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給料、休み、年金。働く人の「もしも」と「ふだん」を支える専門家です

社会保険労務士

社会保険労務士(社労士)は、会社で働く人にかかわる法律と手続きの専門家です。たとえば、新しく社員が入ったときの健康保険や厚生年金の手続き、仕事中にけがをしたときの労災保険の申請、残業代の計算のルールづくり、会社の就業規則(学校でいう校則のような、会社のきまり)の作成などを、会社の代わりに行います。労働や社会保険に関する書類を作って役所に出す仕事を、お金をもらって代わりに行えるのは、法律で社労士だけと決まっています。全国の社労士は46,237人(2024年度末)で、半分以上が自分の事務所を開いて働いています。

平均年収の目安勤務社労士は年収300万〜600万円未満が最も多い約4割約300万〜1,000万円以上(勤務か開業か、顧問先の数で大きく差がある)
なるまでの難しさ★★★★★社労士試験の合格率は5.5%(2025年度)と低く、受験者43,421人のうち合格者は2,376人でした。試験は年1回で、10科目すべてに「足切り」と呼ばれる最低点があり、1科目でも基準に届かないと不合格になります。勉強時間の目安は800〜1,000時間ほどで、税理士や公認会計士より短いものの、1回で合格するのは簡単ではありません。
決めどき文系が中心

高校では文理どちらでもよい。法学部・経済学部・商学部などで学びながら目指す人や、会社の人事・総務で働いてから目指す人が多い

どんな職種がある?

押すと、その職種の仕事内容・必要な力・キャリアが見られます。

社会保険労務士の年収と昇進の流れ

事務所スタッフ・人事部員(資格取得前)280〜400万円
入社・入所1〜3年、22〜28歳

社会保険の手続きや給与計算の補助を担当しながら、社労士試験の勉強を続けます。試験に合格することが次の段階への条件です。

勤務社労士(担当者)350〜550万円
登録後1〜5年、25〜33歳

自分の担当の顧問先を持ち、手続きや給与計算、労務相談を一人でこなします。就業規則の作成や、難しい相談に対応できることが次につながります。

チームリーダー・主任450〜700万円
登録後5〜10年、30〜40歳

後輩の指導をしながら、大きな顧問先や人事制度づくりを担当します。得意分野を持ち、新しいお客さんを任されることが次の段階への条件です。

マネージャー・幹部600〜900万円
登録後10年〜、35〜45歳

事務所の部門や拠点をまとめ、売上や人材育成に責任を持ちます。企業の人事部なら課長クラスにあたります。

社労士法人の代表社員・人事部長800〜1,500万円
40歳〜

法人の経営者として、事務所全体の方針と売上に責任を持ちます。企業では人事部長として会社全体の人事を担当します。

独立開業(所長)300〜2,000万円
30代〜

自分の事務所を開き、顧問先の開拓から経営まで担当します。顧問先の数で収入の差がとても大きい段階です。

年収は目安です。会社や地域、本人の働き方で大きく変わります。

働き方で何が違う?

社労士事務所・社労士法人(勤務)300万〜600万円台が目安(役職や資格で変わる)

所長と数人の小さな事務所から、何百人も働く社労士法人まであります。中小企業の顧問先を多く持ち、手続き、給与計算、相談を幅広く担当します。若いうちから多くの会社の実務を経験できるのが特徴です。事務所によって、手続き中心か相談中心かなど、仕事の中身が違います。

良いところいろいろな業種の会社の実務を早く覚えられ、独立の準備になる

大変なところ手続きの集中する時期は忙しく、事務所によって待遇の差が大きい

企業の人事・総務部(勤務社労士)勤め先の給与水準による(大企業なら30代で600万〜800万円台も)

一般の会社に社員として勤め、自社の労務管理や人事制度を担当します。会社の役職の仕組みに沿って昇進し、人事部長や人事の責任者を目指せます。大企業では、手続きよりも制度の企画や労務の管理が中心になります。

良いところ会社員として安定し、休みが取りやすい。一つの会社を深く支えられる

大変なところあつかうのは自社のことだけで、いろいろな業種の経験は積みにくい

独立開業事務所の売上は平均約1,658万円、中央値550万円(2024年度、経費を引く前)

自分の事務所を開き、中小企業と顧問契約を結んで仕事をします。社労士の半分以上が開業していて、資格の強みが最も生きる働き方です。得意な業種や分野を打ち出して、ほかの事務所との違いを作ることが成功のかぎです。

良いところ働き方を自分で決められ、定年がない。顧問先が増えれば収入が安定する

大変なところ開業直後は収入が少なく、営業や経営もすべて自分の責任

人事コンサルティング会社500万〜1,000万円ほどが目安

大企業や成長中の会社の人事制度づくり、組織の改革などを手伝う会社で働きます。社労士の資格を持つ人のほか、経営や心理学を学んだ人も多く働いています。手続きよりも、制度を設計して提案する仕事が中心です。

良いところ大きな会社の制度づくりにかかわれ、給料の水準も高め

大変なところ提案の締め切り前は忙しく、成果を強く求められる

代表的な会社・職場

個人事務所社労士法人業界団体公的な機関国の役所(厚生労働省)企業内コンサルティングアウトソーシング
街の社労士事務所個人事務所

所長と数人のスタッフで、地域の中小企業の手続きや相談を担当する事務所です。全国にたくさんあります。

事務所により大きく異なる
大手社労士法人社労士法人

全国に拠点を持ち、数百人規模で給与計算や手続きを大量に引き受ける法人です。大企業の顧問先も多く持っています。

公表なし
全国社会保険労務士会連合会・都道府県社労士会業界団体

社労士の登録や研修を行う団体です。社労士は登録すると、都道府県の社労士会に入ります。

-
日本年金機構・年金事務所公的な機関

年金の記録の管理や、年金の相談・手続きを行う機関です。年金相談の窓口で社労士が働くこともあります。

機構の給与規程による
労働局・労働基準監督署国の役所(厚生労働省)

会社が労働の法律を守っているかを調べたり、労災保険の手続きを受け付けたりする役所です。社労士がやりとりする相手です。

国家公務員の給料表による
大企業の人事部企業内

メーカー、鉄道、銀行、IT企業などの人事部で、社員の労務管理や人事制度を担当します。社労士の資格を持つ社員が多く働いています。

勤め先の給与水準による
人事コンサルティング会社コンサルティング

会社の人事制度や組織づくりを手伝う会社です。評価や給料の仕組みの設計などを担当します。

給与計算・人事アウトソーシング会社アウトソーシング

ほかの会社から給与計算や社会保険の手続きをまとめて引き受ける会社です。

どうやって稼いでいる?

顧問先の会社 例:社員20人の会社と月数万円で契約 毎月の顧問料 手続き・相談 社会保険労務士 社員の人数が多いほど顧問料は上がる 毎月入るお金 顧問料 手続きと労務相談 給与計算の代行 社員の人数に応じて 仕事ごとに入るお金 就業規則の作成 会社のきまりを 作る・直す 助成金の申請 受け取れた額に 応じた報酬が多い 年金の申請 認められたときの 成功報酬が多い 研修・コンサル 人事制度づくりや ハラスメント研修 顧問契約は毎年続くことが多い 顧問先が増えるほど、収入が安定する
社員が10人以上いる会社は、就業規則を作って労働基準監督署に届け出ることが法律で決まっています

社労士の収入の中心は、顧問先の会社から毎月もらう「顧問料」です。顧問料の中には、社会保険の手続きや労務相談が含まれることが多く、会社の社員の人数が多いほど金額が上がるのが一般的です。たとえば、社員20人の会社と月数万円で顧問契約を結び、手続きや相談を引き受けるといった形です。ほかに、毎月の給与計算の代行料、就業規則の作成料、助成金の申請の報酬など、仕事ごとにもらう収入があります。顧問契約は毎年続くことが多いので、お客さんが増えるほど収入が安定します。

1
顧問料(毎月の契約)

顧問先の会社と契約して、社会保険の手続きや労務相談を毎月決まった金額で引き受けます。社員の人数によって金額が変わるのが一般的です。かかりつけのお医者さんのように、困ったときにすぐ相談できる存在です。

2
給与計算の代行

顧問先の社員の給料を、出勤記録をもとに毎月計算します。残業代、社会保険料、税金などを正しく引いて、給与明細を作ります。社員の人数に応じて料金が決まることが多いです。

3
就業規則の作成

会社のきまりである就業規則を作ったり、法律の改正に合わせて直したりする仕事で、1回ごとに報酬を受け取ります。社員が10人以上いる会社は、就業規則を作って労働基準監督署に届け出ることが法律で決まっています。

4
助成金の申請

会社が社員の育成や働きやすい環境づくりをすると、国から助成金を受け取れることがあります。その申請を手伝い、受け取れた金額に応じた報酬をもらうことが多いです。

5
年金の申請代行

障害年金や遺族年金などの申請を代わりに行い、報酬を受け取ります。年金が認められたときに支払う成功報酬の形が多いです。

6
コンサルティング・研修

人事制度づくりや、ハラスメント防止の研修、管理職向けの労務研修などで報酬を受け取ります。会社の規模が大きいほど、1件の金額も大きくなります。

入ってからどうなっていく?

大学時代または社会人受験資格を満たして勉強する時期大学(短大を含む)を卒業するか、一定の実務経験などがあると受験できます。法学部・経済学部などで学びながら勉強する人もいますが、合格者には会社員として人事・総務で働きながら目指す人が多いです。勉強時間の目安は800〜1,000時間ほどです。
合格〜1年目登録の準備試験に合格したら、2年以上の実務経験があるか、事務指定講習を修了すると、全国社会保険労務士会連合会に登録できます。社労士事務所に就職して実務を覚えながら登録する人や、会社の人事部で働きながら登録する人がいます。
1〜5年目手続きと相談を覚える時期事務所では入社・退職の手続きや給与計算から始め、自分の担当の顧問先を持つようになります。会社員であれば、人事部の中で労務の専門家として頼られるようになります。
30代得意分野を持つ中堅介護・医療、建設、IT、障害年金、助成金、人事制度など、得意な分野を作ります。特定社会保険労務士の研修と試験を受けて、労働トラブルの解決にかかわる人もいます。この時期に独立する人も多いです。
40代事務所の経営者・人事の管理職開業した人は、顧問先を増やしてスタッフを雇い、事務所を大きくしていきます。社労士法人を作って複数の社労士と一緒に働く人もいます。企業に勤める人は、人事部の課長や部長として会社の人事を引っ張ります。
50代以降地域の労務の相談役長く付き合う顧問先の社長の相談相手として、会社の代替わりや組織の変化を支えます。講演や執筆、後進の育成をする人もいます。定年がないため、長く働き続けられる資格です。

社員が入社してから毎年まわる手続き

毎年、決まった時期にまわる手続き 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 毎月の給与計算 労働保険の年度更新 算定基礎届 年末調整の時期 算定基礎届 4〜6月の給料で、9月からの保険料を決める できごとがあったときの手続き 入社 5日以内に 保険の加入 出産・病気 給付金の 申請を手伝う 法律の改正 就業規則を 見直して届け出 退職 保険の脱退と 離職票を作る 入社から退職まで、働く人の手続きを担う
7月の算定基礎届や年末の年末調整の時期は、残業が増えることがあります
1
入社の手続き

新しい社員が入ったら、健康保険・厚生年金・雇用保険に加入する手続きを、原則5日以内に行います。

2
毎月の給与計算

出勤の記録をもとに、残業代や休んだ日を計算し、社会保険料や税金を引いて給料を確定します。

3
労働保険の年度更新(6〜7月)

1年分の給料の合計をもとに、労災保険と雇用保険の保険料を計算して申告します。

4
算定基礎届(7月)

4〜6月の給料をもとに、その年の9月からの社会保険料を決める書類を出します。

5
出産・育児・病気などの手続き

社員が出産したり、病気で長く休んだりしたときに、給付金の申請を手伝います。

6
就業規則の見直し

法律の改正に合わせて、会社のきまりを見直し、労働基準監督署に届け出ます。

7
退職の手続き

社員が辞めるときは、保険の脱退の手続きと、失業手当を受け取るための書類(離職票)を作ります。

社会保険労務士試験

例:1科目だけ最低点に届かないと 労働基準法・安衛法 労災保険法 雇用保険法 労働保険徴収法 健康保険法 国民年金・厚生年金 一般常識 科目ごとの最低点 ほかがよくても不合格 選択式は1問のまちがいで届かないことも 社会保険労務士試験(2025年度) 受験者 43,421人 合格者 2,376人 合格率 5.5% 勉強時間は800〜1,000時間ほどが目安 全科目で取りこぼさない正確さが必要
棒の長さは説明のための例です。選択式と択一式の総得点と、各科目の最低点の両方をクリアすると合格です
合格率5.5%(2025年度。受験者43,421人、合格者2,376人)
勉強時間の目安800〜1,000時間ほどが目安。働きながら1〜3年かけて合格する人が多い
受験資格大学(短大を含む)の卒業、一定の実務経験(3年以上など)、行政書士試験の合格などのいずれか
社労士試験の合格率は5.5%(2025年度)で、例年5〜7%前後の低い合格率が続いています。難しさの理由は、10科目の範囲が広いことに加えて、科目ごとに最低点(足切り)があり、1科目でも基準に届かないと不合格になることです。特に選択式では、1問の穴うめを間違えただけで基準に届かず、ほかがよくても不合格になることがあります。勉強時間は税理士や公認会計士より短いものの、すべての科目で取りこぼしをしない正確さが求められる試験です。
試験科目(押すと中身が見られます)
合格までの流れ
  1. 受験の申し込み(4〜5月)受験資格を証明する書類をそろえて申し込みます。
  2. 試験(8月の1日)午前に選択式(80分)、午後に択一式(210分)を受けます。
  3. 合格発表(10月)選択式と択一式の総得点と、各科目の最低点の両方をクリアすると合格です。
  4. 事務指定講習または実務経験実務経験が2年ない人は、事務指定講習を修了します。
  5. 登録全国社会保険労務士会連合会の名簿に登録して、社労士になります。

社会保険労務士のある1日

9:00

事務所に出勤し、顧問先からのメールと電話の伝言を確認します。「来週入社する人がいます」「社員がけがをしました」などの連絡が届いています。

9:30

入社と退職の手続きを電子申請で行います。健康保険、厚生年金、雇用保険の書類をまとめて出します。

11:00

顧問先の社長から電話で相談を受けます。「アルバイトにも有給休暇はあるの?」という質問に、法律のルールを説明します。

12:00

昼休みです。

13:00

顧問先の会社を訪問し、総務の担当者と就業規則の改定について打ち合わせをします。

15:00

事務所に戻り、毎月の給与計算を進めます。残業時間や休んだ日数を確認しながら、一人ずつ給料を計算します。

16:30

助成金の申請書類を作ります。会社が行った研修の記録や、社員の出勤簿をそろえます。

17:30

法律の改正についてのニュースを確認し、顧問先に送るお知らせの文章を作ります。

18:30

退勤します。7月の算定基礎届の時期や年末の年末調整の時期は、残業が増えることがあります。

もっと知りたい人へ

そもそも社会保険労務士とは

社会保険労務士は、「労働」と「社会保険」の法律の専門家です。労働の法律とは、働く時間、休み、給料、残業代、有給休暇などについてのルールで、たとえばアルバイトにも有給休暇があることや、残業すると通常より高い時給が払われることなどが決まっています。社会保険とは、病気やけが、出産、失業、老後などにそなえて、働く人と会社がお金を出し合う仕組みで、健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険などがあります。会社はこれらの法律を守り、たくさんの手続きをしなければなりませんが、専門の知識が必要なため、社労士に任せることが多いのです。社労士は、会社と働く人の両方を支える「働くことのお医者さん」のような存在です。

社労士だけができる仕事(独占業務)

労働や社会保険の法律にもとづく書類を作ること(1号業務)と、帳簿を作ること(2号業務)を、お金をもらって代わりに行えるのは、社労士(と弁護士)だけです。たとえば、ほかの会社の社員の雇用保険の手続きを、資格のない人が報酬をもらって引き受けることはできません。一方、人事や労務の相談(3号業務)は資格がなくてもできますが、社労士の専門性がいちばん生きる分野の一つです。

税理士・弁護士とのちがい

税理士はお金と税金、弁護士は法律の争いごと全般の専門家です。社労士は「人」にかかわるお金と手続き、つまり給料や社会保険、働き方のルールに特化しています。会社の中で「お金のことは税理士、人のことは社労士」と分けて頼むことがよくあります。

なるためのルート

社労士になるには、社会保険労務士試験に合格し、全国社会保険労務士会連合会に登録します。登録するには、2年以上の実務経験があるか、事務指定講習を修了している必要があります。試験を受けるには受験資格が必要で、大学(短大を含む)を卒業していること、一定の実務経験があること、行政書士試験に合格していることなどのいずれかを満たします。合格者には会社員が多く、人事・総務の仕事をしながら資格を取る人がよく見られます。

  1. 受験資格を満たす大学(短大を含む)を卒業する、実務経験を積む、行政書士試験に合格するなどの方法で受験資格を得ます。
  2. 試験勉強をする労働基準法、雇用保険法、健康保険法、年金の法律など10科目を勉強します。800〜1,000時間ほどが目安です。
  3. 社労士試験に合格する毎年8月に行われる試験で、選択式と択一式の両方で基準点を超える必要があります。合格発表は10月です。
  4. 実務経験か事務指定講習2年以上の実務経験がない人は、通信講座と講習でできている事務指定講習を修了します。
  5. 登録して社労士になる全国社会保険労務士会連合会の名簿に登録し、都道府県の社労士会に入ります。ここで正式に社労士を名乗れます。
会社の人事・総務から目指すルート

会社の人事部で社会保険の手続きや給与計算を担当しているうちに、もっと専門的に学びたいと思って資格を取る人が多いです。毎日の仕事と試験の内容が重なるので、勉強が進めやすいのが特徴です。合格後は社内で専門家として頼られたり、独立したりします。

大学生のうちに目指すルート

大学を卒業すれば受験資格が得られるため、大学4年生の夏に受けて、卒業後に登録を目指す人もいます。大学在学中でも、短大卒業と同じ程度の単位(62単位以上など)を取っていれば受験できる場合があります。

試験・選考の詳細

社労士試験は毎年8月に1日で行われ、午前に選択式(穴うめ問題)、午後に択一式(5つの選択肢から選ぶ問題)があります。2025年度は受験者43,421人のうち合格者2,376人で、合格率は5.5%でした。合格するには、選択式と択一式のそれぞれで総得点の基準を超え、さらに各科目でも最低点を超える必要があります。2025年度の総得点の基準は、選択式が40点満点中22点以上、択一式が70点満点中42点以上でした。

科目ごとの足切りがきびしい

社労士試験の特徴は、全体の点数が高くても、1科目でも基準に届かないと不合格になることです。たとえば、選択式では1科目5点満点で、原則3点以上が必要です。得意科目で点を稼ぐだけでは合格できず、すべての科目をまんべんなく勉強しなければなりません。

法律の改正が出題される

労働や社会保険の法律は、毎年のように改正されます。試験でも最新の改正点や、国が発表した統計(白書)の内容が出題されるため、直前まで新しい情報を追い続ける必要があります。

年収のリアル

社労士の年収は、勤務か開業か、どれだけ顧問先を持っているかで大きく変わります。2024年度の調査では、勤務社労士の年収は「300万円以上600万円未満」が38.0%で最も多く、600万円以上の人も合わせて41.5%いました。開業社労士の事務所の年間売上は平均約1,658万円ですが、中央値は550万円で、一部の大きな事務所が平均を押し上げています。売上からスタッフの給料や家賃などを引いた残りが収入になります。

顧問先が増えると収入が安定する

開業社労士の収入は、顧問先の数でほぼ決まります。顧問契約は毎月の契約で、一度契約すると長く続くことが多いため、少しずつ顧問先を増やしていくと、収入が安定していきます。逆に、開業直後は顧問先が少なく、収入が低い時期があります。

大企業の人事部ならその会社の給与水準

企業内の社労士は、勤め先の会社の給料の仕組みに沿います。大企業の人事部で管理職になれば、1,000万円を超えることもあります。資格手当として月に数千円から数万円が出る会社もあります。

やりがい

社労士のやりがいは、会社で働く人の生活を、目に見える形で支えられることです。たとえば、病気で長く休むことになった社員が、傷病手当金を受け取れるように手続きをすると、「生活の心配をせずに治療に専念できます」と感謝されます。社長から「社労士さんのおかげで、社員が辞めない会社になった」と言われることもあります。働き方改革や育児休業の制度など、社会の大きな変化の最前線で、会社と社員の両方の役に立てる仕事です。

社長のパートナーになれる

中小企業の社長は、人の採用や育成、トラブルなど、人の問題で悩むことが多いです。社労士は、その悩みを最初に相談される存在になり、会社の成長を一緒に考えるパートナーになれます。

定年がなく、地域で長く働ける

顧問先との付き合いは何十年も続くことがあります。地域の会社を長く支え、社長の代替わりにも立ち会える、息の長い仕事です。

大変なこと・きついこと

社労士の仕事は、締め切りと法律の改正との戦いです。社会保険の手続きには期限があり、たとえば入社した人の社会保険の手続きは原則5日以内に行う必要があります。7月の算定基礎届や、6〜7月の労働保険の年度更新の時期には、すべての顧問先の手続きが一度に集中し、とても忙しくなります。また、法律は毎年のように変わるので、ずっと勉強を続けなければなりません。

ミスが人の生活に直結する

給与計算や手続きを間違えると、社員の給料が少なくなったり、保険の給付が受けられなかったりします。人の生活に直接かかわる仕事なので、正確さへのプレッシャーが大きいです。

人の問題に向き合う大変さ

解雇やハラスメントなど、会社と社員のトラブルの相談を受けることもあります。どちらの気持ちもわかる中で、法律にもとづいて冷静に対応しなければならず、精神的に負担を感じることもあります。

向いている人

社労士に向いているのは、人の役に立つことが好きで、こつこつと正確に作業できる人です。たとえば、クラスの係の仕事で、提出物の締め切りをきちんと管理するのが得意な人は、たくさんの手続きの期限を守る仕事に向いています。また、困っている人の話を聞いて、わかりやすく説明できる人も向いています。法律やお金の仕組みに興味がある人には、勉強そのものが楽しく感じられるでしょう。

こんな高校生は向いているかも

アルバイトをしていて「時給や休憩の時間はどうやって決まっているんだろう」と気になったことがある人や、家族の年金や保険の話に興味を持った人は、社労士の仕事に向いているかもしれません。

向いていないかもしれない人

細かい数字や書類の作業が苦手な人や、決まった期限を守るのがつらい人には、大変に感じる場面が多いかもしれません。ただし、人事制度のコンサルティングなど、企画や提案が中心の働き方もあります。

高校生のうちにできること

高校生のうちは、公民(政治・経済、公共)で、労働の法律や社会保障の仕組みをしっかり学んでおくと、社労士の勉強の土台になります。たとえば、労働基準法、最低賃金、年金、健康保険などは、教科書にも出てくる言葉です。アルバイトをしている人は、自分の給与明細を見て、どんな項目が引かれているかを調べてみるのもよい勉強になります。大学は文理どちらでもよく、法学部、経済学部、商学部などに進む人が多いです。

給与明細を読んでみる

給与明細には、基本給、残業代、雇用保険料、所得税などが書かれています。アルバイトでも雇用保険に入っている場合があります。どうしてその金額になるのかを調べると、社労士の仕事がぐっと身近になります。

年金や保険のニュースに注目する

年金の制度改正や、最低賃金の引き上げ、育児休業の制度の変化などは、ニュースでもよく取り上げられます。社労士の試験にも出るテーマなので、ニュースを見て「自分ならどうなるか」を考えてみましょう。

代表的な会社・職場

社労士の職場は、大きく分けて社労士事務所(社労士法人)と、一般の会社の人事・総務部です。2024年度末の登録者46,237人のうち、開業が24,819人(53.7%)、社労士法人の社員が4,127人(8.9%)、勤務などが17,291人(37.4%)でした。ほかに、年金事務所や年金相談センター、人事コンサルティング会社、給与計算を専門にする会社などで働く人もいます。

社労士法人

複数の社労士が所属する法人で、給与計算や手続きを大量に引き受ける大きな法人から、特定の業種に強い法人までさまざまです。2016年からは社員が1人でも社労士法人を作れるようになりました。

人事コンサルティング会社・給与計算の会社

大企業の人事制度づくりを手伝うコンサルティング会社や、何千人分もの給与計算を引き受ける専門の会社でも、社労士の知識が生かされています。

社会保険と労働保険の仕組み

社労士があつかう保険は、大きく「社会保険」と「労働保険」に分かれます。社会保険は、病院にかかるときの健康保険、老後や障害にそなえる厚生年金、介護が必要になったときの介護保険などです。労働保険は、失業したときや育児休業のときにお金が出る雇用保険と、仕事中や通勤中のけがや病気のときにお金が出る労災保険です。これらの保険料は、会社と働く人が分担して払い、給料から自動的に引かれています。

給料から引かれるお金の正体

たとえば、月給20万円の人の給与明細を見ると、健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料が引かれています。会社も同じくらいの金額を負担していて、これらの計算と手続きを正しく行うのが社労士の大切な仕事です。

労災保険は会社が全額払う

労災保険の保険料は、働く人ではなく会社が全額を払います。アルバイトやパートも含めて、人を雇うすべての会社が入らなければならない保険です。

社労士の仕事が増えている理由

社労士の仕事は、社会の変化とともに増えています。たとえば、働きすぎを防ぐために残業時間の上限が法律で決められたり、男性の育児休業を進める制度ができたり、パートやアルバイトにも社会保険の加入が広がったりと、会社が守るべきルールは年々増えています。また、人手不足の中で、社員が長く働きたくなる会社づくりが大切になり、人事の専門家として社労士に相談する会社が増えています。

ITと手続きの変化

社会保険の手続きは電子申請が進み、給与計算もクラウドのソフトで行うことが増えました。単純な作業は短い時間でできるようになり、そのぶん社労士は相談や制度づくりなど、人にしかできない仕事に時間を使えるようになっています。

メンタルヘルスとハラスメント対策

職場のストレスやハラスメントの問題に、会社が対策をとることが求められるようになりました。社内のルールづくりや研修、相談窓口の運営などで、社労士の出番が増えています。

よくある質問

社労士と税理士はどちらが難しいですか

合格率だけを見ると、社労士試験は5.5%(2025年度)と低いですが、勉強時間の目安は800〜1,000時間ほどで、3,000時間以上と言われる税理士より短いです。社労士は1回の試験で全科目に合格する必要があり、税理士は科目ごとに何年もかけて合格を積み上げる仕組みなので、難しさの性格が違います。

高校を卒業してすぐに受けられますか

高校卒業だけでは受験資格がありません。大学(短大を含む)を卒業するか、一定の実務経験を積むか、行政書士試験に合格するなどの方法で受験資格を得る必要があります。行政書士試験はだれでも受けられるので、先に行政書士に合格して社労士の受験資格を得る人もいます。

文系と理系、どちらが向いていますか

文系の人が多い資格ですが、理系でも問題ありません。試験の内容は法律が中心で、数学の難しい知識は必要ありません。給与計算などで数字をあつかうので、計算をていねいにできることのほうが大切です。

資格だけで食べていけますか

資格を取っただけで仕事が来るわけではありません。開業するなら、営業をして顧問先を増やす必要があります。会社の人事部で資格を生かしたり、社労士事務所に勤めたりして、安定した収入を得る人も多いです。

AIで仕事がなくなりませんか

手続きや給与計算は、電子申請やソフトで効率化が進んでいます。一方で、社長の悩みを聞いて人事のルールを作ったり、トラブルを解決したりする仕事は、人の気持ちにかかわるため、社労士の役割として残ると考えられています。

女性の社労士は多いですか

多いです。在宅で手続きを進めやすく、子育てと両立しながら開業する人も多い資格です。育児休業や女性の働き方に関する相談も多く、自分の経験を生かせる場面があります。

特定社会保険労務士とは何ですか

特定の研修を受けて試験に合格し、そのことを登録した社労士です。会社と社員のトラブルを、裁判ではなく話し合いで解決する手続き(ADR)で、代理人になることができます。

社労士は会社の味方ですか、社員の味方ですか

顧問契約を結ぶのは会社なので、会社から依頼を受けることが多いです。ただし、社労士の仕事は法律を守って会社と社員の両方が安心して働ける環境をつくることなので、社員の権利を守る視点も欠かせません。年金の申請などでは、個人から直接依頼を受けることもあります。

この分野のことば

年収について:全国社会保険労務士会連合会「2024年度 社労士実態調査」の勤務社労士の分布による目安。開業社労士の事務所の年間売上は平均約1,658万円、中央値550万円(経費を引く前)。厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、社労士はほかの職業と同じ分類にまとめられていて、社労士だけの平均年収は出されていません。

数字はすべて公開データにもとづく目安です。出典は出典・サイトポリシーにまとめています。

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