ミライ図鑑ログイン
日本の研究者の約6割は会社の中にいる

研究・開発

研究・開発は、会社の中で「まだ世の中にない技術や商品」を生み出す職種です。まだ誰も知らない原理や材料を探す基礎研究、その技術が商品に使えるかを確かめる応用研究、実際に売る商品の形にまとめる商品開発の3段階に大きく分かれます。たとえば、割れにくいスマホのガラス、汗をかいてもさらっとするシャツの生地、少ない量でよく落ちる洗剤、すぐ効く頭痛薬、長持ちするスマホの電池などは、どれも会社の研究・開発部門から生まれています。総務省の科学技術研究調査(2025年)では、日本の研究者は約91万人で、そのうち約53万人が企業で働いています。大学院(修士)を出て就く人が多く、理系の学科で学んだ専門知識を最も直接的に使える職種のひとつです。

平均年収の目安約640万〜740万円20代前半で約370万円、50代後半で約1,000万円前後(会社・業界で差が大きい)
なるまでの難しさ★★★★★大手メーカーの研究職は修士・博士を修了した人が中心で、大学の研究室で何を研究してきたかが選考で細かく聞かれるためです。採用人数も営業や事務より少なく、希望の分野に配属されるとは限りません。一方で、中堅・中小メーカーの商品開発や食品・化粧品の開発などは学部卒でも入口があります。
決めどき理系が中心

高1〜高2の文理選択、大学3年の研究室選び、修士1年の就職活動

研究・開発の中の、細かい担当

同じ研究・開発でも、担当によって仕事はまったく違います。押すと、それぞれの仕事内容・必要な力・キャリアが見られます。

どんな会社にある?

研究・開発の職種がいちばん多いのはメーカー(製造業)で、総務省の科学技術研究調査(2025年)では企業の研究費の約86%が製造業、なかでも自動車などの輸送用機械が約3割を占めます。自動車、電機、化学・素材、医薬品、食品、化粧品・日用品、機械など、ものを作る会社にはほぼ必ずある職種です。大企業では中央研究所(基礎研究)と各事業部の開発部門(商品開発)が分かれていることが多く、中小企業では一人の技術者が研究から開発、工場の立ち上げまでまとめて担当することもあります。国の研究機関(理化学研究所、産業技術総合研究所など)や、大学の研究成果をもとにしたベンチャー企業も研究・開発の職場です。

どの学部の人が多い?

研究・開発は、大学で学んだ学科と配属先が最も強く結びつく職種です。化学・応用化学の出身者は化学・素材・化粧品・日用品のメーカー、機械工学は自動車・機械、電気電子工学は電機・半導体・自動車の電装、情報工学はソフトウェア・制御の開発、薬学は製薬会社、農学・生物系は食品・バイオ・農薬、物理学は半導体・光学機器・材料の研究に多くいます。大手メーカーの研究職では修士修了が多数派で、大学4年からの研究室での経験そのものが選考で評価されます。文系出身で研究・開発に就く例はほとんどありませんが、心理学などで消費者調査を学んだ人が商品企画と開発の間をつなぐ仕事をすることはあります。数学や統計を学んだ人は、どの業界でもデータ解析の担当として研究・開発チームに加わる道があります。

研究・開発の年収と昇進の流れ

研究員・開発担当400〜550万円
入社1〜3年(23〜27歳)

先輩のテーマの一部を担当し、実験や試作、評価を行います。社内報告会で発表できるようになると、次の段階に進みます。

主任研究員・テーマリーダー550〜750万円
入社4〜9年(27〜33歳)

自分のテーマを持ち、計画から成果のまとめまで責任を持ちます。特許の出願や商品化の実績が昇進の条件になります。

グループリーダー・課長750〜950万円
入社10〜15年(33〜40歳)

研究グループをまとめ、テーマの選び方や予算を管理します。部下を育てる力も評価されます。

部長・主席研究員(専門職)900〜1,200万円
40〜50歳

開発部門や研究所の一部門全体を率います。専門職として社内外で第一人者と認められる人もいます。

研究所長・フェロー1,100〜1,500万円
45〜55歳

研究所全体の方針を決めたり、会社を代表する研究者として活躍したりします。人数はごく少ないポストです。

技術担当役員(CTO)1,500〜3,000万円
50代〜

会社全体の技術戦略に責任を持つ役員です。大手企業では研究・開発出身の人が社長になることもあります。

年収は目安です。会社や地域、本人の働き方で大きく変わります。

働き方で何が違う?

大手メーカーの研究所平均年収800万〜1,000万円台の会社が多いです(会社全体の平均)。

自動車、電機、化学、製薬などの大手メーカーは、大きな研究所を持ち、何百人から何千人もの研究者が働いています。基礎研究から商品開発まで段階ごとに部署が分かれ、高価な分析装置もそろっています。大学や海外の研究機関との共同研究も盛んです。一方で、テーマは会社の方針で決まるため、自分の興味だけでは選べません。

良いところ設備や研究費が充実し、大きなテーマに取り組めます。

大変なところ配属や異動が希望どおりにならないことがあります。

中堅・中小メーカーの開発部門大手より低めのことが多いですが、会社によって差があります。

特定の部品や素材で強みを持つ中堅・中小メーカーでは、少人数で研究から開発、工場の立ち上げまで担当します。お客さんの要望を直接聞いて、短い期間で商品を作ることが多いです。若いうちから一つの商品を最初から最後まで任されることもあります。

良いところ幅広い経験が早く積めて、自分の成果が見えやすいです。

大変なところ設備や研究費は大手より少ないことがあります。

国の研究機関・大学機関の給与規程によります。

理化学研究所や産業技術総合研究所などの国立研究開発法人、大学の研究室は、基礎研究に近いテーマに長く取り組めます。研究者として論文の成果で評価されます。若いうちは任期付きの雇用であることも多く、安定したポストを得るまで競争があります。

良いところ自分の興味に近いテーマを長く深められます。

大変なところ任期付きのポストが多く、安定するまでに時間がかかることがあります。

研究開発型ベンチャー会社の資金力によって大きく違います。

大学の研究成果や新しい技術をもとに立ち上げたベンチャー企業です。新しい薬、電池、宇宙、AIなどの分野で増えています。少人数で、研究と事業づくりを同時に進めます。

良いところ最先端の技術を、自分の手で事業にできます。

大変なところ資金が尽きると研究を続けられなくなるリスクがあります。

代表的な会社・職場

完成車メーカー自動車部品メーカー総合電機総合電機・エンタメ化学・素材総合化学計測・制御機器大手製薬国立研究開発法人
トヨタ自動車 ›完成車メーカー

自動車の開発・製造を行い、電動車や水素、自動運転の研究にも力を入れています。

単体平均1,006万円(2026年3月期)
デンソー ›自動車部品メーカー

自動車のエンジン制御、電動化、安全運転支援の部品を開発しています。

単体平均915万円(2026年3月期)
日立製作所 ›総合電機

鉄道、電力、ITなど幅広い分野の技術を開発し、中央研究所を持っています。

単体平均995万円(2026年3月期)
ソニーグループ ›総合電機・エンタメ

カメラの画像センサーやゲーム機、音響機器などの技術を開発しています。

単体平均1,155万円(2026年3月期、持株会社)
パナソニック ›総合電機

家電、電池、住宅設備などの商品を開発しています。

単体平均988万円(2026年3月期)
信越化学工業 ›化学・素材

半導体の材料になるシリコンウエハーや塩化ビニル樹脂などで世界トップクラスのメーカーです。

単体平均899万円(2026年3月期)
三菱ケミカルグループ ›総合化学

プラスチック、炭素繊維、医薬品の原料など幅広い素材を研究・開発しています。

単体平均1,189万円(2026年3月期、持株会社)
キーエンス ›計測・制御機器

工場で使うセンサーや画像処理装置を開発する会社で、商品開発の速さで知られます。

単体平均2,178万円(2026年3月期)
武田薬品工業・第一三共・中外製薬など大手製薬

新しい薬の研究、治験、承認申請までを行う製薬会社です。

会社ごとに有価証券報告書で開示
理化学研究所 ›国立研究開発法人

物理、化学、生物、計算科学などの基礎研究を行う日本最大級の研究機関です。

機関の給与規程に基づく
産業技術総合研究所 ›国立研究開発法人

企業の役に立つ技術の研究を行い、企業との共同研究も多い研究機関です。

機関の給与規程に基づく

›がついた会社は、会社図鑑で詳しく解説しています。

どうやって稼いでいる?

会社の売上約3.24%を研究開発費に国の研究費共同研究研究・開発将来の商品や技術研究開発費を回収する方法新商品の売上何年も売上を支える商品の改良他社に負けない特許の使用料他社に使わせるコスト削減安く作り利益アップ回収売れる商品になって、はじめて回収できる
日本の企業は2024年度に、売上高の約3.24%を研究開発に使っています(総務省の調査)

研究・開発の部署は、直接お金を稼ぐ部署ではありません。会社は売上の一部を研究開発費として使い、将来売れる商品や技術を準備します。総務省の調査(2025年)では、日本の企業は2024年度に売上高の約3.24%を研究開発に使っています。研究で生まれた技術が商品になって売れたとき、または特許として他社に使わせて使用料を受け取ったときに、はじめて研究開発費が回収されます。そのため研究・開発の担当者には「良い技術」だけでなく「売れる商品につながる技術」を生み出すことが求められます。

1
新商品の売上

研究・開発から生まれた新商品が売れることが、いちばん大きな回収の方法です。たとえば、新しい洗剤や新しい車種がヒットすると、何年にもわたって会社の売上を支えます。

2
既存商品の改良による売上の維持

すでに売れている商品の性能を上げたり、値段を下げたりして、他社に負けないようにすることも研究・開発の大切な役割です。毎年少しずつ改良されるスマホやエアコンがその例です。

3
特許のライセンス収入

自社の特許を他の会社に使わせ、その代わりに使用料(ライセンス料)を受け取る方法です。製薬や電機などで大きな収入になることがあります。

4
コスト削減

材料や作り方を工夫して、同じ商品をより安く作れるようにすると、会社の利益が増えます。研究・開発の成果は売上だけでなく、利益の面でも会社に貢献します。

5
国の研究費・共同研究費

国の研究プロジェクトに採択されると、研究費の一部を国が負担してくれることがあります。大学や他社と共同で研究し、費用を分け合う方法もあります。

入ってからどうなっていく?

大学・大学院研究室で研究実験・解析・発表を学ぶ入社1〜3年目テーマの担当者実験や試作、評価4〜9年目テーマリーダー自分のテーマを持つ分かれ道30代後半〜 管理職グループを率いるテーマや予算を決める30代後半〜 専門職研究を続ける第一人者をめざす40〜50代研究所長・部長研究所全体の方針40〜50代フェロー会社を代表する研究者転職・独立の道も大学の教員、ベンチャーを立ち上げる、他社へ管理職か専門職か、30代後半で道を選ぶ
働きながら社会人として博士号を取る人もいます
大学4年〜修士2年研究室での研究大学の研究室で一つのテーマに取り組み、実験の計画、データの解析、発表のしかたを身につけます。学会発表や論文の経験は、研究職の選考で大きな強みになります。
入社1〜3年目テーマの担当者先輩のテーマの一部を受け持ち、実験や試作、評価を担当します。社内の報告会で発表する経験を積み、会社の研究の進め方を覚えます。
4〜9年目テーマリーダー自分のテーマを持ち、目標や計画を自分で立てます。成果が商品につながったり、特許を出したりする経験を積みます。この時期に社会人として博士号を取る人もいます。
30代後半〜40代グループリーダー・課長数人から十数人の研究グループをまとめ、テーマの選び方や予算を決めます。管理職に進むか、専門職として研究を続けるかの分かれ道になる時期です。
40代〜50代研究所長・部長・フェロー研究所全体や開発部門全体の方針を決めます。専門職として社外にも名前が知られる研究者になる人もいます。
転職・独立のパターン大学教員・ベンチャー・他社企業での成果をもとに大学の教員になる人、研究成果を元にベンチャー企業を立ち上げる人、同じ分野の他社や外資系企業に移る人がいます。知的財産や技術営業に移る人もいます。

新しい洗剤ができるまで

どこで研究所1種を見つける何年もかけ、新しい成分を探す研究所2使えるか確かめる汚れ落ち・肌へのやさしさ・値段マーケと3商品の目標を決める誰に、どんな性能で、いくらで商品開発4配合を決めて試作試作品を何十種類も作って試験工場5工場で試しに作る大きな設備で同じ品質に作れるか品質保証6確認して発売安全性と表示を確かめ、店頭へ研究所で生まれた種が、何年もかけて商品に
発売後もお客さんの声を集めて改良を続けます
1
種を見つける(基礎研究)

研究所で、汚れを分解する新しい酵素や、少ない量で泡立つ成分を探します。何年もかかることがあります。

2
使えるか確かめる(応用研究)

見つかった成分を洗剤に入れたときに、本当に汚れが落ちるか、肌にやさしいか、安く作れるかを確かめます。

3
商品の目標を決める

マーケティングの部署と一緒に、誰に向けて、どんな性能で、いくらで売るかを決めます。

4
配合を決めて試作する(商品開発)

成分の組み合わせを少しずつ変えた試作品を何十種類も作り、汚れ落ちや香り、保存しても品質が変わらないかを試験します。

5
工場で試しに作る

工場の大きな設備で同じ品質に作れるかを、生産技術の担当者と一緒に確かめます。

6
品質と表示を確認して発売

品質保証の部署が安全性や表示を確認し、量産が始まって店頭に並びます。発売後もお客さんの声を集めて改良を続けます。

技術士(関係する国家資格・必須ではない)

合格率令和7年度 第一次試験33.8%、第二次試験11.4%
勉強時間の目安第一次試験は大学の専門科目の復習を中心に数か月〜1年、第二次試験は実務経験を積んだあとに1年以上かけて準備する人が多いです
受験資格第一次試験は年齢・学歴・実務経験の制限がなく誰でも受験できます。第二次試験は第一次試験の合格などのあと、一定年数の実務経験が必要です
第一次試験は大学で学んだ基礎があれば合格をめざせる水準で、在学中に受ける学生もいます。第二次試験は実務の経験を論文で示す必要があり、合格率は10%前後です。部門によって難しさが違い、令和7年度は機械部門の第二次試験の合格率が16.2%、電気電子部門が10.1%でした。研究・開発の仕事に必須ではありませんが、技術者としての実力の証明になります。
試験科目(押すと中身が見られます)
合格までの流れ
  1. 第一次試験基礎・適性・専門の3科目をマークシートで受験します。合格すると修習技術者になれます。
  2. 実務経験技術者として一定年数の実務経験を積みます。指導技術者のもとで経験を積むと必要年数が短くなります。
  3. 第二次試験筆記試験(論文)と口頭試験を受けます。
  4. 登録合格後に登録すると、技術士を名乗れるようになります。

研究・開発のある1日

8:45

出社して、夜のあいだ動かしていた装置の測定データを確認します。

9:00

チームの朝会で、今日の実験の予定と装置の使用時間を調整します。

9:30

実験室で試料を作ります。温度や混ぜる時間などの条件を少しずつ変えて、何種類も用意します。

12:00

昼休み。社員食堂で他の部署の人と話すことも情報収集になります。

13:00

午前中に作った試料を分析装置にかけ、性質を測ります。

15:00

事業部門や工場の担当者とオンライン会議をして、商品化に向けた目標をすり合わせます。

16:00

測定データをグラフにまとめ、仮説どおりだったかを考えます。

17:00

英語の論文や特許を読み、他社や大学の最新の研究を調べます。

18:00

実験ノートに今日の結果と次の計画を書いて退社します。

もっと知りたい人へ

そもそも研究・開発とは

研究・開発は、英語の Research and Development を略して R&D とも呼ばれます。研究は「新しい知識や技術を見つけること」、開発は「その知識や技術を使って商品を作り上げること」です。たとえば、ある化学メーカーが「汚れだけを分解する酵素」を見つけるのが研究、その酵素を洗剤に入れて家庭で使える商品にまとめるのが開発です。大学の研究と違い、会社の研究・開発は最終的に会社の商品や利益につながることが目的です。

研究と開発の境目

実際の会社では、研究と開発ははっきり分かれていないことも多いです。研究所の研究者が商品化まで関わることもあれば、開発部門の技術者が新しい原理を見つけることもあります。会社によって部署の名前や役割の分け方が違うため、就職活動では「この会社の研究職は何をするのか」を一社ずつ確かめることが大切です。

R&Dの規模

総務省の科学技術研究調査(2025年)によると、2024年度に日本全体で研究に使われたお金は約23.8兆円で、そのうち約17.4兆円を企業が使っています。研究者は約91万人で、企業で働く研究者が約53万人と半分以上を占めます。研究というと大学の先生を思い浮かべがちですが、実は会社で研究する人のほうが多いのです。

なるためのルート

研究・開発の職種に就くいちばん一般的なルートは、高校で理系を選び、大学の理工系学部に進み、大学院(修士)を修了してメーカーに入社する道です。大手メーカーの研究所では修士修了が多数派で、博士修了の人もいます。学部卒や高専卒でも、商品開発や技術開発の部署に入る道があります。食品や化粧品の商品開発では、学部卒の採用も多く見られます。

  1. 高校で理系を選ぶ数学(数学III・Cまで)と、物理・化学・生物のうち2科目を学ぶのが一般的です。進みたい分野に合わせて理科の科目を選びます。
  2. 理工系・薬学・農学系の学部に進む化学なら応用化学科、機械なら機械工学科というように、研究したい分野の学科を選びます。
  3. 大学4年で研究室に入る卒業研究で一つのテーマに取り組みます。この研究室の分野が、就職先の研究分野と深く関わります。
  4. 大学院(修士)に進む2年間、研究を深めて学会発表などを経験します。修士1年の夏ごろからインターンシップや就職活動が始まります。
  5. メーカーの研究職・開発職に応募学校推薦や自由応募で応募し、研究内容の発表や技術面接を受けます。
  6. 入社後に配属研修のあと研究所や開発部門に配属され、テーマの担当者として働き始めます。
推薦応募と自由応募

理系の大学院生の就職活動には、大学や研究室が企業に推薦する「学校推薦」と、自分で応募する「自由応募」があります。学校推薦は内定しやすい反面、内定したら辞退しない約束が一般的です。研究室の先生や先輩の就職先を参考にする人も多いです。

ジョブ型の研究職採用

最近は、配属先の研究分野を最初から決めて採用する「職種別採用」や「ジョブ型採用」を行う会社が増えています。自分の研究と近い部署を選べる一方で、募集されている分野と自分の専門が合っていることが求められます。

試験・選考の詳細

研究・開発の職種に就くのに必要な国家資格はありません。選考でいちばん重視されるのは、大学や大学院で取り組んできた研究の中身です。多くの会社が「研究概要書」という、自分の研究をA4用紙1〜2枚にまとめた書類の提出を求めます。面接では技術面接として、研究の目的、工夫したところ、うまくいかなかったときの対応などを、専門家の社員から細かく質問されます。

研究発表型の面接

スライドを使って自分の研究を10〜15分で発表し、そのあと質疑応答をする形式の面接もあります。専門外の人にもわかるように説明できるかどうかが見られます。たとえば、自分の研究を家族や友だちに説明できるくらいまで、かみくだいて話す練習が役立ちます。

関係のある資格

必須ではありませんが、技術士(機械、化学、電気電子など)は研究者・技術者向けの国家資格です。令和7年度の技術士第一次試験の合格率は33.8%、第二次試験は11.4%でした。社会人になってから取る人が多い資格です。英語の論文を読む力の証明として、TOEICの点数を提出させる会社もあります。

年収のリアル

研究・開発の職種の年収は、職種そのものよりも「どの会社に勤めるか」で大きく変わります。会社の給料体系は職種に関係なく決まっていることが多く、大手メーカーの研究職は、同じ会社の営業や事務と同じくらいの年収になります。令和5年賃金構造基本統計調査では「研究者」の平均年収は約740万円で、年齢別の推計では20代前半が約371万円、50代後半が約1,002万円です。大学院を出て入社すると、学部卒よりも初任給が少し高く設定されるのが一般的です。

業界による違い

自動車、電機、化学、医薬品の大手メーカーは平均年収が高い傾向があります。たとえば、有価証券報告書(単体、2026年3月期)では、トヨタ自動車は平均1,006万円、信越化学工業は平均899万円です。中堅・中小メーカーはこれより低めになることが多いです。

成果と年収の関係

日本の会社では、一つの研究がヒット商品になっても、年収が急に何倍にもなることはあまりありません。発明に対して会社が報奨金を出す制度(職務発明の報奨制度)があり、特許の出願や登録、商品化のときにお金がもらえることが多いです。

やりがい

研究・開発のいちばんのやりがいは、自分が関わった技術や商品が世の中に出て、多くの人に使われることです。たとえば、自分が開発した材料が使われたスマホを電車の中で誰かが使っているのを見かけたとき、自分が配合を考えたお菓子がコンビニに並んだときの喜びは大きいと言われます。世界で誰も知らなかったことを最初に知る瞬間に立ち会えるのも、研究の大きな魅力です。

専門を深め続けられる

大学で学んだことを土台に、一生かけて一つの分野の専門家になれる職種です。学会で発表したり、論文や特許に自分の名前が残ったりすることも励みになります。

社会の課題を解決できる

脱炭素のための電池や太陽電池、病気を治す薬、食料問題を解決する技術など、研究・開発は社会の大きな課題に直接取り組める仕事です。

大変なこと・きついこと

研究・開発は、うまくいかないことのほうがずっと多い仕事です。何百回実験しても思うような結果が出ないことは珍しくありません。何年も取り組んだテーマが、会社の方針の変更や、他社が先に商品を出したことで中止になることもあります。商品開発では発売日という締め切りがあり、直前に不具合が見つかると忙しい時期が続きます。

配属や異動が希望どおりとは限らない

大学で研究していた分野と違う部署に配属されることもあります。研究所から工場の技術部門や品質保証部門に異動になることもあり、そのたびに新しい分野を一から学ぶ必要があります。

学び続ける必要がある

技術は日々進歩するため、新しい論文や他社の特許を読み続ける必要があります。最近はAIやデータ解析の技術がどの分野の研究にも入ってきており、専門外の知識も学ぶことが求められます。

向いている人

研究・開発に向いているのは、「なぜだろう」と考えるのが好きで、答えが出るまで粘り強く取り組める人です。失敗しても、その結果から次の手を考えられる人は研究に強いです。また、一人で黙々と実験するイメージがありますが、実際はチームで進めることが多く、他の人と協力したり、自分の考えをわかりやすく説明したりする力も欠かせません。

こんな高校生は向いているかも

理科の実験で、結果が教科書どおりにならなかったときに理由を考えるのが楽しい人や、身の回りの商品を見て「どうやって作っているんだろう」と気になる人、夏休みの自由研究に夢中になった経験がある人は、研究・開発の素質があるかもしれません。

あまり向いていないかもしれない人

すぐに目に見える結果が出ないと気持ちが続かない人には、つらく感じることがあるかもしれません。ただし商品開発は、数か月から1〜2年で商品として形になることも多く、比較的早く成果を実感できます。

高校生のうちにできること

研究・開発をめざすなら、まずは理系を選び、数学と理科の基礎をしっかり固めることが大切です。どの分野の研究でも、データをグラフにして考える力、数式で現象を表す力が必要になります。英語も重要で、研究者になると英語の論文を毎日のように読みます。授業の課題研究や探究の時間を、自分で問いを立てて調べる練習の場として使うのもおすすめです。

科目選びのポイント

化学系の研究なら化学と物理または生物、機械・電気系なら物理と化学、薬学・バイオ系なら化学と生物を選ぶ人が多いです。大学によって入試で必要な理科の科目が違うので、高1のうちに志望学科の入試科目を調べておくと安心です。

科学コンテストやオープンキャンパス

科学の甲子園や各種の高校生向け研究発表会に参加すると、研究の進め方を早くから体験できます。大学のオープンキャンパスで研究室を見学したり、企業の科学館や工場見学に行ったりするのも、研究・開発の仕事を具体的にイメージする助けになります。

代表的な会社・職場

研究・開発の職種が多いのは、自動車、電機、化学・素材、医薬品、食品、化粧品・日用品などのメーカーです。トヨタ自動車やデンソーのような自動車関連、日立製作所やソニーのような電機、信越化学工業や三菱ケミカルのような化学、武田薬品工業のような製薬会社は、大きな研究所を持っています。国の研究機関や、大学発のベンチャー企業も職場になります。

国の研究機関

理化学研究所や産業技術総合研究所、JAXA(宇宙航空研究開発機構)などの国立研究開発法人も研究者の職場です。企業よりも基礎研究に近いテーマに長く取り組めることが多いです。

研究開発の受託会社

他の会社から依頼を受けて、実験や分析、試作を代わりに行う会社もあります。たとえば、薬の臨床試験を手伝う会社(CRO)や、技術者を派遣して開発を手伝う会社などです。

基礎研究・応用研究・商品開発のちがい

研究・開発の3つの段階は、かかる時間と商品との距離が違います。基礎研究は10年以上先の商品の種を探し、応用研究は数年後の商品化をめざし、商品開発は数か月〜2年ほどで発売まで仕上げます。たとえばスマホの電池なら、新しい材料を見つけるのが基礎研究、それで小さな電池を作って性能を確かめるのが応用研究、スマホに入る形と大きさに仕上げて量産に引き渡すのが商品開発です。

人数の多さ

会社の中で人数がいちばん多いのは商品開発の段階で、基礎研究の人数は限られています。「研究者になりたい」と思って入社しても、多くの人は応用研究や商品開発に関わることになります。

どの段階が向いているか

答えのない問いにじっくり向き合いたい人は基礎研究、技術と商品の両方を考えるのが好きな人は応用研究、使う人の反応を早く知りたい人は商品開発が合っていると言われます。

研究職と大学院

研究・開発の職種では、大学院の修士課程まで進む人が多いです。大学4年の1年間だけでは研究の経験が足りず、企業も修士修了者を中心に研究職を採用する傾向があるためです。大学院では学会発表や論文の執筆、後輩の指導などを通じて、研究を自分で進める力を身につけます。

博士課程に進む場合

博士課程(3年)まで進むと、より深い専門性を持った研究者として採用されることがあります。製薬会社や化学メーカーの基礎研究では博士の採用も多いです。一方で、就職の年齢が上がり、採用する会社が限られるという面もあります。

学費と奨学金

大学院の2年間にも学費がかかりますが、理系の大学院生は研究室の仕事を手伝うことでお金をもらえるTA(ティーチング・アシスタント)や、日本学生支援機構の奨学金などを使う人が多いです。優れた業績を上げると返還が免除される奨学金もあります。

よくある質問

研究職になるには大学院に行かないとだめですか?

必ずではありませんが、大手メーカーの研究所では修士修了者が多数派です。学部卒でも、商品開発や技術開発の部署で研究・開発に関わる道はあります。食品や化粧品の商品開発では学部卒の採用も多いです。

文系でも研究・開発の仕事はできますか?

理系の専門知識を使う職種なので、文系出身で研究・開発に就く例はほとんどありません。ただし、商品企画やマーケティングの立場から商品開発に関わることはできます。

研究職と開発職はどちらが年収が高いですか?

同じ会社の中では、研究職と開発職の給料体系は同じであることが多いです。年収の差は職種よりも、会社や業界、役職の違いで生まれます。

研究で失敗ばかりだとクビになりますか?

研究は失敗が当たり前の仕事なので、失敗しただけで評価が大きく下がることは少ないです。失敗の原因を分析し、次にどう生かすかが評価されます。ただし、テーマが中止になって別の部署に異動することはあります。

女性の研究者は多いですか?

総務省の科学技術研究調査(2025年)では、日本の研究者のうち女性は約19%で、少しずつ増えています。化学、薬学、食品、化粧品などの分野では女性の研究者も多く活躍しています。

大学で研究したことと違う分野に配属されることはありますか?

あります。会社の研究テーマと大学の研究がぴったり同じことはむしろ少ないです。企業は、大学で身につけた研究の進め方や考え方も評価しているので、分野が違っても力を発揮できます。

研究・開発は残業が多いですか?

部署や時期によって違います。基礎研究は比較的自分でスケジュールを決めやすい一方、商品開発は発売前に忙しくなる傾向があります。実験の都合で、夜や休日に装置の様子を見に行くこともあります。

高校の勉強で特に大事な科目は何ですか?

数学、理科(物理・化学・生物)、英語です。研究ではデータを数学で扱い、英語の論文を毎日のように読みます。理科は、進みたい分野に近い科目を深く学ぶと大学の勉強につながります。

研究者になってから、別の仕事に移ることはできますか?

できます。知的財産(特許)、技術営業、品質保証、生産技術、商品企画などに移る人は多いです。研究で身につけた論理的に考える力は、どの仕事でも役立ちます。

この分野のことば

年収について:厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)に掲載の令和7年賃金構造基本統計調査では、高分子化学技術者の年収は約641.7万円(平均41.5歳)です。令和5年賃金構造基本統計調査の「研究者」は平均約740万円(平均41.6歳)、年齢別の推計で20代前半約371万円、55〜59歳約1,002万円です。大手メーカーの研究職はこれより高い場合が多く、目安として見てください。

数字はすべて公開データにもとづく目安です。出典は出典・サイトポリシーにまとめています。

ほかの仕事も見てみる