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ガソリンスタンドの裏側には、地球の反対側の油田と巨大なタンカーがある

エネルギー(石油・再生可能エネルギー)

エネルギー業界は、石油や天然ガスを掘り出して運び、ガソリンや電気に変えて届ける会社と、太陽光や風力などの再生可能エネルギーで電気を作る会社の集まりです。たとえば、車に入れるガソリン、飛行機の燃料、ビニールやペットボトルの原料になるナフサ、火力発電所で燃やすLNG(液化天然ガス)、家の屋根の太陽光パネルや海に立つ風車までが、この業界の守備範囲です。日本は一次エネルギーの自給率が2023年度で15.3%と低く、原油の99.7%を海外から輸入し、そのうち約95%を中東に頼っています(資源エネルギー庁)。化石燃料の輸入額は2023年に約26兆円にもなります。一方で、国は2025年2月に第7次エネルギー基本計画を決め、2040年度に電気の4〜5割を再生可能エネルギーでまかなう見通しを示しました。石油の会社は脱炭素への対応、再エネの会社は急成長と競争という、大きな変化のまっただ中にある業界です。

平均年収の目安約900万〜1,200万円大手の単体平均ガソリンスタンドや中小の販売会社で300万〜500万円前後、大手の元売り・開発会社で900万〜1,200万円前後
なるまでの難しさ★★★★★大手の石油元売り、資源開発会社、発電会社は待遇がよく、少ない採用人数に応募が集まるため倍率が高いです。技術職は化学・機械・電気・資源工学などの大学院修士卒が中心です。一方、ガソリンスタンドの運営会社や再エネの施工会社などは門が比較的広く、業界全体では入り口がいくつもあります。
決めどき文系・理系どちらでも

理系は大学3年〜修士1年で研究室と専攻を決めるとき。文系は大学3年のインターンシップ期。資源開発を目指すなら学部選び(資源工学・地球科学)の時点から

エネルギー(石油・再生可能エネルギー)の業界マップ

原油からガソリンなどをつくって売る石油元売りと、石油・天然ガスを掘る会社やガスを扱う会社に分かれます。

資源開発・ガス

石油・天然ガスを掘り、ガスを届けます

となりの業界

押すと、会社図鑑でその会社のくわしい解説が見られます。

どんな職種がある?

押すと、その職種の仕事内容・必要な力・キャリアが見られます。

エネルギー(石油・再生可能エネルギー)の年収と昇進の流れ

担当者(一般職)450〜650万円
入社1〜4年、22〜28歳

現場や支店で担当業務を覚えます。装置や営業エリアを一人で任されるようになると、次の段階に進みます。

主任・係長650〜900万円
入社5〜10年、28〜33歳

工事や営業、プロジェクトのリーダーとして後輩をまとめます。海外駐在を経験する人も多い時期です。

課長(管理職)900〜1,200万円
入社10〜15年、33〜40歳

部署やプロジェクトの責任者として、予算と人を管理します。大手では管理職になると年収1,000万円を超えることが多いです。

部長・所長1,200〜1,600万円
入社15〜25年、40〜50歳

製油所長、発電所長、事業部長などとして、大型投資や安全の最終判断を担います。

執行役員・取締役1,600〜3,000万円
50歳〜

会社全体の経営と、石油から脱炭素への事業転換の方針を決めます。報酬は会社と業績によって大きく変わります。

年収は目安です。会社や地域、本人の働き方で大きく変わります。

働き方で何が違う?

石油元売り(精製・販売)単体平均約1,000万〜1,200万円(有価証券報告書)

原油を輸入して製油所で精製し、ガソリンや灯油、軽油、ジェット燃料などをガソリンスタンドや企業に販売する会社です。ENEOS、出光興産、コスモエネルギーの3つのグループが国内の大手です。石油化学や電力、再エネ、金属などの事業も持ち、「総合エネルギー企業」への転換を進めています。

良いところ給与水準が高く、事業の幅が広い

大変なところ国内のガソリン需要は減少傾向で、脱炭素への対応が大きな課題

資源開発(上流)単体平均約1,000万〜1,200万円(INPEX 1,168万円、石油資源開発1,032万円)

海外や国内で石油や天然ガスを探し、掘り出して販売する会社です。INPEXや石油資源開発が代表的です。プロジェクトは数十年単位で、海外勤務の機会が多いのが特徴です。最近はCCSや地熱、水素などの新しい事業にも取り組んでいます。

良いところ国のエネルギー安全保障を支える、海外で大規模な仕事ができる

大変なところ資源価格の変動で業績が大きく揺れる、海外の過酷な環境での勤務もある

発電会社・電力会社単体平均約880万〜950万円(関西電力939万円、JERA 925万円など)

LNGや石炭、原子力、再エネで電気を作り、送り、売る会社です。東京電力と中部電力の火力発電などを統合したJERAは国内の発電電力量の約3割を担う日本最大の発電会社です。電力会社については「鉄道・電力・ガス」のページでも詳しく紹介しています。

良いところ社会に欠かせない電気を支える、安定性が高い

大変なところ燃料価格や国の政策の影響を大きく受ける、トラブル時は昼夜を問わず対応

再生可能エネルギーの専門会社会社によって幅が大きい(レノバ単体平均1,086万円)

太陽光、風力、バイオマス、地熱などの発電所を開発・運営する会社です。レノバのような専門企業のほか、商社や外資系の会社も多く参入しています。成長分野ですが、建設費の上昇や地域との調整など難しさもあり、2025年8月には三菱商事が秋田県と千葉県沖の洋上風力発電の計画から撤退すると発表しました。

良いところ脱炭素という大きな流れの最前線で働ける、成長の余地が大きい

大変なところ事業の成否が政策や金利、建設費に左右される、会社による安定性の差が大きい

ガソリンスタンド運営・燃料販売会社300万〜500万円前後が多い

地域でガソリンスタンドを運営したり、灯油や軽油、重油を配達したりする会社です。大手元売りのブランドを掲げた特約店が多くあります。地元に根ざした仕事で、車のサービスや生活支援など、事業を広げる工夫が求められています。

良いところ地元で働ける、車や接客が好きな人に合う

大変なところガソリン需要の減少でスタンドの数は減り続けている

代表的な会社・職場

石油元売り最大手石油元売り大手資源開発最大手資源開発国内最大の発電会社旧一般電気事業者再エネ専業総合商社独立行政法人再エネ開発ガソリンスタンド運営
ENEOSホールディングス ›石油元売り最大手

国内最大の石油元売りグループで、ガソリンや灯油の販売、製油所の運営、石油化学、電力、再エネ、金属事業などを手がけています。

単体平均1,069万円(平均44歳、2025年3月期)
出光興産 ›石油元売り大手

2019年に昭和シェル石油と経営統合した石油元売りです。石油製品のほか、石油化学、電子材料、全固体電池の材料開発なども手がけています。

単体平均995万円(平均42歳、2026年3月期)
コスモエネルギーホールディングス石油元売り大手

石油の精製・販売に加え、陸上と洋上の風力発電事業に力を入れています。

単体平均1,188万円(2026年3月期、持株会社)
INPEX ›資源開発最大手

日本最大の石油・天然ガスの開発会社です。オーストラリアのイクシスLNGをはじめ世界各地で事業を行い、水素やCCSにも取り組んでいます。

単体平均1,168万円(平均39.4歳、2024年12月期)
石油資源開発(JAPEX)資源開発

国内の油田・ガス田やパイプラインを運営し、海外の資源開発やCCSにも取り組んでいます。

単体平均1,032万円(平均40.1歳、2025年3月期)
JERA ›国内最大の発電会社

2015年に東京電力と中部電力が共同で作った会社で、国内の発電電力量の約3割を担っています。世界有数のLNGの取扱量を持ち、アンモニアを混ぜて燃やす技術の開発も進めています。

平均925万円(平均43.8歳、2025年3月期)
関西電力・中部電力・東京電力HDなどの大手電力会社旧一般電気事業者

地域ごとに発電・送配電・小売を担ってきた電力会社です。原子力発電所を持つ会社も多くあります。

単体平均883万〜945万円(2026年3月期)
レノバ再エネ専業

太陽光、バイオマス、風力、地熱などの再エネ発電所を開発・運営する専門企業です。

単体平均1,086万円(平均42.1歳、2026年3月期)
大手総合商社のエネルギー部門総合商社

三菱商事、三井物産などは、海外のLNGプロジェクトへの投資や、再エネ発電所の開発、燃料のトレーディングを行っています。

商社のページを参照(いずれも高い水準)
JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)独立行政法人

日本企業の資源開発を資金や技術で支え、国の石油備蓄も管理している国の機関です。

独立行政法人の給与水準として公表
ユーラスエナジー・JREなどの再エネ開発会社再エネ開発

国内外で風力や太陽光の発電所を開発・運営しています。商社や電力会社、投資ファンドが出資している会社が多いです。

非上場の会社が多く開示なし
地域の燃料販売会社(特約店)ガソリンスタンド運営

元売りのブランドでガソリンスタンドを運営し、灯油や軽油の配達も行う地域密着の会社です。

会社ごとに異なる

›がついた会社は、会社図鑑で詳しく解説しています。

どうやって稼いでいる?

上流 資源開発 油田やガス田で掘り、世界で売る 稼ぎ:国際価格しだいで大きく上下 原油・ガス 中流 運ぶ・精製・発電 タンカー・製油所・発電所 稼ぎ:仕入れと売値の差(マージン) ガソリン・電気 下流 届ける ガソリンスタンド・電気の小売 稼ぎ:ガソリン代・毎月の電気代 再エネは、つくるときにお金がかかる 燃料費はかからない 建設費 電気の売上で少しずつ回収 約20年 掘る・運ぶ・届ける、段階ごとに稼ぎ方がちがう
再エネの買い取り費用の一部は、電気代に上乗せされる再エネ賦課金(2025年度は1kWhあたり3.98円)でまかなわれます

エネルギー業界のお金の流れは、大きく「上流」「中流」「下流」に分けて考えるとわかりやすいです。上流は石油や天然ガスを掘り出す資源開発で、掘った資源を世界の市場で売って稼ぎます。原油の国際価格が上がると大きく儲かり、下がると利益が減る、値段に左右されやすいビジネスです。中流は、タンカーで運び、製油所で精製し、LNGを受け入れて発電所で電気に変える部分です。下流は、ガソリンスタンドや電気の小売で消費者に届ける部分です。石油元売りは原油を仕入れて製品を売る「差額」(マージン)で稼ぎ、発電会社は燃料費と電気の売値の差で稼ぎます。再生可能エネルギーの会社は燃料費がかからない代わりに、発電所を作るときに大きなお金がかかり、それを20年ほどかけて電気の売上で回収するビジネスです。

1
資源の販売(上流)

海外の油田やガス田で生産した原油や天然ガスを、世界の市場や電力会社に売ります。たとえば、INPEXはオーストラリアのイクシスLNGプロジェクトなどで生産したLNGを日本やアジアの電力・ガス会社に販売しています。国際価格によって利益が大きく変わります。

2
石油製品の販売マージン(中流・下流)

石油元売りは、輸入した原油を製油所でガソリン、灯油、軽油、ジェット燃料、ナフサなどにして売り、原油の仕入れ値と製品の売値の差で稼ぎます。ガソリンの値段には、原油代のほかにガソリン税や消費税などの税金が大きく含まれています。

3
電気の販売(発電・小売)

発電会社は、LNGや石炭、再エネで作った電気を電力会社や卸電力取引所に売ります。小売の会社はその電気を家庭や企業に売り、毎月の電気代として受け取ります。燃料の値段が上がると、燃料費調整という仕組みで電気代にも反映されます。

4
再エネの売電収入(FIT・FIP)

再生可能エネルギーで作った電気は、国の制度で一定の価格や上乗せ額で長期間買い取られます。この買い取りの費用の一部は、家庭や企業の電気代に上乗せされる「再エネ賦課金」でまかなわれ、2025年度の単価は1kWhあたり3.98円です。たとえば月300kWh使う家庭では、月約1,200円を負担している計算になります。

5
化学品・素材の販売

石油元売りの多くは、ナフサからプラスチックや合成ゴム、合成繊維の原料を作る石油化学の事業も持っています。たとえば、ペットボトル、レジ袋、スマホのケース、車のバンパーの原料は、製油所や化学工場から生まれています。

6
新しいエネルギー・サービス

企業の屋根に太陽光パネルを置いて電気を売るPPA、EVの充電サービス、蓄電池を使った電力の調整、水素ステーションなど、新しい収入源の開発が進んでいます。まだ規模は小さいものの、将来の柱として各社が投資しています。

入ってからどうなっていく?

1〜3年目現場で仕組みを知る技術職は製油所や発電所、資源開発の解析部門に配属され、設備や地層の基礎を学びます。事務系は支店の営業や、製油所・発電所の総務、経理などから始めることが多いです。
4〜7年目担当を持ち、海外へ一つの装置や工事、営業エリア、プロジェクトの担当を任されます。資源開発や需給・トレーディングでは、この時期に海外駐在を経験する人も多いです。
8〜15年目プロジェクトとチームの中心に係長や課長として部署をまとめたり、数百億円規模のプロジェクトの中心メンバーになったりします。本社の経営企画や新エネルギー部門に移り、会社の将来の事業を考える人もいます。
15〜25年目事業の責任者へ部長や海外事業の責任者、製油所長、発電所長などとして、大きな投資や安全の最終判断を担います。
転職のパターン再エネ・商社・コンサルへエネルギーの知識と経験は、再エネの開発会社、商社のエネルギー部門、外資系のエネルギー企業、脱炭素を支援するコンサルティング会社などで求められています。石油から再エネへ、またはその逆の転職も見られます。
50代〜経営と技術の伝承役員として会社全体のエネルギー転換の方針を決めたり、技術の専門家として若手を育てたりします。業界団体や国の審議会で発言する立場になる人もいます。

原油がガソリンになってスタンドに届くまで

探鉱・生産 中東などの油田で掘る 買い付けとタンカー輸送 約20日かけて日本へ運ぶ 製油所で精製 熱して沸点の違いで分ける 油槽所へ出荷 内航タンカーやローリーで ガソリンスタンドへ ローリーで地下タンクへ 販売とお金の回収 税金を除き、スタンド・特約店・元売りへ ガソリン 灯油 軽油 ジェット燃料 ナフサ 重油 などに分かれる 売上で次の原油を買う 元売りは売上で次の原油を買い、流れが続く
ガソリンの値段には、原油代のほかに税金が大きく含まれています
1
探鉱・生産

中東などの油田で原油が掘り出されます。日本企業も海外の油田やガス田の権益を持ち、生産にかかわっています。

2
買い付けとタンカー輸送

元売りの需給担当が原油を買い付け、巨大なタンカーで約20日かけて日本に運びます。

3
製油所で精製

原油を加熱して沸点の違いで分け、ガソリン、灯油、軽油、ジェット燃料、ナフサ、重油などに精製します。硫黄分を取り除く処理もします。

4
油槽所へ出荷

できた製品は、内航タンカーやタンクローリーで全国の油槽所(中継の貯蔵基地)に運ばれます。

5
ガソリンスタンドへ配送

タンクローリーが各地のスタンドの地下タンクにガソリンを届けます。

6
販売とお金の回収

消費者が払ったガソリン代は、税金を除いてスタンド、特約店、元売りに分けられ、元売りはその売上で次の原油を買います。

エネルギー(石油・再生可能エネルギー)のある1日

8:30

(石油元売りの製油所で働く設備保全の技術者の場合)出社して、夜間の装置の運転記録と異常の有無を確認します。

9:00

朝の安全ミーティング。今日の工事の内容と危険なポイントを、協力会社の作業員と共有します。

10:00

装置の点検に同行し、配管の厚さの測定結果やポンプの振動のデータを確認します。

12:00

昼休み。製油所の食堂で同僚と昼食をとります。

13:00

来年の定期修理に向けた工事計画の打ち合わせ。予算と工期、必要な作業員の数を調整します。

15:00

腐食が見つかった配管の交換方法について、メーカーの担当者とオンライン会議をします。

16:30

点検結果の報告書を作り、法令で決められた記録を残します。

17:30

退社。トラブルが起きたときは呼び出しに対応することもあります。本社の需給担当は、海外の市場が開く夕方以降に価格を確認することもあります。

もっと知りたい人へ

そもそもエネルギー業界とは

エネルギー業界は、私たちの暮らしと産業を動かす「力のもと」を届ける業界です。エネルギーには、石油、天然ガス、石炭のような化石燃料と、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスのような再生可能エネルギー、そして原子力があります。資源エネルギー庁によると、日本の一次エネルギー自給率は2023年度で15.3%(2024年度は速報で16.4%)と低く、エネルギーの多くを輸入に頼っています。最終的にエネルギーを使っている割合は、2023年度で産業部門が45.4%、運輸部門が24.1%、業務部門(オフィスやお店)が15.6%、家庭部門が14.8%です。つまり、工場や車、トラックで使われるエネルギーが大きな割合を占めています。

一次エネルギーと二次エネルギー

一次エネルギーは、原油や天然ガス、石炭、太陽の光、風など、自然から取り出したままの形のエネルギーです。それを使いやすい形に変えたものが二次エネルギーで、ガソリンや灯油、電気、都市ガスなどがあります。たとえば、LNGを燃やして電気を作るのは、一次エネルギーを二次エネルギーに変える作業です。

日本がエネルギーを輸入に頼る理由

日本には大きな油田やガス田がほとんどなく、原油の99.7%を海外から輸入しています。そのうち約95%が中東からで、ホルムズ海峡など限られた海の道を通って運ばれます。そのため、中東の情勢が不安定になると、ガソリンや電気の値段がすぐに上がります。エネルギーを安定して確保することは、国の安全にかかわる大きな課題です。

化石燃料の輸入額

2023年の化石燃料の輸入額は約26兆円でした。これは日本が海外に払うお金のなかでもとても大きな額で、円安や国際価格の上昇が起きると、さらに増えます。再生可能エネルギーや原子力を増やすことは、二酸化炭素を減らすだけでなく、このお金の流出を減らす意味もあります。

石油の会社の上流・中流・下流

石油の会社の仕事は、川の流れにたとえて上流・中流・下流と呼ばれます。上流は資源を探して掘り出す探鉱・開発・生産です。中流は、原油を運び、製油所で精製する部分です。下流は、ガソリンスタンドや工場、空港などに製品を販売する部分です。日本の大手石油元売りは主に中流と下流を、INPEXや石油資源開発などの資源開発会社は主に上流を担っています。上流は原油価格が高いと大きく儲かり、中流・下流は仕入れ値と売値の差で稼ぐため、同じ石油業界でも、原油価格の動きに対する業績の反応が違います。

製油所で何が作られているか

原油からは、ガソリン、灯油、軽油、ジェット燃料、重油、LPガス、アスファルト、ナフサなど多くの製品が作られます。たとえば、道路の舗装に使うアスファルト、トラックやバスの軽油、ストーブの灯油、そしてプラスチックの原料になるナフサも、すべて同じ原油から生まれています。

元売りの統合の歴史

国内のガソリン需要が減る中で、石油元売りは合併や統合を重ねてきました。2017年にJXホールディングスと東燃ゼネラル石油が統合して現在のENEOSグループになり、2019年には出光興産と昭和シェル石油が経営統合しました。今は大手3グループが国内の多くのシェアを持っています。

ガソリンスタンドの変化

資源エネルギー庁によると、ガソリンスタンドの数は2022年度末で2万7,963か所と、2002年度の5万か所以上から4割以上減りました。車の燃費がよくなったこと、人口が減っていることなどが理由です。スタンドが3か所以下の市町村は「SS過疎地」と呼ばれ、2021年度末で348市町村ありました。

再生可能エネルギーのしくみと広がり

再生可能エネルギーは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど、使ってもなくならず、二酸化炭素をほとんど出さないエネルギーです。日本の発電電力量に占める再エネの割合は、2013年度の10.9%から2023年度には22.9%まで増えました。国は2025年2月に決めた第7次エネルギー基本計画で、2040年度の電源構成の見通しを再エネ4〜5割程度、原子力2割程度、火力3〜4割程度とし、太陽光を23〜29%、風力を4〜8%にする見通しを示しました。再エネを増やすことで、二酸化炭素を2013年度比で2035年度に60%、2040年度に73%減らす目標を掲げています。

FITとFIP

FIT(固定価格買取制度)は、再エネで作った電気を、国が決めた値段で長期間(太陽光なら多くが20年)電力会社が買い取る制度です。2012年に始まり、太陽光発電が一気に増えました。FIP(フィードインプレミアム)は2022年に始まった制度で、市場の値段に一定の上乗せ額をつけて売る仕組みです。どちらも、買い取りにかかる費用の一部は再エネ賦課金として電気代に上乗せされています。

洋上風力の可能性と難しさ

海の上に風車を立てる洋上風力は、日本が海に囲まれていることから大きな期待を集めています。一方で、建設に必要な船や部品の値段が上がり、事業の採算が合わなくなる例も出てきました。三菱商事は2025年8月、建設費が当初の2倍以上になったことなどを理由に、秋田県と千葉県沖の3つの海域の洋上風力計画から撤退すると発表しました。

太陽光の次の課題

太陽光は昼間しか発電できず、天気にも左右されます。そのため、晴れた昼間には電気が余り、夕方や夜には足りなくなることがあります。この差を埋めるため、電気をためる蓄電池や、余った電気で水素を作る技術、電気を遠くまで送る送電網の強化が重要になっています。

エネルギーのお金の流れ:ガソリン代と電気代の中身

私たちが払うガソリン代や電気代には、燃料そのものの値段だけでなく、さまざまな費用や税金が含まれています。ガソリンの値段には、原油の仕入れ代、精製と輸送の費用、元売りとスタンドの利益に加えて、ガソリン税、石油石炭税、消費税などの税金が含まれています。電気代には、発電にかかる燃料費、送電線を使う託送料金、小売の会社の費用と利益、燃料費調整額、再エネ賦課金などが含まれています。原油やLNGの国際価格、そして為替(円とドルの交換比率)が動くと、数か月遅れで私たちの支払う金額も変わります。

為替とエネルギー価格

原油やLNGはドルで取引されています。そのため、円安になると、同じ量の燃料を買うのにより多くの円が必要になります。たとえば、1ドル100円のときと150円のときでは、同じ1バレルの原油でも1.5倍の円を払うことになり、ガソリン代や電気代が上がります。

再エネ賦課金の仕組み

再エネ賦課金は、FITなどで再エネの電気を買い取る費用を、電気を使うすべての人で負担する仕組みです。2025年度の単価は1kWhあたり3.98円で、電気を多く使うほど負担も増えます。再エネの買い取り費用は全体で年4.8兆円規模にのぼるとされています。

元売りが稼ぐ仕組み

元売りの利益は、原油の仕入れ値と製品の売値の差(マージン)で決まります。また、原油の値段が上がると、前に安く買った在庫の価値が上がって利益が増え、下がると逆に損が出る「在庫評価」の影響もあります。そのため、元売りの業績は原油価格の動きで大きく変わります。

なるためのルート

エネルギー業界の技術職は、化学工学、機械工学、電気電子工学、資源工学、地球科学、土木工学などを学んだ理系の人が中心で、大手では大学院修士卒の採用が多いです。資源開発では、資源工学や地球科学(地質学)の専攻が特に求められます。事務系の職種(営業、需給、経理、法務、人事、経営企画など)は学部を問わず採用されており、経済学部、法学部、商学部、外国語学部などの出身者が多く働いています。海外とのやり取りが多いため、英語の力はどの職種でも役立ちます。

  1. 高校で理系・文系を選ぶ技術職を目指すなら数学と物理・化学をしっかり学び、理系に進みます。事務系を目指すなら文系でも問題ありません。
  2. 大学で専攻を選ぶ化学工学、機械、電気、資源・地球科学、土木、あるいは経済・法・国際関係などから選びます。
  3. 大学院(技術職の場合)大手の技術職では修士卒の採用が多く、研究室での研究テーマが仕事につながることもあります。
  4. インターンシップに参加する製油所や発電所の見学、資源開発会社や再エネ会社のインターンで、仕事の雰囲気を知ります。
  5. 就職と配属エントリーシートと面接、技術職では研究内容の説明を経て入社し、製油所、発電所、支店などに配属されます。
理系の専攻と仕事の対応

化学や化学工学は製油所の生産技術や新燃料の研究に、機械工学は設備保全やプラント設計に、電気工学は発電所や送電網、再エネの設備に、資源工学や地球科学は資源開発につながります。土木工学は、洋上風力の基礎や発電所の建設で活躍できます。

文系から目指す人

文系の人は、営業、需給・トレーディング、海外事業、経営企画などで活躍しています。エネルギーの価格や政策、国際情勢に興味を持ち、経済や国際関係を学んでおくと、仕事の理解が深まります。

試験・選考の詳細

エネルギー業界の就職そのものに必須の資格はありません。選考はエントリーシート、適性検査、複数回の面接が一般的で、技術職では大学の研究内容のプレゼンテーションや、学校推薦の制度がある会社もあります。入社後は、仕事に必要な国家資格を取ることが多く、たとえば危険物取扱者、高圧ガス製造保安責任者、ボイラー技士、電気主任技術者、エネルギー管理士などがあります。これらは製油所や発電所を安全に動かすために法律で必要とされる資格です。

危険物取扱者

ガソリンや灯油などの危険物を扱うための国家資格です。乙種第4類(乙4)はガソリンスタンドで働く人に必須といえる資格で、高校生でも受験できます。製油所の技術者は、すべての危険物を扱える甲種を取ることが多いです。

電気主任技術者・エネルギー管理士

電気主任技術者は、発電所や工場の電気設備の保安を監督する国家資格で、規模に応じて第1種から第3種まであります。エネルギー管理士は、工場などでエネルギーを効率よく使うための管理を行う資格です。再エネの発電所や大きな工場で必要とされます。

年収のリアル

エネルギー業界は、日本の業界のなかでも給与水準が高いことで知られています。国税庁の民間給与実態統計調査(2024年分)では、電気・ガス・熱供給・水道業の平均給与は832万円で全業種のなかで最も高く、全体平均の477万5千円を大きく上回ります。大手の有価証券報告書(単体)では、INPEX 1,168万円、ENEOSホールディングス1,069万円、出光興産995万円、JERA 925万円などが目安です。一方、ガソリンスタンドの運営会社や再エネの施工会社など、規模の小さい会社では300万〜500万円前後のことも多く、同じ業界でも差があります。

高い給与の理由

エネルギー業界の大手は、1社あたりの売上が非常に大きく、少ない社員数で巨大な設備を動かしているため、1人あたりの給与が高くなりやすいです。また、危険物や高圧ガスを扱う専門性、海外勤務の多さ、交代勤務なども給与に反映されています。

海外駐在の手当

資源開発や需給・トレーディングの仕事では、海外駐在中に住宅や家族のための手当がつくことが多く、国内勤務より収入が増えることがあります。一方で、治安や生活環境が厳しい地域で働くこともあります。

やりがい

エネルギーは、電気、交通、工場、病院など、社会のあらゆるものを動かす土台です。災害のときにガソリンや電気を届け続けることは、多くの人の命と暮らしを支えることにつながります。また、数千億円から兆円規模の巨大なプロジェクトに、世界中の人と一緒に取り組めるのもこの業界ならではです。脱炭素という人類全体の課題に、自分の技術や仕事で直接かかわれることも、大きなやりがいになっています。

災害のときに頼られる

大きな地震や台風のあと、ガソリンスタンドに燃料を届け、発電所を早く復旧させることは、救助や物流を支えるためにとても大切です。普段は意識されにくい仕事ですが、いざというときに社会から必要とされる実感があります。

エネルギー転換の主役になれる

2050年のカーボンニュートラルに向けて、エネルギーの作り方と使い方は大きく変わろうとしています。新しい燃料や発電所を自分の手で形にし、未来のエネルギーを作る側に立てることは、今この業界に入る人の大きな魅力です。

大変なこと・きついこと

エネルギー業界は、国際価格、為替、国の政策、国際情勢など、自分たちではコントロールできないことに業績が大きく左右されます。製油所や発電所では、事故を起こせば周りの住民や環境に大きな被害が出るため、常に緊張感を持って安全を守らなければなりません。交代勤務や夜間の呼び出しがある職場もあります。資源開発や海外事業では、砂漠や海上、治安の不安定な地域で働くこともあります。また、石油の会社では、脱炭素の流れの中で主力事業が縮小していくという、将来への不安と向き合いながら事業を変えていく難しさがあります。

社会からの厳しい目

化石燃料を扱う会社は、地球温暖化の原因になっているとして批判を受けることもあります。再エネの会社でも、景観や自然環境、漁業への影響をめぐって地域の反対にあうことがあります。どちらの立場でも、社会に丁寧に説明する姿勢が求められます。

長い時間軸

発電所や資源開発のプロジェクトは、計画から完成まで10年以上かかることもあります。自分がかかわった計画が、途中で政策の変更やコストの上昇で中止になることもあり、粘り強さが必要です。

向いている人

社会を支える大きな仕事にかかわりたい人、科学や技術が好きな人に向いています。技術職では、化学や物理の知識を現場で使い、安全を最優先に考えられる慎重さが大切です。事務系では、国際情勢や経済のニュースに関心を持ち、数字をもとに判断できる人が活躍しています。海外とのやり取りが多いので、英語や異文化に抵抗がない人、変化を前向きに受け止められる人にも合っています。

向いている人の特徴

地図を見て世界のどこで何がとれるかを考えるのが好きな人、ニュースで原油価格や為替の動きが気になる人は、この業界の仕事を楽しめる可能性があります。また、大きな装置や機械の仕組みに興味がある人は、製油所や発電所の技術者に向いています。

気をつけたいこと

大手ほど転勤や海外赴任の可能性が高く、製油所や発電所は海沿いの工業地帯にあることが多いです。都市部で働きたい人は、職種や会社による勤務地の違いを確かめておくとよいでしょう。

高校生のうちにできること

まず、身の回りのエネルギーがどこから来ているかを調べてみましょう。家の電気代の明細を見て、再エネ賦課金や燃料費調整額がいくらかを確かめると、エネルギーの値段の仕組みが見えてきます。ガソリンの値段がニュースで上下するときに、原油価格や為替との関係を考えてみるのもよい練習です。理系に進む人は化学と物理、文系に進む人は地理と政治・経済をしっかり学んでおくと、仕事の理解に役立ちます。危険物取扱者の乙種第4類は高校生でも受験でき、挑戦する高校生も多くいます。

見学に行ってみる

製油所や発電所、風力発電所の中には、見学会を開いたり、PR館を設けたりしているところがあります。巨大な設備を間近で見ると、エネルギーを作る仕事のスケールを実感できます。

エネルギーの政策を知る

資源エネルギー庁のホームページには、「日本のエネルギー」という中高生にも読みやすい資料があります。エネルギー基本計画やカーボンニュートラルについて知っておくと、面接や小論文でも役立ちます。

代表的な会社・職場

エネルギー業界の代表的な会社には、石油元売りのENEOS、出光興産、コスモエネルギー、資源開発のINPEX、石油資源開発、発電のJERAや大手電力会社、再エネのレノバなどがあります。総合商社のエネルギー部門や、資源開発を支える国のJOGMECも重要なプレーヤーです。全国には、元売りのブランドでガソリンスタンドを運営する地域の販売会社が多くあり、地元で働く選択肢になっています。

エネルギーにかかわるほかの業界

エネルギーの仕事は、エネルギー会社だけにあるわけではありません。発電所や製油所を建てるプラントエンジニアリング会社、風車やタービン、太陽光パネルを作るメーカー、タンカーを運航する海運会社、再エネに投資する銀行や投資ファンドなども、エネルギー業界と深くかかわっています。

国の機関で働く

経済産業省の資源エネルギー庁では、エネルギー政策を考える国家公務員が働いています。JOGMECは、資源開発への支援や、国家石油備蓄の管理を行う独立行政法人です。国の立場からエネルギーを支える道もあります。

これからのエネルギー

エネルギー業界は、安定して届けること、安く届けること、二酸化炭素を減らすことの3つを同時に求められています。国の第7次エネルギー基本計画では、再エネを最大限に増やしながら、原子力も活用し、火力発電は水素やアンモニアを使って二酸化炭素を減らしていく方向が示されています。石油の会社は、SAF(持続可能な航空燃料)や水素、合成燃料、CCSなどの新しい事業に力を入れています。生成AIの普及でデータセンターの電力需要が増えると見込まれており、電気をどう確保するかも新しい課題になっています。

データセンターと電力需要

人口が減るため電力需要も減ると考えられてきましたが、AIやクラウドを支えるデータセンターや半導体工場の増加で、電力需要が増えるという見通しが出てきました。たくさんの電気を、安定して、しかも二酸化炭素を出さずに届けることが、これからのエネルギー業界の大きなテーマです。

石油会社の変身

石油元売りは、製油所を水素やSAF、バイオ燃料、化学品のリサイクルの拠点に変える計画を進めています。100年以上続いた石油のビジネスを、新しいエネルギーのビジネスへと変えていく、大きな転換期にあります。

よくある質問

石油の会社はこれからなくなってしまいませんか?

国内のガソリン需要は減っていますが、飛行機や船、化学製品の原料など石油が必要な分野はまだ多く残ります。各社は水素やSAF、再エネなど新しい事業に投資し、総合エネルギー企業への転換を進めています。仕事の中身は変わっていくと考えられます。

エネルギー業界は理系しか入れませんか?

いいえ。技術職は理系が中心ですが、営業、需給・トレーディング、海外事業、経理、法務、人事、経営企画などの事務系の職種は学部を問わず採用されています。

再生可能エネルギーの会社と電力会社は何が違いますか?

電力会社は、火力、原子力、水力などさまざまな方法で電気を作り、送電や小売まで手がけることが多いです。再エネの専門会社は、太陽光や風力などの発電所の開発と運営に特化しています。最近は電力会社や石油会社も再エネに力を入れており、境目は薄れつつあります。

海外で働くチャンスはありますか?

多くあります。特に資源開発、LNGの調達、燃料のトレーディング、海外の発電事業などでは、中東、東南アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、アメリカなどに駐在する機会があります。

エネルギー業界の給料が高いのはなぜですか?

1社あたりの売上と設備がとても大きく、少ない社員で巨大な事業を動かしているためです。2024年分の国税庁の統計でも、電気・ガス・熱供給・水道業の平均給与は832万円で、全業種のなかで最も高い水準でした。

高校生でも取れるエネルギー関係の資格はありますか?

危険物取扱者の乙種第4類(乙4)は年齢制限がなく、高校生でも受験できます。ガソリンや灯油などを扱うための資格で、ガソリンスタンドや製油所の仕事に役立ちます。

日本のエネルギー自給率はどのくらいですか?

2023年度は15.3%で、2024年度は速報で16.4%です。原油はほぼすべてを輸入していて、その約95%を中東に頼っています。

2040年には電気の何割が再エネになるのですか?

国の第7次エネルギー基本計画(2025年2月)では、2040年度の電源構成を再エネ4〜5割程度、原子力2割程度、火力3〜4割程度とする見通しが示されています。2023年度の再エネの割合は22.9%でした。

ガソリンの値段はなぜよく変わるのですか?

原油の国際価格と為替が毎日動いているためです。さらに、ガソリン税などの税金や、国の補助金の有無によっても店頭の値段が変わります。

この分野のことば

年収について:国税庁「民間給与実態統計調査」(2024年分)では、電気・ガス・熱供給・水道業の平均給与が832万円で全業種のなかで最も高い水準です。有価証券報告書(単体)の平均年間給与の目安:INPEX 1,168万円(平均39.4歳、2024年12月期)、ENEOSホールディングス1,069万円(平均44歳、2025年3月期)、出光興産995万円(平均42歳、2026年3月期)、コスモエネルギーホールディングス1,188万円(2026年3月期、持株会社267人)、石油資源開発1,032万円(平均40.1歳、2025年3月期)、レノバ1,086万円(平均42.1歳、2026年3月期)、JERA 925万円(平均43.8歳、2025年3月期)。持株会社の数字は管理職の割合が高いため高めに出ます。

数字はすべて公開データにもとづく目安です。出典は出典・サイトポリシーにまとめています。

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