採用予定日が知らされ、教育隊に入隊します。
  5. 教育訓練教育隊で基礎を学び、職種を決めて専門教育へ進みます。

自衛官のある1日

6:00

起床ラッパで起き、点呼を受けます(陸上自衛隊の駐屯地で営内生活をする隊員の例)

6:30

部屋の清掃とベッドメイキングをして、朝食をとります

8:15

朝礼(国旗掲揚)と、その日の課業の説明を受けます

8:30

午前の課業として、演習場での戦闘訓練や、車両・装備の整備を行います

12:00

隊員食堂で昼食をとります

13:00

午後の課業として、射撃訓練、救急法の教育、体力錬成(ランニングや筋トレ)を行います

17:00

課業が終わり、入浴や夕食、自由時間になります(部活動や資格の勉強をする隊員も多いです)

22:00

点呼のあと消灯します。災害派遣の要請があれば、夜中でも出動します

もっと知りたい人へ

そもそも自衛官とは

自衛官は、自衛隊法にもとづいて日本の平和と独立を守り、国の安全を保つことを主な任務とする、特別職の国家公務員です。防衛省の中に陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊があり、自衛官の定員は約24万7千人です。主な任務は、外国からの侵略を防ぐための防衛、地震や豪雨などの災害派遣、国連の平和維持活動(PKO)などの国際平和協力活動の3つです。ふだんは訓練や警戒監視を続け、いざというときにすぐ動けるよう備えています。

3つの自衛隊のちがい

陸上自衛隊は陸で、海上自衛隊は海で、航空自衛隊は空で日本を守ります。たとえば、大地震のときは陸上自衛隊が被災地で救助や給水をし、海上自衛隊が船で物資を運び、航空自衛隊が輸送機で人や物を運ぶ、というように協力して活動します。

災害派遣

大きな災害が起きると、都道府県知事などの要請を受けて自衛隊が出動します。人命救助、行方不明者の捜索、がれきの撤去、給水、給食、入浴支援、医療などを行い、被災地の生活を支えます。自衛隊が最も身近に感じられる活動のひとつです。

自衛官の人手不足

自衛官の採用数は2023年度に9,959人で計画の51%、2024年度は9,724人で計画の65%にとどまり、充足率(定員に対して実際にいる人の割合)は89%と9割を下回りました。そのため防衛省は、給料の引き上げや定年の延長、生活環境の改善などの処遇改善を進めています。

なるためのルート

自衛官になるルートはたくさんあります。高校卒業程度なら、任期制で入る「自衛官候補生」と、長く勤めて曹(下士官)をめざす「一般曹候補生」があり、どちらも18歳以上33歳未満が対象です。パイロットをめざすなら18歳以上21歳未満(海上自衛隊は23歳未満)の「航空学生」、幹部をめざすなら18歳以上21歳未満で「防衛大学校」や「防衛医科大学校」を受験できます。大学卒業後なら26歳未満(大学院卒は28歳未満)で「一般幹部候補生」を受験できます。中学卒業後に入る「高等工科学校」という学校もあります。

  1. 採用種目を選ぶ年齢や学歴、めざす仕事(パイロット、幹部、技術者など)に合わせて、自衛官候補生、一般曹候補生、航空学生、防衛大学校、一般幹部候補生などから受ける種目を選びます。
  2. 地方協力本部に相談する各都道府県にある自衛隊地方協力本部が、試験の案内や相談を受け付けています。説明会や基地見学にも参加できます。
  3. 採用試験を受ける筆記試験、作文、口述試験(面接)、身体検査などを受けます。航空学生や防衛大学校は試験が複数段階に分かれています。
  4. 入隊・入校して教育を受ける合格すると教育隊や学校に入り、自衛官としての基本を身につけます。
  5. 職種を決めて部隊へ希望と適性で職種が決まり、専門の教育を受けたあと全国の部隊に配属されます。
自衛官候補生と一般曹候補生のちがい

自衛官候補生は、約3か月の基礎教育のあと2士に任官する任期制の自衛官で、任期は陸上1年9か月、海上・航空2年9か月です。任期が終わると、続けるか、退職して民間に就職するかを選べ、退職するときには特例退職手当が支払われます。一般曹候補生は、最初から長く勤めることを前提とした採用で、入隊後1年で士長に昇任し、選考を経て3曹(陸曹・海曹・空曹)をめざします。

防衛大学校・防衛医科大学校

防衛大学校は、将来の幹部自衛官を育てる大学で、4年間学びながら給料にあたる学生手当(月151,300円、2024年改定)を受け取れます。卒業すると曹長に任命され、幹部候補生学校をへて幹部になります。防衛医科大学校は医師(6年)や看護師(4年)を育てる大学で、卒業後は医官・看護官として働きます。

高等工科学校

高等工科学校は、中学卒業後に入る陸上自衛隊の学校で、高校の勉強と自衛官としての教育、技術の教育を3年間受けます。生徒手当(月138,000円、2024年改定)が支給され、卒業すると士長に任命されます。

試験・選考の詳細

自衛官の採用試験は種目によってちがいます。一般曹候補生の場合、1次試験は筆記試験(国語・数学・英語)と作文、適性検査で、2次試験は口述試験(面接)と身体検査です。自衛官候補生も、筆記試験、口述試験、身体検査が中心で、高校卒業程度の学力があれば受けやすい試験です。防衛大学校や航空学生、一般幹部候補生は、より難しい筆記試験に加えて、航空身体検査や適性検査など何段階もの選考があります。

身体検査

身長、体重、視力、聴力、色覚などの基準があり、パイロットをめざす航空学生ではとくに厳しい基準があります。たとえば、視力はメガネなどで矯正した視力で基準を満たせばよい種目が多いですが、航空学生では裸眼視力の基準もあります。くわしくは各種目の募集要項で確認しましょう。

口述試験(面接)

志望動機や、学校生活で力を入れたこと、自衛隊でやりたい仕事などを聞かれます。たとえば「災害派遣のニュースを見て、自分も人を助けたいと思った」など、自分の体験から理由を話せると伝わりやすくなります。

試験のチャンスが多い

自衛官候補生は年間を通じて何回も試験が行われることが多く、一般曹候補生も年に複数回試験がある場合があります。また、地方協力本部が受験の相談にていねいに乗ってくれるのも特徴です。

階級と昇任のしくみ

自衛官の階級は、下から2士・1士・士長(士)、3曹・2曹・1曹・曹長(曹)、准尉、3尉・2尉・1尉(尉官)、3佐・2佐・1佐(佐官)、将補・将(将官)の16段階です。陸上自衛隊なら「2等陸士」「3等陸曹」「1等陸佐」のように、陸・海・空の名前が入ります。士は若い隊員、曹は部隊の現場を支える中堅・ベテラン、幹部(尉官以上)は部隊を指揮するリーダーです。昇任は、勤務成績や昇任試験、選抜によって決まります。

士から曹へ

士として経験を積み、選抜試験などに合格すると3曹に昇任します。3曹になると定年まで勤められる身分となり、小さなチームのリーダーとして後輩を指導します。たとえば、部活でいえば後輩をまとめる上級生のような立場です。

曹から幹部へ

3曹として4年以上勤めると、部内の幹部候補生試験を受けることができます。合格すると幹部候補生学校で学び、3尉として幹部になります。高卒で入隊して幹部になり、大きな部隊を指揮する人もたくさんいます。

若年定年制

自衛官は、体力や精強さを保つために、一般の公務員より早く定年をむかえる「若年定年制」です。2024年10月からは定年が1歳引き上げられ、2曹・3曹は55歳、1佐は58歳などになりました。将官は60歳です。

職種・配属先の種類

自衛官の仕事は、職種(陸上自衛隊)や職域(海上・航空自衛隊)に分かれています。陸上自衛隊には、普通科、機甲科、野戦特科、高射特科、航空科、情報科、施設科、通信科、武器科、需品科、輸送科、化学科、警務科、会計科、衛生科、音楽科の16職種があります。海上自衛隊には航海・船務、機関、射撃、水雷、掃海、航空機整備、飛行、潜水、気象・海洋など、航空自衛隊には操縦、兵器管制、高射、航空管制、気象、情報通信、航空機整備、警備、宇宙領域などがあります。配属先は全国の駐屯地・基地で、北海道から沖縄まで転勤の可能性があります。

職種の決まり方

入隊後の教育中に希望を出し、適性や部隊の必要に応じて職種が決まります。必ず希望どおりになるとは限りませんが、たとえば車の整備に興味がある人は武器科や航空機整備、料理に興味がある人は需品科や給養員など、自分の興味に近い仕事を選べる可能性があります。

身につく資格

自衛隊では、仕事に必要な資格を勤務の中で取ることができます。たとえば、大型自動車免許、けん引免許、危険物取扱者、無線従事者、調理師、航空整備士など、退職後にも役立つ資格を取る隊員が多いです。

新しい分野

最近は、サイバー攻撃から日本を守るサイバー防衛隊や、宇宙ごみや人工衛星を見張る宇宙作戦部隊など、新しい分野の部隊もできています。たとえば、プログラミングや情報セキュリティが得意な人が活躍できる場が広がっています。

年収のリアル

自衛官の給料は、「自衛官俸給表」という自衛官専用の給料表で決まり、階級と号俸(経験年数)で額が変わります。2024年の人事院勧告で大きく引き上げられ、一般曹候補生・自衛官候補生(高卒)の月額は224,600円(自衛官候補生の最初の3か月は179,000円)、一般幹部候補生(大卒任官時)は296,100円になりました。ボーナスは年4.6か月分です。これに、地域手当、扶養手当、航海手当、航空手当、落下傘隊員手当などの特別な手当が加わります。年収の目安は、40代で准曹自衛官が約640万円、幹部自衛官が約870万円です。

生活費がかからない

若い隊員の多くは営内(駐屯地や基地の中の宿舎)で生活し、食事や住まい、制服などが支給されます。たとえば、同じ月給の会社員が家賃や食費に毎月数万円使うのに比べ、そのぶんを貯金に回しやすいのが自衛官の特徴です。

任期満了時の手当

自衛官候補生として入隊し任期を終えると、特例退職手当が支払われます。たとえば、陸上自衛官は1任期で727,030円、2任期まで務めると累計2,494,364円、海上・航空自衛官は1任期で1,180,940円、2任期で累計2,989,606円です。

手当で差がつく

同じ階級でも、艦艇に乗る、パイロットとして飛ぶ、潜水艦に乗る、落下傘部隊にいるなど、仕事の内容によって手当の額が大きく変わります。危険や負担の大きい仕事ほど手当が多くつきます。

やりがい

自衛官のやりがいは、国や人々の命を守るという大きな使命を持って働けることです。とくに災害派遣では、被災地で行方不明者を救出したり、避難所に温かい食事やお風呂を届けたりして、直接「ありがとう」と言われることがあります。また、仲間と厳しい訓練を乗りこえることで、強いきずなと自信が生まれます。

若いうちから責任ある仕事

20代で数十人の部下を持つ小隊長になったり、高価な装備を任されたりと、若いうちから大きな責任を持てます。たとえば、23歳前後で幹部になった人が、自分より年上の隊員を含むチームを率いることもあります。

資格や技能が身につく

仕事の中で、大型免許や整備、通信、医療などの資格や技能が身につきます。退職後の再就職でも、これらの資格や、規律ある働き方が評価されます。

世界とつながる

国際平和協力活動や、外国の軍隊との共同訓練、海外での災害救援などで、世界のさまざまな国に行く機会があります。

大変なこと・きついこと

自衛官の仕事には、厳しい訓練と規律ある生活がともないます。若いうちは営内での集団生活が基本で、起床や消灯の時間が決まり、外出にも決まりがあります。野外演習では何日も山や野原で過ごし、艦艇勤務では何週間も海の上で生活することもあります。また、全国への転勤があり、家族と離れて暮らす「単身赴任」をする人も多いです。

危険をともなう任務

災害派遣や訓練には危険がともない、けがをすることもあります。万が一、日本が攻撃を受けるような事態になれば、自分の身を危険にさらして任務を果たすことが求められます。

若年定年後の生活設計

定年が50代半ばと早いため、退職後の再就職を考えておく必要があります。防衛省は再就職の支援をしていますが、新しい職場に慣れるまで苦労する人もいます。

プライベートの制限

災害が起きればいつでも呼び出される可能性があり、休日でも遠くへ出かけるときは届け出が必要な場合があります。いざというときにすぐ戻れるよう、行動に制限がかかることがあります。

向いている人

自衛官に向いているのは、人や国のために働きたいという気持ちが強い人、体を動かすのが好きな人、仲間と協力して目標をやりとげるのが好きな人です。決まりを守って規則正しく生活できる人や、厳しい状況でもあきらめずにがんばれる人も向いています。職種が多いので、機械が好きな人、料理が好きな人、音楽が得意な人、英語が得意な人など、得意なことを生かせる場所が見つかりやすいです。

こんな経験がある人

運動部で毎日練習を続けた人、合宿や寮生活の経験がある人、ボーイスカウトやボランティアで人の役に立つ活動をしてきた人などは、その経験が自衛隊で生きます。たとえば、部活の厳しい練習を仲間と乗りこえた経験は、教育隊での訓練でとても役に立ちます。

向いていないかもしれない人

集団生活や決まりの多い生活がどうしても苦手な人、転勤を避けたい人は、最初はつらく感じるかもしれません。ただし、職種や働き方によって生活は大きくちがうので、地方協力本部で話を聞いてみるとよいでしょう。

高校生のうちにできること

高校生のうちにできる準備は、体力づくりと、筆記試験の土台になる国語・数学・英語の勉強です。ランニングや腕立て伏せ、腹筋などを習慣にしておくと、入隊後の訓練がずっと楽になります。防衛大学校や航空学生をめざすなら、大学入試レベルの学力が必要なので、早めに受験勉強を始めましょう。各地の自衛隊地方協力本部では、高校生向けの説明会や基地・駐屯地の見学ツアー、体験入隊などを行っています。

基地祭や航空祭に行ってみる

全国の駐屯地や基地では、一般の人が参加できる記念行事や航空祭が開かれています。たとえば、戦車の展示、護衛艦の一般公開、ブルーインパルスの飛行などを見ることができ、実際の隊員に話を聞くこともできます。

文理選択の考え方

自衛官は文系・理系どちらからでもなれます。整備や通信、パイロット、技術系の幹部をめざすなら理系、防衛大学校には人文・社会科学系と理工学系の両方があります。高卒で受ける一般曹候補生の筆記試験は国語・数学・英語なので、この3教科を中心に基礎を固めておきましょう。

自衛隊を知る

防衛省や自衛隊の公式サイト、SNSでは、隊員の仕事や生活が紹介されています。また、防衛白書の「こども向け」ページなどで、自衛隊の役割をわかりやすく学ぶこともできます。

代表的な職場

自衛官の勤め先は、防衛省・自衛隊です。陸上自衛隊は全国の駐屯地、海上自衛隊は横須賀・呉・佐世保・舞鶴・大湊などの基地や艦艇、航空自衛隊は全国の航空基地やレーダーサイトが主な職場です。東京・市ヶ谷の防衛省本省や、各自衛隊の学校、自衛隊病院で働く自衛官もいます。どこに配属されるかは、職種や部隊の必要によって決まります。

転勤の範囲

自衛官は全国に転勤の可能性があります。とくに幹部は数年ごとに全国を異動することが多いです。曹や士は、同じ地域の部隊に長く勤めることもあります。

自衛隊に近い仕事

海上保安庁の海上保安官、警察官、消防士も、人の命や国の安全を守るという点で自衛官と近い仕事です。たとえば、海での救助や警備をしたいなら海上保安官、地域の安全を守りたいなら警察官という選び方もあります。

よくある質問

自衛官になると必ず戦争に行くのですか?

日本の自衛隊は、憲法と法律にもとづいて、日本を守るための組織です。実際の活動の多くは、訓練、警戒監視、災害派遣、国際平和協力活動などです。ただし、万が一日本が攻撃された場合には、国を守るための任務につくことになります。

女性でも自衛官になれますか?

なれます。現在はほとんどすべての職種で女性が活躍しており、戦闘機パイロットや護衛艦の艦長になった女性もいます。女性用の宿舎や設備の整備も進められています。

自衛官候補生と一般曹候補生、どちらを受けるべきですか?

長く自衛官として勤めたい人は一般曹候補生、まずは数年間自衛隊で経験を積んでから将来を考えたい人は自衛官候補生が向いています。自衛官候補生から入っても、途中で試験を受けて曹になり、長く勤めることもできます。

パイロットになるにはどうすればよいですか?

高校卒業後なら、航空学生(18歳以上21歳未満、海上自衛隊は23歳未満)を受験するのが一般的です。ほかに、防衛大学校や一般幹部候補生から操縦の道に進む方法もあります。身体検査の基準が厳しいので、早めに確認しておきましょう。

防衛大学校は学費がかかりますか?

防衛大学校の学生は特別職の国家公務員の扱いで、学費はかからず、学生手当(月151,300円、2024年改定)と年2回の期末手当が支給されます。そのかわり、全寮制で規律ある生活を送り、卒業後は幹部自衛官として働くことが前提です。

メガネをかけていても自衛官になれますか?

多くの採用種目では、メガネやコンタクトレンズで矯正した視力が基準を満たしていれば受験できます。ただし、航空学生など一部の種目では裸眼視力の基準もあるので、募集要項で確認しましょう。

任期制で辞めたあと、どんな仕事に就けますか?

任期を満了した隊員は「自衛隊新卒」と呼ばれ、規律や責任感が身についた人材として、運輸、建設、警備、製造など多くの会社に就職しています。防衛省の就職支援もあり、大型免許などの資格が役に立つこともあります。

スマホは使えますか?

営内でも、決められた時間や場所でスマートフォンを使えるようになっています。ただし、訓練中や秘密を扱う場所では使えないなど、仕事の性質上のルールがあります。

体力に自信がなくても大丈夫ですか?

入隊後の教育隊で、少しずつ体力をつけていく訓練が行われます。最初から高い体力がなくても大丈夫ですが、入隊前からランニングなどで準備しておくと、訓練についていきやすくなります。

この分野のことば

年収について:俸給(基本給)は2024年人事院勧告による改定で、一般曹候補生・自衛官候補生(高卒)月224,600円、一般幹部候補生(大卒任官時)月296,100円で、ボーナスは年4.6か月分(2024年改定)です。40代の年収の目安は准曹自衛官 約640万円、幹部自衛官 約870万円です(自衛隊鳥取地方協力本部の例)。手当や階級、勤務地で差があります。

数字はすべて公開データにもとづく目安です。出典は出典・サイトポリシーにまとめています。

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