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裁判のときだけ出番があるのではありません。トラブルが起きる前に会社を守る「社内の法律の専門家」です

法務

法務は、会社の活動が法律に合っているかを確かめ、トラブルから会社を守る職種です。取引先と結ぶ契約書のチェック、新しいサービスが法律に違反しないかの確認、社員が法律を守るためのルールづくり、裁判になったときの対応、株主総会の準備などを担当します。たとえば、スマホアプリの会社が新しいサービスを始めるとき、利用規約や個人情報の扱いが法律に合っているかを確認するのが法務です。弁護士資格がなくても働けますが、最近は弁護士資格を持つ企業内弁護士も増えています。

平均年収の目安約710万円約465万円(20代)〜約967万円(50代以上)
なるまでの難しさ★★★★★法務になるのに必須の資格はありませんが、民法や会社法など法律の知識が必要で、法学部出身者が多い職種です。新卒で法務に配属される人は多くなく、経験者の中途採用が中心の会社もあります。法律知識を示す資格としてビジネス実務法務検定(2級の合格率43.3%、2025年度第58回)があり、最難関の弁護士資格を持つ企業内弁護士は2025年時点で3,596人まで増えています。
決めどき文系が中心

高校では文系を選ぶ人が多い。大学は法学部が最も多く、弁護士資格も目指すならロースクールや予備試験のルートを大学1〜2年で考える

法務の中の、細かい担当

同じ法務でも、担当によって仕事はまったく違います。押すと、それぞれの仕事内容・必要な力・キャリアが見られます。

どんな会社にある?

法務は、大企業や上場企業では独立した法務部として置かれていることが多く、数人から百人以上の規模まであります。特に、取引の多い総合商社、金融機関、IT企業、メーカー、製薬会社などで法務の役割が大きいです。中小企業では法務部がないことも多く、総務部が契約書を確認し、難しい問題は外部の顧問弁護士に相談するのが一般的です。急成長するIT系のベンチャー企業では、新しいサービスと法律の関係を確かめるために、早い段階から法務担当者を置くことが増えています。

どの学部の人が多い?

法務には法学部出身の人が最も多く、大学で学ぶ民法、会社法、民事訴訟法などの知識がそのまま仕事に使われます。弁護士資格を持つ人は、法科大学院(ロースクール)を修了するか予備試験に合格して司法試験に合格した人です。ただし、経済学部や商学部、文学部の出身で、入社後に法律を学んで法務として活躍している人もいます。特許などの知的財産を扱う仕事では、理工学部出身の人が技術の知識を活かして働いていることもあります。

法務の年収と昇進の流れ

担当(スタッフ)400〜550万円
入社1〜5年目、22〜27歳

定型的な契約書のチェックや法律の調査を担当します。一人で契約書の修正案を出し、事業部と交渉できるようになると次の段階に進みます。

主任・担当事業の法務550〜750万円
入社5〜10年目、28〜33歳

特定の事業部を担当し、大きな契約や法律相談を一人でこなします。訴訟やM&Aなど専門分野の経験が昇進につながります。

法務課長・マネージャー750〜1,000万円
35〜45歳

法務部のチームを率い、重要な案件や紛争対応を指揮します。経営陣への助言も行います。

法務部長1,000〜1,500万円
45〜55歳

会社全体の法務の方針を決め、取締役会や経営陣に法律の面から助言します。

ゼネラルカウンセル・法務担当役員1,500〜3,000万円
50歳以降

法務の最高責任者として経営陣に加わり、会社のガバナンスとリスク管理全体に責任を持ちます。外資系企業や大企業で置かれることが多い役職です。

年収は目安です。会社や地域、本人の働き方で大きく変わります。

働き方で何が違う?

大企業の法務部30代で600万〜900万円、部長クラスで1,000万円以上が目安

大企業では法務部の人数が多く、契約法務、訴訟、コンプライアンス、知的財産、機関法務などのチームに分かれています。一つの分野を深く担当でき、大きな案件に関われます。企業内弁護士も多く働いており、外部の大手法律事務所と協力して仕事を進めます。

良いところ専門性を深められ、大きな案件に関われる

大変なところ担当が細かく分かれ、若手のうちは定型的な仕事が中心になりやすい

中小企業の総務・法務会社によって差が大きく、400万〜600万円ほどが目安

中小企業では法務部がないことも多く、総務部の社員が契約書の確認や株主総会の準備を担当します。難しい問題は外部の顧問弁護士に相談します。法律の仕事を幅広く経験できます。

良いところ総務や人事も含めて幅広い仕事を経験できる

大変なところ法務の専門的な経験は積みにくく、一人で判断する場面が多い

ベンチャー企業の法務経験者は600万〜1,000万円ほどもあり、ストックオプションがつくことも

IT系などのベンチャー企業では、新しいサービスの利用規約づくり、資金調達の契約、上場準備など、スピード感のある法務の仕事があります。法律がまだ追いついていない新しい分野に挑むこともあります。

良いところ新しい事業に法務として深く関われ、裁量が大きい

大変なところ一人法務になりやすく、仕事の範囲が広く変化が速い

外資系企業の法務30代で800万〜1,200万円以上の場合もある

外資系企業では、海外の本社の法務部と連携しながら、日本の法律に合わせた対応を担当します。英語で仕事をする場面が多く、成果に応じた評価の仕組みです。

良いところ年収が高めで、国際的な法務の経験が積める

大変なところ高い英語力が求められ、本社の方針に左右されることもある

企業内弁護士と法律事務所の弁護士企業内弁護士は500万〜1,000万円程度が中心と言われ、法律事務所のパートナーはさらに高い収入を得ることもある

弁護士資格を持つ人は、法律事務所で多くの会社の依頼を受ける働き方と、企業内弁護士として一つの会社に深く関わる働き方を選べます。法律事務所で経験を積んでから企業に移る人も多くいます。

良いところ企業内弁護士はビジネスに深く関われ、働く時間が比較的安定している

大変なところ法律事務所ほど収入の上限は高くないことが多い

代表的な会社・職場

IT企業総合商社信託銀行外資系IT・通販証券会社メガバンク人材・情報サービス法律事務所
LINEヤフー ›IT企業

インターネットサービスを提供し、2025年時点で企業内弁護士が80人と日本で最も多い会社です。

三井物産 ›総合商社

世界中で取引や投資を行い、企業内弁護士は41人(2025年時点)です。

丸紅 ›総合商社

国内外で幅広い事業を行い、企業内弁護士は34人(2025年時点)です。

三井住友信託銀行 ›信託銀行

お金や財産の管理・運用を行う銀行で、企業内弁護士は34人(2025年時点)です。

アマゾンジャパン ›外資系IT・通販

ネット通販やクラウドサービスを提供し、企業内弁護士は33人(2025年時点)です。

野村證券 ›証券会社

株や債券の売買、会社の資金調達の支援などを行い、企業内弁護士は30人(2025年時点)です。

三菱商事 ›総合商社

エネルギー、食品、金属など幅広い事業を行い、企業内弁護士は26人(2025年時点)です。

三井住友銀行・三菱UFJ銀行メガバンク

企業や個人にお金を貸し、預金を預かる大手銀行で、企業内弁護士はそれぞれ25人(2025年時点)です。

リクルート ›人材・情報サービス

就職、住まい、旅行などの情報サービスを運営し、企業内弁護士は22人(2025年時点)です。

企業法務を扱う法律事務所法律事務所

会社から依頼を受けて、M&A、訴訟、契約などの法律の仕事を行います。事業会社の法務部の主な協力相手です。

›がついた会社は、会社図鑑で詳しく解説しています。

どうやって稼いでいる?

守り損失を防ぐ攻め事業を前に進める契約書のチェック不利な条件を見つけ大きな賠償を防ぐコンプライアンス罰金や裁判を前もって防ぐ新しいサービスどうすれば実現できるか一緒に考える特許・商標ほかの会社に使わせてライセンス料の収入外部の弁護士費用を管理社内でできることは社内で行い、費用を抑える法務は「守り」と「攻め」で会社を支える
契約書の不利な条件に気づかずにサインすると、後で何億円もの損害賠償を払うことになりかねません

法務は、売上を直接かせぐ部署ではなく、会社を法律のリスクから守る管理部門です。しかし、法務の仕事は会社の利益に大きく関わっています。契約書の不利な条件に気づかずにサインしてしまうと、後で何億円もの損害賠償を払うことになりかねません。不正やデータの漏えいが起きれば、罰金だけでなく会社の信用を大きく失います。反対に、法務が早い段階から関わることで、新しいサービスを安心して始められ、特許で技術を守ればライセンス料という収入を生むこともあります。法務は「守り」と「攻め」の両方で会社を支えています。

1
損失を防ぐ

契約書のチェックやコンプライアンスの取り組みで、裁判や罰金、損害賠償といった大きな損失を前もって防ぎます。

2
事業を前に進める

新しい事業やサービスを法律の面から支え、「どうすれば実現できるか」を一緒に考えることで、会社の成長を後押しします。

3
知的財産による収入

特許や商標をほかの会社に使わせることで、ライセンス料という収入を得ることがあります。

4
外部の弁護士費用の管理

法律事務所に仕事を頼むと費用がかかります。社内でできることは社内で行い、外部に頼む仕事を見極めることで費用を抑えます。

5
法律事務所・リーガルテックの売上

会社の法務を外から支える法律事務所は、相談料や時間ごとの報酬で、契約書チェックなどのサービスを提供するリーガルテック企業は利用料で売上を得ています。

入ってからどうなっていく?

1〜3年目契約書チェックの基本を学ぶ秘密保持契約など定型的な契約書の確認から始め、先輩の指導を受けながら法律の使い方を身につけます。総務や営業を経験してから法務に移る人もいます。
4〜7年目担当事業を持つ特定の事業部の法務担当として、契約の交渉や法律相談を一人でこなします。ビジネス実務法務検定や英語の勉強を進める人も多いです。
30代前半専門分野を広げる訴訟対応、M&A、知的財産、データ保護など、専門的な分野を担当します。海外の大学院に留学する人もいます。
30代後半〜40代法務課長・マネージャー法務部の一つのチームを率い、大きな案件や紛争の対応を指揮します。法律事務所から事業会社に移ってくる弁護士もこの年代に多いです。
40代後半〜50代法務部長会社全体の法務の方針を決め、経営陣や取締役会に助言します。
50代以降ゼネラルカウンセル・役員ゼネラルカウンセル(法務の最高責任者)として経営陣に加わる人もいます。社外取締役や監査役として、ほかの会社の経営を監督する道もあります。

1通の契約書が結ばれるまで

営業部法務相手の会社1 確認を依頼相手の契約書2 一文ずつ読む3 修正案を作る4 交渉する5 社内の承認6 署名して締結7 期限を知らせる営業と相手の会社の間で、契約を整える
最近は電子契約で結ぶことも増えています
1
依頼を受ける

営業部などから「この会社と取引したいので契約書を確認してほしい」と依頼が届きます。取引の目的や金額を聞き取ります。

2
契約書を読む

相手から届いた契約書を一文ずつ読み、責任の範囲、支払い、秘密の扱い、契約の終わり方などに問題がないかを確認します。

3
修正案を作る

会社にとって不利な部分やあいまいな部分について、修正案とその理由をまとめます。

4
交渉する

営業担当を通じて、または相手の法務担当と直接、修正について話し合い、お互いが納得できる内容にまとめます。

5
社内の承認

重要な契約は、社内のルールにそって上司や役員の承認を得ます。

6
締結する

双方がサインや電子署名をして契約が成立します。最近は電子契約で結ぶことも増えています。

7
管理する

契約書を保管し、更新や終了の期限が近づいたら担当部署に知らせます。

ビジネス実務法務検定(東京商工会議所)

合格率2025年度第58回:3級38.3%、2級43.3%、1級9.2%
勉強時間の目安3級・2級は数か月ほど計画的に勉強して受験する人が多く、論述式の1級はさらに長い準備が必要
受験資格受験資格の制限はなく、誰でも受験できる(1級は2級合格者が対象)
3級と2級は合格率が4割前後で、法律を初めて学ぶ人でも勉強すれば合格を目指しやすい試験です。1級は合格率が1割前後で、具体的な事例に法律を当てはめて文章で答える力が求められます。法務の仕事で最も評価が高い資格は弁護士ですが、司法試験に合格するには法科大学院か予備試験を経る必要があり、長い年月の準備が必要です。
試験科目(押すと中身が見られます)
合格までの流れ
  1. 3級ビジネスに必要な法律の基礎を問う試験です。パソコンを使って受験します。
  2. 2級実務での法律の使い方を問う試験で、法務の仕事の入り口の目安になります。
  3. 1級2級合格者が受験でき、論述式で高度な応用力を問います。合格率は1割前後です。
  4. さらに上の資格弁護士、司法書士、弁理士など、より専門的な国家資格に進む人もいます。

法務のある1日

9:00

メールとチャットで届いた契約書の確認依頼と相談を整理し、急ぐ順に並べます。

9:30

営業部から依頼された販売契約書を読み、損害賠償の上限について修正案を作ります。

11:00

新しいアプリの開発チームと打ち合わせし、利用規約と個人情報の扱いを確認します。

12:00

昼休み。

13:00

取引先とのトラブルについて、外部の法律事務所の弁護士とオンラインで作戦を相談します。

14:30

海外の会社から届いた英文の契約書を読み、問題点をまとめます。

16:00

マーケティング部から、広告の表現が景品表示法に違反しないかの相談を受けます。

17:00

来月の株主総会に向けて、想定問答集の担当部分を作ります。

18:00

法改正のニュースをチェックし、明日のチーム会議で共有する内容をまとめて退社します。

もっと知りたい人へ

そもそも法務とは

法務は、会社の中で法律に関わる仕事をまとめて担当する職種です。会社は、商品を売る、人を雇う、お金を借りる、ほかの会社と協力するなど、あらゆる場面で法律と関わっています。法務は、その一つ一つが法律に合っているかを確かめ、トラブルを防ぎ、もしトラブルが起きたら会社を守ります。病院でたとえると、病気になってから治療する「治療」だけでなく、病気にならないように健康診断や予防をする「予防」の役割が大きいのが特徴です。この考え方を予防法務と呼びます。

法務と弁護士のちがい

弁護士は、司法試験に合格して弁護士会に登録した法律の専門家で、法律事務所などでいろいろな会社や個人の依頼を受けます。法務は会社の社員として、自分の会社のために法律の仕事をする職種です。法務部員の中には、弁護士資格を持つ企業内弁護士もいます。

予防法務・臨床法務・戦略法務

法務の仕事は、トラブルを防ぐ予防法務、起きたトラブルに対応する臨床法務、事業の成長を法律の面から支える戦略法務の三つに分けて説明されることがあります。最近は特に戦略法務の重要性が高まっています。

なるためのルート

法務になる道には、新卒で法務部に配属される道、総務や営業などを経験してから法務に異動する道、法律事務所などで経験を積んでから転職する道、弁護士資格を取って企業内弁護士として入社する道などがあります。法務部は少人数のことが多く、新卒の配属は限られるため、経験者の中途採用が中心の会社も少なくありません。

  1. 高校文系を選ぶ人が多いですが、理系から知的財産の仕事を目指す道もあります。国語の読解力と社会科の知識が基礎になります。
  2. 大学(法学部が多い)法学部で民法、会社法、民事訴訟法などを学びます。ビジネス実務法務検定などで知識を確かめる人もいます。
  3. 就職活動法務職の職種別採用がある会社に応募するか、総合職で入社して法務への配属を希望します。
  4. 弁護士資格を目指す場合法科大学院を修了するか予備試験に合格し、司法試験に合格します。司法修習を終えて弁護士登録をし、法律事務所か企業に就職します。
  5. 経験を積む契約書チェックから始め、法律相談、訴訟対応、M&Aなどへと担当を広げます。
  6. 管理職・専門家へ法務課長、法務部長、ゼネラルカウンセルを目指します。海外留学で外国の弁護士資格を取る人もいます。
企業内弁護士の増加

企業内弁護士の数は、2001年の66人から2025年には3,596人に増えました(日本組織内弁護士協会調べ)。登録している弁護士全体の7.6%にあたります。法律事務所から企業へ移る弁護士や、司法修習を終えてすぐに企業に入る弁護士も増えています。

資格がなくても法務になれる

法務部の社員の多くは弁護士資格を持っていません。法学部で学んだ知識と、会社での経験を組み合わせて活躍している人がたくさんいます。

試験・選考の詳細

法務になるために必須の資格はありません。法律の知識を示す資格として、東京商工会議所のビジネス実務法務検定があり、3級は基礎、2級は実務、1級は高度な応用力を問います。知的財産を担当する人には知的財産管理技能検定や弁理士、株主総会などを担当する人には会社法の知識が役立ちます。弁護士資格を持っていると、法務の中でも高い専門性を示せます。

ビジネス実務法務検定の合格率

2025年度の第58回では、3級が38.3%、2級が43.3%、1級が9.2%でした。2級と3級はパソコンを使うIBT方式などで受験します。法務の仕事の入り口の知識を確かめるのに役立ちます。

司法試験

弁護士になるための試験で、法科大学院の修了か予備試験の合格が受験の条件です。2025年の短答式試験では受験者3,837人のうち2,902人が合格基準に達し、その後の論文式試験を経て最終合格者が決まります。

年収のリアル

法務の平均年収は約710万円で、20代は約465万円、50代以上では約967万円が目安です(doda、2025年版)。人事や経理と比べて高い水準で、管理部門の中でも上位です。法律という専門性が評価されることや、経験者の中途採用が多いことが理由と考えられます。企業内弁護士は500万〜1,000万円程度が中心と言われ、英語で国際的な取引を扱える人や、法務部長、外資系企業の法務責任者ではさらに高い年収になります。

法律事務所との比較

大手法律事務所のパートナー(共同経営者)の弁護士は、非常に高い収入を得ることもあります。一方、企業内弁護士は収入の上限は法律事務所ほど高くないものの、働く時間が比較的安定していることが魅力と言われます。

専門性と英語で差がつく

M&A、国際取引、データ保護など専門性の高い分野の経験や、英語で契約交渉ができる力があると、転職市場での評価が大きく上がります。

やりがい

法務のやりがいは、自分の知識で会社を守り、新しい挑戦を支えられることです。契約書の問題点に気づいて会社の損失を防いだとき、法律の壁をうまく乗り越える方法を見つけて新しいサービスが世に出たときには、大きな達成感があります。また、ビジネスの最前線で法律を使うので、教科書の知識が現実の社会でどう生きるかを実感できます。経営陣から頼りにされ、会社の重要な判断に関われるのも魅力です。

事業を一緒に作る

新しいサービスの企画の段階から法務が関わると、開発チームと一緒に「どうすれば実現できるか」を考えられます。自分が関わったサービスが世の中に出たときの喜びは大きいものです。

専門性が積み上がる

法律の知識と経験は、会社が変わっても活かせます。経験を重ねるほど判断の質が上がり、頼られる存在になっていきます。

大変なこと・きついこと

法務は、会社のリスクを見張る役割なので、事業部と意見がぶつかることがあります。「早く契約したい」と急ぐ営業に対して、リスクを指摘して止めなければならない場面もあり、板挟みになることがあります。法律は毎年のように改正されるので、勉強をやめることができません。訴訟や不正の調査など、重い問題に向き合う責任も大きいです。また、大量の契約書を短い期限で確認しなければならず、忙しい時期が続くこともあります。

「ブレーキ役」と思われがち

法務がリスクを指摘すると、「仕事を止める部署」と見られてしまうことがあります。代わりの案を出して、事業を前に進める姿勢が求められます。

正解が一つではない

法律の解釈は人によって分かれることがあり、はっきりした答えがないまま判断しなければならない場面も多くあります。

向いている人

法務に向いているのは、文章を正確に読むのが得意で、細かい言葉の違いにも気づける人です。物事を筋道立てて考え、相手が納得するように説明する力も大切です。法律の知識だけでなく、会社のビジネスに興味を持ち、「どうすれば事業がうまくいくか」を一緒に考えられる人が活躍しています。調べものが好きな人、新しい法律や社会の変化に興味がある人にも向いています。

こんな人に向いている

国語の長文読解が得意な人、ディベートや話し合いで筋の通った意見を言うのが好きな人、ルールの抜け穴や矛盾に気づきやすい人は、法務の仕事に向いているかもしれません。

英語が強みになる

海外との取引が多い会社では、英語の契約書を読み、英語で交渉する機会があります。英語ができると担当できる仕事の幅が大きく広がります。

高校生のうちにできること

法務の仕事の土台は、文章を正確に読み、筋道立てて考える力です。国語の現代文の読解や小論文の練習は、そのまま契約書を読む力につながります。公共や政治・経済の授業で学ぶ憲法、民法、契約、消費者の権利は、法務の基礎知識です。2022年4月から成年年齢が18歳に引き下げられ、18歳になると親の同意なしに契約を結べるようになったので、スマホの契約やネット通販の利用規約を実際に読んでみるのもよい練習になります。

利用規約を読んでみる

ふだん使っているアプリやゲームの利用規約を最後まで読んでみると、会社がどんなことに気をつけているかがわかります。法務の担当者が作った文章に触れる機会です。

模擬裁判やディベートに参加する

学校や大学、弁護士会が開く模擬裁判や、ディベートの大会に参加すると、法律の考え方や、筋道立てて主張する力を体験できます。

代表的な会社・職場

法務部は、取引の多い大企業や上場企業に多く置かれています。総合商社、銀行や証券会社などの金融機関、IT企業、大手メーカー、製薬会社などでは、法務部の人数も多く、企業内弁護士も多く働いています。2025年時点で企業内弁護士が最も多かったのはLINEヤフーの80人で、三井物産、丸紅、三井住友信託銀行、アマゾンジャパンなどが続きます(日本組織内弁護士協会の集計)。

事業会社の法務部

自社の契約書チェック、法律相談、訴訟対応、コンプライアンスなどを担当します。業界によって、よく使う法律が違います。たとえば、金融機関では金融の規制、IT企業では個人情報やネットの法律が重要です。

法務を支える会社

企業法務を扱う法律事務所、特許事務所、契約書のチェックや管理を効率化するリーガルテックの会社などが、会社の法務を外から支えています。

企業法務で使う主な法律

法務の仕事では、さまざまな法律を使います。契約の基本となる民法、株式会社のしくみを決める会社法、公正な競争のルールを決める独占禁止法、立場の弱い取引先を守る取適法(旧下請法)、広告や表示のルールを決める景品表示法、個人情報を守る個人情報保護法、働くルールを決める労働基準法、特許や商標を守る知的財産の法律などです。業界によっては、銀行法や薬機法など、その業界だけの法律も重要になります。

民法と会社法

民法は契約や損害賠償など、人と人、会社と会社の関係の基本ルールを決めた法律です。会社法は、株主総会や取締役会など、株式会社の組織のルールを決めた法律です。法務の仕事の土台になる二つの法律です。

取適法(旧下請法)

2026年1月1日に施行された法律で、大きな会社が立場の弱い取引先に不当な値下げや支払いの遅れを押しつけることを禁止しています。下請法を改正して名前も変わり、価格の話し合いに応じないことや、手形での支払いも禁止されました。

これからの法務

法務の仕事は、テクノロジーと社会の変化で大きく変わっています。AIを使った契約書チェックのサービスが広がり、定型的な確認作業は効率化されつつあります。一方で、生成AIの利用ルール、個人情報やデータの扱い、海外の新しい規制など、新しい法律の課題が次々に生まれています。会社の成長を法律の面から支える戦略法務の役割はますます重要になり、ビジネスを理解した法務の人材が求められています。

リーガルテック

法律の仕事をITで効率化するサービスをリーガルテックと呼びます。契約書のチェック、電子契約、契約書の管理などのサービスが広く使われるようになっています。

新しい技術と法律

生成AI、自動運転、ドローン、暗号資産など、新しい技術にはまだルールが整っていない部分があります。法務の担当者は、国の議論を追いながら、会社がどう対応するかを考えます。

よくある質問

法務になるには弁護士資格が必要ですか?

必要ありません。法務部の社員の多くは弁護士資格を持たずに働いています。ただし、企業内弁護士は年々増えており、2025年には3,596人になりました。資格があると、より専門的な仕事を任されやすくなります。

法学部に行かないと法務になれませんか?

法学部出身の人が最も多いですが、ほかの学部の出身で法務として働いている人もいます。入社後に法律を勉強したり、ビジネス実務法務検定などで知識を身につけたりする人もいます。

法務と弁護士の違いは何ですか?

弁護士は国家資格を持つ法律の専門家で、法律事務所などでさまざまな依頼人の仕事をします。法務は会社の社員として、自分の会社のために法律の仕事をする職種です。弁護士が会社に勤めて法務部で働くこともあります。

法務の仕事で英語は必要ですか?

国内の取引が中心の会社ではあまり使わないこともありますが、海外との取引がある会社では英語の契約書を読む機会が多いです。英語ができると、国際法務やM&Aなど担当できる仕事が広がります。

法務はAIに仕事を取られますか?

定型的な契約書のチェックなどは、AIを使ったサービスで効率化が進んでいます。しかし、会社の状況に合わせて判断する、相手と交渉する、新しい事業のリスクを考えるといった仕事は、人の判断が必要です。AIを使いこなす法務が求められています。

理系でも法務の仕事はできますか?

できます。特に知的財産の分野では、技術の内容を理解できる理系出身者が活躍しています。特許の専門家である弁理士を目指す理系の人も多いです。

法務は裁判ばかりしているのですか?

裁判の対応は法務の仕事の一部で、多くの時間は契約書のチェックや社内からの法律相談に使われます。トラブルを起こさないための予防が、法務の中心的な役割です。

高校生のうちに法律の勉強を始めたほうがいいですか?

専門的な勉強はまだ必要ありませんが、国語の読解力や、筋道立てて考える力をきたえておくと役立ちます。公共や政治・経済の授業で、憲法や契約の考え方をしっかり学んでおくとよいでしょう。

企業内弁護士と法律事務所の弁護士はどちらがよいですか?

どちらにも良さがあります。法律事務所ではさまざまな会社の案件を経験でき、高い収入を目指せることもあります。企業内弁護士は一つの会社のビジネスに深く関わり、働く時間が比較的安定していると言われます。自分がどんな働き方をしたいかで選ぶ人が多いです。

この分野のことば

年収について:転職サービスdoda「平均年収ランキング(2025年版)」の職種「法務」の平均(2024年9月〜2025年8月の登録者データ)。管理部門の中でも高い水準です。企業内弁護士は500万〜1,000万円程度が中心と言われ、法務部長や外資系企業の法務責任者ではさらに高くなります。

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