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畑や海の仕事だけじゃない。種、トラクター、冷凍食品まで「食べ物の旅」全体が業界です

農業・水産・食料

農業・水産・食料の業界は、食べ物が生まれてから食卓に届くまでの流れ全体を担う業界です。たとえば、米や野菜を育てる農家や農業法人、魚をとる漁業や育てる養殖業だけでなく、種や肥料、トラクターを作る会社、農家を支えるJA(農協)、魚や野菜を全国に届ける市場や卸の会社、冷凍食品や小麦粉、缶詰を作る食品メーカーまでが含まれます。農林水産省によると、2024年の農業総産出額は10兆7,801億円で、米や野菜の値上がりもあり前年より13.6%増えました。一方で、農業の中心となる基幹的農業従事者は2025年に約104万人と2000年の半分以下になり、65歳以上が約7割を占めています。人手不足を補うためのスマート農業、農業法人での雇用、海外への輸出など、新しい働き方とビジネスが広がっている業界です。

平均年収の目安約450万〜900万円立場によって大きく差がある農業法人の社員で300万〜500万円前後、大手食品・農機メーカーで800万〜900万円前後
なるまでの難しさ★★★★★農業法人や漁業の現場は人手不足のため、未経験から入れる門は広いです。一方、大手の食品メーカーや農機メーカー、農林中央金庫、全農などは人気が高く、倍率も高めです。研究・開発職は農学部や水産学部、理学部などの大学院修士卒が中心です。
決めどき文系・理系どちらでも

農学系なら大学2〜3年で研究室を選ぶとき。就農なら高校卒業後に農業大学校に進むか、大学卒業後に農業法人へ就職する道もある

農業・水産・食料の業界マップ

農家をまとめて作物を売ったり資材を届けたりする団体と、野菜や花の種をつくる会社があります。

農業団体(JAグループ)

農家が作ったものを集めて売り、資材を届けます。

種苗メーカー

野菜や花の新しい品種と種をつくる会社です。

となりの業界

押すと、会社図鑑でその会社のくわしい解説が見られます。

どんな職種がある?

押すと、その職種の仕事内容・必要な力・キャリアが見られます。

農業・水産・食料の年収と昇進の流れ

一般社員・作業担当280〜400万円
入社1〜3年、18〜25歳

栽培や製造、営業などの担当業務を覚えます。作業を一人で任せられるようになると、担当分野の責任者に進みます。

主任・作物責任者350〜500万円
入社4〜8年、25〜32歳

一つの作物やハウス、製造ラインなどの責任者として、品質と収量の目標を持ちます。後輩の指導も担当します。

農場長・課長450〜700万円
入社8〜15年、30〜40歳

農場全体の作付け計画や人の配置、工場や営業チームの管理を任されます。大手メーカーではこの段階で700万円以上になることもあります。

部長・工場長・役員600〜1,100万円
入社15年以上、40歳〜

農業法人の役員や、メーカーの工場長・部長として、組織全体の方針や投資を決めます。会社の規模で年収は大きく変わります。

独立経営者200〜1,500万円
独立後(年齢はさまざま)

自分の農場や養殖場を経営します。作物や規模、販路の工夫によって収入は大きく変わり、赤字の年もあれば大きな利益が出る年もあります。

年収は目安です。会社や地域、本人の働き方で大きく変わります。

働き方で何が違う?

農業経営体 約83.6万(2025年) 個人経営体 約79.6万 法人 約3.4万(2020年より10.1%増) 家族経営 独立就農も 収入 主業経営体の平均所得 約494万円(2024年) 良い 自分の判断で 経営できる 大変 収入が不安定 初期投資が大きい 農業法人 会社型の農業 給料 社員の給料は 300万〜500万円前後 良い 未経験から給料を もらって学べる 大変 法人ごとの待遇差 繁忙期は休みにくい 法人で給料をもらって学び、独立する道もある
経営体の数は農林水産省(2025年)。所得・給料は目安です
家族経営の農家・独立就農主業経営体の平均農業所得は約494万円(2024年)。作物や規模で大きく変わる

家族で農業を営む形は今も日本の農業の中心で、2025年の農業経営体約83.6万のうち約79.6万が個人経営体です(農林水産省)。自分で作るものや売り方を決められる自由がある一方で、天候や相場による収入の変動を自分で受け止める必要があります。新しく始める人は、国の資金支援や研修制度を使うことが多いです。

良いところ自分の判断で経営できる、自然の中で働ける

大変なところ収入が不安定、農地や機械の初期投資が大きい

農業法人(会社型の農業)300万〜500万円前後が多い(法人によって差が大きい)

会社として農業を行う形で、法人経営体は2025年に約3.4万と、2020年より10.1%増えています(農林水産省)。社員として給料をもらいながら農業の技術を学べ、休日や社会保険も会社員と同じように整っているところが増えています。大規模なハウスや、加工・販売まで手がける法人もあります。

良いところ未経験から給料をもらって学べる、独立の準備ができる

大変なところ法人ごとの待遇差が大きく、繁忙期は休みがとりにくい

JA・農林系の団体地域のJAで30代400万〜550万円前後が目安。全国組織は高め

地域のJAや、全国組織の全農、農林中央金庫などで働く形です。農家を支える立場で、金融、販売、指導などさまざまな仕事を経験します。地域のJAは転勤が地元の中に限られることが多く、地元で働きたい人に選ばれています。

良いところ地域に根ざして働ける、安定している

大変なところ農家の高齢化と減少で事業の見直しが進んでいる

食品メーカー・水産会社大手で単体平均780万〜900万円前後(有価証券報告書)

冷凍食品、小麦粉、調味料、飲料、水産加工品などを作る会社です。ニッスイやUmios、日清製粉グループ、カゴメなどの大手があります。研究、生産、品質管理、営業、マーケティングなどの職種があり、農業や水産業と消費者をつなぐ役割を果たします。

良いところ待遇が安定している、商品が身近

大変なところ原料価格や為替の変動の影響を受けやすい

農機・種苗・資材メーカー、スマート農業ベンチャー大手で単体平均700万〜830万円前後(クボタ825万円、サカタのタネ729万円)

クボタやヤンマーなどの農機メーカー、サカタのタネやタキイ種苗などの種苗会社、肥料・農薬メーカー、ドローンやセンサーを開発するベンチャーなどです。農家を道具と技術で支える立場で、海外での売上が大きい会社も多くあります。

良いところ技術で農業の課題を解決できる、海外で働くチャンスがある

大変なところ農家の数が減る国内市場では、海外や新技術での成長が求められる

代表的な会社・職場

農協の全国組織農林水産業の金融機関農業機械メーカー大手農業機械・エンジンメーカー種苗会社大手水産・食品会社製粉・食品メーカー食品メーカー(野菜加工)国の研究機関(国立研究開発法人)農業法人市場・流通
JA全農(全国農業協同組合連合会) ›農協の全国組織

全国のJAから集めた米や野菜、畜産物の販売と、肥料・農薬・飼料などの仕入れを全国規模で行っています。

協同組合のため有報の開示なし
農林中央金庫 ›農林水産業の金融機関

JAバンクやJFマリンバンクの中心となる金融機関で、農林水産業者への融資や、集まったお金の運用をしています。

有報の開示なし(金融機関として高い水準とされる)
クボタ ›農業機械メーカー大手

トラクターやコンバイン、田植え機を作る世界有数の農機メーカーで、水道管などの水環境の事業も手がけています。売上の多くは海外です。

単体平均825万円(平均39.9歳、2025年12月期)
ヤンマーホールディングス ›農業機械・エンジンメーカー

トラクターやコンバイン、船や建設機械のエンジンを作っています。

非上場のため有報の開示なし
サカタのタネ種苗会社

野菜や花の種を開発・販売しています。ブロッコリーなどの種は世界の多くの国で使われています。

単体平均729万円(平均39.3歳、2026年5月期)
ニッスイ ›大手水産・食品会社

魚の漁獲や養殖、買い付けから、冷凍食品、ちくわなどの加工食品まで幅広く手がけています。

単体平均836万円(平均43.1歳、2025年3月期)
Umios(旧マルハニチロ)大手水産・食品会社

2026年にマルハニチロから社名を変えた水産・食品の大手で、水産物の調達や養殖、冷凍食品、缶詰などを手がけています。

単体平均783万円(平均41.0歳、2026年3月期)
日清製粉グループ本社 ›製粉・食品メーカー

輸入した小麦を小麦粉にする製粉の最大手で、パスタや冷凍食品なども作っています。

単体平均898万円(平均42.0歳、2026年3月期、持株会社)
カゴメ ›食品メーカー(野菜加工)

トマトケチャップや野菜ジュースのメーカーで、契約農家とのトマト栽培や、自社の農場も持っています。

単体平均892万円(平均42.1歳、2025年12月期)
農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)国の研究機関(国立研究開発法人)

新しい品種や栽培技術、スマート農業、食品の研究をしている国の研究機関です。多くの米や果物の品種を生み出してきました。

独立行政法人の給与水準として公表
大手農業法人(全国各地)農業法人

大規模なハウス栽培、米の大規模経営、畜産、加工・販売までを一体で行う会社型の農場です。地域ごとに有力な法人があります。

法人ごとに差が大きい
卸売市場の卸売会社(豊洲市場など)市場・流通

全国から集まる野菜や魚を競りや取引でスーパーや仲卸に売る会社です。東京の豊洲市場や大田市場などで営業しています。

会社ごとに異なる

›がついた会社は、会社図鑑で詳しく解説しています。

どうやって稼いでいる?

生産者 農家・漁師 残りを受け取る 食べ物 お金 JA・集荷団体 作物を集めて出荷 取り分 食品メーカー 加工して価値を上げる 取り分 卸・市場 全国へ運ぶ・小分け 取り分 小売店 スーパーなど 取り分 消費者 店で代金を払う 生産者の収入を支える・ふやす 国の支え 補助金・交付金 収入保険 直接売る 直売所・ネット通販 輸出・観光農園 途中で取り分が引かれ、生産者に届くのは一部
国の補助金や収入保険のほか、直売や輸出で手元に残るお金をふやす動きもあります

食べ物のビジネスは、「生産」「流通」「加工」「販売」の段階を通ってお金が流れます。消費者がスーパーで払ったお金は、小売店、卸や市場、食品メーカー、JAなどの集荷団体を経て、最後に農家や漁師に届きます。それぞれの段階が手数料や利益を受け取るため、たとえば野菜の店頭価格のうち生産者に届くのは一部です。生産者の側から見ると、収入は作物を売った代金が中心ですが、天候や相場で毎年大きく変わるため、国の補助金や収入保険などの仕組みが支えています。食品メーカーや農機メーカーは、原料や部品を仕入れて加工した製品を売る、一般的なメーカーと同じビジネスです。最近は、生産者がネットや直売所で直接売る、海外に輸出する、加工して付加価値をつけるといった方法で、より多くのお金を手元に残そうとする動きが広がっています。

1
農産物・水産物の販売代金

生産者の最も基本的な収入です。JAや市場を通して出荷する方法と、スーパーや外食、消費者に直接売る方法があります。たとえば、市場で競りにかけるとその日の需要と供給で値段が決まるため、豊作の年は値段が下がることもあります。

2
流通の手数料・マージン

JA、卸売市場の会社、仲卸、食品卸、小売店などが、それぞれの段階で手数料や利益(マージン)を受け取ります。冷蔵トラックで運ぶ、小分けにする、売り場に並べるといった手間の対価です。

3
食品・加工品の販売

食品メーカーは、小麦や大豆、魚、野菜などの原料を加工し、冷凍食品、調味料、パン、ジュースなどにして売ります。原料を加工することで価値が上がり、長く保存できるようになります。原料の多くを輸入に頼る会社では、為替や国際価格の影響を大きく受けます。

4
農業機械・資材の販売

農機メーカーや肥料・農薬の会社は、農家や農業法人に機械や資材を売ります。トラクターなどの高価な機械は、販売後の修理や部品の交換も継続的な収入になります。クボタのように売上の多くを海外で上げる会社もあります。

5
国の補助金・交付金・保険

農業は天候に左右され、国の食料の安定にもかかわるため、国がさまざまな形で支援しています。たとえば、新しく農業を始める人への資金の支援、麦や大豆などを作る農家への交付金、自然災害や値下がりで収入が減ったときに補う収入保険などです。

6
輸出・直販・観光

海外への輸出、ネット通販や直売所での直接販売、いちご狩りなどの観光農園、農家レストランなど、新しい収入源が広がっています。水産物の輸出額は2025年に4,231億円と過去最高になりました(水産白書)。

入ってからどうなっていく?

1〜3年目現場で基本を覚える農業法人なら栽培や出荷の作業、食品メーカーなら工場、JAなら金融や営農の窓口など、それぞれの現場で仕事の基本を身につけます。季節ごとの作業を一巡することで、仕事の全体像が見えてきます。
4〜7年目担当を持って任される一つのハウスや作物の責任者、製造ラインの主任、担当エリアの営業などとして、自分で判断する場面が増えます。食品や農業に関係する資格を取る人もいます。
8〜15年目チームや農場をまとめる農場長、工場の課長、営業チームのリーダーなどとして、人を動かし、計画を立てる立場になります。大手企業では海外駐在や新規事業にかかわることもあります。
15〜25年目経営・管理の中心へ農業法人の役員、メーカーの工場長や部長、JAの支店長などになり、組織の方針を決めます。
転職・独立独立就農や6次産業化農業法人や研修先で経験を積んでから独立し、自分の農場を開く人がいます。とれた作物を加工・販売まで自分で行う6次産業化に挑戦したり、食品メーカーやスマート農業の会社に転職したりする人もいます。
50代〜地域と次の世代を支える農業経営者として規模を広げたり、地域の農地を引き受けたりします。後継者がいない農家から農場を引き継ぐ若者を育てる役割を担う人も多くいます。

お米が食卓に届くまでの1年

3〜4月 土づくりと種まき 田を耕し、苗を育てる 5月 田植え 田植え機で苗を植える 6〜8月 育てる 水の調整・草取り・防除 9〜10月 稲刈りと乾燥 刈り取って玄米にする 10〜11月 集荷と検査 JAなどが等級を決める 秋以降 精米・流通 卸が精米し、店や外食へ 販売と次の計画 お金が農家に戻る 次の年へ 代金の一部 1年の結果を見て、来年の品種や量を決める
お米が食卓に届くまでの1年の例
1
土づくりと種まき(3〜4月)

田んぼを耕して肥料を入れ、ハウスで苗を育てます。トラクターや肥料は農機メーカーや資材会社、JAから仕入れます。

2
田植え(5月)

田植え機で苗を植えます。大規模な農業法人では、GPSを使った自動運転の田植え機も使われています。

3
育てる(6〜8月)

水の量の調整、草取り、病気や害虫の防除をします。ドローンで農薬をまくなど、作業の機械化が進んでいます。

4
稲刈りと乾燥(9〜10月)

コンバインで刈り取り、乾燥機で水分を減らしてから、もみすりをして玄米にします。

5
集荷と検査(10〜11月)

JAや集荷業者が玄米を集め、品質を検査して等級を決めます。農家にはここで代金の一部が支払われます。

6
精米・流通(秋以降)

卸の会社が精米し、袋に詰めて、スーパーやコンビニ、外食チェーンに届けます。コンビニのおにぎりや冷凍のチャーハンになるお米もあります。

7
販売と次の年の計画

消費者が買ったお金が、小売、卸、JAを通って農家に戻ります。農家はその年の結果を見て、来年作る品種や量を決めます。

農業・水産・食料のある1日

5:30

(ハウスでトマトを育てる農業法人の社員の場合)出勤して、ハウスの温度や湿度、前日の生育データを確認します。

6:00

朝の収穫。気温が上がる前に、色づいたトマトを一つずつ手で収穫します。

8:30

選果場で大きさや傷を見て仕分けし、箱詰めして出荷の準備をします。

10:00

ハウス内の作業。伸びた茎を誘引し、不要な芽をとり、病気や害虫がいないか見回ります。

12:00

昼休み。暑い時期は休憩を長めにとります。

13:30

出荷先のスーパーや卸の担当者と電話で数量を調整します。

14:30

肥料や水の量の調整、センサーの点検、翌週の作業計画の打ち合わせ。

16:30

作業記録と生産データを入力して退勤。繁忙期は早朝や休日の作業が増え、食品メーカーや農機メーカーの社員は一般的な会社と同じ時間帯で働きます。

もっと知りたい人へ

そもそも農業・水産・食料業界とは

農業・水産・食料業界は、人が生きるために欠かせない食べ物を作り、届ける業界です。農林水産省によると、2024年の農業総産出額は10兆7,801億円で、それまで9兆円前後で推移していた額から大きく増えました。米や野菜の値段が上がったことが主な理由です。水産業では、2024年の漁業・養殖業の生産額が約1兆6,297億円です(水産白書)。さらに、その先の食品メーカー、卸、小売、外食まで含めると、食べ物にかかわる産業はとても大きな規模になります。一方で、日本の食料自給率は2025年度でカロリーベース37%と低く、小麦や大豆、飼料の多くを輸入に頼っています。

食べ物の「川上・川中・川下」

食べ物の流れは川にたとえられます。川上は農家や漁師などの生産者と、種や肥料、農機を作る会社です。川中は、JAや市場、卸、食品メーカーなどの集める・運ぶ・加工する会社です。川下はスーパーやコンビニ、外食チェーンなど、消費者に売るお店です。この業界ページでは、主に川上と川中の会社を扱います。

食料自給率とは

食料自給率は、国内で食べている食料のうち、どれだけを国内で作っているかを示す数字です。2025年度はカロリーベースで37%、金額で見た生産額ベースで66%でした(農林水産省)。たとえば、ご飯はほぼ国産ですが、パンや麺の原料の小麦、豆腐や醤油の原料の大豆、牛や豚が食べる飼料の多くは輸入です。

農地と担い手の変化

日本の農地は2024年に427万ヘクタールで、ピークだった1961年の約609万ヘクタールから3割以上減りました。農業経営体の数も2020年の約108万から2025年には約84万に減っています。その一方で、1経営体あたりの規模は大きくなり、会社として農業を行う法人が増えています。

農業の担い手の変化と農業法人

日本の農業は、長く家族経営が中心でした。しかし、農林水産省のデータでは、ふだん仕事として主に農業に従事している基幹的農業従事者は、2000年の240万人から2025年には104万人に減り、平均年齢は67.7歳、65歳以上が約7割を占めています。49歳以下はわずか13万人です。このままでは田んぼや畑を引き継ぐ人がいなくなるため、地域の農地をまとめて引き受ける大規模な農業法人や、会社員として農業をする人が増えています。2025年の農業の雇用者は約54万人で、新たに農業法人などに雇われて就農した人は2023年に約9,300人でした。

新しく農業を始める人

2023年に新しく農業を始めた人は約4万3,500人で、そのうち49歳以下は約1万5,900人でした。実家の農業を継ぐ人が多いですが、農業法人に就職する人や、土地や資金を自分で用意して新しく始める人もいます。道府県の農業大学校を2024年度に卒業した人のうち、約半分が農業の道に進んでいます。

外国人の働き手

人手不足を補うため、外国人の働き手も増えています。2025年に農業で働く外国人は約6万5千人で、特定技能という在留資格で農業に従事する人は2025年末に約3万9千人と、前年より約1万人増えました。農業法人では、外国人の仲間と一緒に働くことが珍しくなくなっています。

スマート農業

スマート農業は、ロボットやAI、ドローン、センサーなどを使って、少ない人数でも効率よく農業をする取り組みです。たとえば、自動で走るトラクター、空から農薬をまくドローン、ハウスの温度や水を自動で調整するシステムがあります。経験の浅い人でも、ベテランの技術をデータで学べるようになると期待されています。

お金の流れ:野菜1つの値段は誰に届く?

スーパーで売られている野菜1つの値段は、生産者だけでなく、運ぶ人、市場、卸、お店など多くの人に分けられます。たとえば、農家が出荷した野菜は、JAが集めて選別・箱詰めし、トラックで市場に運ばれ、卸売会社が競りで仲卸やスーパーに売り、スーパーが店に並べて消費者に売ります。それぞれの段階で、人件費、運送費、冷蔵の費用、お店の家賃などがかかるため、それらを足した分が店頭の価格になります。生産者が手元に残すお金を増やすため、直売所やネット通販で直接売る、自分で加工してジャムやジュースにする、レストランと直接契約するなどの工夫が広がっています。

相場で値段が決まる仕組み

野菜や魚の多くは、市場でその日の需要と供給によって値段が決まります。豊作で出荷が多い年は値段が下がり、台風や猛暑で不作の年は値段が上がります。たとえば、キャベツが豊作すぎると値段が下がり、出荷するほど赤字になってしまうこともあります。

契約栽培という安定の工夫

相場に左右されないよう、食品メーカーや外食チェーンと前もって値段と量を決めて作る契約栽培も広がっています。たとえば、ケチャップや野菜ジュースのメーカーは、契約農家と一緒にトマトを育てています。農家は収入の見通しが立ち、メーカーは安定して原料を確保できます。

国の支援と保険

農業は天候の影響を強く受けるため、国はさまざまな支援をしています。自然災害や価格の下落で収入が減ったときに補う収入保険、麦や大豆を作る農家への交付金、新しく農業を始める人への資金の支援などです。こうしたお金も、農家の経営を支える大切な収入になっています。

水産業のしくみ

水産業は、海や川で魚をとる漁業と、魚や貝、海藻を育てる養殖業、そしてとれた魚を加工して売る水産加工業などからなります。水産白書によると、2024年の漁業・養殖業の生産量は約364万トン、生産額は約1兆6,297億円で、そのうち海面漁業が8,915億円、海面養殖業が約6,077億円です。食用の魚介類の自給率は2024年度で52%(概算)です。海の環境の変化で、サンマやスルメイカのように漁獲が大きく減った魚もある一方、2025年の水産物の輸出額は4,231億円と過去最高になりました。

漁協と市場

漁師の多くは、地域の漁業協同組合(漁協)に入っています。漁協は、漁場の管理、とれた魚の販売、燃料や網の仕入れなどを行います。港の市場で競りにかけられた魚は、仲買人を通して全国の市場やスーパー、飲食店に届きます。

育てる漁業:養殖

とる量が減る中で、育てる漁業である養殖の役割が大きくなっています。たとえば、ブリ、マダイ、カキ、ホタテ、ノリは養殖が盛んで、近年は日本各地でサーモンの養殖も広がっています。マグロを卵から育てる完全養殖の技術は、日本の大学や企業が研究を重ねて実現しました。

大手水産会社の役割

ニッスイやUmiosのような大手水産会社は、世界中から魚を買い付け、冷凍して日本に運び、加工して冷凍食品や缶詰、練り製品にしています。自社の養殖場を持ち、えさの開発から出荷までを手がける会社もあります。

なるためのルート

この業界は入り口がとても多い業界です。農家や漁師として生産にかかわりたい人は、高校の農業科・水産科、道府県の農業大学校、大学の農学部や水産学部などで学び、農業法人や漁業会社に就職したり、研修を受けて独立したりします。食品メーカーや農機メーカー、種苗会社の研究・開発職は、農学部、水産学部、理学部、工学部などの大学院修士卒が多いです。JAや食品会社の営業、事務、企画の仕事は学部を問わず採用されています。実家の農業を継ぐ人も、一度ほかの会社で働いてから戻るケースが少なくありません。

  1. 高校で興味の方向を決める生産の現場に進みたいなら農業科・水産科のある高校や普通科から農学系の進学、研究や開発に進みたいなら生物・化学をしっかり学びます。
  2. 進学先を選ぶ農業大学校、大学の農学部・水産学部・生命科学系、食品系の学科などから選びます。経営や流通に関心があれば経済学部や商学部からも入れます。
  3. 現場を体験する農業インターンシップや漁業体験、食品工場の見学、JAのインターンなどで実際の仕事に触れます。
  4. 就職または研修農業法人や食品メーカー、JA、農機メーカーなどに就職します。独立を目指す人は、先進的な農家や研修機関で1〜2年研修を受けます。
  5. 独立や専門性の深化国の就農支援制度を使って独立したり、企業の中で研究・生産・営業などの専門性を深めたりします。
農業大学校という選択肢

農業大学校は、多くの道府県が設けている、農業を実践的に学ぶ学校です。高校卒業後に2年ほど通い、栽培や畜産の実習、農業経営の基礎を学びます。2024年度の卒業生のうち約半数が就農し、農業法人などに雇われて就農する人も約3割いました。

未経験から農業法人へ

大学で農業を学んでいなくても、農業法人に就職して一から技術を身につける人も多くいます。まずは農業のアルバイトやインターンシップ、短期の農業体験に参加して、自分に合うかを確かめるのがおすすめです。

試験・選考の詳細

農業や漁業を始めるのに必須の国家資格はありません。ただし、仕事の内容によって必要な免許や役に立つ資格があります。たとえば、トラクターで公道を走るには大型特殊自動車免許、農薬を販売するには毒物劇物取扱者などの資格が必要な場面があり、漁船を操縦するには小型船舶操縦士などの免許が必要です。食品メーカーの品質管理では食品衛生管理者や食品衛生責任者、農業法人の経営では日本農業技術検定や簿記の知識が役立ちます。企業への就職では、一般的なエントリーシート、適性検査、面接が中心で、研究職では大学での研究内容のプレゼンテーションが選考に入ります。

独立就農の計画づくり

新しく独立して農業を始め、国の支援を受ける場合は、市町村に就農の計画を出して認定を受けるのが一般的です。何を、どれだけの面積で育て、いくら売り上げて生活するのかを具体的に書きます。2024年度には、この認定を受けた新規就農者が10,954経営体ありました。

企業の選考で見られるところ

食品メーカーや農機メーカーでは、食や農業への関心と、自分の経験をどう仕事に生かせるかが見られます。研究職では、大学での研究テーマをわかりやすく説明できるかが重要です。JAでは、地域に貢献したい気持ちや、人と信頼関係を作る力が重視されます。

年収のリアル

この業界の年収は、どこで働くかによって大きく異なります。大手の食品メーカーや農機メーカーの単体平均年間給与は、クボタ825万円、ニッスイ836万円、カゴメ892万円など、全業種の平均(国税庁「民間給与実態統計調査」令和7年分で487万円)を大きく上回ります。一方、農業法人の社員は300万〜500万円前後が多く、独立した農家の収入は作物や規模によって大きく変わります。農林水産省によると、2024年の全農業経営体の1経営体当たり農業所得は168万6千円ですが、これには副業的な小さな農家も含まれていて、農業を主な仕事にしている主業経営体では494万2千円です。

稼ぐ農家は何が違うのか

同じ農業でも、高い値段で売れる作物(イチゴやブドウ、高級な果物など)を育てる、規模を大きくして効率を上げる、加工や直販で利益を増やす、といった工夫で、会社員以上の収入を得る経営者もいます。一方で、設備や機械への投資が大きく、借金を返しながら経営することも多いため、売上だけでなく利益とお金の流れを管理する力が欠かせません。

値段の変動と収入

米や野菜の値段は年によって大きく変わります。2024年は米や野菜の値段が上がったため、生産農業所得は前年より20.5%増えて約3兆9,649億円になりました。逆に、豊作で値段が下がる年や、肥料や燃料の値段が上がる年は、収入が大きく減ることもあります。

やりがい

自分が育てたものや作ったものが、人の口に入り「おいしい」と言ってもらえることが、この業界の最大のやりがいです。農業や漁業では、季節の移り変わりの中で、自然と向き合いながら仕事ができます。食品メーカーでは、自分が開発や製造にかかわった商品がスーパーやコンビニに並びます。人口が減る中で日本の食をどう守るかという大きな課題に、技術や経営の工夫で挑戦できることも魅力です。

成果が目に見える

種をまいてから収穫するまで、自分の判断や工夫の結果が作物の育ち方や味としてはっきり表れます。うまくいかなかった年の反省を次の年に生かし、少しずつ良いものを作れるようになる手ごたえがあります。

地域を元気にできる

農業や漁業は地域の産業そのものです。新しい特産品を作ったり、耕す人のいなくなった田んぼを引き受けたりすることで、地域の景色や暮らしを守ることにもつながります。

大変なこと・きついこと

農業や漁業は自然が相手なので、天候や災害で努力が無駄になることがあります。台風で収穫前の作物が倒れたり、猛暑で品質が落ちたり、海水温の変化で魚がとれなくなったりします。夏の暑さや冬の寒さの中での作業、早朝からの仕事、繁忙期の長時間労働など、体力的にきつい面もあります。また、独立した場合は収入が不安定で、機械や設備の借金を抱えることもあります。食品メーカーでは、原料の値段や為替の変動によって利益が大きく変わり、値上げをするか自社で吸収するかの難しい判断が求められます。

生き物を扱う責任

作物や家畜、魚は毎日世話が必要で、休みの日でも様子を見に行かなければならないことがあります。家畜の病気が広がると、多くの家畜を処分しなければならないなど、精神的につらい場面もあります。

食の安全を守る重さ

食品メーカーでは、一つのミスが多くの人の健康にかかわります。異物の混入や表示の間違いがあれば、製品を回収することになり、会社の信頼にも大きな影響が出ます。

向いている人

食べ物や自然、生き物に興味がある人に向いています。農業や漁業の現場では、体を動かすことが好きな人、天候や作物の変化をこまめに観察できる人、失敗してもあきらめずに工夫を続けられる人が活躍しています。最近の農業は経営やデータ分析の力も重要なので、数字やITが得意な人にもチャンスが広がっています。食品メーカーや農機メーカーでは、ものづくりや科学が好きな人、食の安全や品質にこだわれる人が向いています。

向いている人の特徴

すぐに結果が出なくても長い目で取り組める人、地域の人や取引先と信頼関係を築ける人は、この業界で長く活躍できます。また、新しい技術や売り方を取り入れることに前向きな人は、変化の大きい今の農業で大きな力を発揮します。

気をつけたいこと

自然の中での仕事にあこがれて入ったものの、早朝の作業や体力的な負担、収入の不安定さにギャップを感じる人もいます。まずは短期間の農業体験やアルバイトで、実際の働き方を確かめておくと安心です。

高校生のうちにできること

まず、身近な食べ物がどこから来ているのかを調べてみましょう。スーパーで野菜や魚の産地表示を見て、なぜその季節にその地域のものが並ぶのかを考えるだけでも、業界の仕組みが見えてきます。家庭菜園やプランターで野菜を育ててみると、天候や水の管理の難しさを実感できます。学校の農業体験や、地域の農家の手伝い、食品工場の見学なども良い機会です。理系に進む人は生物と化学、経営や流通に関心がある人は地理や政治・経済をしっかり学んでおくと役立ちます。

夏休みに体験してみる

各地の自治体やJA、農業法人では、高校生や大学生向けの農業体験やインターンシップを行っていることがあります。数日でも農作業を体験すると、仕事の楽しさと大変さの両方がわかります。

ニュースで食と農を追う

米の値段、食料自給率、スマート農業、輸出、海の環境の変化による不漁などのニュースは、この業界の今を知る手がかりになります。農林水産省のホームページには、中高生向けにわかりやすくまとめた資料もあります。

代表的な会社・職場

この業界の職場は、全国各地の農家や農業法人、漁協や漁業会社から、JAグループ、食品メーカー、水産会社、農機メーカー、種苗会社、市場や食品卸まで、とても幅広くあります。上場企業では、クボタ、ニッスイ、Umios、日清製粉グループ本社、カゴメ、サカタのタネなどが代表的です。JA全農や農林中央金庫のように、協同組合の仕組みで動く大きな組織もあります。地方には、その地域を代表する農業法人や食品メーカーも多く、地元で働きたい人の選択肢になっています。

協同組合という形

JAや漁協は、株式会社ではなく協同組合という形の組織です。株主の利益のためではなく、組合員である農家や漁師の利益のために活動するのが特徴です。地域のJA、都道府県の連合会、全国の連合会という段階に分かれて役割を分担しています。

国や県の研究機関

農研機構のような国の研究機関や、各都道府県の農業試験場、水産試験場では、新しい品種や栽培技術、養殖技術を研究しています。都道府県の職員として採用される場合は、公務員試験を受けることになります。

これからの農業・水産・食料

この業界は、人手不足、気候変動、世界の食料事情の変化という大きな課題に向き合っています。担い手が減る中で、農地をまとめて大規模に経営する法人や、ロボットやAIを使うスマート農業がますます重要になります。気温の上昇によって、作物の品種や産地が変わったり、とれる魚の種類が変わったりしています。一方で、日本の食べ物は海外で人気が高く、水産物の輸出額は2025年に過去最高の4,231億円になりました。食料を安定して確保することは国の大きな課題でもあり、新しい技術と経営の力を持った人材が求められています。

気候変動への対応

猛暑で米が白く濁る、果物の色づきが悪くなるといった影響が出ています。暑さに強い品種の開発や、育てる時期の工夫、北の地域での新しい産地づくりなどが進んでいます。

食の新しい技術

植物由来の代替肉、細胞を育てて作る培養肉、陸上のタンクで魚を育てる陸上養殖など、食べ物の作り方そのものを変える技術の研究も進んでいます。こうした分野では、生物、化学、工学などの知識を持った人が活躍しています。

よくある質問

農家の家に生まれていなくても農業の仕事に就けますか?

就けます。最近は農業法人に社員として就職する人や、研修を受けて独立する人が増えています。2023年には約9,300人が農業法人などに雇われる形で新しく就農しました。

農業をするのに資格は必要ですか?

農業そのものを始めるのに必須の資格はありません。ただし、トラクターで公道を走るには大型特殊自動車免許が必要になるなど、仕事によっては免許が必要です。独立して国の支援を受けるには、市町村に就農計画を出して認定を受けるのが一般的です。

農学部に行かないと食品メーカーには入れませんか?

いいえ。研究や開発の職種では農学部や理学部、工学部の出身者が多いですが、営業、マーケティング、事務などの職種は学部を問わず採用されています。

農業は儲からないと聞きますが本当ですか?

経営によって大きく違います。2024年の主業経営体の平均農業所得は約494万円ですが、高く売れる作物を育てたり、規模を大きくしたり、加工や直販に取り組んだりして、より多くの利益を上げる経営者もいます。一方で、天候や相場で赤字になる年があるのも事実です。

JAとはどんなところですか?

JAは農業協同組合のことで、農家が集まって作った組織です。作物の販売、肥料や農機の仕入れ、貯金や融資、共済(保険)など、農家の仕事と暮らしを幅広く支えています。地域のJAのほか、全国組織の全農や農林中央金庫があります。

スマート農業とは何ですか?

ロボット、AI、ドローン、センサーなどの技術を使って、農作業を楽にしたり、収穫量や品質を上げたりする取り組みです。たとえば、自動で走るトラクターや、スマホでハウスの温度を管理するシステムがあります。

漁師になるにはどうすればいいですか?

地域の漁協や漁業会社で働きながら技術を学ぶのが一般的です。各地で漁業の研修制度や就業フェアが行われていて、未経験から始める人もいます。船を操縦するには小型船舶操縦士などの免許が必要です。

理系と文系、どちらが向いていますか?

どちらも活躍できます。品種開発や食品の研究、農機の設計は理系の知識が必要ですが、農業経営、流通、営業、マーケティングは文系の出身者も多く働いています。

日本の食料自給率はなぜ低いのですか?

パンや麺の原料の小麦、豆腐の原料の大豆、家畜のえさとなるトウモロコシなどの多くを輸入に頼っているためです。2025年度のカロリーベースの食料自給率は37%でした。

この分野のことば

年収について:有価証券報告書(単体)の平均年間給与の目安。クボタ825万円(平均39.9歳、2025年12月期)、ニッスイ836万円(平均43.1歳、2025年3月期)、Umios(旧マルハニチロ)783万円(平均41.0歳、2026年3月期)、日清製粉グループ本社898万円(2026年3月期、持株会社)、カゴメ892万円(平均42.1歳、2025年12月期)、サカタのタネ729万円(平均39.3歳、2026年5月期)。農林水産省「農業経営統計調査」によると、2024年の主業経営体(農業が主な収入の家)の1経営体当たり農業所得は494万2千円です。農業法人の社員の給料は法人ごとの差が大きく、まとまった公的統計はありません。

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