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売っているのは「移動」と「泊まる」と「思い出」。形のない商品を何百万人に届ける業界

航空・旅行・ホテル

航空・旅行・ホテル業界は、人が移動し、泊まり、旅を楽しむことにかかわる会社の集まりです。飛行機で人や荷物を運ぶ航空会社、旅行の計画を立てて切符や宿をまとめて売る旅行会社、泊まる場所と食事を提供するホテル・旅館が中心で、ほかに空港の運営会社や、スマホで宿を予約できる予約サイトの会社もあります。たとえば、修学旅行で乗る飛行機や新幹線、泊まる旅館、行き先のバスやガイドの手配は、ほとんどがこの業界の人たちの仕事です。2025年の訪日外国人旅行者は約4,268万人と過去最高になり、海外からの観光客(インバウンド)をどう迎えるかが業界全体の大きなテーマになっています。

平均年収の目安約550万〜1,000万円大手企業の平均。会社と職種で大きな差ホテル・旅行会社の現場で300万円台から、大手航空会社の総合職やパイロットでは1,000万円を大きく超える人も
なるまでの難しさ★★★★★業界全体では採用数が多く、ホテルや旅行会社は入りやすい会社もあります。一方で、大手航空会社の総合職や自社養成パイロット、客室乗務員、外資系高級ホテルの本社職などは人気が非常に高く、倍率が数十倍から百倍を超えることもあります。どの会社のどの職種を目指すかで難しさが大きく変わる業界です。
決めどき文系・理系どちらでも

大学3年の夏〜冬(航空会社のパイロット・客室乗務員は大学3〜4年で独自の選考。専門学校から目指すルートもあります)

航空・旅行・ホテルの業界マップ

飛行機を飛ばす航空会社と、空港の運営や案内をする会社、旅行を企画・手配する旅行会社、泊まる場所を提供するホテルに分かれます。

となりの業界

押すと、会社図鑑でその会社のくわしい解説が見られます。

どんな職種がある?

押すと、その職種の仕事内容・必要な力・キャリアが見られます。

航空・旅行・ホテルの年収と昇進の流れ

新入社員・スタッフ300〜420万円
入社1〜3年、22〜25歳

空港、客室、ホテル、店舗などの現場で基本の仕事を覚えます。お客さまの対応やシステムの操作を一人で正確にこなせるようになることが次の段階の条件です。

担当者・主任380〜550万円
入社4〜7年、26〜30歳

担当する顧客や方面、路線を持ち、売上や品質に責任を持ちます。後輩の指導もできるようになると、チームのまとめ役に上がります。

係長・アシスタントマネージャー480〜680万円
入社8〜12年、30〜35歳

チームのリーダーとして、シフトや予算、目標の管理を行います。チーム全体の成果を出せることが、管理職への条件です。

課長・マネージャー600〜900万円
35〜45歳

部門や支店の責任者として、売上と利益、人材育成をまとめます。会社の方針を現場に落とし込む役割です。

部長・総支配人800〜1,300万円
45〜55歳

事業部やホテル全体の経営に責任を持ちます。大きな投資や戦略の判断にかかわり、業績をあげた人が役員候補になります。

役員1,200〜3,000万円
50代以降

会社全体の経営に加わり、新しい路線やホテルの開業、海外進出などの大きな判断を行います。

年収は目安です。会社や地域、本人の働き方で大きく変わります。

働き方で何が違う?

大手航空会社(JAL・ANAなど)平均約770万〜1,010万円(ANAホールディングス・日本航空、2026年3月期・単体)

国内線と国際線の両方を飛ばし、パイロット、客室乗務員、整備士、総合職など多くの職種を採用しています。総合職は、営業、路線計画、財務、人事など本社の仕事を中心に、空港や海外支店も経験します。グループ会社が多く、空港会社や整備会社、LCCなど、同じグループでも会社ごとに採用が分かれています。安全を最優先にする文化が強く、教育や訓練の仕組みが整っています。

良いところ給与と福利厚生が安定している、世界を舞台に働ける、社員の航空券の割引がある

大変なところ採用の倍率が高い、景気や感染症の影響を大きく受ける、現場はシフト勤務が多い

旅行会社(総合旅行会社・予約サイト)平均約550万円前後(エイチ・アイ・エス549万円、2025年10月期・単体)。予約サイトの運営会社はIT企業の水準の会社も

総合旅行会社は、店舗やネットでの個人旅行の販売、修学旅行や企業の団体旅行、国際会議などの運営を行います。予約サイト(OTA)は、ネットの仕組みとデータで旅行を売るIT企業に近い会社です。旅行会社は大きな設備を持たないため、人の力とアイデアが勝負になります。最近は地域の観光振興や、自治体からの事業の請け負いなど、仕事の幅が広がっています。

良いところ旅の企画や手配で自分のアイデアを形にできる、世界中の知識が身につく

大変なところ添乗や繁忙期の残業が多いことがある、ネット化で店舗の仕事は減っている

ホテル・旅館平均約580万〜600万円(帝国ホテル582万円・2026年3月期、藤田観光604万円・2025年12月期、いずれも単体)。現場スタッフはこれより低めの会社も多い

シティホテル、ビジネスホテル、リゾートホテル、旅館、外資系の高級ホテルなど、さまざまな形があります。入社後は、フロント、レストラン、宴会、営業などいくつかの部門を経験することが多いです。外資系ホテルでは、ホテルを移りながら昇進するのが一般的で、海外のホテルで働くチャンスもあります。旅館は家族経営の小さな宿から、大きなチェーンまでいろいろです。

良いところお客さまの喜ぶ顔を直接見られる、おもてなしの技術が身につく、海外で働く道もある

大変なところ夜勤や土日の勤務が多い、現場の給料は低めの会社がある

LCC・新興の航空会社平均約590万円(スカイマーク593万円、2026年3月期・単体)

ピーチ・アビエーション、ジェットスター・ジャパン、スカイマークなど、運賃の安さやサービスのしぼり込みで勝負する航空会社です。会社の規模が小さい分、若いうちから幅広い仕事を任されることがあります。費用を下げるための工夫が求められ、スピード感のある職場が多いです。

良いところ若いうちから責任ある仕事を任されやすい、新しいサービスを作る面白さがある

大変なところ大手より給与や福利厚生が控えめなことがある、経営環境の変化を受けやすい

代表的な会社・職場

二大航空会社(フルサービスキャリア)新興の航空会社(ミドルコスト)LCC(格安航空会社)旅行会社(業界最大手)旅行会社(総合旅行会社)旅行会社(鉄道系)予約サイト(OTA)老舗ホテル(ホテル御三家)ホテル・レジャーホテル・旅館の運営会社外資系ホテルチェーン
日本航空(JAL) ›二大航空会社(フルサービスキャリア)

国内線と国際線を飛ばす日本の代表的な航空会社です。グループにジップエアやスプリング・ジャパンなどのLCCも持っています。

約1,011万円(2026年3月期・単体)
ANAホールディングス(全日本空輸) ›二大航空会社(フルサービスキャリア)

国内線の便数が多く、国際線も広く飛ばす航空グループです。LCCのピーチ・アビエーションもグループに入っています。

約771万円(2026年3月期・持株会社単体)
スカイマーク ›新興の航空会社(ミドルコスト)

羽田空港や神戸空港などを拠点に、国内線を中心に飛ばす航空会社です。

約593万円(2026年3月期・単体)
ピーチ・アビエーションLCC(格安航空会社)

関西空港などを拠点に国内線と近くのアジアへの国際線を飛ばす、ANAグループのLCCです。

非上場のため公表なし
JTB ›旅行会社(業界最大手)

個人旅行、修学旅行、企業の団体旅行、国際会議の運営などを幅広く行う、日本最大の旅行会社です。

非上場のため公表なし
エイチ・アイ・エス(HIS) ›旅行会社(総合旅行会社)

格安の海外航空券の販売から大きくなった旅行会社で、ホテルやテーマパーク(ハウステンボスは過去に保有)など幅広い事業を手がけてきました。

約549万円(2025年10月期・単体)
KNT-CTホールディングス(近畿日本ツーリスト) ›旅行会社(総合旅行会社)

近畿日本ツーリストやクラブツーリズムを持つ旅行グループで、団体旅行やシニア向けのツアーに強みがあります。

有価証券報告書で公表
日本旅行 ›旅行会社(鉄道系)

JR西日本グループの旅行会社で、鉄道を組み合わせた旅行や修学旅行に強みがあります。

非上場のため公表なし
楽天トラベル(楽天グループ)・じゃらんnet(リクルート)予約サイト(OTA)

スマホやパソコンで宿や航空券、ツアーを予約できる国内最大級の予約サイトです。宿からの手数料や広告で収入を得ています。

楽天グループ約851万円(2025年12月期・単体)
帝国ホテル ›老舗ホテル(ホテル御三家)

東京・日比谷の帝国ホテルをはじめ、大阪や上高地でもホテルを運営する、日本を代表する老舗ホテルです。

約582万円(2026年3月期・単体)
藤田観光ホテル・レジャー

ホテル椿山荘東京や、ワシントンホテルなどのビジネスホテル、箱根小涌園などのリゾートを運営しています。

約604万円(2025年12月期・単体)
星野リゾート ›ホテル・旅館の運営会社

「星のや」「界」「リゾナーレ」「OMO」などのブランドで、旅館やリゾートホテルを全国で運営しています。建物を持たずに運営を引き受ける形が特徴です。

非上場のため公表なし
マリオット・ヒルトン・ハイアットなど外資系ホテルチェーン

世界中にホテルを持つ外資系チェーンで、日本でも高級ホテルからビジネス向けのホテルまで増やしています。

›がついた会社は、会社図鑑で詳しく解説しています。

どうやって稼いでいる?

今日の空席は、明日に売れない 売れた席 空席は売上ゼロ ホテルの空き部屋も同じ 埋まった割合が、もうけを左右する 搭乗率座席がどれだけ埋まったか 稼働率部屋がどれだけ埋まったか それぞれの稼ぎ方 航空会社 運賃が中心 貨物・座席指定も 旅行会社 手数料と ツアーの差額 ホテル 客室・料飲・宴会 の3本柱 予約サイト ホテルからの 手数料・広告料 燃料代や人件費が毎日かかるので 席や部屋をどれだけ埋めるかが勝負
新型コロナの時期には人の移動が止まり、大手航空会社も大きな赤字になりました

この業界の商品は、形のない「移動」「宿泊」「体験」です。最大の特徴は、売れ残りを次の日に持ち越せないことで、今日飛んだ飛行機の空席や、今夜泊まる人がいなかった部屋は、そのまま売上ゼロになります。そのため、飛行機の座席がどのくらい埋まったか(搭乗率)、ホテルの部屋がどのくらい埋まったか(稼働率)が、もうけを大きく左右します。飛行機やホテルの建物には何百億円という費用がかかり、燃料代や人件費も毎日かかるため、売上が少し減るだけで赤字になりやすい業界です。実際に新型コロナの時期には、人の移動が止まり、大手航空会社も大きな赤字になりました。いまはインバウンドの増加で業績が回復しており、外国人観光客をどう取り込むかが成長のかぎになっています。

1
航空運賃(旅客収入)

航空会社の売上の中心は、乗客が払う運賃です。早く買うほど安い運賃や、ビジネスクラスなどの高い運賃を組み合わせて、1便あたりの売上を最大にしようとします。

2
貨物・マイル・付帯収入

飛行機の床下には貨物を積み、ネット通販の荷物や生鮮食品を運んで稼ぎます。マイレージの提携カードの手数料、座席指定や手荷物の追加料金なども収入になります。

3
旅行会社の手数料と商品の差額

旅行会社は、航空券やホテルを売ったときに受け取る手数料と、パッケージツアーの原価と販売価格の差でもうけます。修学旅行や社員旅行など、団体の手配も大きな収入です。

4
ホテルの客室・料飲・宴会

ホテルの収入は、部屋代(客室)、レストランやバー(料飲)、結婚式や会議(宴会)の3つが柱です。客室は利益率が高く、料飲や宴会は人手がかかる代わりに売上が大きくなります。

5
予約サイトの手数料・広告

楽天トラベルやじゃらん、Booking.comなどの予約サイト(OTA)は、宿泊が成立したときにホテルから受け取る手数料や、検索結果で目立たせる広告料で稼ぎます。

6
運営受託・フランチャイズ

外資系の大手ホテルチェーンは、建物を自分で持たず、持ち主から運営を任されて手数料を受け取ったり、ブランド名を貸してフランチャイズ料をもらったりする形で店舗を増やしています。

入ってからどうなっていく?

1〜3年目現場で基本を覚える航空会社なら空港や客室、旅行会社なら店舗や営業所、ホテルならフロントやレストランなど、お客さまと直接向き合う現場に配属されることが多いです。接客、手配、予約システムの使い方など、業界の基本を体で覚えます。
4〜7年目担当を持ち、専門を見つける自分の担当する学校や企業、方面、路線を持ち、売上の責任を任されるようになります。営業、企画、レベニュー、マーケティングなど、自分の得意分野を見つける時期で、本社への異動や海外研修のチャンスもあります。
8〜15年目チームをまとめる係長・マネージャーとして後輩を育て、チームの数字を管理します。航空会社ではパイロットが機長に昇格する時期に近く、ホテルでは部門の責任者になります。外資系ホテルや別の業界(IT企業の旅行部門など)へ転職する人も出てくる時期です。
40代事業や拠点の責任者旅行会社の支店長や方面の責任者、ホテルの副総支配人や総支配人、航空会社の路線計画や営業の部長など、事業全体の責任を持ちます。数字の結果とともに、安全やサービス品質を守る責任も重くなります。
50代以降経営と業界づくり役員として会社の経営に加わる人や、グループ会社の社長、自治体や観光協会と連携して地域の観光を盛り上げる仕事に進む人もいます。ホテルの経営コンサルタントや、旅行関係の起業をする人もいます。
よくある転職業界の中と外への移動旅行会社からホテルや予約サイトへ、ホテルから外資系ホテルへ、客室乗務員から接客研修の講師や企業の秘書へ、といった移り方がよく見られます。語学力と接客経験は、別の業界でも評価されやすい強みです。

パッケージツアーが生まれてお客さまが帰るまで

旅行会社の準備旅の当日 企画行き先・季節・対象 仕入れ座席・部屋をまとめて確保 値段を決めて販売原価に利益を乗せる 予約の確定旅程表や案内を送る 出発・移動空港や機内で支える 滞在ホテルやガイドが案内 帰国・振り返りアンケートで満足度 次の企画に生かす お客さまの声が、次のツアーづくりにつながる
パッケージツアーの例
1
企画

旅行会社が、行き先、季節、対象のお客さまを決めて、どんな旅にするかを考えます。

2
仕入れ

航空会社から座席、ホテルから部屋をまとめて確保し、現地のバスやガイドも手配します。

3
価格設定と販売

原価に利益を乗せて値段を決め、パンフレットや予約サイトで売り出します。予約の入り方を見て値段を調整します。

4
予約の確定と準備

申込みが入ると、航空券とホテルを確定させ、旅程表や案内を送ります。

5
出発・移動

空港ではグランドスタッフ、機内では客室乗務員、運航はパイロットと整備士がお客さまを支えます。

6
滞在

ホテルのフロントやレストラン、現地のガイドが、旅の時間を楽しいものにします。

7
帰国・振り返り

アンケートで満足度を集め、よかった点や問題点を次の商品づくりに生かします。

旅行業務取扱管理者(総合・国内)

受験資格なし。高校生でも合格する人も 国内9月ごろ合格率35.6% 総合10月ごろ合格率26.1%海外の地理や英語も出る 国内に合格すると総合の一部が免除 出る科目国内総合 旅行業法 約款(キャンセルなど) 国内の運賃と地理 海外の運賃・英語 ー まず国内、次に総合とステップを踏める
合格率は令和7年度のものです
合格率国内35.6%、総合26.1%(令和7年度)
勉強時間の目安国内は数か月、総合は半年〜1年程度の勉強が目安と言われます
受験資格受験資格なし(年齢・学歴の制限なし)
受験資格がなく、高校生でも合格する人がいる、入りやすい国家資格です。国内は運賃計算と国内地理、総合はそれに加えて海外の地理や英語が出るため、総合のほうが難しくなります。法律の科目は暗記中心で、学校の定期テストの勉強の延長で取り組めます。業界に入る前に取っておくと、選考や入社後の仕事で役立ちます。
試験科目(押すと中身が見られます)
合格までの流れ
  1. 申込み国内は全国旅行業協会、総合は日本旅行業協会が試験を行っています。例年、国内は夏ごろ、総合は秋ごろに申込みます。
  2. 試験国内は9月ごろ、総合は10月ごろに筆記試験があります。国内に合格していると、総合の一部の科目が免除されます。
  3. 合格発表と選任合格すると、旅行会社の営業所で旅行業務取扱管理者として選ばれることができます。

航空・旅行・ホテルのある1日

8:30

(旅行会社の法人営業の例)出社してメールを確認し、ホテルやバス会社からの返事をチェックします。

9:30

チームの朝会で、今週出発する団体旅行の準備状況と、売上の数字を共有します。

10:30

担当の高校を訪問し、来年の修学旅行のプランを先生に提案します。

12:00

昼休み。学校の近くで昼食をとりながら、提案の反応をメモにまとめます。

13:30

会社に戻り、宿の部屋割りや食事のアレルギー対応の確認を宿に電話で行います。

15:00

別の企業の社員旅行の見積もりを作り、飛行機とホテルの料金を予約システムで調べます。

16:30

来月出発する修学旅行の説明会資料と、班別行動のタクシーの手配表を作ります。

18:00

翌日の予定を確認して退社します。添乗の前日は早めに帰って、持ち物と旅程表を確かめます。

もっと知りたい人へ

そもそも航空・旅行・ホテル業界とは

航空・旅行・ホテル業界は、「人が移動して、泊まって、楽しむ」ことを支える会社の集まりで、観光業や旅行業とも呼ばれます。中心になるのは、飛行機で人を運ぶ航空会社、旅行の手配をする旅行会社、泊まる場所を提供するホテル・旅館の3つです。このほかに、空港の運営会社、空港で荷物を扱う会社、スマホで宿や航空券を予約できる予約サイトの会社、観光バスやテーマパークも近い仲間です。たとえば、家族で沖縄旅行に行くときに、スマホで航空券とホテルを予約し、空港で荷物を預け、飛行機に乗り、ホテルに泊まるまでの一つ一つが、この業界の別々の会社の仕事でつながっています。日本では観光を国の成長の柱にする方針があり、2025年には訪日外国人旅行者が約4,268万人と過去最高になりました。

3つの業種のつながり

航空会社は座席を、ホテルは部屋を持っていて、旅行会社はそれらを組み合わせて旅行商品として売ります。航空会社やホテルにとって旅行会社は大切な販売先で、旅行会社にとって航空会社やホテルは仕入れ先です。最近は航空会社やホテルが自社のサイトで直接売ることも増え、関係が変わってきています。

国内旅行・海外旅行・インバウンド

業界では、日本人の国内旅行、日本人が海外に行く海外旅行(アウトバウンド)、外国人が日本に来る訪日旅行(インバウンド)を分けて考えます。2025年は日本人の出国者数が約1,473万人で、訪日外国人の数のほうが大きく上回っています。円安や航空便の増加が、インバウンドを後押ししています。

航空会社の種類(フルサービスとLCC)

日本の航空会社は、大きく分けてフルサービスキャリア(FSC)と格安航空会社(LCC)の2種類があります。フルサービスキャリアは、日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)の2社が代表で、国内線と国際線の両方を広く飛ばし、無料の手荷物や機内サービス、マイレージなどを提供しています。LCCは、ピーチ・アビエーション、ジェットスター・ジャパン、スプリング・ジャパンなどで、サービスをしぼって運賃を安くしています。たとえば、座席指定や預ける荷物、機内の飲み物を有料にし、飛行機の種類を一つにそろえて整備や訓練の費用を下げる工夫をしています。ほかに、スカイマークやAIRDO、スターフライヤーのように、その中間の値段とサービスで国内線を中心に飛ぶ会社もあります。

グループで両方を持つ大手

JALグループはジップエアやスプリング・ジャパン、ANAグループはピーチ・アビエーションを持つなど、大手はLCCもグループに入れて、値段に敏感なお客さまと、サービスを重視するお客さまの両方を取り込んでいます。就職先としては、親会社とグループ会社で採用や待遇が別のことが多いので、よく調べることが大切です。

航空連合(アライアンス)

世界の航空会社は、ワンワールド、スターアライアンス、スカイチームという3つの大きなグループに分かれて協力しています。JALはワンワールド、ANAはスターアライアンスに加盟していて、たとえば海外の提携会社の便に乗ってもマイルがたまったり、乗り継ぎがスムーズになったりします。

旅行会社とホテルの種類

旅行会社には、店舗とネットで個人旅行を売る総合旅行会社、修学旅行や企業の団体旅行に強い会社、ネットだけで販売する予約サイト(OTA)があります。総合旅行会社の代表はJTB、近畿日本ツーリスト、日本旅行、エイチ・アイ・エスなどです。予約サイトでは、楽天トラベルやじゃらんnet、海外のBooking.comやExpediaが大きな存在です。ホテルは、シティホテル(宴会場やレストランが多い大型のホテル)、ビジネスホテル(出張の人向けで泊まることに特化)、リゾートホテル、旅館、外資系の高級ホテルなどに分かれます。たとえば、結婚式や大きな会議が開かれる帝国ホテルやホテルニューオータニはシティホテル、駅前に多い東横インやアパホテルはビジネスホテルの代表です。

旅館とホテルのちがい

旅館は和室と布団、大浴場、夕食と朝食つきの料金が基本で、家族経営の小さな宿も多いです。最近は星野リゾートのように、古い旅館を引き継いで運営し直す会社も成長しています。外国人観光客にとって、温泉旅館は日本らしい体験として人気があります。

持つ会社と運営する会社

ホテルの建物を持つ会社(不動産会社や投資家)と、実際にホテルを運営する会社が別のことがよくあります。外資系の大手チェーンは運営やブランドの貸し出しが中心で、日本の不動産会社や鉄道会社が建てたビルの中で営業していることが多いです。

なるためのルート

この業界に入るには、学部や資格の条件はほとんどなく、大学や専門学校を卒業して新卒で入社するのが一般的です。ただし、パイロットや整備士は資格が必要で、客室乗務員は会社ごとの選考を受けます。旅行会社では旅行業務取扱管理者、ホテルでは語学の資格が、選考や入社後の仕事で役立ちます。観光学部や外国語学部の出身者が多いですが、文系・理系を問わず採用されています。高卒でホテルや空港の現場スタッフとして入社する道もあります。

  1. 高校で語学と教養を伸ばす英語を中心に、地理や歴史、世界の文化の知識を広げます。旅行の計画を自分で立ててみるのも良い練習です。
  2. 大学・専門学校に進む観光学部、外国語学部、経済・経営学部などが多く、理系から整備士や運航の仕事を目指す人もいます。エアライン系やホテル系の専門学校から入るルートもあります。
  3. 在学中に経験を積むホテルや空港、旅行会社でのアルバイトやインターンシップ、留学、TOEICの勉強などで、接客と語学の経験を積みます。
  4. 就職活動大学3年の夏のインターンから始まり、エントリーシート、適性検査、面接へと進みます。客室乗務員は英語の試験や体力測定、パイロットは身体検査や適性検査が加わります。
  5. 入社と配属入社後は研修を受けて現場に配属されます。パイロットや整備士は、そこから数年かけて資格の訓練を受けます。

試験・選考の詳細

選考は、エントリーシート、適性検査(SPIなど)、グループディスカッション、複数回の面接が基本です。航空会社の客室乗務員は、英語の筆記やTOEICの点数、身長などの条件ではなく実際に保安業務ができるかを見る体力測定、立ち振る舞いを見る面接があります。自社養成パイロットは、筆記、操縦の適性検査、航空身体検査、英語面接など、半年近くかけて何段階もの選考を行う会社があります。旅行会社では、旅行業務取扱管理者の資格を持っていると評価されることがあり、令和7年度の合格率は国内旅行業務取扱管理者が35.6%、総合旅行業務取扱管理者が26.1%でした。ホテルでは接客の経験や語学力、外資系では英語での面接が行われることがあります。

旅行業務取扱管理者とは

旅行会社の営業所には、旅行の契約が正しく行われているかを管理する人を置くことが法律で決められていて、その人が持つ国家資格です。国内旅行のみの「国内」と、海外旅行も扱える「総合」があり、受験資格はなく、高校生でも受けられます。

面接で見られること

「なぜこの会社か」「チームで困難を乗り越えた経験」「お客さまを喜ばせた経験」がよく聞かれます。アルバイトや部活、留学での具体的な話が評価されます。旅行が好きなだけでなく、売る側として何をしたいかを語れることが大切です。

年収のリアル

この業界の年収は、会社と職種によって大きく差があります。有価証券報告書(単体)の平均年間給与は、日本航空が1,011万円、ANAホールディングスが771万円、スカイマークが593万円(いずれも2026年3月期)です。ホテルでは帝国ホテルが582万円(2026年3月期)、藤田観光が604万円(2025年12月期)、旅行会社ではエイチ・アイ・エスが549万円(2025年10月期)となっています。航空会社の平均が高いのは、年収が1,000万円を大きく超えるパイロットが含まれていることも理由です。ホテルや旅行会社の現場は、ほかの業界より初任給や平均がやや低めの会社が多い一方、管理職や外資系の総支配人になると大きく上がります。

手当で変わる給料

客室乗務員の乗務手当、ホテルの夜勤手当、旅行会社の添乗手当など、働いた時間や内容によってつく手当が多い業界です。そのため、同じ会社でも配属や働き方で年収が変わります。

景気と出来事の影響

新型コロナの時期には人の移動が止まり、多くの会社でボーナスが減りました。逆にインバウンドが増えた最近は、人手不足もあって給料を上げる会社が増えています。景気や世界の出来事の影響を受けやすい業界であることは知っておきましょう。

旅行商品ができるまで(業界の仕事の流れ)

一つのパッケージツアーには、航空会社、ホテル、旅行会社、バス会社、観光施設など、たくさんの会社がかかわっています。旅行会社の企画担当が1年近く前から行き先を考え、航空会社から座席を、ホテルから部屋をまとめて仕入れます。その後、パンフレットや予約サイトで販売し、予約が入ると航空券やホテルの予約を確定させます。旅行当日は、空港のグランドスタッフ、機内の客室乗務員、ホテルのフロント、現地のガイドが、それぞれの場所でお客さまを迎えます。旅行が終わると、アンケートで満足度を確かめ、次の商品づくりに生かします。

ダイナミックパッケージ

最近は、予約サイトで航空券とホテルを自由に組み合わせると、その場で値段が決まる「ダイナミックパッケージ」が広がっています。あらかじめ部屋や座席をまとめて買わず、在庫と値段をリアルタイムでつなぐ仕組みです。

現地の手配会社

海外ツアーでは、現地のバスやガイド、レストランを手配するランドオペレーターという会社が活躍しています。日本の旅行会社は、彼らと協力して、言葉や文化のちがう国での旅行を安心できるものにしています。

やりがい

この業界のいちばんのやりがいは、お客さまの「楽しかった」「ありがとう」を直接受け取れることです。修学旅行や新婚旅行、家族の記念日など、人生の大切な場面にかかわれるのは、この業界ならではです。航空会社では、何百人もの命を預かって安全に目的地まで運ぶという、大きな責任と誇りがあります。ホテルでは、一人ひとりに合わせたおもてなしで、また来たいと思ってもらえることが喜びになります。また、インバウンドで日本の魅力を世界の人に伝えたり、地方の観光を盛り上げて地域を元気にしたりと、社会への貢献を感じやすい仕事です。

旅を形にする喜び

企画した旅行が売れて、参加した人の笑顔の写真がSNSに上がっているのを見たときは、何よりうれしいと話す企画担当者が多いです。自分のアイデアが商品として世の中に出る手ごたえがあります。

世界とつながる

国際線の乗務や海外の仕入れ、外国人のお客さまの対応など、毎日のように世界とつながる仕事ができます。語学を実際に使いたい人には、大きな魅力です。

大変なこと・きついこと

航空会社やホテルは、24時間・365日動いているため、早朝や深夜のシフト勤務、土日や年末年始の出勤が当たり前です。お客さまが休むときに働く業界なので、友だちと休みを合わせにくいこともあります。台風や大雪、システムの障害で飛行機が欠航すると、たくさんのお客さまの怒りや不安に向き合わなければなりません。旅行会社の添乗では、旅行中のトラブル対応で、ほとんど眠れない日もあります。また、感染症や戦争、災害など、自分たちではどうしようもない出来事で、急に売上がなくなるリスクがある業界です。

体力と健康

客室乗務員やパイロットは時差のある長距離の乗務、ホテルや空港の現場は長時間の立ち仕事があり、体力が必要です。パイロットは毎年の厳しい身体検査に合格し続けなければなりません。

クレームへの対応

楽しみにしていた旅行がうまくいかないと、お客さまのがっかりは大きくなります。自分のせいではない遅れや天気のことでも、会社の代表として丁寧に謝り、解決策を示す力が求められます。

向いている人

人を喜ばせることが好きで、相手の立場に立って考えられる人に向いています。予定どおりにいかないことが多い業界なので、急な変更にも落ち着いて対応できる柔軟さが大切です。旅行や地理、外国の文化に興味があり、語学を使うことが好きな人にも合っています。航空会社のパイロットや整備士は、機械や物理が好きで、決められた手順をきちんと守れる人が向いています。企画やレベニューマネジメントの仕事では、数字を使って考えることが好きな人が活躍しています。

チームで動ける人

飛行機一機を飛ばすにも、ホテルで一つの宴会を成功させるにも、たくさんの人の連携が必要です。自分の役割を果たしつつ、仲間を助けられる人が信頼されます。

向いていないかもしれない人

土日休みや決まった時間の勤務を何より大切にしたい人には、合わない職種もあります。ただし、本社の企画や管理部門、予約サイトの会社などは、平日中心の働き方のところも多いです。

高校生のうちにできること

まずは英語の力を伸ばしましょう。この業界では、接客でも企画でも英語を使う場面が多く、TOEICや英検の点数は選考でも役立ちます。次に、地理や歴史、世界の文化の知識を広げておくと、旅行の企画やお客さまとの会話に生きてきます。家族旅行の計画を自分で立ててみて、交通手段の比較や予算の計算をしてみるのも良い練習です。修学旅行のときに、旅行会社の添乗員さんや旅館の人がどんなふうに動いているかを観察してみると、仕事のイメージがわきます。理系の人でパイロットや整備士を目指すなら、物理と数学をしっかり学び、視力や健康に気をつけておきましょう。

資格に挑戦する

国内旅行業務取扱管理者は受験資格がなく、高校生で合格する人もいます。英検や中国語検定などの語学の資格も、早めに取っておくと自信になります。

アルバイトで接客を経験

飲食店や販売などのアルバイトで接客を経験すると、お客さまの気持ちを考える力が身につきます。大学生になったら、ホテルや空港でのアルバイトに挑戦するのもおすすめです。

代表的な会社・職場

航空会社では、日本航空(JAL)とANAホールディングス(全日本空輸)が二大航空会社で、ほかにスカイマークや、ピーチ・アビエーションなどのLCCがあります。旅行会社では、業界最大手のJTB、近畿日本ツーリストなどを持つKNT-CTホールディングス、日本旅行、エイチ・アイ・エスが代表的です。予約サイトでは、楽天グループの楽天トラベル、リクルートのじゃらんnet、海外のBooking.comやExpediaが大きな存在です。ホテルでは、帝国ホテル、ホテルオークラ、ホテルニューオータニの「御三家」と呼ばれる老舗のほか、プリンスホテル、星野リゾート、藤田観光、アパホテル、東横インなどがあります。外資系では、マリオット、ヒルトン、ハイアットなどのチェーンが日本でもホテルを増やしています。

空港の会社

成田国際空港や関西エアポート、日本空港ビルデング(羽田空港のターミナルの運営)など、空港を運営する会社も業界の仲間です。空港のお店や施設の運営、空港の利用を増やす営業などを行っています。

鉄道会社のホテル・旅行事業

JRや大手私鉄も、ホテルや旅行会社をグループに持っています。たとえば、JR東日本はホテルメトロポリタン、日本旅行はJR西日本のグループです。移動と宿泊をセットで提供できるのが強みです。

これからの航空・旅行・ホテル業界

これからの最大のテーマは、増え続けるインバウンドをどう迎えるかです。政府は訪日外国人旅行者を2030年に6,000万人にする目標を掲げており、空港やホテルの受け入れ能力、人手不足への対応が課題になっています。人気の観光地に人が集まりすぎるオーバーツーリズムへの対策として、地方への分散や、入場の予約制なども進んでいます。また、スマホでの予約が当たり前になり、旅行会社の店舗は減る一方で、データを使った価格の決め方や、AIによる問い合わせ対応などデジタル化が急速に進んでいます。航空業界では、温室効果ガスを減らすために、使用済みの食用油などから作る持続可能な航空燃料(SAF)の導入が始まっています。

人手不足と働き方

空港のグランドハンドリングやホテルの現場では人手が足りず、自動チェックイン機や、顔認証で搭乗できる仕組み、配膳ロボットなどの導入が進んでいます。人にしかできないおもてなしに力を集中させる工夫です。

体験型の旅

見るだけの観光から、地域の食や文化、自然を体験する旅へと人気が移っています。たとえば、地方の農家に泊まって収穫を体験したり、伝統工芸を作ったりするツアーです。地域と協力して新しい旅を作る力が求められています。

よくある質問

旅行が好きなら向いていますか?

好きな気持ちはとても大切ですが、この業界は旅行を「楽しむ側」ではなく「楽しんでもらう側」です。お客さまが休むときに働くことが多いので、人を喜ばせることにやりがいを感じられるかが大切です。

客室乗務員になるのに身長の条件はありますか?

以前は身長の条件を設けていた会社もありましたが、現在の大手航空会社では、身長の数字ではなく保安業務に必要な動作ができるかで判断する会社が多いです。応募の前に、各社の最新の募集要項を確かめましょう。

パイロットになるには理系でないといけませんか?

大手航空会社の自社養成パイロットは、文系・理系を問わず募集している会社が多いです。ただし、訓練では物理や気象の知識を学ぶので、数学や物理が苦手すぎると苦労します。視力や健康の条件もあるので、早めに確かめておきましょう。

英語はどのくらい必要ですか?

航空会社やホテルでは、募集要項でTOEICなどの点数の目安を示している会社もあります。外資系ホテルや国際線では、特に高い英語力が求められます。ただし、入社後に伸ばす人も多く、最初から完璧である必要はありません。

観光学部に行かないと入れませんか?

いいえ。実際には、経済学部、法学部、文学部、外国語学部、理系など、さまざまな学部の人が入社しています。観光学部では業界の仕組みを専門的に学べますが、学部よりも、在学中に何を経験したかが大切です。

旅行会社はネットの予約サイトに負けてしまいませんか?

個人旅行はネット予約が増え、店舗は減っています。一方で、修学旅行や企業の団体旅行、国際会議など、手間がかかる手配は旅行会社の強みとして残っています。旅行会社自身もネット販売や地域の観光振興に力を入れています。

ホテルの仕事は給料が低いと聞きますが本当ですか?

現場スタッフの給料は、ほかの業界より低めの会社が多いのは事実です。ただし、マネージャーや総支配人、外資系の本社職などに進むと大きく上がります。最近は人手不足のため、給料を上げるホテルも増えています。

高卒でもこの業界で働けますか?

働けます。ホテルや旅館、空港のグランドハンドリングなどでは、高卒の採用も行われています。現場で経験を積み、リーダーや支配人になる人もいます。

コロナのようなことがまた起きたら大丈夫ですか?

人の移動が止まると、この業界は大きな打撃を受けます。コロナの経験から、各社は貨物や国内旅行の強化、コストの見直しなどで備えを進めています。どんな業界にもリスクはあるので、どんな状況でも役立つ語学や接客、企画の力を身につけておくことが大切です。

この分野のことば

年収について:有価証券報告書(単体)の平均年間給与の目安。日本航空1,011万円・ANAホールディングス771万円・スカイマーク593万円(いずれも2026年3月期)、帝国ホテル582万円(2026年3月期)、藤田観光604万円(2025年12月期)、エイチ・アイ・エス549万円(2025年10月期)。ANAホールディングスは持株会社の社員の数字で、パイロットや客室乗務員が多い全日本空輸の社員の平均とは異なります。航空会社の平均はパイロットの高い給与が押し上げている面があるため、あくまで目安です。

数字はすべて公開データにもとづく目安です。出典は出典・サイトポリシーにまとめています。

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