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「売り込む人」ではなく「お客さんの困りごとを解決する人」。会社にお金を連れてくる最前線

営業

営業は、自分の会社の商品やサービスをお客さんに提案し、買ってもらう(契約してもらう)仕事です。日本の大学生の新卒就職では、もっとも採用人数が多い職種のひとつで、メーカー、商社、銀行、IT、不動産、広告など、ほぼすべての業界に営業の担当者がいます。ひとくちに営業といっても、会社を相手にする法人営業、家族や個人を相手にする個人営業、新しいお客さんを探す新規開拓、いつもの取引先を回るルート営業、電話やオンラインで進めるインサイドセールス、契約後にお客さんの成功を支えるカスタマーサクセス、薬の情報を医師に届けるMRなど、中身はかなり違います。会社の売上はすべて「だれかが買ってくれた」ことから生まれるので、営業は会社にお金を連れてくる最前線の仕事です。

平均年収の目安約540万〜660万円職種による目安新卒1年目は多くの会社で年300万円台から。成果給の大きい会社や業界では20代で1,000万円を超える人もいます
なるまでの難しさ★★★★★営業になるために必要な資格はほとんどなく、文系・理系どちらの学部からでもなれるので、入口の難しさは高くありません。ただし、売上の目標(ノルマ)があり、結果が数字ではっきり出るため、続けて成果を出し続けることは簡単ではありません。人気企業の営業職は就職の倍率が高くなります。
決めどき文系・理系どちらでも

大学3年の就職活動のとき(学部はほぼ問われません)

営業の中の、細かい担当

同じ営業でも、担当によって仕事はまったく違います。押すと、それぞれの仕事内容・必要な力・キャリアが見られます。

どんな会社にある?

営業は、ものやサービスを売るすべての会社にあるので、どの業界にも必ずいます。メーカー、商社、銀行・証券・保険、IT、不動産、広告、人材、旅行、通信など、新卒採用で営業職をいちばん多く採る会社もたくさんあります。大企業では「法人営業部」「代理店営業部」などに分かれ、担当する業界や地域、お客さんの大きさで細かく役割が決まっています。中小企業やベンチャー企業では、一人の営業が新規開拓からアフターフォロー、ときには商品企画まで幅広く担当することが多いです。

どの学部の人が多い?

営業になるのに学部はほとんど関係なく、経済・経営・商・法・文・社会学部などの文系出身者が多いですが、理系出身者も多く働いています。とくに、機械や電子部品、化学素材、医療機器、ITなど技術的な説明が必要な商品の営業(技術営業、セールスエンジニアと呼ばれます)では、工学部や理学部の出身者が歓迎されます。MRは薬学部の出身者もいますが、文系出身者も多く、入社後の研修で医学や薬学を学びます。海外営業では外国語学部や国際系学部の出身者が多いです。

営業の年収と昇進の流れ

営業担当(新人)300〜450万円
入社1〜3年、22〜25歳

先輩に同行して基本を覚え、小さな取引先や担当地域を任されます。目標を安定して達成し、一人で商談をまとめられるようになると次の段階に進みます。

営業担当(中堅)400〜650万円
入社4〜8年、26〜30歳

大きな取引先や難しい案件を担当し、後輩の指導もします。チームの売上をけん引する実績が昇格の条件です。

主任・係長(リーダー)500〜800万円
入社8〜12年、30〜35歳

数人のチームのまとめ役として、メンバーの商談を支えながら自分も成果を出します。人を育てる力が評価されると課長候補になります。

課長(営業マネージャー)650〜1,000万円
35〜45歳

5〜15人ほどのチームを率い、チーム全体の売上と利益、メンバーの評価や採用に責任を持ちます。

部長・支店長850〜1,400万円
45〜55歳

複数のチームや支店を統括し、地域や事業全体の営業戦略を決めます。

営業本部長・役員1,200〜2,500万円
50代〜

会社全体の営業部門の責任者として、売上計画や組織づくりを担います。会社の規模で年収の幅はとても大きいです。

年収は目安です。会社や地域、本人の働き方で大きく変わります。

働き方で何が違う?

大手メーカー・商社の営業30代で600万〜1,000万円以上の例も

会社の名前と商品の力があるので、話を聞いてもらいやすく、大きな取引を担当できます。担当する業界や地域が細かく分かれ、チームで動くことが多いです。数年ごとに担当や勤務地が変わる転勤もあります。研修制度が整っているのも特徴です。

良いところ給料と福利厚生が安定し、大きな仕事ができる

大変なところ転勤が多く、自分の裁量は小さめになりやすい

中小企業の営業300万〜550万円程度が多い

一人で担当する範囲が広く、新規開拓から納品、集金まで任されることが多いです。社長や工場との距離が近く、自分の提案がすぐ形になります。地域に密着した取引が多く、転勤が少ない会社もあります。

良いところ仕事の全体が見え、早くから責任ある仕事を任される

大変なところ給料は大手より低めで、教育制度が整っていない場合もある

ベンチャー・IT(SaaS)企業の営業400万〜800万円程度、成果次第で上振れ

インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスなど分業型の営業が多く、データを使って営業を進めます。会社が急成長していれば、20代でマネージャーになることもあります。

良いところ若いうちから昇進でき、新しい営業手法が学べる

大変なところ会社の安定性は大手より低く、変化が激しい

成果報酬型の営業(不動産・保険・人材など)人によって300万〜2,000万円以上と差が大きい

基本給に加えて、契約数や売上に応じた歩合給が大きい働き方です。成果を出せば20代で年収1,000万円を超えることもありますが、成果が出ないと収入が下がります。

良いところがんばりがそのまま収入に表れる

大変なところ収入が不安定で、プレッシャーが大きい

外資系企業の営業600万〜1,500万円以上の例も

IT、製薬、医療機器、消費財などの外資系企業では、成果に応じた報酬の割合が大きく、英語を使う場面もあります。目標の達成度がはっきり評価されます。

良いところ年収が高く、若くても実力で評価される

大変なところ成果が出ないと立場が厳しくなりやすい

代表的な会社・職場

機械・電子機器メーカー5大商社(総合商社)大手製薬会社自動車ディーラー大手生命保険・損害保険会社大手証券会社人材・情報サービス大手ハウスメーカー外資系IT(SaaS)企業大手通信会社営業専門の会社
キーエンス ›機械・電子機器メーカー

工場で使うセンサーや測定器を作り、代理店を通さず営業が直接お客さんに提案する会社として知られています。

約2,039万円(2025年3月期有価証券報告書、平均34.8歳)
三菱商事・伊藤忠商事・三井物産など5大商社(総合商社)

エネルギー、食料、機械など世界中のものを売り買いし、事業に投資します。営業職は「トレーディング」と呼ばれる取引を担当します。

1,500万円を超える水準(各社有価証券報告書)
武田薬品工業・第一三共・アステラス製薬など大手製薬会社

病院で使う薬を開発・販売し、MRが医師に薬の情報を届けます。

1,000万円を超える水準(各社有価証券報告書)
トヨタ系・日産系などの自動車販売会社自動車ディーラー

メーカーの車を地域で販売し、点検や車検、保険まで扱います。個人営業の代表的な職場です。

日本生命・第一生命・東京海上日動など大手生命保険・損害保険会社

保険商品をつくり、営業職員や代理店を通じて販売します。代理店営業の職場としても多いです。

野村證券・大和証券など大手証券会社

株や投資信託を個人や会社にすすめる営業を行います。

リクルート ›人材・情報サービス

求人、住宅、旅行、飲食などの情報サービスを運営し、掲載してもらう会社への営業を行います。

積水ハウス・大和ハウス工業など大手ハウスメーカー

住宅を設計・建築し、住宅展示場などで家を建てたい家族に提案します。

セールスフォース・ジャパンなど外資系IT(SaaS)企業

顧客管理などのクラウドサービスを提供し、インサイドセールスやカスタマーサクセスなど分業型の営業を行います。

NTTドコモ・KDDI・ソフトバンク大手通信会社

携帯電話や会社向けの通信サービスを提供し、法人営業や代理店営業を行います。

CSO(医薬品販売業務受託機関)営業専門の会社

製薬会社からMRの業務を請け負い、契約MRを派遣する会社です。

›がついた会社は、会社図鑑で詳しく解説しています。

どうやって稼いでいる?

売上注文の代金費用材料費・人件費利益給料や開発に−=売り方の4つの型車・家・機械売り切り型新しい注文をとる部品・食品・日用品リピート型取引を守り、増やすソフト・動画配信月額型解約を防ぐ保険・携帯電話代理店型代理店の力を高める営業は売るだけでなく値段・代金の回収・続く取引まで責任を持つ
営業の給料は、基本給に加えて売上や契約数に応じたボーナスや歩合給がつくことが多いです

営業の仕事は、会社の売上をつくることです。会社は、営業がとってきた注文の代金から、材料費や人件費などの費用を引いた残りを利益として受け取り、それで給料を払ったり新しい商品を開発したりします。営業はただ「売る」だけでなく、どのくらいの値段で売るか(利益が残るか)、代金をきちんと回収できるか、お客さんが長く買い続けてくれるかまで責任を持ちます。最近は、外回りの営業、インサイドセールス、カスタマーサクセス、マーケティングが役割を分けてリレーのようにお客さんを担当する会社も増えています。

1
一回ごとの販売(売り切り型)

車や家、機械のように、1回売ったら代金をまとめて受け取る形です。売るたびに売上が立つので、営業は新しい注文をとり続けることが目標になります。

2
継続取引(リピート型)

部品や食品、日用品のように、同じお客さんが何度も注文してくれる形です。たとえばお菓子メーカーとスーパーは毎週のように取引します。ルート営業はこの継続取引を守り、増やす役割です。

3
月額料金(サブスクリプション型)

ソフトウェアや動画配信、オフィスの複合機のレンタルなど、毎月料金を受け取る形です。解約されないことが売上を守るカギになるため、カスタマーサクセスが重要になります。

4
代理店経由の販売

保険や携帯電話、家電のように、代理店や販売店に売ってもらい、メーカーは代理店に手数料を払う形です。代理店営業が代理店の売る力を高めます。

5
成果に応じた報酬(インセンティブ)

営業職の給料は、基本給に加えて、売上や契約数に応じたボーナスや歩合給が支払われることが多いです。会社にとっては、売れた分だけ費用を払う仕組みになります。

入ってからどうなっていく?

1年目研修と同行入社後は商品知識や業界のルール、名刺交換やメールの書き方などのビジネスマナーを学ぶ研修を受けます。配属後は先輩の商談に同行し、議事録をとったり見積書を作ったりしながら、営業の流れを覚えます。
2〜4年目一人立ち自分の担当のお客さんや地域を持ち、売上目標を任されます。新規開拓で連絡を続けたり、既存のお客さんに新しい提案をしたりして、自分なりの勝ちパターンを作る時期です。ここで成果を出すと、大きなお客さんを任されるようになります。
5〜9年目中堅・大口担当会社の売上を大きく左右する大手のお客さんを担当したり、難しい案件をまとめたりします。後輩の指導役にもなります。この時期に、マーケティングや商品企画、海外営業への異動、ほかの会社への転職を考える人も多いです。
30代半ば〜40代課長・マネージャー5〜15人ほどの営業チームを率い、チーム全体の売上目標を達成する責任を持ちます。メンバーの目標設定、商談への同行、評価、採用にもかかわります。自分で売る力よりも、人を育てて仕組みで売る力が求められます。
40代〜50代部長・支店長・役員複数のチームや支店をまとめ、地域や事業全体の売上と利益に責任を持ちます。営業の戦略づくりや、どの市場に力を入れるかの判断を担います。営業本部長や役員になる人もいます。
よくある転職・独立営業経験を武器に営業経験は、ほかの業界の営業、IT企業のカスタマーサクセス、人材紹介会社のキャリアアドバイザー、マーケティング職などへの転職に生かせます。保険や不動産の営業では独立して代理店や仲介会社を開く人、営業代行会社を起業する人もいます。

法人営業で契約がとれるまで

1見込み客を探す展示会や紹介で2ヒアリング困りごと・予算を聞く3提案と見積もり技術者と相談して作る4交渉と承認値段や納期を話し合う6納品と導入使い始めるまで支える7フォロー感想を聞き次の提案へ5契約ここで売上が決まる長い取引が続く追加の商品や新しい提案契約のあとも支えて、長い取引につなげる
会社を相手にする法人営業の例
1
見込み客を見つける

展示会、ホームページへの問い合わせ、紹介、リストへの電話などで、商品を必要としそうな会社を見つけます。

2
ヒアリング(課題を聞く)

相手の会社を訪ね、何に困っているか、予算はいくらか、いつまでに解決したいか、だれが決めるのかを聞きます。

3
提案と見積もり

社内の技術者などと相談して、課題を解決する方法と値段をまとめた提案書と見積書を作り、説明します。

4
交渉と社内の承認

値段や納期、条件について相手と話し合います。相手の会社の中でも、課長、部長と承認が進むのを待ちます。

5
契約

条件がまとまれば契約書を交わします。ここでようやく売上が決まります。

6
納品と導入の支援

商品を届け、使い始めるまでを支えます。トラブルがあればすぐに対応します。

7
フォローと次の提案

使ってみた感想を聞き、追加の商品や新しい提案につなげます。こうして長い取引が続いていきます。

MR基礎試験(MR認定制度)

合格率旧制度の第32回MR認定試験で79.7%
勉強時間の目安製薬会社の研修では入社後の数か月で集中的に学ぶのが一般的です
受験資格2026年度からの新制度では受験資格の制限がなくなり、希望すればだれでも受験できます
旧制度のMR認定試験は合格率が8割前後で、会社の研修でしっかり学べば多くの人が合格する試験でした。医師や弁護士の国家試験のように学生時代から何年も勉強する試験ではありません。ただ、医学や薬学の専門用語が多く、文系出身者には最初は難しく感じられることもあります。営業職全体では必須の資格はほとんどなく、業界ごとの資格を入社後にとるのが一般的です。
試験科目(押すと中身が見られます)
合格までの流れ
  1. 製薬会社やCSOに入社多くの人は会社に入ってから学び始めます。
  2. 基礎教育(自分で学ぶ)3科目の基礎知識をテキストなどで学びます。
  3. MR基礎試験(CBT)年2回、全国の会場でパソコンを使って受験します。連続する4回の試験の中で全科目に合格する必要があります。
  4. 会社の実務教育自社の薬や現場での活動について、会社が教育します。
  5. MR認定証の交付試験合格と実務教育の修了で認定証が交付され、毎年の学習で5年ごとに更新します。

営業のある1日

8:45

出社してメールを確認し、今日の訪問先と提案内容を見直します。

9:15

営業チームの朝会。先週の売上の進み具合と、今週の大事な商談を共有します。

10:00

新しく知り合った会社に電話し、オンライン商談の約束をとります。

11:00

取引先の工場を訪問し、新しい製品の使い方について現場の担当者と打ち合わせます。

12:30

移動のついでに昼食。電車の中でスマホから見積もりの依頼に返信します。

14:00

別の会社で部長と商談。提案書を使って、導入すると費用がどれだけ下がるかを説明します。

16:00

帰社して社内の技術者と打ち合わせ。お客さんの要望に合わせて仕様と価格を調整します。

17:00

今日の商談内容を顧客管理システムに入力し、見積書と提案書を作ります。

18:00

明日の準備をして退社します。月末や決算前は帰りが遅くなることもあります。

もっと知りたい人へ

そもそも営業とは

営業は、お客さんの困りごとや「こうなったらいいのに」という願いを聞き、それを自社の商品やサービスで解決する提案をして、買ってもらう仕事です。「無理やり売り込む」イメージを持つ人もいますが、いまの営業で大切なのは、相手の話をよく聞いて、本当に役に立つものを提案することです。たとえば、スポーツ用品メーカーの営業が学校の部活動に、選手の人数や予算を聞いたうえで、ちょうどよいユニフォームと練習用品のセットを提案するのが営業です。会社の売上はすべて営業活動から始まるので、営業は会社にとってなくてはならない仕事です。

営業と販売のちがい

お店のレジや売場でお客さんに商品を売る仕事は「販売」や「接客」と呼ばれ、営業とは区別されることが多いです。営業は、自分からお客さんのところへ行ったり連絡したりして、まだ買う気になっていない人に提案するのが特徴です。ただ、車のディーラーや住宅展示場のように、来店したお客さんに提案する営業もあります。

営業は会社の「耳」でもある

営業はお客さんと一番近いところにいるので、「こんな商品がほしい」「ここが使いにくい」という声を会社に持ち帰る役割もあります。たとえば、お客さんの声から「もっと軽いノートパソコン」が企画されることもあります。営業の情報は、商品企画やマーケティングにとって大切な材料です。

営業の分け方は2つの軸で考える

営業は「だれに売るか(会社か個人か)」と「どうやって売るか(新規かルートか、対面かオンラインか、直接か代理店か)」の組み合わせで考えるとわかりやすいです。たとえば「法人向けの新規開拓をオンラインで行う」のがIT企業のインサイドセールスです。求人を見るときも、この2つの軸を確認すると仕事のイメージがつかみやすくなります。

なるためのルート

営業職になるための特別な資格は基本的にいりません。もっとも多いのは、大学を卒業して会社に新卒で入り、営業部門に配属されるルートです。日本の大企業では、入社してから配属先が決まる会社も多く、文系の総合職で入ると最初は営業に配属される例がよくあります。高校や専門学校を卒業して営業職になる人、ほかの職種から転職して営業になる人もいます。

  1. 高校で文理を選ぶ営業はどちらからでもなれます。技術的な商品の営業やMRを考えるなら理系も選択肢です。
  2. 大学・短大・専門学校へ進学学部は問われないことが多いですが、経済・経営・商学部では会社のしくみやマーケティングを学べます。
  3. 大学でコミュニケーションの経験を積むアルバイトでの接客、サークルの運営、ゼミの発表などで、人と話して物事を進める経験を積みます。
  4. 就職活動で業界と営業の種類を選ぶ大学3年の夏ごろからインターンシップに参加し、法人営業か個人営業か、どの業界の営業かを考えます。
  5. 入社・研修入社後に商品知識やマナーの研修を受け、営業部門に配属されます。MRなら認定制度の試験に向けて学びます。
  6. 営業として一人立ち先輩の同行を経て、担当のお客さんを持ちます。2〜3年で一人前と見られることが多いです。
転職で営業になる人も多い

営業職は中途採用も多く、販売、接客、事務などほかの仕事から営業に転職する人もたくさんいます。とくに、人材紹介、不動産、IT、保険などの営業は未経験者を積極的に採用する会社もあります。

高校卒業で営業になる道

自動車販売会社、住宅設備、地元の商社や卸売会社などでは、高校卒業者を営業職で採用する会社もあります。まず営業アシスタントや店舗スタッフとして入り、のちに営業になる例もあります。

試験・選考の詳細

営業職になるための国家試験はなく、会社の採用選考がいちばん大事な関門です。新卒採用では、エントリーシート(志望動機や学生時代に力を入れたこと)、適性検査(SPIなどの筆記・Webテスト)、グループディスカッション、2〜3回の面接という流れが一般的です。営業職の選考では、人と話す力、目標に向かって粘り強く行動した経験、相手の立場を考える力などが見られます。業界によっては、関連する資格を入社後にとるよう求められます。

選考でよく聞かれること

「学生時代に力を入れたことは何か」「チームで意見が分かれたときにどうしたか」「なぜこの業界の営業なのか」などがよく聞かれます。たとえば、アルバイト先で売上を伸ばすために工夫した経験や、部活動で新入部員を増やした経験は、営業の素質を伝えるエピソードになります。

業界ごとに必要になる資格

不動産の営業では宅地建物取引士、保険の営業では生命保険募集人や損害保険募集人の資格、証券会社では証券外務員の資格が必要になります。製薬会社のMRはMR認定センターの認定制度があります。多くは入社後に会社の支援を受けて取得します。

MRの認定制度

MRの認定制度は2026年度から大きく変わり、試験は「MR認定試験」から「MR基礎試験」になり、年2回、全国の会場でパソコンを使うCBT方式で行われるようになりました。科目は「医薬品情報」「疾病と治療」「医薬品産業と倫理・法規・制度」の3つです。旧制度最後となった第32回MR認定試験の合格率は79.7%でした。

年収のリアル

営業の年収は、どの業界の、どの会社で、どの種類の営業をするかで大きく変わります。job tagに掲載された令和7年賃金構造基本統計調査の加工値では、自動車営業が約585.7万円、保険営業が約540.6万円、MRが約660.7万円です。さらに、高額な製品を扱う会社や、成果給の大きい会社では20代から高い年収を得る人もいます。一方、売上目標を達成できないとボーナスが減る会社もあり、年によって収入が上下することもあります。

基本給とインセンティブ

営業の給料は、毎月決まった基本給と、成果に応じたインセンティブ(歩合給や業績賞与)の組み合わせが多いです。不動産や保険、人材紹介などは成果給の割合が大きく、同じ年に入社した人でも年収が2倍以上ちがうことがあります。メーカーや銀行は成果給の割合が小さく、安定しています。

営業の年収が高い会社の例

センサーなどを作る機械メーカーのキーエンスは、営業の力が強い会社として知られ、有価証券報告書では平均年間給与が約2,039万円(平均年齢34.8歳、2025年3月期)と日本トップクラスです。総合商社や大手製薬会社、外資系IT企業の営業も高い水準です。

手当や経費

外回りの営業には、営業手当や、交通費、取引先との会食費などの経費が出る会社が多いです。車で回る営業では社用車が貸し出されることもあります。

やりがい

営業のやりがいは、自分の提案でお客さんの問題が解決し、「ありがとう、あなたに頼んでよかった」と言ってもらえることです。成果が売上という数字ではっきり見えるので、がんばりが評価されやすいのも魅力です。また、社長や工場長など、ふだんは会えないような人と話す機会があり、いろいろな業界や会社のしくみを知ることができます。営業で身につく「話を聞く力」「提案する力」「人を動かす力」は、どんな仕事にも生かせます。

形に残る成果

たとえば、建設機械の営業が担当した工事現場で、自分が提案した機械が橋やビルを造るのに使われることがあります。自分が売った商品が街の中で使われているのを見るのは、営業ならではの喜びです。

自分の工夫が通じる

営業のやり方には決まった正解がなく、どのお客さんに、どの順番で、どう提案するかを自分で考えられます。工夫がうまくいって契約がとれたときの達成感はとても大きいです。

大変なこと・きついこと

営業には売上の目標(ノルマや予算と呼ばれます)があり、月末や期末に目標に届かないと強いプレッシャーを感じます。新規開拓では断られることが多く、気持ちの切り替えが必要です。お客さんの都合に合わせるので、急な呼び出しやクレーム対応、遠方への出張もあります。個人営業では、お客さんが休みの土日に働くことが多いです。

クレーム対応

納品が遅れた、商品が故障したといったトラブルが起きると、お客さんに最初に謝りに行くのは営業です。社内の工場や物流と急いで調整し、解決策を示す必要があります。つらい場面ですが、誠実に対応することで、かえって信頼が深まることもあります。

社内との板ばさみ

お客さんは「もっと安く、もっと早く」と求め、社内の工場や経理は「その値段では利益が出ない」と言うことがあります。営業はその間に立って調整するので、気をつかう場面が多いです。

働き方は会社によってちがう

以前は長時間労働や接待が多いイメージがありましたが、働き方改革やオンライン商談の広がりで、残業を減らしたり在宅勤務を取り入れたりする会社も増えています。会社によって差が大きいので、就職のときによく調べることが大切です。

向いている人

営業に向いているのは、人と話すのが好きな人だけではありません。むしろ大切なのは、相手の話をじっくり聞いて、何に困っているかを考えられる人です。おとなしい性格でも、準備をしっかりして誠実に対応する人は、お客さんから信頼されます。目標に向かってコツコツ行動を続けられる人、うまくいかなくても原因を考えてやり方を変えられる人、ちがう立場の人の意見をまとめるのが得意な人も向いています。

しゃべりが得意でなくても大丈夫

営業で成果を出している人の中には、話すのが苦手だという人もたくさんいます。お客さんのことをよく調べ、質問をよく準備し、約束を必ず守ることで信頼を得ているのです。

種類によって向き不向きが変わる

新規開拓は行動力と打たれ強さ、ルート営業は人間関係を長く大切にする力、インサイドセールスは電話や数字の分析、カスタマーサクセスは教えることやデータを見ることが得意な人に向いています。営業の中でも、自分に合う種類を選ぶことが大切です。

高校生のうちにできること

営業の力は、ふだんの生活の中でも育てられます。部活動やクラス、文化祭で、みんなの意見を聞いて一つにまとめる役をやってみましょう。文化祭の模擬店でどうすればお客さんが来てくれるかを考えて工夫するのも、立派な営業の練習です。アルバイトができるなら、接客の仕事でお客さんとの会話に慣れておくのもよい経験になります。

ニュースで「会社が何を売っているか」を知る

ニュースや新聞の経済面を読んで、どんな会社がどんな商品を、だれに売っているのかに注目しましょう。身の回りの商品の会社を調べて、「この会社の営業はだれに何を売っているのだろう」と想像してみると、業界の地図が見えてきます。

英語と数学も役に立つ

海外営業を目指すなら英語は大きな武器になります。また、営業では割合や平均、利益の計算をよく使うので、数学の基礎も大切です。提案書で「費用が何%下がるか」を説明するのは、まさに数学の応用です。

代表的な会社・職場

営業職はほぼすべての会社にありますが、とくに営業の人数が多い、または営業の力で知られる会社があります。機械・電子部品メーカー、総合商社、製薬会社、自動車販売会社、生命保険・損害保険会社、不動産会社、人材サービス会社、IT・SaaS企業、広告会社などです。会社の規模や業界によって、営業のスタイルや給料が大きくちがいます。

営業が強いことで知られる会社

キーエンス(センサーなど)、リクルート(求人・住宅・結婚情報などのサービス)、大手証券会社、大手住宅メーカーなどは、営業の力が強い会社として知られています。

営業を専門に請け負う会社

ほかの会社の代わりに営業活動を行う「営業代行」の会社や、製薬会社からMRの仕事を請け負うCSO(医薬品販売業務受託機関)と呼ばれる会社もあります。

法人営業と個人営業のちがい

法人営業と個人営業は、同じ営業でも仕事の進め方が大きくちがいます。法人営業は相手が会社なので、1回の金額が大きく、決めるまでに何人もの承認が必要で、数か月〜1年以上かかることもあります。個人営業は相手が一人ひとりの人なので、感情や信頼が決め手になりやすく、短い期間で決まることが多いです。働く時間も、法人営業は相手の会社に合わせて平日が中心、個人営業は土日や夜が中心になりやすいです。

決める人のちがい

たとえば、会社がコピー機を入れかえるときは、使う社員、総務の担当者、課長、部長の順に話が上がっていきます。家族が車を買うときは、夫婦や家族で話し合って決めます。法人営業では「最終的にだれが決めるのか」を見つけることが大切です。

金額と期間のちがい

法人営業では工場の設備や会社全体のシステムなど、数千万円〜数億円の取引もあります。個人営業では車が数百万円、家が数千万円といった金額です。法人営業は合理的な理由(数字)が、個人営業は生活への思いが決め手になりやすいです。

新しい営業のかたち

インターネットの広がりで、営業のやり方は大きく変わっています。お客さんは営業に会う前に、ネットで商品を調べ、くらべてから問い合わせるようになりました。そこで、マーケティングで見込み客を集め、インサイドセールスが関係を育て、フィールドセールスが商談をまとめ、カスタマーサクセスが契約後を支えるという「分業型」の営業が広がっています。顧客管理システム(CRM)や営業支援システム(SFA)で、営業の活動をデータで管理するのも当たり前になりました。

分業型営業(ザ・モデル)

アメリカのSalesforceなどで広まった、営業の工程を分けて担当する方法は、日本では「ザ・モデル」と呼ばれることもあります。それぞれの担当が「何件を次に渡したか」という数字を目標にするので、どこでつまずいているかがわかりやすくなります。

AIと営業

最近は、AIが商談の録音から議事録を作ったり、契約しそうなお客さんを予測したりする道具も使われ始めています。作業が自動化されるぶん、お客さんの本当の課題を見つけて信頼関係を作るという、人にしかできない部分がより大切になっています。

よくある質問

営業はノルマがきついって本当ですか?

多くの会社で売上目標はありますが、その厳しさは会社によって大きくちがいます。目標は個人だけでなくチームで追うことも多く、上司や先輩と相談しながら進めます。就職活動では、目標の決め方や評価の仕組みを質問して確かめるとよいです。

人見知りでも営業はできますか?

できます。営業で大切なのは、たくさん話すことより、相手の話をよく聞いて準備をしっかりすることです。人見知りの人は相手の気持ちに気づきやすく、ていねいな対応で信頼されることも多いです。

理系でも営業になる人はいますか?

たくさんいます。機械、電子部品、化学、医療機器、ITなどの営業では、技術がわかる人が強く求められます。技術営業やセールスエンジニアとして、理系の知識を生かしながらお客さんに提案する人も多いです。

営業はAIになくなる仕事ですか?

簡単な注文の受付や情報提供はネットやAIに置きかわりつつあります。一方で、お客さんの課題を聞き出して複雑な提案をしたり、信頼関係を作ったりする部分は人の役割として残ると考えられています。営業の仕事の中身は変わっていくので、ITやデータを使いこなす力も大切になります。

営業から別の仕事に移ることはできますか?

できます。営業でお客さんの声を知っていることは、マーケティング、商品企画、人事、経営企画などで役立ちます。社内で異動する人も、転職で別の職種に移る人もいます。

MRになるには薬学部に行かないといけませんか?

いいえ。MRは文系・理系どちらの学部からもなれ、入社後の研修で医学や薬学を学びます。ただし、薬学部や理系学部出身者の割合は高く、専門性の高い領域では理系の知識が役立ちます。

女性の営業は少ないですか?

以前は男性が多い職種でしたが、いまは多くの業界で女性の営業が活躍しています。保険、住宅、人材、IT、製薬などでは女性の営業も多く、営業部門の管理職になる女性も増えています。

営業職の休みは取れますか?

法人営業は相手の会社に合わせて土日休みが多く、個人営業は土日に働いて平日に休む会社が多いです。繁忙期には忙しくなりますが、有給休暇の取得を進めている会社も増えています。

営業で一番大事なスキルは何ですか?

多くの営業経験者が挙げるのは「聞く力」です。お客さんが本当に困っていることを聞き出せれば、何を提案すればよいかが見えてきます。そのうえで、わかりやすく伝える力や、約束を守る誠実さが成果につながります。

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年収について:厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)に掲載された令和7年賃金構造基本統計調査の加工値で、自動車営業が約585.7万円(平均39.9歳)、保険営業が約540.6万円(平均46.8歳)、医薬情報担当者(MR)が約660.7万円(平均42.4歳)です。営業は業界によって年収の差がとても大きく、扱う商品の値段や会社のもうけ方で大きく変わります。

数字はすべて公開データにもとづく目安です。出典は出典・サイトポリシーにまとめています。

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