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鉄道会社の売上の3割以上は電車以外から

鉄道・電力・ガス

鉄道・電力・ガスは、電車、電気、都市ガスという「止まると社会が動かなくなるサービス」(たとえば、通学の電車、家のコンセントの電気、お風呂を沸かすガス)を毎日届けるインフラ業界です。巨大な設備(たとえば、線路、発電所、電柱と電線、道路の下のガス管)を何十年も使い続けるため、安全と安定供給が何よりも優先され、景気に左右されにくい安定した業界として知られます。国税庁の調査(令和7年分)では電気・ガス・熱供給・水道業の平均給与は854万円で全業種のトップです。一方で、電力・ガスの小売自由化や人口減少、脱炭素の流れの中で、駅ビルや不動産、海外事業、再生可能エネルギーなど新しい稼ぎ方を広げている最中でもあります。たとえば、駅の改札の中にあるお店(駅ナカ)や駅直結のホテルも、鉄道会社が運営していることが多いです。

平均年収の目安約854万円電気・ガス・熱供給・水道業の平均業界平均約854万円。鉄道大手は640万〜860万円前後、電力大手は800万〜950万円前後、都市ガス大手は650万〜850万円前後(単体の平均)
なるまでの難しさ★★★★★大手JR・私鉄・電力・ガスの総合職は安定性と待遇から人気が高く、難関です。一方で駅係員・乗務員・設備保守などの現業職は高校卒・専門学校卒の採用も多く、地元で長く働ける入口があります。運転士や電気主任技術者などは入社後に国家資格の取得が必要で、電験三種の合格率は令和7年度下期で13.1%と低めです。
決めどき文系・理系どちらでも

大学3年のインターン期。現業職なら高校3年の就職活動、または鉄道系・電気系の専門学校・高専に進むとき

鉄道・電力・ガスの業界マップ

鉄道はJRと大手私鉄・地下鉄に、エネルギーは電力会社とガス会社に分かれ、高速道路はNEXCO3社が地域ごとに担当しています。

となりの業界

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どんな職種がある?

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鉄道・電力・ガスの年収と昇進の流れ

一般社員(現場)400〜500万円
入社1〜3年、22〜25歳

駅、乗務、発電所、営業所などの現場で経験を積みます。総合職も多くの会社でここから始まります。

主任・担当者500〜700万円
入社4〜10年、25〜32歳

本社や支社の担当者、現場では運転士や設備の主任として中心的な役割を担います。国家資格の取得が昇進の条件になる職種もあります。

係長・助役650〜850万円
30〜38歳

現場の責任者や本社のチームのまとめ役になります。社内の昇格試験を受けて管理職を目指します。

課長・駅長・発電所の課長850〜1,100万円
38〜48歳

組織の管理職として、安全と業績に責任を持ちます。

部長・支社長1,100〜1,500万円
48〜55歳

支社や部門全体を統括し、地域の安全と事業に責任を持ちます。

役員1,500〜3,000万円
55歳以降

会社全体の経営方針を決めます。

年収は目安です。会社や地域、本人の働き方で大きく変わります。

働き方で何が違う?

JR各社単体平均640万〜860万円前後(JR東海861万円、JR東日本819万円、2026年3月期)

1987年に国鉄が分割・民営化されて生まれた鉄道会社です。新幹線や広い地域の在来線を運営し、駅ビルやホテル、交通系ICカードなど事業の幅も広いです。たとえば、JR東日本のSuicaやエキュート、JR東海の東海道新幹線などがあります。営業エリアが広く、エリア内での転勤があります。

良いところ事業規模が大きく安定、新幹線など大きなプロジェクトに関われる

大変なところ地方路線の赤字など課題もある、泊まり勤務のある職種が多い

大手私鉄会社によって異なり、600万〜800万円前後の会社が多い(目安)

東急、小田急、京王、阪急阪神、近鉄、名鉄など、都市部で鉄道と沿線開発を一体で進めてきた会社です。たとえば、駅の周りに百貨店や住宅地、遊園地を作り、沿線の人を増やしてきました。不動産やホテル、商業施設の比重が大きいのが特徴です。

良いところ街づくりに関われる、勤務地が沿線に限られることが多い

大変なところ沿線の人口の動きに業績が左右される

大手電力会社単体平均800万〜950万円前後(中部電力945万円、関西電力939万円、2026年3月期)

東京電力、関西電力、中部電力など、地域ごとに電気の供給を担ってきた会社です。発電、送配電(別会社)、小売のグループを持ち、海外事業や再生可能エネルギーにも取り組んでいます。

良いところ給与水準が高く安定、エネルギーという大きなテーマに関われる

大変なところ燃料価格や災害の影響を受ける、交替勤務のある職種がある

都市ガス会社単体平均650万〜850万円前後(大阪ガス846万円、東京ガス784万円、2026年3月期)

東京ガス、大阪ガス、東邦ガスの大手3社と、地域のガス会社があります。都市ガスの製造・供給に加え、電気の販売、海外のガス開発、住宅設備のサービスなどにも取り組んでいます。

良いところ生活に密着、電気とガスの両方に関われる

大変なところ脱炭素の流れでガス事業の将来像を描き直す必要がある

新電力・再生可能エネルギー企業会社による差が大きい(レノバ単体1,086万円、2026年3月期)

電力自由化後に参入した会社や、太陽光・風力などの発電所を開発する会社です。たとえば、レノバのような再生可能エネルギーの開発会社があります。会社によって規模や安定性に大きな差があります。

良いところ成長分野で新しいことに挑戦できる

大変なところ燃料価格の急騰などで経営が苦しくなる会社もある

代表的な会社・職場

JR大手私鉄大手電力電力卸・発電大手都市ガス
東日本旅客鉄道(JR東日本) ›JR

関東・東北などで新幹線と在来線を運営し、Suicaや駅ビルなども展開しています。

単体平均819万円(2026年3月期)
東海旅客鉄道(JR東海) ›JR

東海道新幹線を運営し、リニア中央新幹線の建設を進めています。

単体平均861万円(2026年3月期)
西日本旅客鉄道(JR西日本) ›JR

関西・中国・北陸などで新幹線と在来線を運営しています。

単体平均728万円(2026年3月期)
九州旅客鉄道(JR九州) ›JR

九州で鉄道を運営し、観光列車や不動産事業にも力を入れています。

単体平均640万円(2026年3月期)
東急・小田急・阪急阪神など大手私鉄

都市部で鉄道と沿線の不動産・商業施設の開発を一体で進めています。

会社ごとに有価証券報告書で開示
東京電力ホールディングス ›大手電力

関東地方を中心に電気を供給するグループの持株会社です。

単体平均883万円(2026年3月期)
関西電力 ›大手電力

関西地方を中心に電気を供給しています。

単体平均939万円(2026年3月期)
中部電力 ›大手電力

中部地方を中心に電気を供給しています。

単体平均945万円(2026年3月期)
電源開発(J-POWER) ›電力卸・発電

全国に水力・火力などの発電所を持ち、電力会社に電気を卸しています。

単体平均1,188万円(2026年3月期)
東京ガス ›大手都市ガス

関東地方を中心に都市ガスを供給し、電気の販売や海外事業も行っています。

単体平均784万円(2026年3月期)
大阪ガス ›大手都市ガス

関西地方を中心に都市ガスを供給しています。

単体平均846万円(2026年3月期)
東邦ガス大手都市ガス

東海地方を中心に都市ガスを供給しています。

単体平均733万円(2026年3月期)

›がついた会社は、会社図鑑で詳しく解説しています。

どうやって稼いでいる?

先に設備を作り、何十年もかけて回収 毎日の運賃や料金で少しずつ回収 最初に大きな投資 何十年 料金は自由に決められない運賃や送配電の料金は国の認可・審査 JR東日本の営業収益 運輸事業 約3分の2 それ以外 電車以外の事業 駅ビル・駅ナカ 不動産・ホテル Suica・カード 巨大な設備を何十年も使い、料金で回収駅ナカや不動産などにも事業を広げる
JR東日本の割合は2026年3月期のものです

インフラ業界の共通点は、線路・発電所・送電線・ガス管など巨大な設備を先に作り、それを何十年も使って料金で少しずつ回収するビジネスだということです。初期投資が非常に大きいため新しい会社が参入しにくく、地域ごとに大きな会社が事業を担ってきました。鉄道は運賃、電力は電気料金、ガスはガス料金が主な収入ですが、運賃や送配電の料金などは国の認可や審査を受けて決まる部分があり、自由に値上げはできません。電力は2016年4月、都市ガスは2017年4月に小売が全面自由化され、家庭も電気やガスを買う会社を選べるようになり、競争が生まれました。そのため各社は、不動産、商業施設、海外事業、再生可能エネルギー、生活サービスなどにも事業を広げています。

1
運賃収入(鉄道)

乗客から受け取る運賃と定期券代が鉄道会社の中心的な収入です。JR東日本では運輸事業が営業収益の約3分の2を占めます(2026年3月期)。運賃の上限は国の認可を受けて決まります。たとえば、通学定期券の値段も鉄道会社が自由に決められるわけではありません。

2
駅ナカ・不動産・ホテル(鉄道)

駅ビルや駅ナカの商業施設、オフィスビル、マンション、ホテルなどを運営します。駅に人が集まる強みを生かした事業で、沿線の価値を高めることで鉄道の利用者も増える好循環を狙います。

3
電気料金・ガス料金(小売)

家庭や企業に電気・ガスを販売して料金を受け取ります。燃料の価格が上がると、燃料費調整制度により料金に反映される仕組みがあります。たとえば、海外のLNGの値段が上がると、数か月後に家の電気代も上がります。

4
託送料金(送配電・導管)

送配電会社や導管会社は、自社の送電網・ガス管を使う小売事業者から利用料(託送料金)を受け取ります。道路にたとえると、新電力が大手の道路(送電網)を通って電気を届けるときに払う通行料のようなものです。新電力も大手の送電網を使って電気を届けるため、安定した収入になります。

5
発電・卸売と海外事業

発電した電気を卸電力市場や他社に売るほか、海外の発電所やガス田に出資して配当や売電収入を得ます。LNGを他社に販売するトレーディングも行います。

6
生活サービス・カード・IT

交通系ICカード(たとえば、SuicaやICOCA)や電子マネー、クレジットカード、住宅設備の修理・リフォーム、見守りサービスなどで稼ぎます。利用者との日常的な接点を生かしたビジネスです。

入ってからどうなっていく?

入社〜3年目現場での経験総合職でも多くの会社で、まず駅・乗務・発電所・営業所などの現場に配属されます。鉄道では駅係員や車掌を経験し、インフラの安全の仕組みを体で覚える時期です。
4〜8年目専門分野の担当者本社や支社の企画部門、技術部門に異動し、設備計画、営業、運輸計画などを担当します。現業職では運転士や設備の主任として現場の中心になります。電験などの国家資格を取る人が多い時期です。
9〜15年目現場の責任者・係長駅長補佐や設備の区長、発電所の課長代理など、現場をまとめる立場になります。総合職では大型プロジェクトの担当や、国・自治体との調整を任されます。
30代後半〜40代管理職駅長、発電所の課長、本社の課長などとして組織を率います。大規模な駅開発や新線計画、発電所の建設など、数年がかりのプロジェクトを指揮します。
50代支社長・部長・グループ会社役員支社や事業本部の責任者として、地域全体の安全と業績に責任を持ちます。グループの不動産会社やホテル会社の役員として出向する人もいます。
転職・独立のパターン安定志向で転職は少なめ長く勤める人が多い業界で、JR東日本の平均勤続年数は17.1年(2026年3月期、単体)です。転職する場合は、電気主任技術者などの資格を生かしてビル管理会社やメーカー、新電力、再生可能エネルギー企業に移るパターンがあります。

電気が家に届くまで

燃料の調達LNGや石炭を船で運ぶ 発電運転員が24時間監視 送電高い電圧で遠くへ送る 変電電圧を少しずつ下げる 配電電柱や地下のケーブルで 家庭・学校・工場使った量に応じて払う 送配電会社送電線や電柱を持っている 小売会社料金を請求 料金 託送料金 電気は何段階もの設備を通って家に届く
電気の需要と供給は、給電指令所で常に一致するように調整されています
1
燃料の調達

燃料調達の担当が、LNGや石炭を海外から長期契約で買い付け、船で日本の基地に運びます。

2
発電

発電所で燃料を燃やしたり、水や太陽光、風の力を使ったりして電気を作ります。運転員が24時間監視しています。

3
送電

作った電気を、高い電圧にして送電線で遠くまで送ります。電気の需要と供給は、給電指令所で常に一致するように調整されています。

4
変電

変電所で電気の電圧を少しずつ下げ、街の配電線に送ります。

5
配電

電柱の電線や地下のケーブルを通って、家庭や学校、工場に電気が届きます。たとえば、家のコンセントにつながる電気はここを通ってきています。

6
小売・料金

電気を売る小売会社が、使った量に応じて料金を請求します。送配電会社には、小売会社から託送料金が支払われます。

第三種電気主任技術者試験(電験三種)

合格率令和7年度上期12.9%、下期13.1%
勉強時間の目安科目ごとに合格を積み上げる科目合格制度を使い、数年かけて全科目合格を目指す人が多いです
受験資格受験資格の制限はなく、年齢や学歴を問わず誰でも受験できます
合格率は10%台前半で、電気系の国家資格の中でも難しい部類です。高校の数学と物理の知識が土台になり、特に理論の科目でつまずく人が多いです。電力会社やビル管理の会社では、入社後に会社の支援を受けて勉強する人が多くいます。さらに上位の電験二種・一種は、より大きな電気設備を扱うための資格です。
試験科目(押すと中身が見られます)
合格までの流れ
  1. 申し込み年2回(上期・下期)の試験に申し込みます。会場のパソコンで受けるCBT方式と、紙の筆記方式があります。
  2. 4科目の受験理論・電力・機械・法規の4科目を受験します。
  3. 科目合格合格した科目は一定期間有効で、残りの科目だけを次回以降に受験できます。
  4. 全科目合格・免状交付4科目すべてに合格すると、国に申請して免状が交付されます。

鉄道・電力・ガスのある1日

1日目 乗務準備・休憩 8:30点呼。体調とアルコールの検査 9:00注意事項の確認と車両の点検 9:30乗務開始。指差し確認で運転 12:00終点で折り返し、休憩と昼食 13:00午後の乗務 17:00夕方のラッシュに乗務 5:00起床・点呼。始発列車に乗務 9:30乗務終了。勤務明けで帰宅 20:00宿泊所で泊まる乗務を終えて休む 2日目(翌朝) その次の日は休み 2日にまたがって働き、明けと休みが続く
鉄道の運転士の泊まり勤務の例
8:30

出勤して点呼を受け、体調とアルコールの検査をします(鉄道の運転士の例)

9:00

運行の注意事項や工事情報を確認し、乗務する車両を点検します

9:30

乗務開始です。信号や速度を指差し確認しながら、ダイヤどおりに運転します

12:00

終点の駅で折り返します。乗務の合間に休憩と昼食をとります

13:00

午後の乗務です。ラッシュに向けて混雑する駅での停車時間に注意します

17:00

夕方のラッシュ時間帯に乗務します

20:00

乗務を終えて泊まり勤務の宿泊所で休みます

翌5:00

起床して点呼を受け、始発列車に乗務します

翌9:30

乗務終了です。勤務が明けて帰宅し、翌日は休みになります(泊まり勤務の例)

もっと知りたい人へ

そもそも鉄道・電力・ガス業界とは

鉄道・電力・ガスは、生活と経済に欠かせない基盤(インフラ)を担う業界です。鉄道にはJR各社、大手私鉄、地下鉄、第三セクターなどがあり、全国で毎日多くの人を運んでいます。電力は、地域ごとの大手電力会社に加え、自由化で生まれた多数の新電力があり、登録小売電気事業者は2023年3月末で721者にのぼります(エネルギー白書2023)。都市ガスは東京ガス・大阪ガス・東邦ガスの大手3社のほか、全国に地域のガス会社が200社以上あります。

インフラ業界の特徴

巨額の設備投資が必要で、地域ごとに事業を担う会社が限られるため、景気の影響を受けにくい安定した業界とされます。一方で、料金の一部が国の規制を受けるため、自由に値上げしにくく、大きな成長もしにくい面があります。

給料水準はトップクラス

国税庁の調査(令和7年分)では、電気・ガス・熱供給・水道業の平均給与は854万円で、全14業種の中で最も高くなっています。勤続年数が長く、年功的に給料が上がっていく会社が多いことも背景にあります。

社会的な使命

インフラは止まらないことが当たり前と思われていますが、その裏では多くの人が24時間体制で設備を守っています。災害時には復旧の最前線に立ち、社会を支える重い責任を担っています。

鉄道会社のビジネスモデル

日本の大手鉄道会社は、運賃だけでなく沿線の街づくりで稼ぐビジネスモデルが特徴です。線路を引いて駅をつくり、その周りに住宅や商業施設、オフィス、レジャー施設(たとえば、駅前のデパートや沿線の住宅地、遊園地)を開発することで、沿線に人を集め、鉄道の利用者も増やしてきました。JR東日本の2026年3月期の営業収益は約3.08兆円で、運輸が約3分の2、不動産・ホテルと流通・サービスがあわせて約3割を占めます。駅ナカの商業施設や交通系ICカード、ホテル、オフィスビルなどは、人口減少で運賃収入が伸びにくい中で重要性が増しています。

JRと私鉄のちがい

JR各社は1987年に国鉄が分割・民営化されて生まれた会社で、新幹線や広い地域の在来線を運営しています。私鉄は東急、小田急、阪急、近鉄など民間の会社で、都市部の沿線開発と鉄道を一体で進めてきた歴史があります。

地方の鉄道の課題

人口が減る地方では利用者が少なく、赤字の路線をどう維持するかが大きな課題になっています。自治体と協力してバスへの転換や、施設を自治体が持ち運行を鉄道会社が担う上下分離(たとえば、線路や駅は市や県が持ち、電車を走らせるのは鉄道会社という分担)などの方法が検討されています。

新幹線と海外展開

新幹線は高い安全性と定時性で知られ、日本の鉄道技術を海外に輸出する取り組みも行われています。リニア中央新幹線の建設も進められています。

電力・ガス自由化と業界の変化

電力は2016年4月に小売が全面自由化され、家庭も電力会社を選べるようになりました。さらに2020年4月には、大手電力会社の送配電部門が別会社に分けられる発送電分離(法的分離)が行われました。都市ガスも2017年4月に小売が全面自由化され、2022年4月に東京ガス・大阪ガス・東邦ガスの導管部門が分社化されました。これにより、電気とガスをセットで売る会社や、通信会社・石油会社などが新規参入し(たとえば、スマホの会社が電気を売り、電力会社がガスを売るようになりました)、業界の垣根を越えた競争が生まれています。

新電力の広がり

自由化以降に参入した新電力のシェアは、販売電力量ベースで約18.3%(2022年12月時点、エネルギー白書2023)まで広がりました。一方、燃料価格の急騰で撤退した新電力もあり、経営の難しさも明らかになりました。

電気料金の仕組み

電気料金には、発電にかかる費用、送配電網の利用料(託送料金)、再生可能エネルギーの普及のための賦課金などが含まれます。燃料の多くを海外から輸入するため、為替や国際価格の影響を大きく受けます。

脱炭素とエネルギーの未来

日本は2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を実質ゼロにすること)を目標にしており、電力・ガス業界はその中心にいます。日本の電源に占める再生可能エネルギーの割合は約22.9%(2023年度、資源エネルギー庁)で、太陽光・風力・水力などをさらに増やす取り組みが進んでいます。火力発電では、燃やしても二酸化炭素を出さない水素やアンモニアを燃料に混ぜる技術の開発が行われています。ガス会社は、二酸化炭素と水素から都市ガスの主成分のメタンを作るe-メタンなど、ガスの脱炭素化に挑戦しています。

洋上風力と系統

海の上に風車を建てる洋上風力発電は、大規模な再生可能エネルギーとして期待されています。再エネで作った電気を届けるには送電網の増強も必要で、送配電会社の役割も大きくなっています。

鉄道と環境

鉄道は自動車や飛行機に比べて、人を運ぶときの二酸化炭素の排出が少ない交通手段です。車両の省エネ化や、駅や車両基地での再生可能エネルギーの活用も進んでいます。

なるためのルート

インフラ業界には、大学卒の総合職(事務系・技術系)と、高校・専門学校・高専卒が中心の現業職という大きく2つの入口があります。総合職は本社の企画部門や管理職候補として、現場経験を積みながら幅広い部署を回ります。現業職は駅・乗務・設備保守・発電所など特定の現場の専門家として働きます。運転士や電気主任技術者などは、入社後に会社の支援を受けて国家資格を取るのが一般的です。

  1. 高校で進路を考える技術系を目指すなら理系や工業高校の電気・機械科、事務系なら文系からでも目指せます。高校卒で現業職に就く道もあります。
  2. 大学・高専・専門学校で学ぶ電気電子、機械、土木、化学などの学科が技術職に直結します。鉄道系の専門学校もあります。
  3. インターンシップ・会社研究大学3年の夏・冬に、各社の現場見学やインターンに参加します。鉄道会社は地域ごと、電力会社はエリアごとに会社が違うので、働きたい地域も考えます。
  4. 選考を受けるエントリーシート、適性検査、面接を受けます。乗務員などの職種では適性検査や身体検査も重視されます。
  5. 入社・現場配属入社後は研修を経て、駅や発電所、営業所などの現場に配属されます。
  6. 国家資格を取る運転士は動力車操縦者運転免許、電力の技術者は電気主任技術者など、仕事に必要な資格を入社後に取得します。
鉄道の運転士を目指す

運転士になるには、まず鉄道会社に入社し、駅係員や車掌を経験してから社内試験に合格し、養成所で学んで動力車操縦者運転免許を取得します。いきなり運転士として採用されることは基本的にありません。

電力・ガスの技術者を目指す

電気・機械・化学・土木系の学科が直結します。工業高校や高専の電気科からの採用も多く、入社後に電気主任技術者やガス主任技術者などの資格に挑戦します。

試験・選考の詳細

大手インフラ企業の総合職の選考は、エントリーシート、Webテスト、複数回の面接という流れが一般的です。安全を最優先する業界なので、ルールを守る誠実さや責任感、チームで働く姿勢がよく見られます。鉄道の乗務員を目指す職種では、法律で定められた身体の基準や、運転の適性を調べる検査があります。高校生の採用は、学校を通じた求人への応募で、筆記試験と面接が行われます。

入社後の国家資格

第三種電気主任技術者(電験三種)は、電気設備の保安を監督するための国家資格です。令和7年度の合格率は上期12.9%、下期13.1%と難しく、電力会社の技術者は入社後に計画的に勉強して合格を目指します。

動力車操縦者運転免許

鉄道の運転士に必要な国家資格です。鉄道会社が国の指定を受けた養成所で学科と技能の講習を行い、修了して試験に合格すると取得できます。

地域で選ぶ就活

JR各社や電力・ガス会社は営業エリアが決まっているため、どの地域で働きたいかが会社選びの大きなポイントになります。地元志向の学生にも人気の業界です。

年収のリアル

国税庁の調査(令和7年分)では、電気・ガス・熱供給・水道業の平均給与は854万円で全業種トップです。有価証券報告書(単体、2026年3月期)では、電力の中部電力945万円、関西電力939万円、東京電力HD883万円、九州電力842万円、都市ガスの大阪ガス846万円、東京ガス784万円などが目安です。鉄道は、東海旅客鉄道861万円、東日本旅客鉄道819万円、西日本旅客鉄道728万円、九州旅客鉄道640万円です。給料は年功的に上がる傾向が強く、夜勤や泊まり勤務の手当が加わる職種もあります。

総合職と現業職の違い

平均年収には総合職と現業職の両方が含まれています。一般に総合職は管理職への昇進で年収が上がりやすく、現業職は手当や勤続年数で安定的に上がっていく傾向があります。

中小の会社との差

鉄道は統計上「運輸業,郵便業」に含まれ、その平均給与は483万円(令和7年分)です。大手と、地方の中小私鉄やバス会社では給料水準に差があります。

安定性という価値

景気の影響を受けにくく、倒産のリスクが比較的低いことは、年収の数字以上に評価されるポイントです。福利厚生や社宅などが充実している会社も多いです。

やりがい

毎日何百万人が使う電車や、すべての家庭と工場に届く電気・ガスを支えていることは、他の業界にはない大きな誇りです。台風や地震のあと、停電やダイヤの乱れを復旧させたときには、社会から直接感謝を感じられます。駅の再開発や新線の計画など、街の姿を何十年単位で変えるプロジェクトに関われるのも魅力です。脱炭素という大きな課題に、エネルギーの側から取り組める時代でもあります。

当たり前を守る誇り

インフラは止まらないのが当たり前で、うまくいっているときほど目立ちません。その当たり前を毎日守り続けることに、静かな誇りを感じる人が多い仕事です。

地域に根ざして働ける

営業エリアが決まっているため、地元の発展に長く関われます。転勤もエリア内が中心になることが多いです。

大変なこと・きついこと

インフラは24時間365日止められないため、泊まり勤務や夜勤、交替勤務がある職種が多いです。鉄道の保線や電気設備の工事は、終電から始発までの限られた夜間に行われます。災害や事故のときには、休日や夜間でも呼び出されて復旧にあたることがあります。安全のための厳しいルールや手順が多く、小さなミスも許されないプレッシャーがあります。

変化の遅さを感じることも

安全と安定を重視する文化のため、新しいことを始めるのに時間がかかると感じる人もいます。一方で、自由化や脱炭素の流れの中で、変化を求める動きも強まっています。

人口減少と事業環境

人口減少で鉄道の利用者や電気・ガスの使用量が減っていく地域もあります。燃料価格の高騰や災害で、業績が大きく悪化することもあります。

体力が必要な現場

屋外での設備保守や夜間作業、真夏や真冬の作業など、体力が必要な現場もあります。安全装備をつけての作業が基本です。

向いている人

決められたルールや手順をきちんと守れる、責任感の強い人に向いています。インフラの仕事はチームで行うため、周りと協力し、報告・連絡・相談をしっかりできることが大切です。毎日同じことを確実にくり返すことに価値を感じられる人や、地域や社会の役に立ちたいという気持ちの強い人が活躍しています。総合職では、何十年先を見すえた計画を立てる長期的な視点も求められます。

現業職に向いている人

機械や乗り物が好きで、体を動かして働きたい人に向いています。緊急時にも落ち着いて行動できる冷静さも大切です。

総合職に向いている人

街づくりやエネルギー問題など、大きなテーマに関心がある人に向いています。国や自治体、地域の人々など多くの関係者と調整する力が求められます。

高校生のうちにできること

技術職を目指すなら、物理(特に電気・力学)と数学をしっかり学んでおくと、大学や入社後の勉強が楽になります。工業高校の電気科では、在学中に第二種電気工事士の資格に挑戦することもできます。普段使っている駅や電車、近くの発電所やガスの施設がどのように動いているのか、見学会やPR館に行ってみるのもおすすめです。地域の交通やエネルギーの課題について調べることは、総合職を目指す場合にも役立ちます。

見学施設を活用する

鉄道の博物館や、電力会社・ガス会社のPR館では、インフラの仕組みを楽しく学べます。夏休みの自由研究のテーマにもなります。

ニュースに注目する

電気料金の値上げ、ダイヤ改正、ローカル線の存廃、再生可能エネルギーなどのニュースを追うと、業界の課題が見えてきます。

代表的な会社・職場

鉄道ではJR東日本、JR東海、JR西日本、JR九州などのJR各社、東急、小田急、京王、阪急阪神、近鉄、名鉄などの大手私鉄、東京メトロなどの地下鉄があります。電力では東京電力HD、関西電力、中部電力、東北電力、九州電力、中国電力など各地域の大手電力会社、電源開発(J-POWER)、送配電会社などがあります。都市ガスでは東京ガス、大阪ガス、東邦ガスの大手3社と、西部ガス、静岡ガスなど地域のガス会社があります。職場は本社のほか、駅、車両基地、発電所、変電所、営業所、ガスの製造所(LNG基地)などです。

グループ会社も多い

大手インフラ企業には、不動産、ホテル、商業施設、建設、IT、設備保守などのグループ会社がたくさんあります。グループ全体で地域の生活を支えています。

インフラを支える周辺の会社

車両メーカー、電気工事会社、プラントメーカー、ビル管理会社など、インフラを支える周辺の業界にも多くの仕事があります。

よくある質問

電車の運転士になるにはどうすればいい?

鉄道会社に入社し、駅係員や車掌を経験してから社内試験に合格し、養成所で学んで国家資格の動力車操縦者運転免許を取るのが一般的な流れです。最初から運転士として採用されることは基本的にありません。

鉄道会社は電車の運行だけをしているの?

いいえ、駅ビルや駅ナカの商業施設、ホテル、オフィスビル、マンション、交通系ICカードなど幅広い事業をしています。JR東日本では運輸以外の事業が営業収益の3割以上を占めます。

電力会社とガス会社は文系でも入れる?

入れます。営業、企画、人事、経理、燃料調達、海外事業など、文系の総合職も多く採用されています。技術職は電気・機械・化学などの理系の専攻が中心です。

電力自由化ってなに?

2016年4月から、家庭や商店も電気を買う会社を自由に選べるようになったことです。それまでは地域の大手電力会社からしか買えませんでした。都市ガスは2017年4月に同じく自由化されました。

インフラ業界は本当に安定している?

生活に欠かせないサービスなので、景気の影響は受けにくい業界です。ただし燃料価格の高騰や大災害、人口減少の影響を受けることもあり、絶対につぶれないとは言えません。

夜勤や泊まり勤務はある?

駅や乗務、発電所、送配電の保守などの現業職では、泊まり勤務や交替勤務があります。本社の総合職は日勤が中心ですが、若いうちに現場で交替勤務を経験することもあります。

高校卒業後すぐに就職できる?

できます。鉄道会社の駅係員や設備保守、電力会社の現業職などは、高校卒の採用が多い職種です。学校に届く求人票から応募します。

電験三種ってどんな資格?

電気設備の保安を監督するための国家資格で、電力会社やビル・工場の電気管理に欠かせません。令和7年度の合格率は上期12.9%、下期13.1%と難関ですが、年齢を問わず誰でも受験できます。

転勤はある?

JR各社や電力・ガス会社は営業エリアが決まっているため、転勤はそのエリアの中が中心です。ただし本社や東京事務所、海外事業などに異動することもあります。

鉄道が好きなだけで向いている?

鉄道が好きなことは大きな原動力になりますが、仕事では安全を守るための地道な作業やルールの徹底が中心です。好きという気持ちに加えて、責任感とチームワークが大切です。

この分野のことば

年収について:国税庁「民間給与実態統計調査」令和7年分です。有価証券報告書(単体、2026年3月期)では東海旅客鉄道861万円、東日本旅客鉄道819万円(平均39.8歳)、西日本旅客鉄道728万円、九州旅客鉄道640万円、中部電力945万円、関西電力939万円(平均42.4歳)、東京電力HD883万円、大阪ガス846万円、東京ガス784万円(平均43.3歳)などです。鉄道の運輸業は統計上「運輸業,郵便業」(平均483万円)に含まれ、中小私鉄やバス会社を含めると水準は下がります。目安です。

数字はすべて公開データにもとづく目安です。出典は出典・サイトポリシーにまとめています。

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