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計算だけの人ではなく、社長がいちばん最初に電話する相談相手です

税理士

税理士は、税金の専門家として、会社やお店、個人の代わりに税金の計算をして、国や市役所に出す書類(申告書)を作る仕事です。たとえば、近所のパン屋さんが1年間でいくらもうけて、いくら税金を払えばよいのかを計算し、税務署に出す書類を代わりに作ります。税金の計算や申告書の作成をお金をもらって代わりにできるのは、法律で税理士(と弁護士など一部の資格者)だけと決まっています。日本には約8万2千人(2024年度末)の税理士がいて、税理士事務所で働く人、大きな税理士法人で働く人、自分の事務所を開く人など、働き方はさまざまです。

平均年収の目安約811万円約400万〜1,000万円以上(勤務か独立か、お客さんの数で大きく差がある)
なるまでの難しさ★★★★★税理士試験は11科目のうち5科目に合格する必要があり、1科目ごとの合格率は多くが10〜15%ほどです(2025年度)。1年に受けられるのは1回だけで、働きながら1〜2科目ずつ合格していく人が多いため、合格まで平均して数年かかります。ただし、大学院での科目免除の制度などもあり、ルートを選べるので、最難関の司法試験や公認会計士試験よりは一歩手前の難しさです。
決めどき文系・理系どちらでも

高校では文理どちらでもよく、大学(商学部・経済学部・経営学部が多い)1〜2年で簿記の勉強を始めるのが最短

どんな職種がある?

押すと、その職種の仕事内容・必要な力・キャリアが見られます。

税理士の年収と昇進の流れ

補助スタッフ(資格取得前)300〜420万円
入所1〜3年、22〜26歳

先輩のもとで帳簿のチェックや個人の確定申告の作成を担当します。働きながら税理士試験の科目合格を目指し、2年以上の実務経験を積むことが次の段階への条件です。

担当者(科目合格者)380〜520万円
入所3〜6年、25〜30歳

自分の担当のお客さんを10〜30社ほど持ち、決算と申告を一人で仕上げます。5科目合格(または免除)と実務経験2年以上で税理士登録できます。

勤務税理士500〜700万円
登録後1〜5年、28〜35歳

税理士として申告書に署名し、難しい案件も担当します。後輩の指導を任されるようになり、得意分野を持つことが次の段階につながります。

マネージャー・幹部税理士700〜1,000万円
登録後5〜10年、33〜42歳

チームや支店をまとめ、大きなお客さんとの窓口になります。新しいお客さんを紹介してもらえる人脈を作り、経営にかかわる力を示すことが次の段階への条件です。

パートナー(社員税理士)1,000〜2,000万円
登録後10年〜、40歳〜

税理士法人の共同経営者として、事務所全体の売上と方針に責任を持ちます。大手法人ではこの段階がゴールの一つです。

独立開業(所長)300〜3,000万円
30代後半〜

自分の事務所を開き、お客さんの開拓から経営まで担当します。お客さんの数と単価によって収入の差がとても大きい段階です。

年収は目安です。会社や地域、本人の働き方で大きく変わります。

働き方で何が違う?

個人の税理士事務所(勤務)300万〜600万円台が目安(資格の有無で変わる)

所長1人とスタッフ数人から十数人ほどの事務所で働きます。地域の中小企業やお店、個人のお客さんが中心です。少人数なので、若いうちから帳簿のチェックから申告まで全体を任されます。所長の考え方や事務所の雰囲気によって、働きやすさが大きく変わります。

良いところ仕事の全体を早く覚えられ、独立の準備になる。試験勉強に理解のある事務所も多い

大変なところ給料や休みの決まりが事務所ごとにばらばらで、所長との相性に左右される

大手・中堅の税理士法人400万〜1,000万円台が目安(役職で変わる)

数百人から数千人が働く法人で、全国に拠点を持つところもあります。相続、事業承継、医療、国際税務などの専門チームがあり、規模の大きな案件をチームで担当します。研修や役職の制度が整っているのが特徴です。

良いところ難しい案件や大企業の仕事を経験できる。研修が充実している

大変なところ担当が分かれているため仕事の一部しか見えないことがある。忙しい時期の残業が多い

BIG4系税理士法人500万〜1,000万円以上が目安

世界的な会計事務所グループの日本の税理士法人です。上場企業や外資系企業の法人税、国際税務、M&Aの税務などを担当します。英語を使う機会が多く、公認会計士や弁護士と一緒に働きます。

良いところ給料の水準が高く、国際的な仕事ができる。転職でも評価されやすい

大変なところ仕事の量が多く、英語や専門知識の勉強がずっと必要

独立開業300万円以下〜数千万円(差がとても大きい)

自分の事務所を開いて所長になります。お客さんを自分で見つけ、スタッフを雇い、事務所を経営します。得意分野や地域を決めて、ほかの事務所との違いを作ることが成功のかぎです。

良いところ働き方を自分で決められ、定年がない。成功すれば高い収入になる

大変なところお客さんが集まるまで収入が不安定。営業や経営もすべて自分の責任

企業内税理士(一般企業の経理・税務部)勤め先の給与水準による(大企業なら30代で700万〜900万円台も)

メーカーや商社などに社員として入り、自分の会社の税金を担当します。会社の役職の仕組みに沿って昇進し、財務の責任者を目指す道もあります。

良いところ会社員として安定し、休みが取りやすいことが多い

大変なところあつかうのは自社の税金だけなので、いろいろな業種の経験は積みにくい

代表的な会社・職場

大手税理士法人BIG4系税理士法人個人事務所国の役所企業内
辻・本郷税理士法人大手税理士法人

全国に多くの拠点を持つ、日本最大級の税理士法人です。中小企業から上場企業、医療法人、相続まで幅広くあつかいます。

公表なし
税理士法人山田&パートナーズ大手税理士法人

全国に拠点を持つ大手の税理士法人です。相続や事業承継、法人の税務などを手がけています。

公表なし
デロイト トーマツ税理士法人BIG4系税理士法人

デロイトのグループに属する税理士法人で、大企業や外資系企業の国際税務などを担当します。

公表なし
PwC税理士法人BIG4系税理士法人

PwCのグループに属する税理士法人で、国際税務、M&Aの税務、移転価格などをあつかいます。

公表なし
EY税理士法人BIG4系税理士法人

EYのグループに属する税理士法人で、上場企業や外資系企業の税務を担当します。

公表なし
KPMG税理士法人BIG4系税理士法人

KPMGのグループに属する税理士法人で、国際税務や事業再編の税務などをあつかいます。

公表なし
街の税理士事務所個人事務所

所長1人とスタッフ数人ほどの事務所で、全国にたくさんあります。地域の中小企業や個人の顧問を務めます。

事務所により大きく異なる
国税庁・税務署国の役所

税金を集め、申告が正しいかを調べる国の役所です。長く勤めた職員は税理士試験の免除を受けられる場合があります。

国家公務員の給料表による
一般企業の経理部・税務部企業内

メーカーや商社、IT企業などで、自分の会社の決算と税金を担当する部署です。

勤め先の給与水準による

どうやって稼いでいる?

お客さん の会社 税理士 顧問料・申告料 相談・申告書 1社との1年間の例 顧問料 毎月3万円 4月 3月 20万円 決算 そのほか、1回ごとの報酬 個人の確定申告 2〜3月に集中 相続税の申告 1件で数十万〜数百万円 経営の相談 借り入れ・事業承継 記帳代行・給与計算 小さなお店の代わりに 顧問契約は、お客さんが毎年続けてくれることが多い毎月の顧問料で、収入が安定しやすい
中小企業なら、月2万〜5万円くらいの顧問契約がよく見られます

税理士の収入の中心は、お客さんから毎月もらう「顧問料」と、決算や申告のたびにもらう「申告料」です。たとえば、ある会社と月3万円で顧問契約を結び、決算のときにさらに20万円をもらう、という形がよくあります。顧問契約はお客さんが毎年続けてくれることが多いので、収入が安定しやすいのが特徴です。ほかに、相続税の申告や、会社を作るときのお手伝いなど、1回ごとにもらう報酬もあります。事務所に雇われている税理士は事務所から給料をもらい、所長やパートナーになると事務所全体のもうけを受け取ります。

1
顧問料(毎月の契約)

お客さんの会社と契約を結び、毎月決まった金額をもらって、帳簿のチェックや相談にのります。中小企業なら月2万〜5万円くらいの契約がよく見られます。たとえば、学校の部活の顧問の先生のように、いつでも相談できる「かかりつけ」の存在になるイメージです。

2
決算・申告の報酬

1年の終わりに決算書と申告書を作るときに、別に報酬をもらいます。会社の売上の規模や、作る書類の量によって金額が変わります。

3
個人の確定申告

会社員ではない人(お店の店主、フリーランス、アパートを貸している大家さんなど)の確定申告を代わりに行い、1件ごとに報酬をもらいます。毎年2〜3月の確定申告の時期に集中します。

4
相続税の申告

家族が亡くなって財産を受け継いだ人のために、相続税を計算して申告します。財産の額に応じた報酬になることが多く、1件で数十万〜数百万円になることもあります。

5
コンサルティング(経営の相談)

お店を増やす計画、銀行からお金を借りるための資料作り、事業承継の計画などについて、相談料をもらってアドバイスします。税金の計算だけでなく、会社の未来を一緒に考える仕事です。

6
記帳代行・給与計算

お客さんの代わりに、毎月のお金の出入りを会計ソフトに入力したり、従業員の給料を計算したりします。忙しい小さなお店から喜ばれる仕事です。

入ってからどうなっていく?

大学時代簿記と科目合格の時期商学部や経済学部などで学びながら、日商簿記2級・1級を取り、税理士試験の簿記論と財務諸表論に挑戦します。会計の2科目は2023年度から受験資格なしで受けられるようになったので、高校生や大学1年生でも受験できます。在学中に1〜3科目に合格して、会計事務所に就職する人が多いです。
1〜3年目補助スタッフとして実務を覚える会計事務所や税理士法人に入り、先輩について帳簿のチェックや個人の確定申告を担当します。働きながら夜や週末に専門学校に通い、残りの税法科目の勉強を続けます。税理士登録には2年以上の実務経験が必要なので、この期間がそのまま経験として数えられます。
4〜7年目5科目合格と税理士登録自分の担当のお客さんを持ち、決算や申告を一人で仕上げられるようになります。5科目に合格するか、大学院の科目免除を使って条件を満たしたら、日本税理士会連合会に登録して正式に税理士を名乗れるようになります。
30代専門分野を持つ中堅相続税、国際税務、医療機関、飲食店など、得意分野を作る時期です。大手の税理士法人ならマネージャーとしてチームを率い、小さな事務所なら所長の右腕になります。この時期に事業会社の経理部やコンサル会社に転職する人もいます。
30代後半〜40代独立開業またはパートナー経験とお客さんのつながりができたところで、自分の事務所を開く人が多いです。大手の税理士法人では、共同経営者であるパートナーになる人もいます。独立後は、紹介やホームページでお客さんを増やしていきます。
50代以降事務所の経営者・地域の相談役事務所を大きくして税理士法人にしたり、複数の拠点を持ったりする人もいます。顧問先の社長の代替わり(事業承継)を手伝う機会が増え、地域の中小企業の大切な相談相手になります。税理士には定年がないため、70代、80代で働き続ける人も多いです。

会社の1年の税金をまとめるまで(3月決算の会社の場合)

4月 7月 10月 1月 4月 毎月の帳簿チェック 年の途中で、社長と面談・節税の相談 決算日 3月31日 決算書と申告書をつくる 5月末までに申告・納税 決算日から原則2か月以内 申告のあと:1年を振り返り、来年の相談 3月決算の会社なら、4〜5月に決算と申告1年中続く毎月のチェックが、決算の土台
申告書は担当者が作ったあと、税理士がもう一度確認して署名します
1
毎月の帳簿チェック(4月〜翌3月)

お客さんの会社が会計ソフトに入力したお金の出入りを、毎月チェックします。レシートや通帳と照らし合わせて、間違いがないかを確かめます。

2
途中経過の報告と節税の相談

年の途中で社長と面談し、「このままだと今年のもうけと税金はこのくらいになりそうです」と伝えます。必要な設備を早めに買うなど、法律の範囲で税金を抑える方法を一緒に考えます。

3
決算日(3月31日)

会社の1年が終わります。この日に残っている商品の数(在庫)や、まだもらっていない売上などを確認します。

4
決算書づくり(4月〜5月)

1年分の数字をまとめて、貸借対照表や損益計算書などの決算書を作ります。減価償却などの計算もここで行います。

5
申告書の作成とチェック

決算書をもとに、法人税、消費税、地方税の申告書を作ります。担当者が作ったあと、税理士がもう一度確認して署名します。

6
申告と納税(5月末まで)

決算日から原則2か月以内に、電子申告で税務署などに提出します。社長に納める税金の額と期限を伝えます。

7
来年に向けた振り返り

申告が終わったら、社長と1年の結果を振り返り、来年の計画や銀行からの借り入れなどについて相談します。

税理士試験

会計2科目(必修) だれでも受験できる 簿記論 大量の計算を速く正確に 財務諸表論 決算書の作り方とルール 税法3科目 大学院で免除を受ける人も 法人税法か 所得税法 1つは必ず 税法を選ぶ 消費税法・ 相続税法など 税法を選ぶ 消費税法・ 相続税法など 合格率は科目ごとに 約10〜32% 5科目の勉強時間の目安 3,000〜4,000時間 1科目ずつ合格を積み上げる 実務経験2年以上 登録して税理士に 科目合格制なので、働きながら少しずつ進められる5科目をそろえる長期戦
合格率は2025年度の数字です。大学院で税法科目の免除を受ける人もいます
合格率科目ごとに約10〜32%(2025年度。全体の受験者36,320人のうち、1科目以上の合格者7,847人で21.6%)
勉強時間の目安5科目で合計3,000〜4,000時間程度と言われることが多い。働きながらだと数年かかるのが一般的
受験資格簿記論・財務諸表論は誰でも受験できる(2023年度から)。税法科目は、大学などで法律学か経済学の科目を1科目以上履修して卒業、日商簿記1級合格、会計の仕事を2年以上経験などのいずれか
税理士試験の難しさは、1科目ごとの合格率が10%前後と低いことに加えて、5科目をそろえるまで何年もかかる「長期戦」であることです。受験者の多くが専門学校で1年間勉強してきた人なので、合格率の数字以上に厳しい競争です。一方で、科目合格制のため働きながら少しずつ進められ、大学院での免除という道もあるので、司法試験や公認会計士試験のように一度に全科目を受ける試験とは性格が違います。難関国家資格の一つですが、計画を立てて続ければ届く試験とも言えます。
試験科目(押すと中身が見られます)
合格までの流れ
  1. 簿記の基礎を固める日商簿記3級・2級で会計の基本を身につけます。
  2. 会計2科目に挑戦簿記論と財務諸表論を受けます。同じ年に2科目まとめて受ける人も多いです。
  3. 受験資格を満たす大学で法律学か経済学の科目を取って卒業する、日商簿記1級に合格するなどして、税法科目の受験資格を得ます。
  4. 税法科目に合格法人税法か所得税法を含む税法3科目に合格します(大学院で免除を受ける人もいます)。
  5. 実務経験と登録2年以上の実務経験を満たし、日本税理士会連合会に登録します。

税理士のある1日

8:45

事務所に出勤して、メールやお客さんからの電話メモを確認します。今日訪問する会社の資料を準備します。

9:30

担当している会社の会計データをチェックします。たとえば、交際費が急に増えていないか、売上の入金がきちんと記録されているかを確かめます。

11:00

お客さんの会社を訪問し、社長と月次の面談をします。「今月は売上が伸びていますね」「このままだと税金はこのくらいになりそうです」と説明します。

12:30

お昼休みです。移動のついでに近くの定食屋で食べることもあります。

13:30

事務所に戻り、別の会社の決算書と法人税の申告書を作ります。税務ソフトに数字を入れて、計算が合っているかを何度も確かめます。

15:30

所長に申告書をチェックしてもらい、指摘された点を直します。

16:30

相続の相談に来た人と面談します。亡くなった親の財産のリストを見ながら、相続税がかかるかどうかを説明します。

17:45

翌日の予定を確認して、電子申告(e-Tax)で申告書を送信します。

18:30

退勤します。税理士試験を目指している人は、ここから専門学校の夜の講義に向かいます。確定申告の時期(2〜3月)は残業が増えます。

もっと知りたい人へ

そもそも税理士とは

税理士は、税理士法という法律で「税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、納税義務の適正な実現を図ること」を使命とすると定められた仕事です。日本の税金は、自分で計算して申告する「申告納税制度」が基本ですが、税金のルールはとても細かく、毎年のように変わります。たとえば、消費税はお店で払うと10%ですが、食べ物を持ち帰ると8%になるなど、ふつうの人にはわかりにくい決まりがたくさんあります。そこで、税金の計算や申告を代わりに引き受けるのが税理士です。お金をもらって税金の書類を作ったり、税務署とのやりとりを代わりにしたりできるのは、原則として税理士だけと法律で決まっています。

税理士だけができる3つの仕事

税理士法では、税務代理、税務書類の作成、税務相談の3つを、税理士だけができる仕事(独占業務)としています。税務代理は、お客さんの代わりに税務署に申告したり、調査に立ち会ったりすることです。たとえば、資格のない人がお金をもらって友だちのお店の確定申告書を作ると、法律違反になります。

公認会計士とのちがい

公認会計士は、大きな会社の決算書が正しいかをチェックする「監査」が中心の仕事です。税理士は、主に中小企業や個人の税金の計算と申告を担当します。たとえるなら、公認会計士は「テストの答え合わせをする先生」、税理士は「宿題を一緒に解いてくれる家庭教師」のような役割です。なお、公認会計士は登録すれば税理士にもなれます。

税理士会への登録が必要

税理士として働くには、日本税理士会連合会の名簿に登録し、地域の税理士会に入る必要があります。登録には、試験に合格したうえで2年以上の実務経験が必要です。登録したあとも、毎年決められた時間の研修を受けることが求められます。

なるためのルート

税理士になる方法は大きく4つあります。1つ目は税理士試験の5科目に合格する方法、2つ目は試験の一部に合格したうえで大学院を修了して残りの科目を免除してもらう方法、3つ目は税務署などで長く働いて試験を免除してもらう方法、4つ目は弁護士や公認会計士の資格を持つ方法です。どの方法でも、最後に2年以上の実務経験を積んで登録する必要があります。いちばん多いのは、会計事務所で働きながら1科目ずつ合格していく方法です。

  1. 高校文系・理系どちらでもかまいません。商業高校では簿記を授業で学べます。普通科なら、数学で計算に慣れ、国語で文章を読む力をつけておきます。
  2. 大学商学部、経済学部、経営学部、法学部に進む人が多いです。日商簿記2級・1級を取り、簿記論・財務諸表論に挑戦します。大学で法律学か経済学の科目を1つ以上取って卒業すると、税法科目の受験資格が得られます。
  3. 会計事務所に就職科目合格がゼロや1科目でも採用されることが多く、働きながら勉強を続けます。この期間が登録に必要な実務経験になります。
  4. 5科目合格または免除必修の簿記論・財務諸表論と、法人税法か所得税法のどちらかを含む5科目に合格します。大学院での免除を組み合わせる人もいます。
  5. 実務経験2年以上税務や会計の仕事を2年以上経験していることが登録の条件です。試験の前後どちらの経験でも数えられます。
  6. 税理士登録日本税理士会連合会に登録し、地域の税理士会に入って、正式に税理士として働き始めます。
働きながら科目合格を積み上げる

税理士試験は科目合格制なので、一度合格した科目は一生有効です。たとえば、1年目に簿記論、2年目に財務諸表論、3年目に法人税法というように、毎年少しずつ合格を重ねていけます。会計事務所で働くと、実務経験を積みながら勉強できるのが利点です。

大学院で科目免除を受ける

大学院の修士課程で税法や会計の研究をして論文を書くと、審査を経て試験の科目が免除される制度があります。税法の論文なら税法2科目、会計の論文なら会計1科目が免除の対象です。たとえば、会計2科目と税法1科目に合格したあと、大学院で税法の論文を書いて残り2科目の免除を受ける人がいます。

試験・選考の詳細

税理士試験は国税庁が行う国家試験で、毎年8月に3日間かけて行われます。科目は会計学の2科目(簿記論、財務諸表論)と税法の9科目の合計11科目で、このうち5科目に合格すれば試験は終わりです。会計の2科目は必ず合格しなければならず、税法は法人税法か所得税法のどちらか1つを必ず選びます。合格の目安は各科目とも満点の60%で、2025年度の受験者は36,320人、合格者(1科目以上の合格を含む)は7,847人でした。

会計科目は誰でも受けられる

2023年度から、簿記論と財務諸表論は受験資格がなくなり、年齢や学歴に関係なく誰でも受けられるようになりました。たとえば、高校生が日商簿記を勉強したあと、簿記論に挑戦することもできます。税法の科目は、大学で法律学か経済学の科目を取った人、日商簿記1級に合格した人、会計の仕事を2年以上した人などが受けられます。

1科目ずつの合格率は低め

2025年度の科目ごとの合格率は、簿記論11.1%、財務諸表論31.9%、法人税法13.5%、所得税法13.0%、相続税法13.8%、消費税法10.1%でした。受けている人の多くは専門学校で1年間しっかり勉強してきた人なので、数字以上に競争は厳しいです。

税法は理論の暗記が大切

税法科目では、計算問題に加えて、法律の条文や考え方を文章で書く「理論問題」が出ます。たとえば、法人税法では「どんな場合に費用として認められるか」を、条文の言葉を正確に使って書く必要があります。このため、理論を何十本も覚える地道な勉強が欠かせません。

年収のリアル

厚生労働省の統計をもとにした税理士の年収の目安は約811万円(令和7年調査)で、日本の働く人全体の平均より高めです。ただし、この数字は主に雇われて働く人のもので、資格を取る前の補助スタッフ、資格を持つ勤務税理士、独立した所長では収入が大きく違います。独立した税理士は、お客さんの数とどんな仕事をするかで、年収300万円以下の人から数千万円の人まで差がとても大きいです。

資格を取る前と後で変わる

会計事務所の補助スタッフとして働き始めたときの年収は、300万〜400万円台が目安です。科目に合格するたびに手当がつく事務所もあり、税理士登録をすると500万〜700万円ほどに上がることが多いです。たとえば、同じ事務所で同じ仕事をしていても、資格があるかないかで任される仕事と給料が変わります。

独立すると収入の仕組みが変わる

独立すると、給料ではなく「売上から経費を引いた残り」が収入になります。たとえば、顧問先が30社で売上が年1,500万円でも、スタッフ2人の給料と家賃で900万円かかれば、残りは600万円です。お客さんが増えればもうけも増えますが、最初の数年は苦しいことも多いです。

得意分野で単価が上がる

相続税や国際税務、M&Aなど、難しい分野を得意にすると、1件あたりの報酬が高くなります。反対に、記帳代行など簡単な仕事は会計ソフトの進歩で値下がりしやすいと言われています。

やりがい

税理士のやりがいは、お客さんにとって「お金のことなら何でも相談できる人」になれることです。中小企業の社長は、会社のお金のことを社員や家族には話しにくく、税理士が一番の相談相手になることがよくあります。たとえば、赤字で困っていた会社が、一緒に考えた計画で黒字になったとき、社長から直接「ありがとう」と言われるのは大きな喜びです。また、税金の計算はルールに沿ってきっちり答えを出す仕事なので、パズルを解くような面白さもあります。

長いつきあいができる

顧問契約は何年、何十年と続くことが多く、お客さんの会社が成長していく様子をそばで見守れます。たとえば、創業したばかりの小さな会社が、10年後に社員100人の会社になるまで支えることもあります。

人生の大事な場面にかかわる

相続は、家族が亡くなったあとの大切な手続きです。悲しみの中にある家族に寄り添い、税金の不安を取り除くことで、深く感謝されます。

学んだ知識がすぐ役立つ

税金の知識は、自分や家族の生活にも役立ちます。たとえば、ふるさと納税や住宅ローン控除の仕組みを正しく説明できるので、身近な人からも頼りにされます。

大変なこと・きついこと

税理士の仕事は、締め切りがはっきり決まっているのが特徴です。会社の決算の申告は原則として決算日から2か月以内、個人の確定申告は毎年3月15日まで(例年)と決まっていて、遅れることは許されません。特に2〜3月の確定申告の時期は、多くの事務所で残業や休日出勤が増えます。また、税金のルールは毎年のように変わるので、ずっと勉強を続けなければなりません。

間違えるとお客さんに損をさせる

計算を間違えると、お客さんが余分な税金を払うことになったり、後から追加の税金(加算税)を取られたりします。たとえば、使えるはずの優遇制度を見落として、お客さんが数百万円多く払ってしまえば、税理士が損害を弁償することもあります。

働きながらの試験勉強

多くの人が、昼は事務所で働き、夜と週末に試験勉強をする生活を何年も続けます。友だちと遊ぶ時間を削ることになり、体力と気持ちの両方が試されます。

AIや会計ソフトとの関係

会計ソフトが自動でレシートを読み取って仕分けをするなど、簡単な作業は機械でできるようになってきました。単純な入力作業だけをしている税理士は仕事が減るかもしれないと言われており、相談やアドバイスができる力がより大切になっています。

向いている人

税理士に向いているのは、細かい数字や決まりをコツコツ確かめるのが苦にならない人です。また、お客さんの話をよく聞いて、難しい税金の話をわかりやすく伝えられる人も向いています。数学が得意である必要はありませんが、四則計算を正確にこなし、表を読み解くのが好きだと有利です。何年も続く試験勉強をあきらめずに続けられる粘り強さも大切です。

コツコツ型の人

たとえば、テスト前に計画を立てて毎日少しずつ勉強できる人や、ノートをきれいにまとめるのが好きな人は、税理士の勉強にも仕事にも向いています。

人の役に立つのが好きな人

税理士は机に向かうだけでなく、社長や家族の悩みを聞く仕事でもあります。友だちの相談にのるのが好きな人、説明するのが得意な人は、お客さんから信頼される税理士になれます。

ルールを守ることを大切にできる人

お客さんから「税金を少なくしてほしい」と頼まれても、法律に違反することはできません。ルールの中で最善の方法を考え、だめなことはだめと伝えられる誠実さが必要です。

高校生のうちにできること

高校生のうちにできることで一番効果的なのは、簿記の勉強を始めることです。日商簿記3級は、お店のお金の流れを記録する基本を学ぶ試験で、高校生でも数か月の勉強で合格できる人が多いです。さらに2023年度からは税理士試験の簿記論と財務諸表論を誰でも受けられるようになったので、意欲があれば高校生のうちに挑戦することもできます。また、お金や税金のニュースに興味を持つことも大切です。

簿記検定に挑戦する

日商簿記3級、2級と段階的に挑戦しましょう。たとえば、おこづかい帳を「収入」と「支出」に分けてつける習慣は、簿記の考え方の入り口になります。商業高校では授業で簿記を学べます。

身近な税金を調べてみる

コンビニのレシートを見ると、消費税8%と10%が分けて書いてあります。なぜ分かれているのかを調べてみるだけでも、税金の仕組みへの興味が深まります。国税庁のホームページには中高生向けの税金の教材もあります。

進学先の選び方

商学部、経済学部、経営学部では簿記や会計の授業が多く、税理士を目指す学生も多いです。税法科目の受験資格を得るには、大学で法律学か経済学の科目を1科目以上取って卒業すればよいので、多くの学部で条件を満たせます。

代表的な会社・職場

税理士の職場は、街の税理士事務所、全国展開する大手の税理士法人、世界的な会計事務所グループ(BIG4)の税理士法人、一般の会社の経理部などがあります。数のうえでは、所長1人とスタッフ数人の小さな事務所が圧倒的に多いです。大手の税理士法人には、全国に拠点を持ち数千人が働くところもあります。

大手の税理士法人

辻・本郷税理士法人や税理士法人山田&パートナーズなどは、全国に拠点を持つ大手として知られています。相続や事業承継、医療機関など、幅広い分野をあつかいます。

BIG4系の税理士法人

デロイト トーマツ税理士法人、PwC税理士法人、EY税理士法人、KPMG税理士法人は、世界的な会計事務所グループに属しています。上場企業や外資系企業の国際税務を得意としています。

街の税理士事務所

全国の駅前や商店街などにある小さな事務所です。地域の中小企業やお店、個人のお客さんを中心に、顧問として長くおつきあいします。

税理士の得意分野

税理士の仕事は、得意分野によって中身が大きく変わります。中小企業の顧問として毎月の帳簿を見る税理士もいれば、相続税だけを専門にする税理士、国際税務を専門にする税理士もいます。税金の種類が多く、それぞれのルールが細かいため、ベテランになるほど特定の分野に強くなっていきます。自分が何を得意にするかで、お客さんも、働き方も、収入も変わります。

法人税務(会社の税金)

会社のもうけにかかる法人税の申告を中心にします。たとえば、地元の建設会社や運送会社の顧問になり、毎月の数字を見ながら節税や資金繰りのアドバイスをします。税理士の仕事の中で最も一般的な分野です。

資産税(相続税・贈与税)

亡くなった人の財産を受け継ぐときの相続税や、生きているうちに財産を渡すときの贈与税をあつかいます。土地の評価など専門的な計算が多く、日本の高齢化とともに需要が増えている分野です。

国際税務

海外と取引をする会社や、海外に住む日本人、日本で働く外国人の税金をあつかいます。たとえば、日本のアニメ会社が海外の配信サービスからお金を受け取るとき、どちらの国の税金がかかるかを考えます。英語力が必要です。

医療・介護、飲食など業種特化

病院や歯医者さん、介護施設、飲食店など、特定の業種に詳しくなる税理士もいます。業種ごとの独特なお金の流れや制度を知っていると、お客さんから選ばれやすくなります。

税理士事務所と税理士法人のちがい

税理士事務所は、1人の税理士が所長として個人で経営する事務所です。税理士法人は、2人以上の税理士が集まって作る会社のような組織で、複数の拠点を持つことができます。小さな事務所では所長がすべてを決めるため、所長との相性が働きやすさを大きく左右します。一方、大きな税理士法人では研修制度や役職の仕組みが整っていることが多く、チームで大きな案件にかかわれます。

小さな事務所の良いところ

少人数なので、若いうちから一人でお客さんを任され、帳簿のチェックから申告までの全体を経験できます。たとえば、2年目でパン屋さんと美容室とラーメン屋さんを担当する、といったことも珍しくありません。独立に必要な力を一通り身につけやすい環境です。

大きな税理士法人の良いところ

大企業の案件や、相続、国際税務など難しい案件にかかわれます。先輩や同期が多く、勉強会や研修も充実しています。試験勉強のための休みを取りやすい制度がある法人もあります。

よくある質問

数学が苦手でも税理士になれますか?

なれます。税理士の計算は、たし算、ひき算、かけ算、わり算と割合の計算がほとんどで、高校数学の難しい公式はあまり使いません。大切なのは、細かい数字を正確にあつかう注意力です。文系出身の税理士もたくさんいます。

高校生でも税理士試験を受けられますか?

簿記論と財務諸表論の2科目は、2023年度から受験資格がなくなったので、高校生でも受けられます。ただし、日商簿記2級くらいの知識がないと難しいので、まずは簿記検定から始めるのがおすすめです。税法の科目は大学で条件を満たしてから受けることになります。

税理士試験には何年くらいかかりますか?

人によって大きく違います。働きながら毎年1〜2科目ずつ合格していく人が多く、5科目そろうまで数年かかるのが一般的です。大学院の科目免除を使ったり、勉強に専念したりして、2〜3年で終える人もいます。

AIが発達したら税理士の仕事はなくなりますか?

レシートの入力や簡単な計算は、すでに会計ソフトが自動でできるようになっています。しかし、社長の悩みを聞いてアドバイスをすること、税務署とやりとりすること、複雑な相続の判断などは、人間の税理士が担う部分が大きいと考えられています。機械を上手に使いながら、相談の力を伸ばすことが大切です。

税理士と公認会計士はどちらを目指すべきですか?

大企業の決算をチェックしたいなら公認会計士、中小企業や個人の税金の相談にのりたいなら税理士が向いています。公認会計士は登録すれば税理士にもなれますが、試験の難しさや勉強の仕方は違います。どちらも商学部や経済学部で目指す人が多いです。

女性の税理士は多いですか?

税理士全体ではまだ男性が多いですが、女性の税理士も増えてきています。事務所によっては時短勤務や在宅勤務ができるところもあり、子育てをしながら働く人もいます。独立すれば自分で働く時間を決められるのも利点です。

税理士の仕事は一年中忙しいですか?

一年のうち特に忙しいのは、2〜3月の確定申告の時期と、多くの会社の決算が集中する5月です。年末には年末調整の仕事も増えます。夏は比較的落ち着いていることが多く、この時期に休みを取ったり、試験を受けたりする人もいます。

税理士になれば必ず高い年収をもらえますか?

必ずではありません。勤務税理士の年収は事務所によって違い、独立した場合はお客さんの数で大きく変わります。得意分野を作り、お客さんから信頼されれば、高い収入を得ることもできます。

大学はどの学部に行けばよいですか?

商学部、経済学部、経営学部に進む人が多いです。簿記や会計、税法の授業があり、同じ目標を持つ仲間が見つけやすいです。ただし、法学部やほかの学部からでも、法律学か経済学の科目を取れば税法科目の受験資格を得られます。

この分野のことば

年収について:厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)」の税理士の年収(令和7年賃金構造基本統計調査をもとにした目安で、雇われて働く人が中心です)。独立開業した税理士は、売上から家賃や人件費などの経費を引いた残りが収入になるため、人によって差がとても大きいです。

数字はすべて公開データにもとづく目安です。出典は出典・サイトポリシーにまとめています。

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