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家を買う日も、会社を作る日も、外国から来た人がビザを取る日も、そばにいる「書類のプロ」です

司法書士・行政書士

司法書士と行政書士は、どちらも法律にもとづく書類を作り、手続きを代わりに行う「街の法律家」です。司法書士は、土地や建物の持ち主を国の記録(登記)に書きかえる手続きや、会社を作るときの登記、相続の手続きなどを担当します。たとえば、家族が新しい家を買ったとき、その家が自分たちのものだと法務局に登録する手続きをするのが司法書士です。行政書士は、役所に出す許可や届け出の書類を作ります。たとえば、レストランを開くための営業許可、建設会社の許可、外国人が日本で働くための在留資格(ビザ)の申請などです。名前は似ていますが、試験も仕事の範囲も別の資格で、両方の資格を持って一つの事務所で働く人もいます。

平均年収の目安司法書士 約981万円/行政書士 約583万円約300万〜1,000万円以上(勤務か独立か、得意分野で大きく差がある)
なるまでの難しさ★★★★★司法書士試験の合格率は5.20%(2025年度)で、合格までに約3,000時間の勉強が必要と言われる難関です。合格者の平均年齢は42.05歳で、何年も挑戦する人が多いです。行政書士試験の合格率は14.54%(2025年度)で、勉強時間の目安は600〜1,000時間ほどと言われ、司法書士よりは取りやすい資格です。2つを合わせて、難しさを4としています。
決めどき文系が中心

高校で文系を選び、大学(法学部が多い)在学中から行政書士・司法書士の勉強を始めるのが最短。年齢や学歴の受験資格はない

どんな職種がある?

押すと、その職種の仕事内容・必要な力・キャリアが見られます。

司法書士・行政書士の年収と昇進の流れ

補助者・事務スタッフ(資格取得前)250〜350万円
入所1〜3年、20代

事務所で書類の準備、役所や法務局への提出、電話対応などを担当します。働きながら資格試験の勉強を続け、合格することが次の段階への条件です。

勤務の司法書士・行政書士(新人)300〜450万円
合格・登録後1〜3年

先輩について決済に同行したり、許可の申請を担当したりしながら実務を覚えます。一人で案件を最初から最後まで進められるようになることが次の段階への条件です。

勤務の司法書士・行政書士(中堅)400〜600万円
登録後3〜7年

自分で決済に立ち会い、相続や会社の登記、許可の申請を一人で担当します。後輩の指導も任されます。得意分野と紹介元とのつながりができると、独立や幹部への道が開けます。

事務所の幹部・パートナー600〜1,000万円
登録後7〜15年、30代後半〜

大きな法人で支店やチームをまとめ、紹介元との関係や事務所の売上に責任を持ちます。共同経営者として事務所の方針を決める立場になることもあります。

独立開業(所長)200〜1,500万円
30代〜

自分の事務所を開き、お客さんの開拓から書類の最終チェックまで担当します。紹介元を増やし、くり返し依頼してくれるお客さんを持てるかどうかで収入が大きく変わります。

法人の代表・複数拠点の経営1,000〜3,000万円
40代〜

司法書士法人や行政書士法人を作り、複数の拠点と多くのスタッフを持って事務所を経営します。ここまで大きくできる人は一部ですが、収入も責任も大きくなります。

年収は目安です。会社や地域、本人の働き方で大きく変わります。

働き方で何が違う?

個人の司法書士・行政書士事務所(勤務)300万〜500万円台が目安

所長1人とスタッフ数人の事務所で働きます。地域の不動産会社や建設会社、個人のお客さんが中心です。少人数なので、早いうちからいろいろな手続きを経験できます。所長の得意分野によって、学べる仕事が大きく変わります。

良いところ仕事の全体を早く覚えられ、独立の準備になる

大変なところ給料や休みの決まりが事務所ごとに違い、所長との相性に左右される

大きな司法書士法人・行政書士法人400万〜800万円台が目安(役職で変わる)

全国に拠点を持ち、数十人から数百人が働く法人です。大手の不動産会社や銀行からの大量の登記、上場企業の商業登記、外国人を多く雇う会社の在留資格など、規模の大きな仕事をチームで処理します。

良いところ研修や役職の仕組みが整い、大きな案件を経験できる

大変なところ担当が分かれていて仕事の一部しか見えないことがある

独立開業200万円以下〜数千万円(差がとても大きい)

自分の事務所を開いて所長になります。司法書士は登記、行政書士は許認可や在留資格など、得意分野を決めて、紹介元やお客さんとのつながりを広げていきます。両方の資格を持って一つの事務所で開く人もいます。

良いところ働き方を自分で決められ、定年がない。成功すれば高い収入になる

大変なところお客さんが集まるまで収入が不安定で、営業や経営もすべて自分の責任

企業の法務部・総務部勤め先の給与水準による

資格を持って会社に就職し、会社の登記、契約書のチェック、許可の管理などを担当します。会社員として安定した働き方ができ、資格手当がつく会社もあります。

良いところ収入が安定し、休みが取りやすいことが多い

大変なところ自分の会社の手続きだけなので、いろいろな案件の経験は積みにくい

代表的な会社・職場

個人事務所大手司法書士法人行政書士法人ワンストップ型事務所国の役所地方の役所主な依頼元企業内
街の司法書士事務所個人事務所

全国の駅前や法務局の近くにある小さな事務所です。不動産登記や相続登記を中心に、地域のお客さんの手続きを担当します。

事務所により大きく異なる
街の行政書士事務所個人事務所

全国にたくさんある小さな事務所で、建設業の許可、飲食店の許可、在留資格、相続などをあつかいます。

事務所により大きく異なる
全国展開の司法書士法人大手司法書士法人

全国に拠点を持ち、大手の不動産会社や銀行からの大量の登記を処理する法人です。

公表されていないことが多い
入管業務に強い行政書士法人行政書士法人

外国人を雇う会社のために、多くの在留資格の申請をあつかう法人です。外国語を話せるスタッフが多く働いています。

公表されていないことが多い
総合法律事務所(弁護士・税理士との共同事務所)ワンストップ型事務所

弁護士や税理士と一緒に、相続や会社の手続きをまとめて引き受ける事務所です。

法務局国の役所

登記や供託を受け付ける国の役所です。長く勤めた職員は、法務大臣の認定を受けて司法書士になる道があります。

国家公務員の給料表による
都道府県庁・市役所地方の役所

行政書士が許可の書類を提出する先です。公務員として行政の仕事を長く続けた人は、行政書士になれる場合があります。

地方公務員の給料表による
不動産会社・銀行主な依頼元

家や土地の売買、住宅ローンのたびに司法書士に登記を依頼します。社員として資格を活かす人もいます。

勤め先の給与水準による
一般企業の法務部・総務部企業内

会社の登記や契約書、許可の管理などを担当する部署です。資格を持つ社員が働いています。

勤め先の給与水準による

どうやって稼いでいる?

司法書士 よく頼んでくる相手 不動産会社・銀行 登記 家・会社・相続 提出 法務局 1件の報酬の例 家の売買の登記 数万〜十数万円 顧問契約で 毎月受け取ることも 行政書士 よく頼んでくる相手 建設会社・飲食店 許可・ビザ 在留資格など 提出 都道府県庁など 1件の報酬の例 建設業の許可 十数万円 顧問契約で 毎月受け取ることも 1件の請求の中身 報酬 実費 事務所の収入 登録免許税など 預かって国に払う 報酬は手続き1件ごと くり返し頼んでくれる相手が安定のかぎ
会社の設立の登記も、1件で数万円から十数万円が目安です

司法書士と行政書士の収入は、主に「手続き1件ごとの報酬」です。たとえば、家の売買の登記なら1件で数万円から十数万円、会社の設立なら数万円から十数万円、建設業の許可なら十数万円といった形で、仕事の内容に応じて報酬をもらいます。登記のときに国に納める登録免許税などの実費は、報酬とは別にお客さんから預かって払います。不動産会社や銀行、建設会社など、くり返し依頼してくれるお客さんとの関係を作ることが、安定した収入のかぎになります。事務所に雇われている人は給料をもらい、所長になると事務所全体のもうけを受け取ります。

1
不動産登記の報酬(司法書士)

家や土地の売買、住宅ローンの設定や抹消などの登記を1件ごとに受けて報酬をもらいます。不動産会社や銀行から紹介を受けることが多く、司法書士の収入の柱です。たとえば、街の不動産屋さんで家を買った人の多くが、その不動産屋さんが紹介した司法書士に頼んでいます。

2
商業登記の報酬(司法書士)

会社の設立や役員変更などの登記で報酬をもらいます。会社とは長くつきあうことが多く、毎年のように依頼が続くこともあります。

3
相続・後見の報酬

相続登記や遺産分割協議書の作成で報酬をもらいます。成年後見人を務める場合は、家庭裁判所が決めた額の報酬を本人の財産から受け取ります。

4
許認可の報酬(行政書士)

建設業や飲食店、運送業などの許可を申請して報酬をもらいます。許可の更新や毎年の報告も必要なので、同じ会社から継続して依頼を受けることが多いです。

5
在留資格の報酬(行政書士)

外国人の在留資格の申請や更新で報酬をもらいます。外国人を多く雇う会社と契約すると、毎年たくさんの申請を任されます。

6
顧問料

会社と顧問契約を結び、毎月決まった料金で手続きや相談に対応します。たとえば、建設会社の許可の更新や役員変更をまとめて引き受けるといった形です。

入ってからどうなっていく?

大学時代法律の勉強と資格試験法学部などで民法や憲法を学びながら、行政書士試験に挑戦する人が多いです。行政書士に合格したあと、さらに難しい司法書士試験を目指す人もいます。どちらも年齢や学歴の受験資格はないので、高校生でも受験できます。
合格後〜3年目事務所の補助者・勤務として修業司法書士は合格後に司法書士会の新人研修を受け、事務所に勤めて登記の実務を覚えます。行政書士も事務所に勤めるか、すぐに開業する人もいます。最初は書類の準備、役所や法務局への提出、先輩の決済への同行などから始めます。
3〜6年目一人で案件を任される自分で決済に立ち会ったり、許可の申請を最初から最後まで担当したりするようになります。司法書士は、この時期に特別研修を受けて認定司法書士になる人も多いです。得意分野を見つけ、お客さんや紹介元とのつながりを作ります。
30代独立開業経験とお客さんのつながりができたところで、自分の事務所を開く人が多いです。最初は知り合いの不動産会社や建設会社、ほかの士業からの紹介で仕事を増やしていきます。両方の資格を持って一つの事務所で登記と許認可をまとめて受ける人もいます。
40代事務所を大きくするお客さんが増えたら補助者や勤務の資格者を雇い、事務所を大きくします。司法書士法人や行政書士法人にして、複数の拠点を持つ人もいます。大きな法人では、所長のほかにパートナーとして共同経営者になる道もあります。
50代以降地域の法律の相談役地域で長く仕事を続け、相続や成年後見の相談を多く受けるようになります。司法書士会や行政書士会の役員として、無料相談会や学校での法律教室などの活動をする人もいます。定年がないので、70代以降も働き続ける人がいます。

家を買う日に司法書士がすること

決済の前 1 依頼を受ける 不動産会社や 銀行から 2 登記簿を調べる 本当の持ち主か 担保はないか 3 書類の準備 権利証や 印鑑証明書 4 決済日(銀行の応接室など) 売る人 買う人 銀行 代金 司法書士 本人確認 書類チェック 払って 大丈夫です 5 登記の申請 その日のうちにオンラインで法務局へ 1〜2週間ほど 6 登記の完了 新しい登記識別情報を買った人へ 本人と書類を確かめてから、お金が動く
住宅ローンを借りる場合は、名義の変更と一緒に抵当権の設定の登記も申請します
1
依頼を受ける

不動産会社や銀行から、家の売買の登記の依頼を受けます。売る人、買う人、物件の情報を受け取ります。

2
登記簿を調べる

法務局で今の登記の記録を取り寄せ、本当に売る人が持ち主か、借金の担保になっていないかを確認します。

3
書類の準備

売る人から権利証(登記識別情報)や印鑑証明書を、買う人から住民票などを集めます。登記の申請書と、売買の内容を書いた書類を作ります。

4
決済日の立ち会い

銀行の応接室などに関係者が集まります。司法書士が本人確認と書類のチェックをして、問題がなければ買う人がお金を払います。

5
登記の申請

その日のうちに、オンラインで法務局に名義変更と住宅ローンの抵当権設定の登記を申請します。

6
登記の完了と書類の受け渡し

1〜2週間ほどで登記が終わると、新しい登記識別情報を受け取り、買った人に渡します。これで家が正式に新しい持ち主のものとして記録されます。

司法書士試験/行政書士試験

勉強時間の目安 宅建士 300〜400時間 行政書士 600〜1,000時間 司法書士 約3,000時間 司法書士は2〜3年かけて勉強する人が多い 合格率(2025年度) 行政書士 14.54% 受験者50,163人 司法書士 5.20% 受験者14,418人 どちらも受験資格なし 年齢・学歴を問わず、高校生も受けられる 行政書士を入り口に、司法書士へ進む人も
司法書士試験には、登記の申請書を時間内に正確に書く記述式もあります
合格率司法書士 5.20%(2025年度、受験者14,418人・合格者751人)/行政書士 14.54%(2025年度、受験者50,163人・合格者7,292人)
勉強時間の目安司法書士は約3,000時間(2〜3年)、行政書士は600〜1,000時間が目安
受験資格どちらも年齢・学歴・国籍の制限なし。誰でも受験できる
司法書士試験は、合格率5%前後、勉強時間の目安約3,000時間という、法律系の国家資格の中でも難しい試験です。11もの科目に加えて、登記の申請書を時間内に正確に書く記述式があり、すべての分野で基準点を超える必要があります。行政書士試験は合格率10〜15%ほどで、法律系の資格の入り口として選ばれることが多い試験です。たとえば、宅建士の勉強時間が300〜400時間ほどと言われるのに対し、行政書士はその2倍以上、司法書士はさらにその数倍の勉強が必要とされています。
試験科目(押すと中身が見られます)
合格までの流れ
  1. 行政書士試験(11月)毎年11月の第2日曜日に、60問を3時間で解く筆記試験が行われます。合格発表は翌年の1月です。
  2. 司法書士 筆記試験(7月)午前に択一式35問、午後に択一式35問と記述式2問を解きます。それぞれの基準点と合計の合格点を超える必要があります。
  3. 司法書士 口述試験(10月)筆記試験の合格者が、面接の形で法律の知識を質問されます。ほとんどの人が合格します。
  4. 合格発表と研修司法書士の最終合格は11月ごろに発表され、その後、司法書士会の新人研修を受けます。
  5. 登録地域の司法書士会・行政書士会に入り、連合会の名簿に登録して仕事を始めます。

司法書士・行政書士のある1日

8:45

事務所に出勤して、メールと今日の予定を確認します。午前中の決済に必要な書類がそろっているかを、もう一度チェックします。

9:30

銀行の応接室で、家の売買の決済に立ち会います。売る人と買う人の本人確認をし、書類に問題がないことを確かめてから、銀行に「お金を払って大丈夫です」と伝えます。

11:00

事務所に戻り、法務局にオンラインで登記を申請します。

12:00

お昼休みです。

13:00

相続の相談に来たお客さんと面談します。亡くなった親の家の名義をどうするか、必要な戸籍は何かを説明します。

14:30

建設会社から依頼された許可の更新の書類を作ります。決算書や技術者の資格証のコピーをそろえて、申請書に書き込みます。

16:00

都道府県庁の窓口に行き、許可の申請書を提出します。担当者から足りない書類を指摘されたら、メモして持ち帰ります。

17:00

事務所に戻り、補助者が作った会社設立の書類をチェックします。

18:00

翌日の決済のために、不動産会社や銀行と最終の確認の電話をして退勤します。

もっと知りたい人へ

そもそも司法書士・行政書士とは

司法書士は司法書士法、行政書士は行政書士法という法律にもとづく国家資格です。司法書士は主に法務局や裁判所に出す書類を、行政書士は主に都道府県庁や市役所、警察署、出入国在留管理局などの役所に出す書類を作ります。たとえるなら、司法書士は「財産や会社の記録を正しく残す専門家」、行政書士は「役所の許可を取る専門家」です。どちらも、ふつうの人には難しい手続きを代わりに行うことで、社会の取引や事業がスムーズに進むように支えています。日本には司法書士が約2万3千人(2023年)、行政書士が約5万4千人(2025年)いると言われています。

司法書士と行政書士のちがい

司法書士は「登記」と「裁判所に出す書類」、行政書士は「役所の許可や届け出」と「契約書などの書類」が中心です。たとえば、会社を作るとき、会社のルールブック(定款)は行政書士も作れますが、法務局での設立の登記は司法書士にしかできません。試験の難しさも、司法書士のほうがずっと難しいと言われています。

弁護士とのちがい

弁護士は、どんな法律問題でも代理人として交渉や裁判ができます。司法書士は140万円以下のトラブルで簡易裁判所の代理ができますが(認定を受けた場合)、それより大きな事件はできません。行政書士は、もめごとの代理はできません。トラブルになりそうなときは、弁護士に任せることになります。

2026年の行政書士法改正

2026年1月から、改正された行政書士法が施行されました。行政書士の「使命」が法律に書かれ、デジタル社会への対応が努力義務になりました。また、資格のない人が「会費」などの名目でお金を受け取って書類を作ることも禁止だと、はっきり書かれました。

なるためのルート

司法書士にも行政書士にも、年齢や学歴の受験資格はありません。いちばん多いのは、それぞれの国家試験に合格して、地域の司法書士会・行政書士会を通して登録する方法です。ほかに、裁判所や法務局で長く働いた人が法務大臣の認定を受けて司法書士になる道や、公務員として行政の仕事を長く続けた人が行政書士になる道もあります。また、弁護士、弁理士、公認会計士、税理士の資格を持つ人は、行政書士として登録することもできます。

  1. 高校文系を選ぶ人が多いですが、受験資格がないので文理は問いません。国語の読解力、社会(政治・経済)の知識が土台になります。
  2. 大学法学部に進む人が多いです。民法、憲法、行政法などを学び、在学中に行政書士試験に挑戦する人もいます。
  3. 試験に合格行政書士試験は毎年11月、司法書士試験は毎年7月の筆記と10月の口述で行われます。予備校の講座を使って勉強する人が多いです。
  4. 研修司法書士は、合格後に司法書士会の新人研修を受けます。行政書士は、登録後に行政書士会の研修を受けることができます。
  5. 登録地域の司法書士会・行政書士会に入り、全国の連合会の名簿に登録します。登録には登録料や会費がかかります。
  6. 事務所勤務または開業事務所に勤めて経験を積むか、すぐに自分の事務所を開きます。司法書士は、勤務で数年経験を積んでから開業するのが一般的です。
行政書士から司法書士へ

行政書士試験で学ぶ民法や憲法は、司法書士試験でも出題されます。そこで、まず行政書士に合格し、次に司法書士を目指す人も多いです。たとえば、大学2年で行政書士に合格し、卒業後に司法書士試験に挑戦する、という進み方があります。

働きながら目指す人も多い

司法書士試験の合格者の平均年齢は42.05歳(2025年度)で、会社員や公務員として働きながら合格する人も多いです。人生のどの時点からでも挑戦できるのが、この資格の特徴です。

試験・選考の詳細

司法書士試験は法務省が行う国家試験で、筆記試験(7月)と口述試験(10月)があります。筆記試験は午前と午後に分かれ、11の科目から択一式(マークシート)と記述式の問題が出ます。2025年度は受験者14,418人のうち751人が合格し、合格率は5.20%でした。行政書士試験は行政書士試験研究センターが行う試験で、毎年11月の第2日曜日に行われます。法令科目と基礎知識科目の合計60問を3時間で解き、2025年度は受験者50,163人のうち7,292人が合格し、合格率は14.54%でした。

司法書士試験の科目

午前は憲法、民法、刑法、会社法・商法、午後は不動産登記法、商業登記法、民事訴訟法、民事執行法、民事保全法、供託法、司法書士法が出題されます。さらに午後には、不動産登記と商業登記の申請書を実際に書く「記述式」の問題があり、ここが最大の難関と言われています。

司法書士試験の基準点

司法書士試験では、午前の択一、午後の択一、記述式のそれぞれに「基準点」があり、1つでも下回ると不合格になります。2025年度は、午前の択一105点満点中78点、午後の択一105点満点中72点、記述式140点満点中70点が基準点で、合計で350点満点中255点以上が合格点でした。

行政書士試験の合格基準

行政書士試験は、法令等科目で244点満点中122点以上、基礎知識科目で56点満点中24点以上、全体で300点満点中180点以上の3つをすべて満たせば合格です。相対評価ではなく基準を満たせば合格できるので、目標がはっきりしているのが特徴です。

年収のリアル

厚生労働省の統計をもとにした年収の目安は、司法書士が約981万円、行政書士が約583万円です(令和7年調査)。ただし、この数字は事務所に雇われて働く人が中心で、独立した人の収入はお客さんの数や得意分野で大きく変わります。特に行政書士は自営の人が多く、開業したばかりのころは年収が数百万円以下の人も少なくありません。一方で、不動産登記や建設業の許可、在留資格など、くり返し依頼がある分野で多くのお客さんをつかめば、どちらの資格でも1,000万円を超える人がいます。

勤務と独立で収入の仕組みが変わる

勤務の場合は事務所から給料をもらいます。独立すると、売上から事務所の家賃、補助者の給料、会費などの経費を引いた残りが収入になります。たとえば、登記の報酬が1件5万円でも、月に何件受けられるかで収入が大きく変わります。

景気の影響を受けやすい分野も

不動産登記は、家やマンションの売れ行きや住宅ローンの金利の動きに影響を受けます。反対に、相続登記は2024年に義務化されたこともあり、景気に左右されにくい仕事として注目されています。

ダブルライセンスで収入を増やす

司法書士と行政書士、行政書士と社会保険労務士など、複数の資格を持つと、1人のお客さんから受けられる仕事が増えます。たとえば、会社の設立で定款の作成から登記、建設業の許可までまとめて引き受けられます。

やりがい

司法書士と行政書士のやりがいは、人生や事業の大切な節目に立ち会えることです。家を買う、会社を作る、お店を開く、日本で働き始める、家族の財産を受け継ぐなど、お客さんにとって一生に一度か数回の大事な場面で、手続きを確実に進めて安心を届けます。たとえば、外国人のお客さんの在留資格が許可されたとき、本人や雇う会社から心から感謝されることがあります。また、法律の知識を使って書類を正確に仕上げる仕事には、職人のような面白さがあります。

形に残る仕事

登記は国の記録として残り、許可は事業の土台になります。自分が手続きした家や会社、お店が、何十年も続いていくことを実感できます。

困っている人を守れる

成年後見人として、悪い業者からお年寄りの財産を守ったり、借金に苦しむ人の生活を立て直したりすることもできます。

自分の力で働ける

独立すれば、仕事のやり方や働く時間を自分で決められます。地域に根ざした事務所として、長く頼られる存在になれます。

大変なこと・きついこと

司法書士の仕事は、大きなお金が動く場面での責任がとても重いです。たとえば、不動産の決済で本人確認を間違えて、なりすましの人に家を売られてしまうと、何千万円もの損害につながります。このような「地面師」と呼ばれる詐欺に巻き込まれないよう、細心の注意が必要です。行政書士は、仕事を取ってくる営業が大変だと言われます。資格を取ってすぐに開業する人が多い一方で、お客さんが集まらずに苦労する人も少なくありません。

締め切りとスケジュールの重圧

決済の日や許可の期限は動かせないため、書類が1枚足りないだけで大きな問題になります。月末や年度末には決済が集中し、忙しくなります。

試験の厳しさ

司法書士試験は合格率5%前後で、何年も挑戦する人が多いです。働きながら勉強を続けるのは、体力的にも精神的にも大変です。

IT化による変化

登記や役所の申請はオンライン化が進み、書類の作成もソフトである程度できるようになっています。単純な手続きの報酬は下がる傾向があり、相談の力や専門分野が大切になっています。

向いている人

司法書士と行政書士に向いているのは、細かいところまで正確に確認するのが苦にならない人です。書類の1文字のまちがいが大きな問題につながることもあるので、注意深さが何より大切です。また、法律の文章を読み解くのが好きな人、決まった手順を一つずつ確実にこなせる人も向いています。独立を目指すなら、人とのつながりを大切にし、お客さんや紹介してくれる人と信頼関係を作れる力も必要です。

几帳面な人

たとえば、提出物の期限をきちんと守れる人、ノートや持ち物を整理するのが好きな人は、この仕事に向いています。

人の話を聞くのが好きな人

相続や在留資格の相談では、お客さんの事情をていねいに聞くことが大切です。相手の立場に立って考えられる人は、信頼される専門家になれます。

長くコツコツ勉強できる人

難しい試験に合格するまで、何年も勉強を続ける必要があります。合格後も法律の改正にあわせて勉強が続きます。

高校生のうちにできること

高校生のうちにできることで大切なのは、文章を正確に読む力をつけることです。法律の条文や試験の問題は、言葉の一つひとつに意味があり、「または」と「かつ」の違いで答えが変わることもあります。また、公民(政治・経済)の授業で憲法や法律の仕組みを学ぶことは、試験の土台になります。行政書士試験は年齢制限がないので、意欲があれば高校生のうちに挑戦することもでき、実際に高校生の合格者もいます。

身近な手続きを調べてみる

たとえば、家族が引っ越しをしたときの住民票の移動や、車の名義変更、自転車の防犯登録など、身近な手続きにはそれぞれ決まりがあります。どんな書類が必要かを調べてみると、手続きの仕事のイメージがわきます。

法務局や役所をのぞいてみる

法務局では、誰でも手数料を払えば土地や建物の登記の記録を見ることができます。家族と一緒に行く機会があれば、どんな人が手続きに来ているかを見てみるのもよい経験です。

進学先の選び方

法学部に進む人が多いですが、受験資格がないので、どの学部からでも目指せます。大学で民法や行政法の授業を取っておくと、試験の勉強がしやすくなります。

代表的な会社・職場

司法書士と行政書士の職場は、所長1人とスタッフ数人の小さな事務所が圧倒的に多いです。ほかに、全国に拠点を持つ司法書士法人や行政書士法人、弁護士や税理士と一緒に働く総合的な法律事務所、一般企業の法務部や総務部などがあります。両方の資格を持つ人が、司法書士・行政書士事務所として一つの事務所を開いていることもよくあります。

大きな法人

全国に拠点を持ち、数十人から数百人が働く司法書士法人や行政書士法人もあります。不動産会社や銀行からの大量の登記の依頼、外国人を多く雇う会社の在留資格の申請などを、チームで処理します。

企業の法務部・総務部

資格を持って会社に就職し、法務部や総務部で会社の登記や契約書のチェックを担当する人もいます。会社員として安定した働き方ができます。

ほかの士業と一緒の事務所

弁護士、税理士、社会保険労務士などと一つの事務所で働き、お客さんの相談をまとめて引き受ける「ワンストップ」の事務所もあります。

登記とは何か

登記とは、土地や建物、会社についての大切な情報を、国(法務局)の記録に登録して、誰でも確認できるようにする仕組みです。たとえば、ある家の登記を見れば、その家の持ち主が誰か、銀行からお金を借りる担保になっていないかがわかります。会社の登記を見れば、その会社の名前、住所、社長が誰か、資本金がいくらかがわかります。登記があることで、知らない人どうしでも安心して家を売り買いしたり、会社と取引したりできます。

不動産登記

土地や建物の場所、広さ、持ち主、担保の有無などを記録します。家を買った人は、登記をすることで「この家は自分のものだ」とほかの人に主張できるようになります。

商業登記

会社の名前、目的、住所、役員などを記録します。会社を作るときは、この登記をすることで初めて会社が生まれます。

相続登記の義務化

2024年4月から、相続で土地や建物を受け継いだ人は、3年以内に相続登記をすることが義務になりました。持ち主がわからない土地が増えて、道路を作ったり災害の復旧をしたりするときに困っていたことが理由です。

行政書士があつかう許認可

許認可とは、事業を始めるときに役所から受ける許可や認可のことです。日本では、安全や公正を守るために、多くの事業で許可が必要とされています。たとえば、レストランを開くには保健所の営業許可、建物を建てる会社には建設業の許可、中古品を売るお店には警察の古物商の許可が必要です。行政書士は、こうした許認可の書類を作って申請する専門家で、扱う手続きの種類はとても多いです。

建設業許可

一定の規模以上の工事をする会社には、都道府県知事か国土交通大臣の許可が必要です。許可は5年ごとに更新が必要で、毎年の報告書も出すので、行政書士にとって大切な仕事の一つです。

飲食店・風俗営業の許可

飲食店を開くには保健所の営業許可が必要で、夜遅くまでお酒を出すお店や、ゲームセンターなどには警察の許可が必要な場合もあります。お店の図面を書いて申請することもあります。

在留資格(ビザ)

外国人が日本で暮らしたり働いたりするための資格です。仕事の内容によって種類が分かれていて、たとえばエンジニアや通訳は「技術・人文知識・国際業務」、介護や外食の現場で働く人は「特定技能」などがあります。

よくある質問

司法書士と行政書士はどちらが難しいですか?

司法書士のほうがずっと難しいと言われています。2025年度の合格率は司法書士が5.20%、行政書士が14.54%で、勉強時間の目安も司法書士は約3,000時間、行政書士は600〜1,000時間ほどです。まず行政書士に合格してから司法書士を目指す人もいます。

高校生でも試験を受けられますか?

受けられます。司法書士試験も行政書士試験も、年齢や学歴の受験資格がありません。行政書士試験では毎年、10代の合格者も出ています。

法学部に行かないとなれませんか?

いいえ、どの学部からでもなれます。受験資格がないので、経済学部や文学部、理系の学部の人や、社会人になってから目指す人もたくさんいます。ただし、法学部では授業で民法や憲法を学べるので、勉強はしやすいです。

資格を取ったらすぐに独立できますか?

行政書士は登録すればすぐに開業できるので、合格後すぐに独立する人もいます。司法書士も法律上はすぐに開業できますが、登記の実務は経験が大切なので、事務所で数年勤めてから独立する人が多いです。

AIに仕事を奪われませんか?

書類の作成や申請はオンライン化やソフトの進歩で効率化が進んでいます。しかし、本人確認、お客さんの事情を聞いての判断、役所との調整などは人が担う部分が大きいです。相談の力や専門分野を持つことが、これからますます大切になります。

女性の司法書士・行政書士は多いですか?

どちらもまだ男性が多いですが、女性も増えています。行政書士では女性会員の割合が2016年の約13%から2025年には約17%に増えています。独立すれば働く時間を自分で決めやすく、子育てと両立する人もいます。

外国語ができると役に立ちますか?

とても役に立ちます。特に行政書士の入管業務では、外国人のお客さんと直接話せると信頼されやすいです。英語だけでなく、中国語、ベトナム語、ネパール語などを話せる行政書士も活躍しています。

弁護士になったほうがよいのでは?

弁護士はあつかえる仕事の範囲が最も広いですが、法科大学院や予備試験、司法修習を経る必要があり、時間がかかります。登記や許認可など手続きの専門家として働きたいなら、司法書士や行政書士は魅力的な選択肢です。どちらが合うかは、やりたい仕事で選ぶとよいです。

両方の資格を持つ意味はありますか?

あります。たとえば、会社を作るお客さんから、定款の作成、設立の登記、事業の許可までまとめて引き受けられます。相続でも、名義変更の登記と預金や車の手続きを一つの事務所で進められるので、お客さんにとって便利です。

この分野のことば

年収について:厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)」の年収です(令和7年賃金構造基本統計調査をもとにした目安)。統計の対象には事務所で雇われて働く人が多く、独立開業している人の収入は、売上から経費を引いた残りになるため差がとても大きいです。行政書士は自営の人が85%ほどを占めるため、統計の数字と実際の収入がずれやすいことに注意が必要です。

数字はすべて公開データにもとづく目安です。出典は出典・サイトポリシーにまとめています。

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