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消防車より救急車の出動のほうがずっと多い。火を消すだけでなく、命をつなぐ仕事

消防士

消防士(消防官)は、火事を消すだけでなく、救急車で病人やけが人を病院へ運んだり、交通事故や水害の現場で人を助け出したり、火事が起きないように建物を検査したりする仕事です。多くは市町村が運営する消防本部(東京都は東京消防庁)の地方公務員で、全国の消防職員は169,730人(2025年4月)です。24時間交替で消防署に待機し、119番通報があれば昼でも夜でもすぐに出動します。高校卒業でも大学卒業でもなれ、採用後は消防学校で訓練を受けてから現場に出ます。

平均年収の目安約650万円1年目 約400万円台〜50代の管理職で800万円以上
なるまでの難しさ★★★★★東京消防庁I類の倍率は2025年度第1回で約4倍、第2回で約9倍と、回や地域によって大きく変わります。教養試験・論文・面接に加えて体力検査があり、合格後は消防学校で半年〜1年ほどの厳しい訓練があります。人気の高い市の消防本部では採用人数が少なく、10倍をこえることもあります。
決めどき文系・理系どちらでも

高校3年(III類・高卒程度)か大学3〜4年(I類・大卒程度)で受験。体力づくりは高1から

どんな職種がある?

押すと、その職種の仕事内容・必要な力・キャリアが見られます。

消防士の年収と昇進の流れ

階級と年収の目安 消防監以上 本部の最高幹部 850〜1,500万円 消防司令長 署長・課長 650〜850万円 消防司令 中隊長・係長 550〜750万円 消防司令補 隊長 500〜670万円 消防士長 隊の中心 450〜620万円 消防副士長 後輩の手本 400〜550万円 消防士 新人隊員 350〜500万円 0 500 1,000 1,500 昇任試験に合格して上がる 消防長は消防司令長以上の人だけ 階級が上がるほど、指揮する範囲が広がる
一部の消防本部では消防副士長を置かず、消防士から消防士長に上がります
消防士(消防学校・新人隊員)350〜500万円
採用1〜3年目(18〜26歳ごろ)

消防学校を出て、消防隊などの隊員として現場の基本を学ぶ段階です。学歴や在職年数に応じて昇任試験の受験資格を得ていきます。

消防副士長400〜550万円
採用数年目(20代)

経験を積んだ隊員として、後輩の手本になる段階です。一部の消防本部ではこの階級を置かず、消防士から消防士長に上がります。

消防士長450〜620万円
20代後半〜30代

隊の中心となる隊員で、機関員や救急隊員として専門の役割を担います。昇任試験に合格すると消防司令補になれます。

消防司令補(隊長)500〜670万円
30〜40代

ポンプ隊や救急隊、救助隊の隊長として、現場で隊員を指揮します。さらに試験や選考を経て消防司令に上がります。

消防司令(中隊長・係長)550〜750万円
40代〜

いくつかの隊をまとめる中隊長や、消防署の係長として、現場全体の指揮と署の運営を担います。

消防司令長(署長・課長クラス)650〜850万円
50代〜

消防署長や消防本部の課長など、組織の運営を担う幹部です。消防長になれるのは消防司令長以上の人に限られます。

消防監以上(本部の最高幹部)850〜1,500万円
50代後半〜

消防本部の部長や消防長として、組織全体を率います。東京消防庁のトップである消防総監は全国に1人だけの階級です。

年収は目安です。会社や地域、本人の働き方で大きく変わります。

働き方で何が違う?

東京消防庁初任給 I類 302,100円、III類 約264,700円(地域手当20%を含む)

東京23区と多摩地域の多くの市町村を担当する、日本最大の消防本部です。消防吏員は19,545人(2025年4月)で、10の消防方面本部、81の消防署、208の出張所(2023年)があります。高層ビルや地下鉄、大規模な工場など都市特有の災害に備え、ハイパーレスキューなどの専門部隊を持っています。採用人数も多く、I類・III類・専門系と区分が分かれています。

良いところ専門部隊や研修の機会が多い、給料水準が高い、採用人数が多い

大変なところ出動件数がとても多く忙しい、東京の中での異動がある

政令指定都市の消防局(大阪市・横浜市・名古屋市など)市の給料表による(平均年収は全国平均の約650万円前後かそれ以上が目安)

人口の多い大都市が自前で運営する消防本部です。大都市ならではの高層建築物や地下街の災害、港や工業地帯の事故に対応する専門部隊を持っています。救急出動の件数も多く、救急救命士の活躍の場が広いのが特徴です。採用試験は市ごとに行われ、その市の中で異動します。

良いところ大きな組織で専門性を伸ばしやすい、都市部の地域手当がある

大変なところ出動件数が多く体力的に大変、採用倍率が高めになりやすい

地方の市町村・広域消防本部自治体の給料表による(地域手当が少なく、都市部より低めになりやすい)

中小の市や町、いくつかの市町村がまとまって運営する消防本部です。全国の消防本部の多くはこのタイプで、職員数は数十人〜数百人規模です。山林火災、水害、山岳救助など自然災害への対応が多く、地域の消防団と協力する場面が多いのが特徴です。職員が少ないぶん、一人が消火・救急・救助などいくつもの役割をこなします。

良いところ地元で地域に密着して働ける、幅広い仕事を経験できる

大変なところ採用人数が少なく年によっては募集がない、給料は都市部より低め

代表的な会社・職場

消防本部(日本最大)政令指定都市の消防局市町村が共同で運営する消防本部消防職員の教育機関
東京消防庁消防本部(日本最大)

東京23区と多摩地域の多くの市町村を担当します。ハイパーレスキューなどの専門部隊を持ち、消防吏員は19,545人(2025年4月)です。

初任給 I類 302,100円(2026年4月採用の案内)
大阪市消防局政令指定都市の消防局

大阪市を担当する大規模な消防本部です。都市型の災害や大規模イベントへの対応を行います。

横浜市消防局政令指定都市の消防局

人口約370万人の横浜市を担当する消防本部です。港や工業地帯での災害にも備えています。

名古屋市消防局政令指定都市の消防局

名古屋市を担当する消防本部で、中部地方の中心都市の防災を担います。

札幌市消防局政令指定都市の消防局

札幌市を担当する消防本部で、雪の多い地域ならではの救急・救助活動も行います。

福岡市消防局政令指定都市の消防局

福岡市を担当する消防本部で、空港や港を抱える都市の災害に対応します。

川崎市消防局政令指定都市の消防局

川崎市を担当する消防本部で、臨海部の石油コンビナートなどの災害に備えた部隊を持ちます。

各地の広域消防本部・消防組合市町村が共同で運営する消防本部

いくつかの市町村がまとまって運営する消防本部です。地方の消防の多くはこの形で、地域に密着した活動を行います。

消防大学校・都道府県消防学校消防職員の教育機関

消防職員が採用後や昇任時に研修を受ける学校です。経験豊富な職員が教官として新人や幹部を育てます。

どうやって稼いでいる?

住民 住民税や 固定資産税を払う 市町村 議会で毎年の 消防費を決める 消防本部 給料・消防車 消防署の建物 119番で出動 救急車も 無料で来る 税金 予算 ほかのお金の流れ 東京23区 東京都がまとめて運営(東京消防庁) 小さな市町村 いくつかで一緒に消防を運営 国の補助金 緊急消防援助隊の車両などに 消防団 団員の装備や手当も市町村の予算 消防は、ほぼすべて税金でまかなわれる
消防団の団員は732,223人(2025年)で、ふだんは別の仕事をしながら地域の消防を手伝います

消防は会社ではないので、火事を消したり救急車で運んだりしても、お金をもらうことはありません。日本では救急車も無料です。消防の活動にかかるお金は、ほぼすべて税金でまかなわれています。消防は市町村の仕事と法律で決められており、消防士の給料や消防車、消防署の建物などのお金は主に市町村の予算から出ています。たとえば、みなさんの家族が払っている住民税や固定資産税の一部が、119番や救急車の費用になっているということです。小さな市町村では1つで消防本部を持つのが難しいため、いくつかの市町村が一緒に「一部事務組合」や「広域連合」をつくって消防を運営しています。

1
市町村の予算(消防費)

消防職員の給料や消防署の運営費は、市町村の一般会計の「消防費」から出ます。市町村議会で毎年の予算が決められ、その範囲で消防車の購入や職員の採用を行います。

2
東京都の特例(東京消防庁)

東京23区の消防は、区ごとではなく東京都がまとめて運営しており、それが東京消防庁です。多摩地域の多くの市町村も東京消防庁に消防を任せており、その市町村は東京都に費用を払っています。

3
国の補助金(緊急消防援助隊など)

大きな災害に全国から駆けつける「緊急消防援助隊」の車両や資機材の一部は、国の補助金で整備されます。たとえば、ヘリコプターや大型の救助車両などです。

4
消防団の費用

ふだんは別の仕事をしながら地域の消防を手伝う消防団(団員732,223人、2025年)の装備や手当も、市町村の予算から出ています。消防署の職員と協力して、火事や災害に対応します。

入ってからどうなっていく?

採用〜1年目消防学校都道府県などの消防学校で、半年〜1年ほど、消火や救助、救急の基本、法律、体力訓練を学びます。全寮制が多く、給料をもらいながら訓練を受けます。
1〜3年目消防署の隊員(消防士)消防署に配属され、ポンプ隊などで先輩と一緒に出動します。ホースの延ばし方、資機材の扱い方、24時間勤務の生活リズムを身につけます。
3〜8年目専門の道を選ぶ(消防副士長・消防士長)救急隊員の資格を取る、救助隊の選抜を受ける、機関員として消防車の運転を任されるなど、自分の専門を決めていく時期です。昇任試験に合格すれば消防士長として隊の中心を担います。
8〜15年目隊長クラス(消防司令補)消防司令補に昇任すると、ポンプ隊や救急隊の隊長として、現場で隊員を指揮します。救急救命士の資格を取り、救急隊長になる人も多い時期です。
15〜25年目係長・中隊長(消防司令)消防司令になると、消防署の係長や、いくつかの隊をまとめる中隊長として、現場全体の指揮や署の運営を担います。
25年目〜定年署長・本部の幹部(消防司令長以上)消防司令長以上は、消防署長や消防本部の課長・部長など、組織全体を動かす幹部です。退職後は、ビルの防災センター、防災設備の会社、自治体の防災担当などに再就職する人もいます。

119番通報から救急車が病院に着くまで

通報からの時間(2024年の全国平均) 0分 通報 約9.8分 現場に着く 約44.6分 病院に着く 119番通報 指令員が住所や症状を聞き取る 1 出動指令 一番近い救急車に指令 2 現場到着と観察 意識・呼吸・脈拍。必要ならAED 3 応急処置 救急救命士は点滴や薬の投与も 4 病院を選んで搬送 受け入れを頼み、車内でも処置 5 帰署と次の準備 消毒し、資器材を補充して記録 6 1分でも早く、病院の医師へつなぐ
黄色の段階が、上の時間の目盛りの「現場に着く」と「病院に着く」です
1
119番通報

通報は消防の指令センターにつながり、指令員が「火事ですか、救急ですか」と確認して、住所や症状を聞き取ります。

2
出動指令

指令員がコンピューターの地図で場所を確かめ、一番近い救急車に出動を指令します。必要に応じて消防車も一緒に出動させます。

3
現場到着と観察

救急隊が現場に着き(2024年の全国平均は約9.8分)、意識・呼吸・脈拍などを確認します。心臓が止まっていれば、すぐに心肺蘇生とAEDを使います。

4
応急処置

止血や骨折の固定、酸素の投与などを行います。救急救命士は医師の指示を受けて点滴や薬の投与もできます。

5
病院の選定と搬送

症状に合った病院に電話で受け入れを頼み、救急車で運びます。車内でも処置を続け、病院の医師に患者の状態を引き継ぎます(病院収容まで全国平均約44.6分)。

6
帰署と次の出動準備

救急車を消毒し、使った資器材を補充して、活動記録を作ります。準備ができたらすぐに次の出動に備えます。

消防官採用試験(東京消防庁 I類・III類・専門系の例)

合格率東京消防庁I類 2025年度 第1回 教養試験方式4.1倍・適性検査方式3.9倍、第2回9.4倍
勉強時間の目安教養試験・論文・体力の対策で半年〜1年ほど準備する人が多い(目安)
受験資格東京消防庁I類は大学卒業程度で、2024年度から36歳未満まで受験でき、III類は高校卒業程度です。専門系は建築・電気・化学・法律などの専門知識を持つ人(年度により条件が変わるため募集要項で確認)
筆記試験は高校までの学習内容が中心で、地方公務員の事務職と同じくらいの難易度といわれます。ただし体力検査と面接の比重が大きく、筆記だけでは合格できません。東京消防庁のように採用人数の多い組織では倍率は3〜4倍ほどですが、地方の小さな消防本部では採用が数人だけということもあり、倍率が10倍をこえることもあります。合格後も消防学校での訓練や、何年も続く昇任試験があり、「入ってからの努力」が長く続く仕事です。
試験科目(押すと中身が見られます)
合格までの流れ
  1. 出願インターネットで申し込みます。東京消防庁I類では教養試験方式か適性検査方式かを選びます。
  2. 1次試験教養試験(または適性検査)と論文を受けます。
  3. 1次合格発表筆記の結果で2次試験に進む人が決まります。
  4. 2次試験体力検査、身体検査、面接を受けます。
  5. 最終合格・採用受験資格の確認も含めて最終合格が決まり、採用されると消防学校に入校します。

消防士のある1日

8:30

勤務を始め、前の当番から引き継ぎを受けて、消防車や救急車、資機材を点検します(24時間勤務の例)

9:00

朝礼で、その日の訓練内容や注意事項を確認します

10:00

ホース延長や救助ロープの訓練、資機材の点検をします

11:20

救急出動の指令が入り、転んでけがをした高齢者を病院へ搬送して、署に戻って救急車を消毒します

12:15

昼食をとります。当番の隊員が交替で料理を作る消防署も多いです

13:00

管内の飲食店の防火訪問や、消火栓の点検、体力トレーニングを行います

17:15

夕食と休憩をとります。出動指令が鳴れば食事中でもすぐに出動します

18:30

出動報告書の作成、署内での研修、事務処理をします

22:00

交代で仮眠をとります。夜間も119番があればすぐに起きて出動します

翌8:30

次の当番に引き継いで勤務を終えます。この日は非番(休み)になります

もっと知りたい人へ

そもそも消防士とは

消防士は、消防組織法と消防法という法律にもとづいて、火事や災害から人々の命・体・財産を守る公務員です。正式には「消防吏員」と呼ばれ、「消防士」はその中の一番下の階級の名前でもあります。全国には消防本部が720、消防署が1,716あり、消防職員は169,730人(2025年4月)です。そのうち女性は6,993人で、まだ少ないものの年々増えています。仕事は消火だけでなく、救急、救助、火災予防、119番の受付、市民への防災教育まで幅広く、実際の出動の多くは救急です。

消防本部と消防署

消防本部は市町村ごと(または複数の市町村がまとまって)に置かれた消防の本部で、消防署はその下で地域を担当する現場の拠点です。たとえば、東京消防庁は1つの消防本部の下に81の消防署と208の出張所(2023年)があり、街のあちこちに配置されています。

消防士と消防団のちがい

消防士(消防職員)は、消防を仕事とする常勤の公務員です。一方、消防団員は、ふだんは会社員や自営業などをしながら、火事や災害のときに地域で活動する非常勤の公務員です。全国の消防団員は732,223人(2025年)で、とくに地方では消防署と消防団が協力して地域を守っています。

消防の仕事の中心は救急

全国の救急出動は年間771万8,380件(2024年)で、およそ4秒に1回、救急車が出動している計算です。高齢化で救急の需要は増え続けており、消防士の多くが救急の知識と技術を身につけています。

なるためのルート

消防士になるには、働きたい市町村の消防本部(東京都なら東京消防庁)の採用試験を受けて合格するのが基本です。採用区分は、大学卒業程度の「I類」と、高校卒業程度の「III類」が一般的で、東京消防庁には建築や電気、化学、法律などの専門知識をもつ人向けの「専門系」もあります。年齢の上限は消防本部によってちがい、東京消防庁のI類・専門系は2024年度から上限を35歳まで引き上げました。採用されると、都道府県などの消防学校で訓練を受けてから消防署に配属されます。

  1. 高校・大学で学ぶ文系・理系どちらでも受験できます。教養試験の勉強と、ランニングや筋トレによる体力づくりを早めに始めておくと安心です。
  2. 採用試験を受ける1次試験で教養試験(または適性検査)と論文、2次試験で体力検査・身体検査・面接を受けます。
  3. 消防学校に入る合格して採用されると、消防学校で半年〜1年ほど、消火・救助・救急の基本と体力を身につけます。
  4. 消防署に配属される卒業すると消防署に配属され、24時間交替勤務で先輩と一緒に出動しながら現場を学びます。
  5. 専門をきわめる・昇任する救急救命士や救助隊員などの専門資格を取ったり、昇任試験に合格して隊長や係長になったりして、キャリアを広げます。
高卒で入るか、大卒で入るか

高校卒業後すぐにIII類で入れば、若いうちから現場経験を積めます。大卒のI類で入ると初任給が高く、昇任試験を受けられるまでの年数が短い消防本部が多いです。たとえば東京消防庁の初任給はI類 302,100円、III類 約264,700円(2026年4月採用の案内)です。

救急救命士の資格を持って入る道

大学や専門学校で救急救命士の国家資格を取ってから消防に入る人も増えています。救急救命士の資格を持つ人だけを対象にした採用枠を設けている消防本部もあります。たとえば、医療系の大学で救急救命学を学んで、救急隊員として即戦力で働く道です。

どの消防本部を受けるか

消防は市町村ごとの組織なので、採用されるとその地域の中で働きます。地元で働きたいか、大都市で働きたいかで受ける消防本部を選び、試験日が重ならなければいくつか併願できます。

試験・選考の詳細

消防士の採用試験は、学力を見る筆記試験と、体力・人物を見る試験の組み合わせです。東京消防庁I類の場合、1次試験は「教養試験方式」か、SPI3(民間企業の就職でよく使われる適性検査)を使う「適性検査方式」を選び、さらに800〜1,200字程度の論文を90分で書きます。2次試験は、体力検査、身体検査(胸部X線、血圧、心電図、視力、聴力など)、面接です。面接では「なぜ消防士になりたいのか」「チームの中でどんな役割をしてきたか」などが聞かれます。体力検査では、消火や救助に必要な体力があるかが確認されます。

教養試験の中身

教養試験は、法律・政治・経済・社会・日本史・世界史・地理・理科などの「一般的知識」と、文章理解・数的処理などの「一般的知能」から出題されます。たとえば、数学の割合や速さの問題、図形の問題、国語や英語の長文読解などです。高校の授業の内容がそのまま土台になります。

倍率の目安

東京消防庁I類の最終倍率は、2025年度第1回の教養試験方式で4.1倍、適性検査方式で3.9倍、第2回で9.4倍でした。2024年度は第1回3.1倍、第2回7.7倍です。市町村の消防本部は採用人数が数人〜数十人と少ないところも多く、地域によっては10倍をこえることもあります。

体力検査の対策

体力検査の種目は消防本部によってちがいますが、腕立て伏せ、上体起こし、反復横とび、握力、長座体前屈、シャトルラン(20mの往復走)などがよく行われます。たとえば、学校の体力テストに近い種目が多いので、ふだんから体力テストで高い点を取れるように鍛えておくと安心です。

階級と昇任のしくみ

消防の階級は、下から消防士、消防副士長、消防士長、消防司令補、消防司令、消防司令長、消防監、消防正監、消防司監、消防総監の10段階です(消防本部によっては一部の階級を置かないこともあります)。消防総監は東京消防庁のトップだけに与えられる階級で、全国に1人しかいません。昇任は、学歴や在職年数に応じて受験資格が得られる昇任試験や、勤務成績にもとづく選考で行われます。現場では、消防士・消防副士長が隊員、消防士長が隊の中心、消防司令補が隊長、消防司令が中隊長や係長というのがひとつの目安です。

昇任試験の中身

昇任試験では、消防法や消防組織法などの法律、消防の戦術、救急や救助の知識、論文、面接などが問われます。仕事をしながら勉強を続ける必要があり、非番の日や休みの日に勉強時間を確保する人が多いです。

階級ごとの給料の目安

東京消防庁の場合、階級によって給料表の「級」が変わり、消防士は1級、消防士長は2級、消防司令補は3級、消防司令は4〜5級、消防司令長は6〜7級にあたります。級が上がるほど月給の上限が高くなります。

現場をきわめる道

昇任よりも、救助隊や救急救命士として現場の第一線にいたいと考える人もいます。たとえば、救助技術大会で全国一をめざす隊員や、何千件もの救急出動を経験したベテラン救命士は、組織の中でも大きな尊敬を集めています。

勤務形態(24時間交替制)

消防署の現場で働く消防士の多くは、24時間勤務を交替で行う「交替制勤務」です。代表的なのは、当番(24時間勤務)・非番(勤務明けの休み)・日勤や週休を組み合わせる「3交替制(3部制)」と、当番と非番を1日おきにくり返す「2交替制(2部制・隔日勤務)」です。当番の日は朝8時30分ごろに勤務を始め、翌朝8時30分ごろまで消防署にいて、夜は交代で仮眠をとります。予防や総務などの内勤の職員は、平日の昼間に働く「毎日勤務(日勤)」です。

当番・非番・週休

当番は24時間勤務の日、非番は当番明けの日で、朝に勤務が終わったらその日は休みになります。週休は通常の休日です。たとえば3交替制なら「当番→非番→日勤(または週休)」のくり返しで、平日に自由な時間ができやすいのが特徴です。

消防署での生活

当番の日は、消防署で仲間と一緒に食事をとり、仮眠室で交代で休みます。料理当番を決めて自分たちで食事を作る消防署も多く、チームの一体感が強まります。出動指令が鳴れば、食事中でも寝ている途中でもすぐに出動します。

年収のリアル

消防士の給料は、警察官と同じ「公安職」の給料表などで決まり、一般の事務職の公務員より高めです。これに夜間勤務手当、出動手当、地域手当、扶養手当、住居手当などが加わり、年2回のボーナス(期末・勤勉手当)も出ます。総務省の調査(2024年4月時点)をもとにすると、消防職の平均給与月額は約41万円、ボーナスは約160万円で、平均年収は約650万円が目安です。初任給は東京消防庁でI類 302,100円、III類 約264,700円、専門系 306,900円(2026年4月採用の案内、地域手当を含む)です。

地域による差が大きい

消防は市町村ごとの組織なので、給料表や地域手当が自治体によってちがいます。たとえば、東京消防庁のように地域手当が20%つく大都市と、地域手当がほとんどない地方の町では、同じ年齢でも年収に100万円近い差が出ることもあります。

出動が多いと手当も増える

救急出動や夜間勤務には手当がつくため、出動件数の多い都市部の消防署では手当の額も大きくなります。逆に、出動の少ない地域では手当が少なくなります。

安定した公務員の待遇

公務員なので、景気が悪くなっても給料が大きく下がることはほとんどありません。退職金や年金、育児休業などの制度も整っており、長く安心して働ける環境です。

やりがい

消防士のやりがいは、命の危機にある人を自分たちの手で直接救えることです。火事の中から逃げ遅れた人を助け出したり、心臓が止まった人に心肺蘇生をして命をつないだりした経験は、ほかの仕事ではなかなか得られません。また、助けた人やその家族から感謝の手紙が届くこともあり、人の役に立っていることを強く実感できる仕事です。

仲間との強いきずな

24時間を一緒に過ごし、命がけの現場で助け合う消防士どうしは、家族のような強いきずなで結ばれます。たとえば、部活で一緒に厳しい練習を乗りこえた仲間のような関係が、仕事でもずっと続くイメージです。

自分の成長が見える

訓練をくり返すことで、ホースを延ばす速さや救助の技術が目に見えて上達していきます。救助技術大会など、技術を競う場もあり、目標を持って努力し続けられます。

地域を守る誇り

消防車や救急車が走ると、子どもたちが手を振ってくれることもあります。地域の人から信頼され、「あの消防士さんがいるから安心」と思ってもらえることは大きな誇りになります。

大変なこと・きついこと

消防士の仕事は、命の危険と隣り合わせです。燃えている建物の中に入る、崩れそうながれきの下にもぐる、増水した川に入るなど、危険な現場での活動があります。また、24時間勤務では夜中に何度も出動指令で起こされることもあり、体力的にも大変です。救急や事故の現場では、重いけがの人や亡くなった人を見ることもあり、心の負担も大きい仕事です。

体力を保ち続ける必要

防火服と空気呼吸器を合わせると20kg以上の装備を身につけて動くこともあり、年齢を重ねても高い体力を保つ必要があります。勤務中にもトレーニングの時間があり、休みの日も体を鍛え続ける人が多いです。

心のケア

悲惨な現場を経験したあとに、眠れなくなったり気持ちが落ち込んだりすることもあります。消防本部では、カウンセリングなど職員の心のケアの仕組みを整えています。

救急の増加による忙しさ

救急出動は年々増えており、都市部の救急隊では1回の当番で10件以上出動することもあります。休む時間が取りにくく、救急隊の負担が大きいことが課題になっています。

向いている人

消防士に向いているのは、困っている人を助けたいという気持ちが強い人、体を動かすのが好きな人、仲間と協力して何かをやりとげるのが好きな人です。危険な現場でも落ち着いて行動できる冷静さや、厳しい訓練を続けられるねばり強さも大切です。また、救急の現場では患者や家族に優しく声をかける思いやりも求められます。

こんな経験がある人

運動部で毎日練習を続けてきた人、チームスポーツで声をかけ合ってきた人、文化祭や体育祭で裏方としてみんなを支えた人などは、その経験が消防の仕事に生きます。たとえば、水泳部で鍛えた泳力は水難救助で、吹奏楽部で身につけた息を合わせる力はチームでの活動で役立ちます。

向いていないかもしれない人

集団生活が苦手な人、夜中に起こされるのがどうしてもつらい人、血を見るのが極端に苦手な人は、最初は大変と感じるかもしれません。ただし、予防や指令、内勤など、現場以外の仕事もあります。

高校生のうちにできること

高校生のうちにできる一番の準備は、体力づくりと基礎学力の積み上げです。ランニング、腕立て伏せ、腹筋、懸垂などを続けると、体力検査だけでなく消防学校の訓練でも大きな差になります。教養試験には高校の国語・数学・英語・社会・理科の内容が出るので、授業をしっかり受けることがそのまま試験対策になります。地域や学校で開かれる救命講習(普通救命講習)を受けて、心肺蘇生とAEDの使い方を学んでおくのもおすすめです。

消防署の見学やイベント

多くの消防署では、見学を受け付けていたり、「消防フェア」などのイベントで消防車の展示や救助訓練の披露をしていたりします。たとえば、夏休みに一日消防体験や、職場体験で消防署を訪れると、実際の消防士の生活を知ることができます。

文理選択の考え方

消防士は文系・理系どちらからでもなれます。救急救命士をめざすなら救急救命学科のある大学や専門学校、予防の専門家をめざすなら建築・電気・化学などの理系学部に進む人もいます。高卒で受験するなら、教養試験は幅広い科目が出るので、苦手科目を作らないことが大切です。

水泳や自動車免許

水難救助のために泳力を求められる消防本部もあるので、泳げるようにしておくと安心です。また、消防車を運転するには大型や中型の免許が必要になるため、採用後に取得することが多いです。

代表的な職場

消防士の勤め先は、全国720の消防本部(2025年4月)です。最大の組織は東京消防庁で、消防吏員は19,545人(2025年4月)と全国の消防吏員の1割以上を占めます。大阪市消防局、横浜市消防局、名古屋市消防局、札幌市消防局、福岡市消防局など、政令指定都市の消防局も大きな組織です。地方では、いくつかの市町村がまとまった広域の消防本部が多く、地域に密着した消防活動を行っています。

大都市と地方のちがい

大都市の消防本部は、高層ビルや地下街、大きな工場などの災害に備えた特殊な部隊が多く、出動件数もとても多いです。地方の消防本部は、山林火災や水害、山岳救助など自然を相手にした活動が多く、地域の消防団と協力する場面が多いです。

消防に近い仕事

空港には空港消防(航空機の事故に対応する専門の消防)があり、大きな石油コンビナートには会社の自衛消防隊があります。また、海上保安庁の特殊救難隊や、自衛隊の災害派遣も、人を助けるという点で消防と近い仕事です。

よくある質問

女性でも消防士になれますか?

なれます。全国の女性消防吏員は6,386人(2025年4月)で、全体の約4%とまだ少ないですが、国は女性消防吏員を増やす目標を立てており、消防署に女性用の仮眠室や浴室を整備する取り組みも進んでいます。救急隊や指令、予防、さらには消防隊や救助隊で活躍する女性もいます。

高校生でも消防士の採用試験を受けられますか?

はい、高校3年生でIII類(高卒程度)の試験を受けることができます。合格すれば卒業後に採用され、消防学校に入ります。年齢の上限などは消防本部ごとにちがうので、募集要項で確認しましょう。

泳げないと消防士になれませんか?

採用試験で水泳を課す消防本部は多くありませんが、消防学校で水難救助の訓練があるため、泳げるようにしておくと安心です。救助隊員をめざす場合は、高い泳力が必要になります。

救急救命士の資格は必要ですか?

消防士になるのに必須ではありません。採用後に消防本部の中で選ばれて養成所で学び、国家試験に合格して資格を取る人が多いです。最初から資格を持って入ると、救急の分野ですぐに活躍しやすくなります。

24時間勤務って寝られるのですか?

夜は交代で仮眠をとりますが、出動指令があれば起きてすぐに出動します。救急出動の多い都市部では、夜中にほとんど眠れないこともあります。そのかわり、当番明けの日は非番となり、昼から休むことができます。

転勤はありますか?

消防本部は市町村ごとの組織なので、採用された消防本部の管内(その市や地域)の中で数年ごとに異動します。他の県や市に転勤することは基本的にありません。

メガネをかけていても消防士になれますか?

多くの消防本部では、メガネやコンタクトレンズで矯正した視力が基準を満たしていればよいとしています。くわしい基準は受験する消防本部の募集要項で確認しましょう。

消防士をやめたあと、どんな仕事に就く人がいますか?

ビルの防災センター、消防設備の点検会社、警備会社、自治体の防災担当、救急救命士として病院などで働く人がいます。消防で身につけた防災の知識や救命の技術は、さまざまな職場で評価されます。

理系と文系、どちらが有利ですか?

採用試験は文理を問わず、どちらでも受験できます。理系の知識は教養試験の自然科学や、予防(建物や設備の検査)の仕事で役に立ち、文系の知識は法律や社会の問題で役に立ちます。

この分野のことば

年収について:総務省「地方公務員給与実態調査」(2024年4月時点)をもとにした消防職の平均給与月額 約41万円とボーナス 約160万円から計算した平均年収 約652万円が目安です(民間の解説記事による集計)。東京消防庁の初任給はI類 302,100円、III類 約264,700円、専門系 306,900円です(2026年4月採用の試験案内、地域手当を含む)。市町村によって給料表や地域手当がちがうため差が大きくなります。

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