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飲み物を配る人ではなく、空の上で乗客の命を守る「保安要員」

客室乗務員

客室乗務員(CA、キャビンアテンダント)は、飛行機の客室で乗客の安全を守り、快適な空の旅を提供する仕事です。機内食や飲み物のサービスが目立ちますが、本当の役割は、緊急時に乗客を脱出させたり、急病人の手当てをしたり、機内の火災に対応したりする「保安要員」です。国のルールで、旅客機には座席50席ごとに1人以上の客室乗務員を乗せることが決められています。JALやANAなどの大手航空会社のほか、LCC(格安航空会社)、地方の航空会社、外国の航空会社などで働いています。

平均年収の目安約596万円新人 約300万円台〜ベテランのチーフパーサーで700万円以上(会社による差が大きい)
なるまでの難しさ★★★★★特別な国家資格は必要ありませんが、人気がとても高く、大手航空会社の採用は高い倍率になります。書類、適性検査、グループ面接、個人面接、英語試験、健康診断、体力測定と、何段階もの選考を通る必要があります。入社後も、保安・救急・サービスの厳しい訓練と審査に合格しなければ乗務できません。
決めどき文系・理系どちらでも

大学・短大・専門学校の最終学年で就職活動。英語は高校からコツコツ

どんな職種がある?

押すと、その職種の仕事内容・必要な力・キャリアが見られます。

客室乗務員の年収と昇進の流れ

訓練生(初期訓練)250〜320万円
入社〜数か月(22歳ごろ)

保安・救急・サービスの初期訓練を受ける段階です。訓練の最後の審査に合格すると、乗務の資格が得られます。

客室乗務員(国内線・国際線エコノミー)300〜450万円
入社1〜3年目(22〜25歳ごろ)

先輩の指導を受けながら乗務し、保安とサービスの基本を固めます。経験を積むと、上位クラスや国際線の資格に挑戦できます。

上位クラス担当(ビジネスクラスなど)400〜550万円
入社3〜6年目(25〜28歳ごろ)

ビジネスクラスなどで、より高度なサービスを担当します。英語力やサービスの知識を磨き、パーサーの資格をめざします。

パーサー(クラスのまとめ役)450〜600万円
入社5〜10年目(27〜32歳ごろ)

各クラスの安全とサービスの品質に責任を持ち、チーフパーサーを補佐します。昇格試験や審査に合格するとチーフパーサーになれます。

チーフパーサー(客室責任者)550〜750万円
入社8年目〜(30代〜)

便の客室乗務員全員をまとめ、機長と連携して客室の安全とサービスに責任を持ちます。経験を積むとファーストクラスの責任者や教官に進みます。

教官・客室部門の管理職650〜900万円
40代〜

新人の訓練や、客室乗務員の組織運営、サービスの企画などを担当します。会社の給料表や役職によって年収が決まります。

年収は目安です。会社や地域、本人の働き方で大きく変わります。

働き方で何が違う?

大手航空会社(JAL・ANA)新卒の月給 JAL(大卒)243,000円、ANA(大卒)195,631円+諸手当(2024年度実績)に乗務手当など

国内線と国際線の両方を運航し、ファーストクラスやビジネスクラスなどの上位クラスもある、日本を代表する航空会社です。ANAは2014年度から、JALは2016年度から客室乗務員を正社員として採用しています。訓練や福利厚生、キャリアの道すじが整っており、教官や管理職など乗務以外のキャリアも選べます。採用人数は年によって変わり、人気が高いため倍率も高くなります。

良いところ正社員として安定して働ける、国際線や上位クラスなどキャリアの幅が広い

大変なところ採用の競争が激しい、不規則な勤務と時差がある

LCC(格安航空会社)大手より給与水準は低めとされる

ピーチ・アビエーション、ジェットスター・ジャパン、ZIPAIR Tokyoなど、運賃を安くするために効率的な運航をする航空会社です。機内での飲食物の販売や、短い時間での機内の準備など、スピード感のある仕事が特徴です。会社によっては契約社員から始まり、数年後に正社員に登用される制度があります。若い会社が多く、早くからリーダーの役割を任されることもあります。

良いところキャリアアップが早い場合がある、若い仲間と働ける

大変なところ給料や福利厚生は大手より控えめなことが多い、1日の便数が多く忙しい

地方・中堅の航空会社会社ごとに異なる(スカイマークの平均年収は全職種で593万円、2026年3月期)

スカイマーク、エア・ドゥ、スターフライヤー、ソラシドエア、大手のグループ会社などで、国内線を中心に運航する航空会社です。地域の空港を拠点にして、地元の人や観光客を運びます。会社ごとに個性のあるサービスを行い、地域とのつながりを大切にしています。

良いところ地元や特定の地域を拠点に働ける、会社ごとの個性あるサービスにかかわれる

大変なところ国際線や上位クラスの経験は積みにくい、会社によって採用が不定期

外国の航空会社(外資系)会社や拠点、契約形態によってさまざま

シンガポール航空、エミレーツ航空、カタール航空、キャセイパシフィック航空など、外国の航空会社で働く道です。日本路線の担当として日本人を採用することが多く、拠点が海外になる会社もあります。英語での面接や業務が基本で、身長やアームリーチの基準がある会社もあります。採用は不定期で、欠員や増便に合わせて行われます。

良いところ英語で働き、海外生活を経験できる、世界中の仲間と働ける

大変なところ契約期間が決まっていることがある、日本から離れて暮らすこともある

代表的な会社・職場

大手航空会社(フルサービスキャリア)JALグループの地域航空会社ANAグループの地域航空会社LCC(ANAグループ)LCCLCC(JALグループ)中堅航空会社外資系航空会社
日本航空(JAL) ›大手航空会社(フルサービスキャリア)

国内線と国際線を運航する日本を代表する航空会社です。2016年度入社から客室乗務員を正社員で採用しています。

平均年収1,011万円(全職種、2026年3月期、平均年齢40.2歳)
全日本空輸(ANA) ›大手航空会社(フルサービスキャリア)

日本最大級の航空会社で、国内線・国際線を幅広く運航しています。2014年度入社から客室乗務員を正社員で採用しています。

新卒月給 大卒195,631円+諸手当(2024年度実績)
ジェイエアJALグループの地域航空会社

JALグループで、小型のジェット機を使って地方路線を運航しています。

日本トランスオーシャン航空JALグループの地域航空会社

沖縄を拠点に、沖縄の島々や本土を結ぶ路線を運航しています。

ANAウイングスANAグループの地域航空会社

ANAグループで、地方路線などを中心に運航しています。

ピーチ・アビエーションLCC(ANAグループ)

関西空港などを拠点にする日本のLCCで、国内線と近距離の国際線を運航しています。

ジェットスター・ジャパンLCC

成田空港などを拠点に、国内線を中心に運航するLCCです。

ZIPAIR TokyoLCC(JALグループ)

成田空港を拠点に、中・長距離の国際線を運航するJALグループのLCCです。

スカイマーク ›中堅航空会社

羽田や神戸などを拠点に国内線を運航する航空会社です。

平均年収593万円(全職種、2026年3月期)
エア・ドゥ/ソラシドエア中堅航空会社

エア・ドゥは北海道、ソラシドエアは九州・沖縄を中心に路線を持つ航空会社です。

スターフライヤー中堅航空会社

北九州空港を拠点にする航空会社で、黒を基調とした機体と座席が特徴です。

外国の航空会社(シンガポール航空・エミレーツ航空など)外資系航空会社

日本路線などを担当する日本人客室乗務員を不定期に採用しています。英語での業務が基本です。

›がついた会社は、会社図鑑で詳しく解説しています。

どうやって稼いでいる?

航空会社のおもな収入 旅客運賃 いちばん大きい収入 エコノミー ビジネス 運賃は何倍も 貨物 荷物や郵便物 マイル提携 カード会社など 機内販売 免税品・グッズ 客室乗務員の役目 CAのサービス また乗りたい 売上を支える 乗客が「またこの会社に」と思うかを左右する 本当の役割は保安要員 座席50席ごとに1人以上が乗る決まり 安全とサービスで「また乗りたい」をつくる
国のルールで、座席50席ごとに1人以上の客室乗務員が乗ります

航空会社は、乗客から受け取る運賃が一番大きな収入です。運賃は、同じ便でも予約の時期や座席の種類(エコノミー、プレミアムエコノミー、ビジネス、ファースト)によって大きく変わります。たとえば、ビジネスクラスの運賃はエコノミーの何倍もしますが、そのぶん広い座席や上質な食事、客室乗務員のきめ細かいサービスがつきます。客室乗務員のサービスは、乗客が「またこの航空会社に乗りたい」と思うかどうかを左右するため、会社の売上を支える大事な役割です。ほかにも、貨物を運ぶ収入、マイレージプログラムの提携収入、機内販売なども航空会社の収入になります。

1
旅客運賃(国内線・国際線)

乗客が払う運賃が航空会社の最大の収入です。たとえば、出張で使うビジネスパーソンや、海外旅行に行く家族連れなどが主なお客さんです。

2
上位クラスの運賃

ビジネスクラスやファーストクラスは座席数は少ないですが、運賃が高いため利益への貢献が大きいです。客室乗務員の質の高いサービスが、このクラスを選んでもらう理由になります。

3
貨物収入

旅客機の床下や貨物専用機で、荷物や郵便物、生鮮食品などを運んで運賃を得ます。たとえば、海外の果物や、日本の精密機械を運ぶ仕事です。

4
マイレージ・提携収入

飛行機に乗ったり、提携するクレジットカードで買い物をしたりするとたまるマイルの仕組みで、提携する会社から収入を得ます。

5
機内販売・付帯収入

機内での免税品やグッズの販売、LCCでは飲食物や座席指定、受託手荷物の料金なども収入になります。客室乗務員の販売の力が売上に直結します。

入ってからどうなっていく?

入社〜半年初期訓練入社すると、保安(緊急脱出、消火、救急法)とサービスの基本を学ぶ訓練を受けます。訓練の最後には審査があり、合格すると乗務の資格が得られます。
1〜3年目新人客室乗務員先輩の指導を受けながら、国内線や国際線のエコノミークラスで乗務します。保安業務とサービスの基本をくり返し、どんな状況でも落ち着いて対応できる力を身につけます。
3〜6年目上位クラス・国際線の資格取得国際線やビジネスクラスの乗務資格を取り、より高度なサービスを担当します。英語力やワインの知識などを磨き、後輩の手本になる時期です。
6〜10年目パーサー・チーフパーサー各クラスのまとめ役(パーサー)や、客室全体の責任者(チーフパーサー)の資格を取ります。機長と連携しながら、便全体の安全とサービスに責任を持ちます。
10〜20年目ファーストクラス・教官・管理職ファーストクラスの責任者や、新人を育てる訓練の教官、地上の企画部門などで活躍します。班のリーダーとして、後輩の育成や評価を担当することもあります。
20年目〜ベテラン乗務員・客室部門の管理職長く乗務を続けるベテランとして活躍するか、客室部門の管理職として組織をまとめます。経験を生かして、接客マナーの講師、ホテルや空港の接客部門、航空系専門学校の教員などに転職する人もいます。

客室乗務員の1フライト(出社から到着まで)

1
出社とブリーフィング

空港のオフィスに出社し、チームで便の情報、担当エリア、乗客の特別な事情、緊急時の手順を確認します。機長や副操縦士とも天候や揺れの予想を共有します。

2
機内の点検と準備

飛行機に乗りこみ、消火器、酸素ボンベ、救命胴衣、AEDなどの非常用設備が決められた場所にあるかを点検し、飲み物や機内食の搭載を確認します。

3
搭乗と出発前の安全確認

乗客を席に案内し、手荷物の収納を手伝います。ドアが閉まったら、安全のデモンストレーションを行い、シートベルトや座席の背もたれなどを確認します。

4
飛行中のサービスと見回り

ベルト着用サインが消えたら、飲み物や機内食のサービス、機内販売を行います。体調の悪い乗客がいないか、客室を見回ります。

5
着陸前の安全確認

着陸の前に、テーブルや座席の背もたれを戻してもらい、シートベルトを確認し、ごみを回収します。

6
到着と報告

乗客がおりたら、忘れ物や機内の異常がないかを確認し、フライト中の出来事を報告書にまとめます。次の便があれば、すぐに準備に取りかかります。

客室乗務員のある1日

出発前(羽田発の国内線の日) 6:30 出社して、運航情報を確認 7:00 チームでブリーフィング 7:20 機長・副操縦士と打ち合わせ 7:30 非常用設備と搭載品の点検 7:45 搭乗。席への案内と手荷物 飛行中はドリンクサービスと見回り 1便目 8:15 離陸 2便目 10:50 羽田へ 3便目 13:30〜 17:30 最終便が到着 報告書を書き、チームで振り返って退社 1日3便。乗るたびに確認と準備をくり返す
羽田発の国内線で1日3便乗務する日の例
6:30

空港の会社オフィスに出社し、身だしなみを整えて最新の運航情報を確認します(羽田発の国内線で1日3便乗務する日の例)

7:00

チーム全員でブリーフィングを行い、担当エリア、乗客の特別な事情、緊急時の手順を確認します

7:20

機長・副操縦士と打ち合わせをして、天候や揺れの予想を共有します

7:30

機内で非常用設備の点検と、飲み物や備品の搭載を確認します

7:45

搭乗が始まり、乗客を席に案内して、手荷物の収納を手伝います

8:15

安全のデモンストレーションとシートベルトの確認をして離陸し、飛行中はドリンクサービスを行います

10:00

到着後、機内の忘れ物や異常を確認し、次の便の準備をします

10:50

2便目に乗務して羽田へ戻ります。体調の悪い乗客に対応し、機長に報告します

13:30

昼食休憩のあと、3便目に乗務します

17:30

最終便の到着後、報告書を作成し、チームで振り返りをして退社します

もっと知りたい人へ

そもそも客室乗務員とは

客室乗務員は、旅客機の客室で、乗客の安全を守り、快適な空の旅を提供する航空会社の社員です。国のルール(国土交通省の基準)で、旅客機には座席50席ごとに1人以上の客室乗務員を乗せることが決められています。たとえば、165席の飛行機なら4人以上が必要です。これは、緊急時に乗客を安全に脱出させるために必要な人数として定められたものです。つまり、客室乗務員は「サービスをする人」である前に、「安全を守る人」なのです。

保安要員としての役割

客室乗務員の一番大事な役割は、緊急時に乗客の命を守ることです。たとえば、機内で火が出たら消火器で消し、急病人が出たらAEDや酸素ボンベで手当てし、緊急着陸したら非常口を開けて乗客を脱出させます。こうした訓練を、入社時だけでなく毎年くり返し受けています。

サービスの役割

飲み物や機内食の提供、乗客の困りごとへの対応など、快適な空の旅を届けるのも大切な仕事です。たとえば、小さな子ども連れの家族に毛布を持っていったり、緊張している一人旅の子どもに声をかけたりと、乗客一人ひとりに気を配ります。

正社員としての採用

かつて大手航空会社は客室乗務員を契約社員として採用していた時期がありましたが、ANAは2014年度入社から、JALは2016年度入社から正社員として採用しています。安定して長く働けるようになり、結婚や出産後も乗務を続ける人が増えています。

なるためのルート

客室乗務員になるには、航空会社の採用試験に合格して入社するのが基本です。特別な国家資格は必要ありません。JALの新卒採用は専門学校・短大・高専・大学・大学院の卒業見込み者(学部・学科は問わない)、ANAの新卒採用は4年制大学・大学院の卒業見込み者が対象です(2025年度の募集要項)。多くの航空会社が、英語力の目安としてTOEIC 600点程度以上を求めています。大学では学部を問わず、外国語学部、文学部、経済学部、国際系の学部など、さまざまな学部の卒業生が客室乗務員になっています。

  1. 高校で英語を中心に学ぶ英語の基礎をしっかり身につけ、人と話す経験を積んでおきます。文系・理系は問われません。
  2. 大学・短大・専門学校に進む学部は問わないので、興味のある分野を学びながら、英語力と接客経験(アルバイトなど)を積みます。
  3. 就職活動で航空会社を受けるエントリーシート、適性検査、グループ面接、個人面接、英語試験、健康診断、体力測定などの選考を受けます。
  4. 入社して初期訓練を受ける保安・救急・サービスの訓練を受け、審査に合格すると乗務の資格が得られます。
  5. 乗務を始める先輩の指導を受けながら乗務を始め、経験を積んで上位の資格を取っていきます。
大学・短大・専門学校のどこに行くか

大手航空会社では大卒の採用が多いですが、JALのように短大や専門学校の卒業生も応募できる会社もあります。客室乗務員を養成する専門学校や、エアライン系のコースを持つ大学もあります。たとえば、外国語大学で英語を磨きながら、エアラインのセミナーに参加して準備する人もいます。

経験者採用や外国の航空会社

社会人経験者を対象にした採用(既卒・経験者採用)を行う航空会社もあり、一度別の仕事についてから客室乗務員になる人もいます。外国の航空会社は不定期に募集があり、英語での面接や、腕をのばしたときの高さ(アームリーチ)の基準などがある会社もあります。

英語力の準備

TOEIC 600点程度以上が目安の会社が多く、LCCや外資系では700点程度以上を求めることもあります。高校のうちから英語の授業を大切にし、英検などで力をつけておくと、大学での準備がスムーズになります。

試験・選考の詳細

大手航空会社の客室乗務員の選考は、何段階にも分かれています。JALの新卒採用(2025年度)の場合、書類・適性検査のあと、1次(WEB動画面接)、2次(グループ面接)、3次(個人面接・英語試験)、最終(個人面接・健康診断・体力測定)と進みます。ANAも、エントリーシートとWEB適性検査のあと、グループ面接、個人面接と英語試験、最終面接と身体検査があります。面接では、笑顔や話し方だけでなく、チームで協力する力、とっさの判断力、安全への意識などが見られます。

応募の条件

多くの航空会社で、視力は裸眼またはコンタクトレンズで矯正して両眼1.0以上などの条件があります。また、羽田や成田などの拠点空港まで、決められた時間内(たとえば公共交通機関で90分以内)に通えることを条件にしている会社もあります。くわしい条件は毎年の募集要項で確認しましょう。

面接で見られること

面接では、「なぜ客室乗務員になりたいのか」「なぜこの航空会社なのか」「チームで困難を乗りこえた経験」などが聞かれます。たとえば、「アルバイトで外国人のお客さんに英語で道案内をした」「部活でけがをした仲間をみんなで支えた」といった具体的な体験を話せると伝わりやすくなります。

採用人数と倍率

採用人数は年によって大きく変わり、景気や航空需要に左右されます。たとえばJALは2023年度に客室乗務員を約180人採用する計画を発表しました。人気の高い職業のため、大手航空会社では倍率が高くなる傾向があります。

訓練と乗務資格

入社後は、まず数か月の初期訓練を受けます。訓練では、航空機の構造、緊急時の脱出手順、消火、救急法、乗客の誘導、サービスの方法などを学びます。訓練センターには本物と同じ客室のモックアップがあり、煙の中での誘導や、着水を想定した救命ボートの訓練、脱出用スライドを滑りおりる訓練などを行います。訓練の最後には審査があり、合格しなければ乗務できません。乗務を始めたあとも、毎年の定期訓練と審査を受けて、資格を保ち続ける必要があります。

保安訓練の中身

保安訓練では、たとえば「エンジンから火が出た」「機内に煙が充満した」「海に不時着した」など、さまざまな緊急事態を想定して訓練します。非常口のドアを開ける手順、乗客への大きな声での指示、救命胴衣の着け方の案内などを、体が自然に動くまでくり返します。

サービス訓練の中身

サービス訓練では、飲み物や機内食の配り方、カートの操作、上位クラスでの料理の盛りつけ、ワインの知識、外国語での接客などを学びます。たとえば、揺れる機内で熱いコーヒーを安全に注ぐ方法なども練習します。

機種ごとの資格

飛行機の機種によって、非常口の位置やドアの開け方、設備の場所がちがうため、乗務する機種ごとに訓練を受けて資格を取ります。新しい機種が導入されると、その機種の訓練も必要になります。

緊急時に客室乗務員がすること

客室乗務員が保安要員と呼ばれるのは、機内で起こるさまざまな緊急事態に、最初に対応するのが客室乗務員だからです。飛行中の飛行機には、消防士も救急隊員も警察官もいません。そのため、客室乗務員は、火を消す人、急病人を手当てする人、乗客を落ち着かせて誘導する人の役割を一人で何役もこなします。たとえば、2024年1月に羽田空港で起きた航空機の衝突炎上事故では、客室乗務員の誘導で乗客・乗員全員が機外に脱出しました。こうした対応ができるのは、くり返しの訓練で、体が自然に動くまで手順を身につけているからです。

急病人への対応

飛行中に乗客が倒れたり、気分が悪くなったりしたときは、客室乗務員がまず状態を確認し、AEDや酸素ボンベ、救急箱を使って手当てします。機内アナウンスで医師や看護師が乗っていないか呼びかけ、機長と相談して、必要なら近くの空港に着陸することもあります。

機内の火災への対応

機内でモバイルバッテリーなどから火や煙が出た場合、客室乗務員が消火器で火を消し、周りの乗客を避難させます。たとえば、手荷物に入れたモバイルバッテリーが熱くなって煙が出る、というトラブルは実際に起きており、客室乗務員はそのための訓練も受けています。

緊急脱出

緊急着陸のあとに機外へ逃げる必要があるときは、客室乗務員が非常口の外の安全を確かめてドアを開け、脱出用スライドを出して、大きな声で乗客に指示を出します。荷物を持たずにすばやく逃げてもらうよう誘導し、最後に客室に人が残っていないかを確認します。

年収のリアル

客室乗務員の年収は、厚生労働省の調査(2024年)で平均約596万円が目安です。給料は、基本給に、乗務した時間や便数に応じた乗務手当、海外での滞在手当、深夜手当などが加わるしくみです。新卒の月給は、JAL(大卒)243,000円、ANA(大卒)195,631円+諸手当(2024年度実績)などで、これに乗務手当が加わります。航空会社の平均年収(全職種)は、JALが1,011万円(2026年3月期、平均年齢40.2歳)と高い水準ですが、これはパイロットなど給料の高い職種も含めた平均です。

会社による差

大手航空会社とLCC、外国の航空会社では、給料の水準や手当のしくみが大きくちがいます。一般的に、大手航空会社は給料や福利厚生が充実しており、LCCは給料水準が低めとされます。外国の航空会社は、拠点となる国や契約の形によって条件がさまざまです。

乗務が多いと手当も増える

乗務手当は飛んだ時間や便数に応じて支払われるため、乗務が多い月は給料が増えます。逆に、病気や地上勤務で乗務が少ない月は手当が減ります。国際線は乗務時間が長く、滞在手当もあるため、国内線より手当が多い傾向があります。

航空券の割引

多くの航空会社では、社員や家族が自社の航空券を割引価格で利用できる制度があります。たとえば、休みの日に家族と旅行に行くときに使えるので、旅行好きの人には大きな魅力です。

やりがい

客室乗務員のやりがいは、乗客の旅の大切な時間を支えられることです。初めて飛行機に乗る子ども、家族に会いに行く人、新婚旅行の夫婦など、さまざまな思いを持った乗客に「ありがとう」「楽しい旅になりました」と言ってもらえる瞬間は大きな喜びです。また、世界中の都市に行けること、毎回ちがうチームやお客さんと出会えることも、この仕事ならではの魅力です。

安全を守る誇り

何事もなく無事に目的地に着くことは当たり前に見えますが、その裏には客室乗務員の毎日の点検と訓練があります。急病人の命を救ったり、トラブルを落ち着いて解決したりしたときには、保安要員としての誇りを強く感じられます。

世界を知る

国際線では、ニューヨーク、パリ、シンガポールなど世界の都市に滞在できます。たとえば、休息時間に現地の美術館や市場を訪れて、その国の文化にふれることができます。

自分の成長

さまざまな乗客や仲間と接することで、コミュニケーション力、判断力、英語力などが身につきます。こうした力は、将来どんな仕事についても役立ちます。

大変なこと・きついこと

客室乗務員の仕事は、見た目の華やかさとはちがい、体力的にも精神的にも大変な仕事です。早朝や深夜の出社、時差のある国際線、不規則な勤務スケジュールで、生活のリズムが崩れやすくなります。機内では長時間立ちっぱなしで、重いカートを押したり、手荷物の収納を手伝ったりと、体への負担も大きいです。また、乗客からの無理な要求や苦情に対応しなければならないこともあります。

不規則な生活と体調管理

早朝に出社する日、夜遅くに帰る日、海外に泊まる日など、毎日の勤務時間がちがいます。たとえば、時差のあるヨーロッパから帰ってきた次の日は、体が眠くならない時間に眠る必要があり、体調管理がとても大切です。

安全への大きな責任

緊急時には自分の判断が乗客の命にかかわるため、大きな責任があります。定期訓練と審査に合格し続けなければ乗務できず、常に勉強と練習が必要です。

休日が不規則

土日や年末年始、お盆などの旅行シーズンは飛行機が混むため、休みを取りにくいことがあります。友だちや家族と休みを合わせにくいと感じる人もいます。

向いている人

客室乗務員に向いているのは、人と接することが好きで、相手の気持ちを考えて行動できる人です。緊急時にも落ち着いて判断できる冷静さ、仲間と協力するチームワーク、長時間動き続けられる体力も大切です。英語などの外国語を使って、いろいろな国の人と話すのが好きな人にも向いています。

こんな経験がある人

接客のアルバイトをしてきた人、部活や委員会でチームをまとめた経験がある人、留学や国際交流のイベントに参加した人などは、その経験が客室乗務員の仕事に生きます。たとえば、飲食店のアルバイトで混雑時にてきぱき動いた経験は、短いフライトでのサービスにそのまま役立ちます。

向いていないかもしれない人

規則正しい生活リズムを大切にしたい人や、乗り物酔いがひどい人は、最初は大変と感じるかもしれません。ただし、乗り物酔いは慣れることも多く、訓練で対策を学ぶこともできます。

高校生のうちにできること

高校生のうちにできる一番の準備は、英語の力をつけることです。英検やTOEIC Bridgeなどの試験を目標にすると、勉強のはげみになります。また、人前で話す経験や、困っている人に声をかける経験を積んでおくと、面接でも実際の仕事でも役に立ちます。救命講習(普通救命講習)を受けて、心肺蘇生やAEDの使い方を学んでおくのもおすすめです。

接客や人と話す経験

文化祭の受付、オープンキャンパスの案内係、地域のボランティアなど、人と接する機会に積極的に参加しましょう。たとえば、外国人観光客が多い地域なら、英語での道案内に挑戦してみるのもよい経験になります。

文理選択の考え方

客室乗務員は文系・理系を問わずなれます。外国語学部や国際系の学部に進む人が多いですが、理系の学部から客室乗務員になる人もいます。大学で学ぶ内容よりも、英語力や人と接する経験のほうが重視されます。

体力と身だしなみ

長時間立って動く仕事なので、運動の習慣をつけて体力をつけておきましょう。水泳の能力を求める航空会社もあるので、泳げるようにしておくと安心です。

代表的な会社

客室乗務員の主な勤め先は、日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)という大手航空会社(フルサービスキャリア)です。グループ会社として、ジェイエア、日本トランスオーシャン航空、ANAウイングスなど、地方路線や小型機を担当する航空会社もあります。LCCでは、ピーチ・アビエーション、ジェットスター・ジャパン、ZIPAIR Tokyo、スプリング・ジャパンなどがあります。ほかに、スカイマーク、エア・ドゥ、スターフライヤー、ソラシドエアといった中堅の航空会社や、外国の航空会社も日本人の客室乗務員を採用しています。

フルサービスキャリアとLCCのちがい

フルサービスキャリアは、運賃に機内食や飲み物、手荷物の預け入れなどが含まれ、上位クラスのサービスもあります。LCCは運賃を安くするかわりに、飲み物や座席指定などを有料にしています。客室乗務員の仕事も、フルサービスキャリアではサービスの質、LCCでは効率と販売が重視されます。

外国の航空会社

シンガポール航空、エミレーツ航空、カタール航空、キャセイパシフィック航空など、外国の航空会社で働く日本人客室乗務員もいます。拠点が海外になる会社もあり、英語で働く環境や、海外での生活を経験できます。

よくある質問

身長が低いと客室乗務員になれませんか?

JALやANAの募集要項には身長の条件は書かれていません(2024年時点)。ただし、外国の航空会社やLCCの一部では、身長や腕をのばしたときの高さ(アームリーチ)の基準があります。収納棚の荷物を扱ったり、非常用の設備に手が届いたりする必要があるためです。

英語はどのくらいできればよいですか?

多くの航空会社で、TOEIC 600点程度以上が目安とされています。LCCや外資系では700点程度以上を求める会社もあります。点数だけでなく、実際に英語で接客できる会話力も大切です。

男性でも客室乗務員になれますか?

なれます。日本の航空会社では女性が多いですが、男性の客室乗務員も採用されています。外国の航空会社では男性の客室乗務員もめずらしくありません。

高卒で客室乗務員になれますか?

日本の大手航空会社の新卒採用は、専門学校・短大・大学などの卒業が条件のことが多いです。一部の外国の航空会社は高卒以上で応募できる場合がありますが、高い英語力が求められます。

メガネをかけていても大丈夫ですか?

多くの航空会社では、裸眼またはコンタクトレンズで矯正して両眼1.0以上などの視力の条件があります。乗務中はメガネではなくコンタクトレンズを使うことを求める会社もあるので、募集要項で確認しましょう。

飛行機酔いしやすいのですが大丈夫ですか?

乗り物酔いは、何度も乗るうちに慣れることが多いといわれます。ただし、ひどい場合は仕事が続けにくいこともあるので、不安な人は実際に飛行機に乗ってみて自分の体と相談してみましょう。

結婚や出産後も続けられますか?

大手航空会社では、育児休業や短時間勤務、乗務日数を減らす制度などが整っており、出産後も乗務を続ける人が増えています。正社員採用になったことで、長く働き続けやすくなりました。

客室乗務員をやめたあと、どんな仕事に就く人がいますか?

接客マナーの講師、ホテルや高級ブランド店の接客、空港のグランドスタッフ、秘書、航空系専門学校の教員、通訳など、接客力や語学力を生かせる仕事に転職する人が多いです。

理系でも客室乗務員になれますか?

なれます。客室乗務員の採用は学部・学科を問わない会社がほとんどです。理系で学んだ論理的な考え方は、安全に関する判断などにも役立ちます。

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年収について:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」の客室乗務員(企業規模10人以上、男女計)の平均月収40万5,000円とボーナス約110万円から計算した目安です。新卒の月給はJAL(大卒)243,000円、ANA(大卒)195,631円+諸手当(いずれも2024年度実績)で、これに乗務手当などが加わります。

数字はすべて公開データにもとづく目安です。出典は出典・サイトポリシーにまとめています。

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