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ロケットも旅客機も、何千人ものエンジニアの分業で空へ飛び立ちます

宇宙・航空機エンジニア

宇宙・航空機エンジニアは、ロケット、人工衛星、探査機、旅客機、ジェットエンジン、ヘリコプターなど、空や宇宙を飛ぶ乗り物と、その部品を設計・開発する技術者です。たとえば、日本の大型ロケットH3、小惑星から砂を持ち帰った探査機「はやぶさ2」、天気予報に使う気象衛星「ひまわり」、旅客機ボーイング787の主翼やエンジンの部品は、日本のエンジニアが開発や製造に関わっています。一つの機体は数十万〜数百万個の部品からできていて、構造、エンジン、電気、制御、ソフトウェアなど専門の違うエンジニアが分担して作ります。国の職業情報サイトでは、宇宙開発技術者は大学院の修士課程や博士課程で学んでから就職するケースがほとんどとされていて、大学院とのつながりがとても強い仕事です。

平均年収の目安約612万〜659万円約450万〜1,100万円以上(大手重工メーカーの管理職や、経験を積んだ専門家はさらに高い例もある)
なるまでの難しさ★★★★★必須の国家資格はありませんが、物理と数学を土台にした高い専門性が必要です。宇宙開発技術者では大学院卒が多く、JAXAや大手メーカーの研究開発職は人気が高いため、大学院での研究内容が選考で重視されます。一人前になるまでに数年から10年近くかかるとされる分野もあり、長い時間をかけて育つ仕事です。
決めどき理系が中心

高校で理系(物理・数学III・Cまで)を選ぶのが最短。大学は航空宇宙工学科や機械工学科などへ。研究開発をしたいなら大学院(修士)まで進む人が多い

どんな職種がある?

システムエンジニア・PM 重さ・電力・費用・日程の調整 構造・機体設計 軽くて強い形 機体の「体」 エンジン・推進系 推力を生み出す ロケット・ジェット アビオニクス 電子機器とソフト 機体の頭脳と神経 製造・品質保証 図面どおりか確認 整備の技術も 将来の土台 研究者(JAXA・大学・研究所) まだ実現していない技術を研究する 一つの機体は数十万〜数百万個の部品からできている専門のちがう人が分担してつくる

押すと、その職種の仕事内容・必要な力・キャリアが見られます。

宇宙・航空機エンジニアの年収と昇進の流れ

新人エンジニア400〜550万円
入社1〜3年、22〜27歳

先輩の設計や試験の一部を担当しながら、設計の基準や安全のルールを覚えます。一つの部品を一人で設計できるようになることが次の段階への条件です。

担当者(中堅エンジニア)550〜750万円
入社4〜9年、27〜33歳

一つの部品やまとまりの設計・試験に責任を持ちます。設計審査で自分の設計を説明し、後輩の面倒も見ます。

主任・係長クラス700〜900万円
入社10年前後、32〜38歳

複数の部品をまとめ、小さなチームを率います。お客さんや協力メーカーとの技術的な調整も任されます。

課長・プロジェクトの技術リーダー900〜1,200万円
38〜45歳

機体全体や大きなまとまりの技術責任者になります。予算や人の配置、スケジュールの判断を行います。

部長・プロジェクトマネージャー1,100〜1,500万円
45歳〜

大きな開発プロジェクトや設計部門全体を率います。会社の方針やお客さんとの契約にも関わります。

事業部長・役員1,500〜2,500万円
50代〜

航空宇宙事業全体の戦略を決めます。人数はとても少なく、会社によって大きく異なります。

年収は目安です。会社や地域、本人の働き方で大きく変わります。

働き方で何が違う?

大手重工メーカー会社全体の平均年間給与は三菱重工業1,072万円、IHI1,001万円(いずれも2026年3月期)

三菱重工業、川崎重工業、IHI、SUBARUなど、ロケット、旅客機の部品、ジェットエンジン、防衛用の航空機などを作る会社です。大きなプロジェクトに長く関われ、研修や福利厚生も整っています。工場や試験場のある地域で働くことが多いです。航空宇宙以外の事業部(発電所、船、産業機械など)に異動することもあります。

良いところ待遇が安定し、国家的なプロジェクトに関われる

大変なところ開発期間が長く、勤務地が地方の工場になることも多い

電機メーカー(人工衛星)各社の給与水準による

三菱電機やNECなど、人工衛星や衛星に積む電子機器を作る会社です。気象衛星、測位衛星、探査機などを手がけてきました。電気電子系や情報系の出身者が多く活躍しています。

良いところ衛星という一つの完成品を作り上げる経験ができる

大変なところ国の予算や計画に事業が左右されやすい

JAXA・研究機関機関の給与規程による

国の機関として、宇宙開発の計画を立て、メーカーと一緒に開発し、研究を行います。研究者として論文を書く人と、プロジェクトを管理するエンジニアがいます。宇宙科学の探査機など、世界初の挑戦に関われるのが魅力です。

良いところ計画の中心で、世界初の研究や探査に関われる

大変なところ採用の人数が少なく、とても人気が高い

宇宙ベンチャーispaceの平均年間給与は1,076万円(2026年3月期)。会社によって差が大きい

ispace、インターステラテクノロジズ、アストロスケールなど、新しい宇宙ビジネスに挑む会社です。少人数で、若いうちから幅広い仕事を任されます。大手メーカーやJAXAから転職してくる経験者も多いです。

良いところ意思決定が速く、挑戦的な開発に関われる

大変なところ会社の資金や経営状況に左右されやすい

代表的な会社・職場

大手重工メーカー大手メーカー(航空宇宙部門)大手電機メーカー国の研究開発機関宇宙ベンチャー(上場)宇宙ベンチャー材料メーカー
三菱重工業 ›大手重工メーカー

H3ロケットの開発・打ち上げ、旅客機の主翼などの部品、防衛用の航空機を手がけています。

1,072万円(2026年3月期、有価証券報告書。会社全体)
川崎重工業 ›大手重工メーカー

旅客機の胴体部品、ヘリコプター、防衛用の航空機、ジェットエンジンの部品などを作っています。

有価証券報告書で公表
IHI ›大手重工メーカー

旅客機のジェットエンジンの国際共同開発や部品づくり、ロケットのエンジン部品などを手がけています。

1,001万円(2026年3月期、有価証券報告書。会社全体)
SUBARU ›大手メーカー(航空宇宙部門)

自動車メーカーとして有名ですが、ヘリコプターや旅客機の中央翼、防衛用の航空機も作っています。

有価証券報告書で公表
三菱電機 ›大手電機メーカー

気象衛星や測位衛星など、多くの人工衛星を開発・製造してきました。

有価証券報告書で公表
NEC ›大手電機メーカー

探査機はやぶさ・はやぶさ2の開発に参加し、人工衛星や衛星に積む機器を作っています。

有価証券報告書で公表
JAXA(宇宙航空研究開発機構) ›国の研究開発機関

日本の宇宙開発の中心となる機関です。ロケット、衛星、探査機の開発や、航空技術の研究を行います。

機関の給与規程による
ispace宇宙ベンチャー(上場)

月面に着陸する探査機を開発し、月へ荷物を運ぶサービスを目指している会社です。

1,076万円(2026年3月期、有価証券報告書)
インターステラテクノロジズ宇宙ベンチャー

北海道大樹町を拠点に、小型の人工衛星を打ち上げるためのロケットを開発しています。

非上場のため公表なし
アストロスケール宇宙ベンチャー(上場)

使い終わった人工衛星などの宇宙のごみを取り除く技術や、衛星に近づいて点検する技術を開発しています。

有価証券報告書で公表
東レ ›材料メーカー

旅客機の機体に使われる炭素繊維複合材を作っています。

有価証券報告書で公表

›がついた会社は、会社図鑑で詳しく解説しています。

どうやって稼いでいる?

国から 民間から JAXA・防衛省 ロケット・衛星・探査機 航空機の開発を注文 海外の機体メーカー ボーイングなど 主翼や胴体、エンジン部品 国の予算から 部品の代金 メーカー 三菱重工業・IHIなど そのほかのお金の入り方 打ち上げサービス 衛星を運んで料金 整備・部品交換 飛ぶ間ずっと必要 衛星データ・通信 農業・防災・地図に 宇宙戦略基金 10年で総額1兆円が目標 国は宇宙産業の市場を2020年の4.0兆円から2030年代の早い時期に8.0兆円へ
飛行機は何十年も作り続けられるので、部品の注文は長く安定した売上になります

宇宙・航空の仕事でお金が生まれる仕組みは、大きく分けて「国からの注文」と「民間のお客さんからの注文」があります。ロケットや探査機、防衛用の航空機は、JAXAや防衛省などの国の機関がメーカーに開発や製造を注文し、その代金が国の予算から支払われます。一方、旅客機の部品は、ボーイングなど海外の機体メーカーやエンジンメーカーから注文を受けて作り、機体が売れるほど売上が増えます。最近は、人工衛星を使ったサービス(衛星写真の販売、衛星通信)や、民間企業の衛星を打ち上げる仕事など、宇宙をビジネスにする動きが広がっています。国は、日本の宇宙産業の市場規模を2020年の4.0兆円から、2030年代の早い時期に8.0兆円へ倍にする目標を掲げています(宇宙基本計画、2023年改定)。

1
国の開発・製造の注文

JAXAや防衛省などがロケット、衛星、探査機、航空機の開発をメーカーに注文します。たとえばH3ロケットはJAXAと三菱重工業が開発し、その費用は国の予算から出ています。

2
打ち上げサービス

ロケットで人工衛星を宇宙に運び、打ち上げ料金を受け取ります。国の衛星だけでなく、海外や民間企業の衛星を打ち上げる注文を取ることも目指されています。

3
旅客機・エンジンの部品の受注

海外の機体メーカーやエンジンメーカーと契約し、主翼や胴体、エンジンの部品を作って納めます。飛行機は何十年も作り続けられるので、長く安定した売上になります。

4
整備・部品交換(アフターサービス)

飛行機やエンジンは、飛んでいる間ずっと点検と部品の交換が必要です。エンジンメーカーにとっては、売ったあとの整備や部品の売上がとても大きな収入源です。

5
衛星データ・衛星通信のサービス

人工衛星で撮った写真やデータを、農業(作物の育ち具合の確認)、防災(洪水の被害の把握)、地図づくりなどに売ります。衛星を使ったインターネット通信もこの例です。

6
国の支援・基金

国は、民間企業や大学の宇宙技術の開発を支援するため、10年間で総額1兆円を目指す「宇宙戦略基金」をJAXAに設けています。新しい会社の研究開発の資金にもなっています。

入ってからどうなっていく?

大学1〜4年工学の基礎を固める数学、物理、力学(材料力学、流体力学、熱力学など)、製図、プログラミングを学びます。学生が小型の人工衛星やロケットを作るサークル・プロジェクトに参加する人もいます。
大学院(修士2年)専門を決めて研究する航空宇宙工学や機械工学の研究室で、構造、推進、制御、空気の流れなどの研究をします。宇宙開発の研究開発職を目指す人の多くが、修士まで進んでから就職します。
入社1〜3年目設計の基本を身につけるメーカーやJAXAに入り、先輩の設計や試験の一部を担当しながら、社内の設計の基準や安全のルールを覚えます。工場や試験場での研修もあります。
4〜10年目担当分野の責任者になる一つの部品やまとまりの設計を任され、試験や打ち上げ・初飛行の現場も経験します。プロジェクトの節目を一つ乗り越えるごとに、大きな仕事を任されるようになります。
30代後半〜40代全体をまとめる立場へ機体全体を見るシステムエンジニアや、チームを率いる管理職になります。自動車やITの分野から宇宙ベンチャーに転職する人や、その逆の人もいます。
40代〜50代プロジェクトや組織を率いる大きな開発プロジェクトの責任者、設計部門の部長、研究所の幹部などになります。宇宙ベンチャーを立ち上げたり、経営に加わったりする人もいます。

ロケット・衛星ができるまで

1 構想・要求 何のために、どの くらいの性能か決める 2 基本設計 形・重さ・電力を決め 部品ごとに割りふる 3 詳細設計 CADで図面を描き CAEで強さや熱を計算 4 試作と試験 強度・燃焼・振動の 試験で確かめる 5 製造・組み立て 本番用の部品を作り 作業ごとに検査と記録 6 全体試験 振動・温度・真空を 再現して試す 7 打ち上げ・運用 衛星や探査機は、その後何年も地上から運用 設計審査や試験で、設計が正しいかを確かめる作る前に、計算と試験で確かめる
1
構想・要求を決める

どんな目的で、どのくらいの性能が必要かを、JAXAやお客さんと決めます。

2
基本設計

全体の形、重さ、電力などを決め、部品ごとの担当に割りふります。設計審査で計画を確認します。

3
詳細設計

部品ごとにCADで図面を描き、CAEで強さや熱を計算して、設計を細かく決めます。

4
試作と試験

部品や試作機を作り、強度試験や燃焼試験、振動試験などで設計が正しいかを確かめます。

5
製造・組み立て

本番用の部品を作り、工場で組み立てます。作業ごとに検査と記録を行います。

6
全体試験

完成した機体で、打ち上げの振動や宇宙の温度、真空などを再現した試験を行います。

7
打ち上げ・運用

射場に運んで打ち上げます。衛星や探査機は、その後何年も地上から運用を続けます。

宇宙・航空機エンジニアのある1日

8:30

出社。メールで海外の協力メーカーから夜のうちに届いた質問を確認します。

9:00

チームの朝会。設計の進み具合と、今週の試験の予定を確認します。

9:30

CAEソフトで、担当する部品の強度を計算します。条件を変えて何通りも解析します。

12:00

昼休み。社員食堂で、別の部品を担当する同期と情報交換をします。

13:00

設計審査会に出席し、自分の設計の考え方と計算結果を説明して、質問に答えます。

15:00

工場に行き、試作品の製造の様子を確認します。作りにくい部分について製造担当と相談します。

16:30

試験データを整理し、計算と実験の結果が合っているかを調べます。

17:30

設計書や試験報告書を書き、上司に確認してもらいます。

18:30

退社。打ち上げや試験の前は、試験場に泊まりがけで出張することもあります。

もっと知りたい人へ

そもそも宇宙・航空機エンジニアとは

宇宙・航空機エンジニアは、空や宇宙を飛ぶ乗り物を作る技術者の総称です。空を飛ぶ乗り物は、重いと飛べず、弱いと壊れるため、「軽くて強い」ことが何より大切です。さらに、空の上や宇宙では故障しても簡単に直せないので、ほかの乗り物よりずっと高い信頼性が求められます。そのため、設計、計算、試験、確認を何度もくり返して作ります。航空機の分野と宇宙の分野は、使う技術に共通点が多く、同じ会社の中で両方に関わる人もいます。

航空機と宇宙機のちがい

航空機は、空気の力(揚力)で浮かび、何十年も毎日のように飛び続けます。そのため、長く使っても壊れにくいことや、燃費のよさが大切です。ロケットは一回の打ち上げで大きな力を出し切ることが求められ、人工衛星や探査機は宇宙で何年も修理なしに動き続けることが求められます。求められる性質の違いが、設計の考え方の違いになります。

日本の航空宇宙産業の特徴

日本では、自衛隊の航空機やロケット、人工衛星を国内のメーカーが開発してきました。旅客機では、ボーイング787の主翼や胴体の一部を日本のメーカーが作るなど、海外メーカーとの共同開発で大きな役割を担っています。ジェットエンジンでも、国際共同開発に日本の会社が参加しています。

宇宙ビジネスの広がり

これまで宇宙開発は国が中心でしたが、今は民間の会社が月面探査機や小型ロケット、宇宙のごみを回収する衛星などを開発しています。国も宇宙戦略基金などで民間の挑戦を後押ししています。宇宙・航空のエンジニアが活躍できる場所は広がっています。

なるためのルート

もっとも多いのは、大学の工学部で航空宇宙工学や機械工学、電気電子工学などを学び、大学院の修士課程で研究をしてから、メーカーやJAXAに就職する道です。国の職業情報サイトでも、宇宙開発技術者は大学院で専門分野を学んでから就職するケースがほとんどとされています。一方、航空機の製造や品質保証、整備の分野では、高専や学部卒で入る人も多く活躍しています。自動車、IT、建設などの業界で経験を積んでから転職してくる人もいます。

  1. 高校で理系を選ぶ物理と数学III・Cまで学べるコースを選びます。工学部の受験では物理がほぼ必要になります。
  2. 工学部に進む航空宇宙工学科、機械工学科、電気電子工学科、情報工学科などで、力学や電気、プログラミングの基礎を学びます。
  3. 研究室に入る3〜4年生で、構造、推進、制御、流体などの研究室を選び、卒業研究をします。
  4. 大学院(修士)へ進む研究をさらに深め、学会で発表します。研究開発職を目指す人の多くがここまで進みます。
  5. メーカー・JAXAなどに就職大手重工メーカー、電機メーカー、宇宙ベンチャー、JAXAなどの採用試験を受けます。
  6. 現場で経験を積む設計、試験、製造の現場で経験を重ね、10年ほどかけて一人前の専門家になります。
航空宇宙工学科でなくてもなれる

航空宇宙工学科は全国でも数が限られています。実際の職場には、機械工学科、電気電子工学科、情報工学科、物理学科、材料工学科など、さまざまな学科の出身者がいます。ロケットや飛行機は多くの技術の組み合わせなので、どの分野の専門も必要とされます。

高専からの道

高専の機械工学科や電気電子工学科から、メーカーの技術職に就職する人や、大学の3年生に編入して大学院まで進む人がいます。高専には人工衛星やロケットを作る活動に取り組んでいる学校もあります。

試験・選考の詳細

この仕事に必須の国家資格はありません。就職のときの選考がいちばん大きな関門になります。大手メーカーの技術職の採用では、大学の推薦制度を使う人と、自由応募で受ける人がいます。選考では、大学や大学院での研究内容を説明し、技術的な質問に答える面接が中心です。JAXAの採用も人気が高く、エントリーシート、適性検査、複数回の面接などを経て決まります。

学校推薦と自由応募

工学部では、メーカーから大学に推薦の枠が届き、学内で選ばれた学生がその会社を受ける「学校推薦」という制度が残っています。推薦で受けると、選考の回数が少なかったり、内定が出やすかったりする傾向があります。どの会社の枠があるかは大学や学科によって違います。

研究の説明が大切

技術面接では「なぜその研究をしたのか」「どんな工夫をしたか」「うまくいかなかったときどうしたか」がよく聞かれます。研究内容が航空宇宙と直接関係なくても、考え方や取り組み方が評価されます。

関係する資格

働いてから取る資格として、技術士(航空・宇宙部門)があります。技術士は国家資格で、専門分野の高い技術力の証明になります。ほかに、航空機の整備に関わる人は航空整備士などの資格を取ります。設計者の多くは、資格よりも実務の経験で評価されます。

年収のリアル

国の統計をもとにした平均年収は、宇宙開発技術者が約612万円(平均43.9歳)、ジェットエンジンの開発エンジニアが約659万円(平均42.3歳)です(いずれも令和7年調査の目安)。大手の重工メーカーでは、会社全体の平均年間給与が三菱重工業で1,072万円、IHIで1,001万円(いずれも2026年3月期)と、製造業の中でも高い水準です。宇宙ベンチャーでは、月面探査機を開発するispaceの平均年間給与が1,076万円(2026年3月期)です。ただし、これらは事務職や管理職も含めた会社全体の平均なので、若手の技術者はこれより低くなります。

大手メーカーの給与の上がり方

大手メーカーでは、年齢や役職に応じて少しずつ給与が上がるしくみが中心です。20代のうちは大きな差がつきにくく、30代後半で管理職になると大きく上がります。残業代や家族手当などの手当も給与の一部になります。

研究機関の給与

JAXAや国立大学の給与は、それぞれの機関の給与規程にもとづき、国家公務員の給与に近いしくみで決まります。民間の大手メーカーより低めのこともありますが、研究の自由度や社会的な役割の大きさにひかれて選ぶ人が多いです。

やりがい

何年もかけて開発したロケットが打ち上がる瞬間や、設計に関わった飛行機が初めて空を飛ぶ瞬間は、ほかでは味わえない感動があります。はやぶさ2のように、世界で初めての成果を出すプロジェクトに関われることもあります。また、天気予報、カーナビの位置情報、衛星放送、飛行機での移動など、宇宙・航空の技術は毎日の生活を支えています。自分の仕事が、多くの人の暮らしや科学の発見につながっていると実感できる仕事です。

チームで大きなものを作る達成感

一つの機体には何百人、何千人ものエンジニアが関わります。自分一人ではとても作れない大きなものを、チームで力を合わせて完成させる達成感があります。

最先端の技術に触れられる

軽くて強い材料、極低温の燃料、放射線に強い電子機器など、宇宙・航空の分野では最先端の技術が使われます。ここで生まれた技術が、自動車やスポーツ用品など、ほかの分野に広がることもあります。

大変なこと・きついこと

開発の期間がとても長く、一つのプロジェクトが10年以上かかることもあります。自分が担当した部品が実際に飛ぶのを見るまでに、何年も待つことがあります。また、少しのミスが大きな事故や打ち上げの失敗につながるため、責任が重く、確認作業や書類づくりにも多くの時間を使います。打ち上げや試験の前後は、試験場への長期の出張や、休日の作業が続くこともあります。

失敗と向き合う

ロケットの打ち上げや試験で失敗すると、社会から大きな注目を浴びます。原因を徹底的に調べ、対策をして次に挑むまでの期間は、精神的にも厳しい時間です。それでも失敗から学ぶことが、技術を前に進める力になります。

勤務地が限られる

航空宇宙の工場や試験場は、愛知県、岐阜県、兵庫県、茨城県、鹿児島県など、特定の地域に集まっています。希望する仕事のために、地方の工場や試験場に住むことになる場合もあります。

向いている人

物理や数学が好きで、物の仕組みを考えるのが楽しい人に向いています。小さな部品一つにもこだわり、最後まで確認を怠らない慎重さも大切です。一方で、たくさんの人と協力して一つのものを作るため、自分の意見を伝え、人の意見を聞くコミュニケーションの力も必要です。長い開発期間を投げ出さずに取り組める根気のある人が活躍しています。

宇宙が好きなだけで大丈夫?

宇宙や飛行機が好きという気持ちは、長い開発を続ける大きな原動力になります。ただ、実際の仕事は計算、図面、試験、書類づくりが中心です。地道な作業の積み重ねを楽しめるかどうかも考えてみましょう。

英語は必要?

航空機の分野では、海外メーカーとの共同開発が多く、技術文書は英語が中心です。宇宙の分野でも、海外の部品メーカーや宇宙機関とのやりとりがあります。英語で技術資料を読む力はあったほうが大きな武器になります。

高校生のうちにできること

まずは物理(特に力学)と数学をしっかり学ぶことが、いちばんの準備になります。教科書の公式を覚えるだけでなく、なぜその式になるのかを考える習慣をつけておくと、大学の力学の授業で役立ちます。また、模型ロケットやドローン、ロボットを作るクラブや大会に参加すると、ものづくりの楽しさと難しさを体験できます。JAXAの施設見学や、大学のオープンキャンパスで航空宇宙の研究室を見学するのもおすすめです。

科学館や施設を見学する

JAXAの筑波宇宙センターや種子島宇宙センター、相模原キャンパスなどでは、見学できる施設があります。航空機メーカーの工場見学や、航空博物館もあります。本物を見ると、仕事のイメージがぐっと具体的になります。

プログラミングにも触れておく

現代のロケットや飛行機は、ソフトウェアなしでは動きません。設計の計算やシミュレーションにもプログラミングを使います。高校の情報の授業をきっかけに、簡単なプログラムを書いてみましょう。

代表的な会社・職場

宇宙・航空機エンジニアの主な職場は、大手の重工メーカー(三菱重工業、川崎重工業、IHI、SUBARU)、電機メーカー(三菱電機、NEC)、JAXA、そして宇宙ベンチャーです。三菱重工業はH3ロケットや旅客機の主翼、川崎重工業は航空機の胴体やヘリコプター、IHIはジェットエンジンやロケットエンジン、SUBARUはヘリコプターや旅客機の中央翼、三菱電機とNECは人工衛星を手がけています。宇宙ベンチャーには、月面探査のispace、小型ロケットのインターステラテクノロジズ、宇宙ごみ除去のアストロスケールなどがあります。

JAXAの役割

JAXA(宇宙航空研究開発機構)は、日本の宇宙開発と航空の研究を担う国の機関です。ロケットや探査機の計画を立て、メーカーと一緒に開発し、研究者として新しい技術を研究します。宇宙飛行士の活動を支えるのもJAXAの仕事です。

部品・材料のメーカー

機体メーカーだけでなく、炭素繊維を作る東レのような材料メーカーや、小さな精密部品を作る中小企業も、航空宇宙産業を支えています。こうした会社で航空宇宙の部品を担当するエンジニアもいます。

大学の学部・学科とのつながり

もっとも直接つながっているのは、工学部の航空宇宙工学科です。東京大学工学部航空宇宙工学科、名古屋大学工学部機械・航空宇宙工学科、東北大学工学部機械知能・航空工学科、九州大学工学部、大阪公立大学工学部航空宇宙工学科、日本大学理工学部航空宇宙工学科、東海大学工学部航空宇宙学科などがあります。ただし、実際に働く人の出身学科は、機械工学科がとても多く、電気電子工学科、情報工学科、材料工学科、物理学科なども多いです。理学部の地球惑星科学科や天文学科から、探査機の観測装置や宇宙科学の研究に進む人もいます。

学科ごとに担当する分野が違う

機械工学科の出身者は構造やエンジン、電気電子工学科の出身者はアビオニクスや電源、情報工学科の出身者はソフトウェアや制御、材料工学科の出身者は軽くて強い材料の開発を担当することが多いです。自分の得意な分野から、航空宇宙に関わる道が開けます。

JAXAで学べる大学院

JAXAの宇宙科学研究所では、総合研究大学院大学や、東京大学大学院などと連携して大学院生を受け入れています。大学院生のうちから、実際の探査機や観測装置の開発に関わる経験ができることもあります。

学生の衛星・ロケットづくり

いくつかの大学では、学生が小型の人工衛星を作って実際に宇宙に打ち上げたり、ロケットを作って飛ばしたりする活動をしています。こうした経験は、就職の面接でもよく話題になります。

大学院は必要?

研究開発や設計の仕事を目指すなら、修士課程まで進むのが一般的です。国の職業情報サイトでも、宇宙開発技術者で働く人には修士卒、博士卒が多く、大学院で専門分野を学んでから就職するケースがほとんどとされています。一方、航空機の製造、品質保証、整備の分野では、学部卒や高専卒で活躍する人も多く、大学院が必須というわけではありません。研究者としてJAXAや大学で働きたい場合は、博士課程まで進むのがふつうです。

修士で身につくこと

修士課程の2年間では、自分で研究の計画を立て、実験やシミュレーションを行い、学会で発表する経験を積みます。この経験が、企業での設計や試験の仕事の進め方とよく似ているため、研究開発職の採用で評価されます。

博士課程に進む人

博士課程まで進む人は、JAXAや大学の研究者、メーカーの研究所の研究職を目指すことが多いです。宇宙開発技術者の統計では、博士卒の割合も高く出ています。

よくある質問

宇宙飛行士とはどう違いますか?

宇宙飛行士は宇宙に行って実験や作業をする人で、JAXAが不定期に行う選抜試験で選ばれます。宇宙・航空機エンジニアは、地上でロケットや宇宙船を作り、運用する人です。エンジニアから宇宙飛行士の選抜を受けた人もいます。

航空宇宙工学科に行かないとなれませんか?

なれます。実際の職場には機械、電気電子、情報、材料、物理などの学科の出身者がたくさんいます。航空宇宙工学科は、航空宇宙に特化した授業や研究室がある点が特徴です。

文系からなれますか?

設計や開発の技術者として働くには理系の知識が必要なので、高校で理系を選ぶのが最短です。文系の人は、メーカーやJAXAの事務職、営業職、宇宙ビジネスの企画などで宇宙・航空に関わる道があります。

女性のエンジニアはいますか?

人数はまだ男性が多いですが、女性のエンジニアや研究者も増えていて、ロケットや探査機のプロジェクトで活躍しています。

パイロットになるのとは違いますか?

パイロットは飛行機を操縦する仕事で、航空大学校や航空会社の養成課程を経て資格を取ります。エンジニアは飛行機を作る仕事なので、学ぶ内容や道すじがまったく違います。

大学院まで行くとお金がかかりませんか?

大学院の授業料はかかりますが、奨学金や、研究のお手伝いをして給料をもらう制度(RA)を使う人もいます。博士課程では、国の支援で生活費が出る制度もあります。

宇宙ベンチャーと大手メーカーはどちらがいいですか?

大手メーカーは研修や待遇が安定していて、大きなプロジェクトに関われます。ベンチャーは若いうちから幅広い仕事を任されやすいですが、会社の経営が安定しているとは限りません。どちらにも経験者の転職が多くあります。

どの地域で働くことが多いですか?

航空機の工場は愛知県や岐阜県、兵庫県などに多く、ロケットの打ち上げは鹿児島県の種子島、JAXAの主な拠点は茨城県つくば市、東京都調布市、神奈川県相模原市などにあります。

数学や物理が苦手でもなれますか?

設計や研究の仕事では、物理と数学を毎日のように使います。高校の段階で苦手でも、大学でしっかり学び直して活躍している人はいます。まずは力学の基本を理解することから始めましょう。

この分野のことば

年収について:厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)」の宇宙開発技術者の平均年収611.9万円(平均43.9歳)、航空機開発エンジニア(ジェットエンジン)の平均年収659万円(平均42.3歳)。いずれも令和7年賃金構造基本統計調査をもとにした目安で、近い職業もまとめて集計されています。上場企業の例では、H3ロケットを開発する三菱重工業の平均年間給与が1,072万円、ジェットエンジンやロケットエンジンを手がけるIHIが1,001万円(いずれも2026年3月期の有価証券報告書、会社全体の平均)です。

数字はすべて公開データにもとづく目安です。出典は出典・サイトポリシーにまとめています。

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